Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 ! -22ページ目

Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

 

正月早々、大震災と大事故が起こった。流行り病を乗り越えたと思ったら、なんという2024年の幕開けだろうか。改めてお悔みとお見舞いを申し上げます。一日も早い復興と解決を祈ります。

 

 

年頭に今年のことではなく、昨年のことを書くことをお許しいただきたい。伝えるべきことがあり、確認作業をしていて、なかなか、まとまらず、年を越してしまった。お待たせ過ぎかもしれないが、毎年、こんな具合である(反省!)。

 

 

実は、このクリスマスイブは“クリスマス自宅派”の私にしては珍しく、東京・渋谷の代官山にいた。華やかなパーティ気分を味わいに出かけたわけではないが、それはそれで賑やかで和やかな“饗宴”だった。

 

2023年に☆になってしまった素晴らしいアーティスト、赤城忠治(FILMS、クレバーラビッツ)とISSAY(DER ZIBET、Issay meets Dolly)に捧げる聖夜スペシャルライブ「星くずサロン☆Special☆になった君たちへ」が手塚眞監督の仕切りで、代官山のライブハウス「晴れたら空に豆まいて」で行われたのだ。

 

昨2023年7月6日に赤城忠治が逝去した際、追悼文とともにFILMSのメンバーだった岩崎工が書いたデビューアルバム『MISPRINT』(1980年)のレコーディングリポートをFBやアメブロなどに転載している。また、ISSAYとは直接、面識や交流がなかったものの、ISSAYがジュネや宙也とともに開催したイベント「FREEKS OF LEGEND2019」なども見ている。さらにDER ZIBETのメンバーには私が関わったトリビュートアルバムのレコーディングに参加もしてもらっている。どんなことがあっても行かないわけにはいかないイベントだろう。

 

 

会場の“晴れ豆”には開場時間が過ぎても行列が出来ていた。中に入れず、会場を待つ人が溢れる。建物内とはいえ、吹き抜けのため、吹きさらしで、寒さが応える。混雑や遅延など、交通機関のアクシデントで遅れる方もいたらしく、その関係でリハーサルがずれ込んでいるみたいだ。普段ならごねたくなるものだが、こんな時間の緩さも赤城忠治らしい。“しょうがねえなあ―、早く入れろよ、忠治!”と、心の中で悪態(!?)をつく。そんなことまで楽しんでいる自分もいた。列に並ぶ方も“仕方ないなあ”と、諦めの笑顔である。久しぶりに旧友に会うという方も多く、赤城忠治やISSAYとの思い出を楽しそうに話す。

 

結局、開演時間の午後7時を30分ほど過ぎて、漸く、入場することが出来た。全員が入り切るまで、少し時間はかかったが、客席は人で埋まる。皆、彼らのことを忘れず、クリスマスイブにも関わらず、駆け付ける。それだけで嬉しくなるというもの。

 

 

まずはこのイベントを主催し、この日のホスト役である手塚眞がステージに上がる。彼らについて、その思いを語る。そもそもの、この“星くずサロン”は手塚が監督した映画『星くず兄弟』(1985年)、そして33年後の続編『星くず兄弟の新たな伝説』(2018年)があってこそである。その映画は近田春夫が発案し、歌詞を書き、赤城が曲を書いた「星くず兄弟の伝説」をテーマにした架空のサントラアルバム『星くず兄弟の伝説』(1980年)があってこそだった。そしてISSAYは手塚との出会いで、初の映画出演、さらにDER ZIBETとしてのデビューが実現している。2015年から2019年まで“続編”のために代官山の“晴れ豆”で様々なベントを繰り返してきた。今回は2019年2月28日(木)に開催された「Macoto Tezka Presents 星くずサロン★SPECIAL THE LAST SHOW」以来、4年ぶりの復活になる。今年、☆になった赤城忠治とISSAYのために“仲間”が集まったのだ。

 

 

