キャベツ畑が広がっています。
しめった軍手をして、
額の汗を拭いながら、
順平は晴れた空を見上げました。
「なんか腰悪くしそうじゃね」
となりの畝でかがんで働いていた同僚が、
立ち上がって伸びをする順平に言いました。

今さらだろう、
毎日こんな格好してたら、
腰おかしくするに決まってる、

順平はそう思いましたが、
「まあ、腰だけじゃないけどね」
同僚も立ち上がり、
一緒に伸びをして、
「どこよ」
「どこって、」
順平は彼を見ながら、
「全部じゃね」
「ははっ、そりゃそうだ」

2人で、力ない笑いを交わして、
また、作業に戻りました。

順平は、
ふとこのアルバイトの、
雑誌に出ていた
募集広告を思い出していました。

自然を満喫、充実した時間を過ごしてください、
みたいなこと、
書かれていました。

たしかにここには、
自然はそこら中にある、
だけれど、都会人というのは、
自然から逃げてきて、
土面をコンクリートで覆って、
なるべく自然に曝されない住居を作って、
人間だけで生きるような
そういう遠大な思想の元に、
生息しているじゃないでしょうか、

そんな環境で育った僕らが、
たまに聞きかじるように自然を堪能して、
おいしい空気だね、て、
そんな刹那的な、
キャンプみたいな、
それだけで済むことなのに、

ここは、
そんなものじゃない、
少なくとも、
このキャベツ畑は、
僕らに自然を伝え、
原始時代に、
ただ生きるために生きた人類のように、
人間が無為でも生きられるように、
そう馴らそうとしている、
馴らされたものだけが、
ここでは生き残る、

順平は何だか腹立たしさを覚えながら、
また、黙々と軍手をした手で
キャベツをつかみにかかります。

ふと、ミクちゃんの白い足の、
虫刺されの跡をまた思い出しました。
あれも、自然の一部、
いや、
都会にだって蚊くらいいる、
彼はそう思って、
また作業に没頭し始めていました。

ほとんど寝ずに仕事しているのです。
目を閉じると、
すぐにでも眠ってしまいそうでした。
 

プロジェクト570日目。

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2020/1/30 570日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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