最初の出演は赤城の公私ともに渡るパートナー、テルミン奏者、やの雪(テルミン)、そしてオンドマルト奏者、原田節(Pf)、さらにエル(MC)。やのは2001年にファーストソロアルバム『eyemoon/やの雪&Aeon』をビクター エンタテインメントから発表している。テルミン奏者として初のメジャーカンパニーからのリリースだったという。監修に岡野玲子、手塚眞、サウンドプロデューサーに赤城忠治が担当。映像作品や舞台芸術、アート作品などとのコラボレーション、様々な音楽家やアーティストとの共同作業をしている。赤城とやのが手掛けた作品は国内外でも高い評価を得ている。この日、披露されたのは“赤城忠治が作成したオケにMCと演奏が乗る19分で1曲の曲だ”という。赤城に関しては希代のメロディーメイカーと言う評価を獲得しているが、同曲を聞くと環境音楽や前衛音楽、フォークロアなど、多面的な音楽性を持っていることを改めて再確認できる。

 

 

やの雪Trio(写真左から)原田節(Pf)、エル(MC)、

やの雪(テルミン)

 

元祖・星くず兄弟といえば、高木完と久保田慎吾である。その久保田が新たなバンド「THE GEE GEEs」(類似バンド名が多いため、ライブ後、「10GG」に改名を正式発表)を率いて登場。先日、12月1日(金)に高木完がオーガナイズした“ナイロン100%”の復活祭(正式名称は「LOST NEW WAVE 100%」)で、8 1/2(ハッカニブンノイチ)を再結成したばかり。その乗りをそのまま持ち込みつつ、1曲目の「ロンドンだよおっかさん」、2曲目の「コツコツのタンゴ」は10GGになってからの新曲、3曲目の「土曜の夜はやっちゃいな」(2019年にリリースしたオールド・ラッキー・ボーイズのサードアルバム『「幸福を呼ぶ男」The man who calls bliss.』に収録)などのナンバーを現在進行形の歌と演奏で“星くず兄弟”の世界観にアジャスト。思い切り弾けてみせる。改めて久保田慎吾は“ナイロン100%”の申し子であり、“星くず兄弟”の中心人物であることを再確認。赤城忠治、久保田慎吾、高木完の“野合”も“星くず”があったからだろう。“星くず兄弟の伝説”という作品と場の持つ力が再び、彼らを結び付けた。

 

 

THE GEE GEEs改めて10GG。

(写真左から)藤原マヒト(Key)、河合徹三(B)、

久保田慎吾(Vo)、伴慶充(Dr)、宮崎裕二(G)。

サックスに元OLBの佐藤綾音が急遽参加した

 

久保田の後は会場の中ほどにある桟敷でのトークコーナーになる。同コーナーを仕切るのは手塚眞。ゲストはちわきまゆみである。赤城忠治がグラマラス&メロディアスな名曲「オーロラガール」を提供したことでも知られ、ソウルメイトでもいうべき、ISSAYとの交流でもお馴染み。ちわきは百貨店の屋上のペットショップで売っている潮を吹く、水槽に入るサイズの“ミニクジラ”の話をしてくれた。彼を知るものの間では有名なホラ話(!?)。人によっては渋谷の西武や池袋の西武だったりする。中には真に受けて、買いにいったものもいたそうだ。当然の如く、そんなものは売ってはいない。また、ISSAYはそのビジュアルからは想像できないが、剣道をしていたこともあって、礼儀正しく、実にちゃんとしていたと語る。その不在を残念がる。

 

手塚眞(写真左)とちわきまゆみ

 

 

 

トークコーナーでは近田春夫の映像も流れた。今回は生憎、都合がつかず、ビデオ出演になる。近田が“星くず”を赤城と共作することになった経緯はソロアルバムを制作の際にメロディアスなものを作る部分が自分は苦手だったので、彼の力を借りたかったからという。また、ISSAYに関しては彼こそ、ビジュアル系の元祖だと発言していた。

 

 

トークコーナーの後、ミニクジラを買いに行ってしまったという窪田晴男が登場する。彼は1991年にリリースしたソロアルバム『Flying New Asian』に赤城忠治(クレジットは赤木信夫名義)を共同プロデューサーとして指名し、曲作りなどもともにしている。共作した「ラピスラズリ」を披露する。

 

 

窪田のステージに小川美潮が登場。赤城はチャクラのアルバム『南洋でヨイショ』(1983年)に収録された「本当のこと言えば」に歌詞を提供(作詞:赤城忠治・作曲:板倉文・編曲:チャクラ)している。小川と窪田は「チョコレート・ドリーム」を披露する。同曲は窪田、丹波博幸、宮原芽映によるアコースティック・ユニット「shiro」の宮原芽映(元「タイニー・パンプス」。作詞家としても活躍)が作詞、赤城が作曲したナンバーで、バラエティ番組「ピカピカ音楽館」のために作ったもの。テレビではやの雪が歌っていたという。

 

窪田、小川に元シネマ、サニー久保田とオールド・ラッキー・ボーイズの小滝みつるが参加。3人で「不思議のテオ」を演奏する。同曲はFUJITSUのPCのソフトウエアのために作られたサントラに収録されたナンバーで、“不思議のTEO”のキャラクター「フィンファン」の言葉は全部音楽で表現され、その音楽を全部、赤城が作ったそうだ。

 

いわば、窪田、小川、小滝による赤城忠治の隠れた名曲の発掘である。小川美潮という至宝というべき歌声があって、彼のナンバーが際立っていく。FILMSだけではない、彼の名曲を堪能することができる。

(写真左から)小滝みつる(Kb)、小川美潮(Vo)、

窪田晴男(Vo、G)

 

同ステージ後は再び、桟敷で⼿塚監督とやの雪、藤原マヒトが参加してトークコーナーが開催される。共同作業の多い彼らだが、赤城は楽曲制作に際して正式なレコーディング前にデモテープを作成し、かなり作り込むという。そんなデモテープが無数にあるらしく、未発表曲を集めたコンピレーションなども期待できそうだ。同コーナーでは映画では一部のみ、また、未公開という貴重な映像も披露された。『星くず兄弟の新たな伝説』の赤城忠治が演奏に参加したライブシーンも秘蔵映像として流れた。同映像には“星くず”には欠かせないプロデューサー、江藏浩一(元ピンナップス。佐野元春が片岡鶴太郎へ提供した「Looking For A Fight」の編曲を手掛けている)も映っている。残念なことに彼は2020年に赤城やISSAYより一足早く☆になった。合掌。

 

また、手塚眞が父・手塚治虫原作の『ばるぼら』を2020年に映画化、同映画にISSAYも役者として出演している。夏木マリや二階堂ふみらとの歌唱シーンが流された。スターにも負けない輝きを放つ。手塚は、ISSAYは自らの作品には欠かせない存在。これからも起用する予定だったという。前述通り、ISSAYがDER ZIBETとしてデビューする経緯は“星くず”だった。たまたま、手塚は近田と映画の打ち合わせをしていて、その時、レコード会社のスタッフの書類の中に紛れていたISSAYの写真が床に落ちて、それを手塚が気を留めたことがきっかけだったらしい。映画出演とバンドデビューに繋がる。そんなハプニングがなければ、“ISSAY”は誕生しなかったかもしれない。

 

(写真左から)手塚眞、藤原マヒト、やの雪、ちわきまゆみ

 

トークコーナーの後はステージに野宮真貴と⾦津ヒロシが登場する。金津は久保田慎吾が結成したクリスタルバカンスに参加後、本間哲子とともにプラチナkitを結成、岡田徹プロデュースによってリリースされている。その後、Moon Bossaレーベルを主宰。『星くず兄弟の新たな伝説』の劇中歌「星くず兄弟、月へ行く」(作詞:手塚眞・作曲:赤城忠治)の編曲を手掛けている。また、彼は“星くず”にはバンドマンとしての出演だけだったが、その独特の雰囲気からか、“その他大勢”ではなく、役者として抜擢され、ちゃんと「キンちゃん」という役名まで貰っている。

 

野宮と金津は『星くず兄弟の伝説』の劇中歌で、”キャッシュカードがフルハウス”というフレーズがある「モニター」(作詞:近田春夫・作曲:赤城忠治・編曲:近田春夫)を演奏する。同曲に続き、実際に野宮が出演し、新“スターダスト・ブラザーズ”(三浦涼介&武田航平)とともに歌った『星くず兄弟の新たな伝説』の劇中歌「星くず兄弟、⽉へ⾏く」を披露する。赤城忠治の作った楽曲が野宮と金津によってアップデートされる。同曲だけでも彼がいかに優れたソングライターであるかがわかる。

 

(写真左)金津ヒロシと野宮真貴

 

赤城忠治のポートレート(中央)を紹介する金津と野宮

 

そして、そのステージの後、遂に「FILMS23」が登場する。ブラボー⼩松(G)、中原信雄(B)、久下惠⽣(Dr)というオリジナルメンバーに、⼩滝みつる(Key)が加わるFILMSの2023年版だ。ブラボーはデビューアルバム『MISPRINT』リリース時点には参加してない(レコーディングには橋本忠雄が参加し、メンバーとしてクレジットされている。残念なことに彼は2020年に亡くなっている。合掌)。また、久下はブラボーが連れてきたメンバーで、FILMSと同時期にPUNGOを篠田昌己とやっていた。バンド始める時にブラボーが呼んだドラムスで、FILMSの音楽がどうなのか全然知らなかったそうだ。彼の8ビートが聴けるのはFILMSだけで、ブラボーは“今回、久下くんじゃなきゃ”と、こだわったという。また、ステージには上がっていないが、レコーディングメンバーでオリジナルキーボードの岩崎工も会場に来ていた。

 

その「FILMS23」のヴォーカルを務めるのが先ほど、登場した野宮真貴である。デビューアルバム『MISPRINT』の収録曲で赤城メロディーの神髄、FILMS的未来予想図を描いた「30th CENTURY BOY」と「T.V.PHONE AGE」を畳みかける。未来予想図といいつつ、Tレックスの「20th Century Boy」やクリムゾンの「21世紀のスキッツォイド・マン」を一気に飛び越し、30世紀にしてしまう、そんな迂闊なところが彼らしい。

 

 

野宮真貴らしさを思う存分に発揮しながらもその歌唱はオリジナルのコーラス隊である小島洋子とアキ・マクレーン(木内アキ)を彷彿させる。音楽の永遠性とともにとても懐かしい気持ちになる。当時のことがいろいろと思い出される。改めて、言うまでもないが、彼らの再評価する必要性を強く感じる。それに異論を挟むものはいないはず。

 

野宮真貴+FILMS23(写真左から)小滝みつる(KeY)、

中原信雄(B)、野宮真貴(Vo)、久下恵生(Dr)、

ブラボー小松(G)

 

同曲を終えると、彼らはステージを去る。当然、アンコールを求める拍手と歓声はやまない。数分後、FILMS23 +野宮真貴が手塚眞とともに戻って来る。手塚はこの日のシークレット&スペシャルゲストとして、高木完を紹介する。彼は、“FILMSの中では一番、パンクっぽい”というデビューアルバムに収録された「Crash Kids」をFILMSの演奏をバックに歌い出す。20世紀のパンクの名曲を21世紀のパンクの名曲に仕立てる。怒涛のような音と叫ぶような歌である。天国の赤城やISSAYに届けとばかり、力を振り絞る。ハードでいて、クールな歌と演奏はきっと、彼らもびっくりして、☆から地上へ落ちてきてしまう、そんな名演、絶唱である。

 

そして、近田春夫が作詞・作曲し、“星くず”の劇中歌として、ISSAYが歌った「ピースマークベイビー」をこの困難な時代へのメッセージとして届ける。そのパンキッシュでグラマラスな歌と演奏はISSAYを彷彿させるのだ。

 

 

シークレット&スペシャルゲストを紹介する

手塚眞

 

高木完(写真中央。赤ジャケット)+FILMS23

 

最後の最後は出演者達がステージに上がり、“星くず”の主題歌「星くず兄弟の伝説(テーマ)」を披露する。ステージに上がる誰もが笑顔で、楽しそうに奏で、歌い、踊るのが印象的だった。何か、ドリフの全員集合のエンディングのような賑やかさと和やかさだ。湿っぽいのは“星くず”には似合わない。まさに圧巻の大団円である。

 

会場にいる誰もが嬉しそうで、思わず笑顔がこぼれる。改めて彼らのことを思い、こんな素晴らしい場所を作った手塚に感謝をしていることだろう。

 

気付けば時計は午後11時近くになっていた。開場までの寒い外での待ちから聖夜に11時まで。こんな日にタクシーを拾うのは難しい。終演とともに急ぐべきところだが、何故か、その場を立ち去りがたいのか、留まるものも多い。終電に乗り遅れたら、どうすんだよ――と文句の一言も言いたくなるが、とても居心地のいい時間で、心と身体がホッカイロ以上に温まる。これは彼らからのクリスマスプレゼントかもしれない。サンタなんて、信じちゃいないが、この日ばかりは少し信じたくなる(笑)。

 

アンコールでこの日の出演者がステージに上がる。

久保田が担いでいるのは赤城忠治のポートレート。

宇宙飛行士姿が赤城らしい!?

 

実はこの日、横浜のライブハウス「The CLUB SENSATION」では宙也が音頭をとり、ISSAYなどと開催してきたイベント「Glamorous Xmas Eve Night!」を“ISSAYへ捧げるライブ”として行った。また、2月5日(月)には東京・青山「MANDARA」でISSAYへの献花の式典、彼の誕生日である7月6日(日)には岡野ハジメプロデュースによるトリビュートアルバムも予定されているという。

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/2f9815a24033a07782ec21ecd04ed57026fe8cd9

 

 

 

 

https://twitter.com/derzibet_info

 

 

クリスマスイブには奇跡が起こる。☆になった兄弟たちに再び、出会うことが出来た。星くずたちは永遠に輝き続ける。彼らを忘れないものによって、彼らは生き続ける。きっと、新たなイベントや音や映像に出会うこともできるはず。

 

 

Special thanks to Kyoko Platypus Kawamura, Sasha Nakamura,Shingo Kubota

 

 

漸くクリスマスが終わった。ここ数年とは違い、クリスマスがあるという日常が戻りつつあることを感じる。渋谷駅の大混雑など、いかにもではないだろうか。人が多過ぎ、移動も困難を極め、乗り換えなどに時間がかかり、開演に間に合わず、大事な曲を聞き逃してしまうなんていうこともあったようだ。

 

 

私自身は“自宅クリスマス派”(と言ってもケーキやチキンを食べるわけではない!)であるが、ここ数日、Facebookやアメブロなどで、過去のクリスマス時期に書いたエントリーが上がって来る。連日、○年前の○月○日に書いた記事がありますと、教えてくれる。特にシェアなどしていないので、わからないかもしれないが、山下久美子とクリスマスの話題ばかりのだ。私は毎年、クリスマス前後は山下久美子と一緒に過ごしていた(!?)。勿論、実際に過ごしたのではなく、毎年の如く、彼女のクリスマスライブを見ていて、そのリポートをその都度、上げていたということ。このところはリアルライブではなく、配信ばかりになるが、“金鳥の夏”ではないものの、“山下久美子のクリスマス”である。いろいろ世知辛い状況ではあるが、少し気持ちが軽くなり、華やか気分を提供してくれる。大事な冬の風物詩になっている。特に今年は12月6日に大澤誉志幸と山下久美子が共演した『Celebrate Christmas ~& FriendsⅢ』(テイチクエンタテインメント)というクリスマスアルバムが出たばかり。なおさら、クリスマス気分が盛り上がるというもの。

 

 

この12月8日(金)と16日(土)に山下久美子の“HOME”というべき築地・汐留『BLUE MOOD』で、“クリスマスライブ”があった。両日とも配信だが、しっかり見ている。山下久美子の一足早いクリスマスプレゼント、その中身を一足遅いが“締め”として報告させてもらう。

 

 

2週に渡るライブだが、同じ演目や同様の趣向を繰り返すのではなく、両日とも別メンバー、別メニューという設えである。

 

 

まず、12月8日(金)は「♡JAZZ”N”KUMIKO」。本2023年4月26日にリリースされた山下久美子がジャズに挑んだジャズアルバム『Jazz”n”Kumiko』、そしてそのレコーディングメンバーとのお披露目ライブ『「JAZZ”N”KUMIKO」& PLUS~New Album 「JAZZ”N”KUMIKO」レコ発ライブ & PLUS~』(2023年4月22日・築地「BLUE MOOD」)の再演になる。皆川太一(Arr&G)、中林万里子(P)、中林薫平(B)、工藤明(Dr)、ビリー・ジーン(A.S)というレコーディングメンバーが再集結した。クリスマスにジャズという絶好の組み合わせ。大人な気分も爆上がりする。このラインナップ、このセットリストのライブは彼女の新機軸であり、新境地でもある。デビュー40年を超えるベテランながら“SOMETHING NEW”(新しいこと)があるのだ。素敵なことではないだろうか。数々の冒険や実験をメインストリートで繰り返してきた彼女ならではだろう。

 

ビリー・ジーンはジャズアルバムの初共演以来、すっかり常連になったが、彼女が山下の横にいるだけで、バンドとしては2回目の共演ながら、違和感なく、しつくりくるのはビリー・ジーン効果かもしれない。

 

 

ジャズアルバムのナンバーからお馴染みのオリジナル、クリスマスソングまで、まさに盛りだくさんのメニューである。お腹いっぱいになりそうだが、重ったるさがなく、すんなりと心と身体に入り、滋養強壮になる。初のジャズライブが少し余所行きモードもあったが、途中、“ロックンロール”と叫んだり、突然、立ち上がったりと、いつも山下久美子モードもいい按配にミックスされている。ジャズアルバムを新たな地平へ持っていく。特に進化や進歩を目指したものではないかもしれないが、彼女が歌うことで新たなスタンダードに仕上げる。ブギウギやジャズなど、大衆音楽を文字通り、大衆のものにしてきた“ナベプロ”の軌跡や歴史などともリンクしていくのだ。

 

 

これは“育てるべきもの”だろう。『Jazz”n”Kumiko』はかつて彼女を担当していたプロデューサーとの再会が生んだものだが、御縁や御恩を大切にしてきた山下久美子と彼女のスタッフだからこそ、なし得たこと。その大切な出会いが彼女を育てる。

 

 

12/8 (Fri)BM「Jazz"n“Kumiko and Christmas」

Arr&G.皆川太一/ P.中林万里子/ B.中林薫平/ D.工藤明 / A.Sビリー・ジーン

 

01.LOVIN' YOU

mc

02.MY ROMANCE

03.シャンプー

mc

04.こっちをお向きよソフィア

05.Night and Day

mc

06.Santa Baby

07.Have yourself a merry litlle Christmas

mc

08.Lady Jean

09.Moongrow

10.Danny Boy

mc

11.All of me

12.Love Letters

13.What a difference a day makes

 

mc

14.On The Street Where You Live

15.Bye Bye Blackbird

 

EN

16.Smile

 

 

 

そして、12月16日(土)は「Rockin’ KUMIKO and Christmas」。セットリストをご覧いただければわかるように、このライブは山下久美子が日本コロムビア在籍時、布袋寅泰がサウンドプロデュースした“ロックンロール3部作” <『1986』(1986年)・『POP』(1987年)・『Baby alone』(1988年)>からコンパイルしたベストアルバム『three into one』(1988年)に収録されたロックンロールの名曲達が選曲されている。年末を飾るに相応しい“ロックンロールクリスマス”の開催である。

 

彼女は3曲目の「.Angel Beat 」後のMCで“激しいロックステージをやっています。今年最後のソロライブなので、ここで燃え尽きてもいい気持ちでやっています”と告げる。

 

ところがハプニングが起こる。4曲目の「リリス」を歌い終えると、“ちょっとお水を飲むは”と言い出す。どうやら、酸欠ではないものの、めまいを起こしたらしい。会場が熱かったことが原因のようだ。かつて「学園祭の女王」と言われた彼女で、酸欠を起こしたことがあったという。“大丈夫か、私……”と自問自答する。水分補給をして、会場の暖房を下げてもらい、一息入れたらたら落ち着いたようだ。ロック界の至宝・山下久美子である、彼女に大事があってはいけない。少し、おしゃべりしていると体調が回復らしく、いつもの彼女になった。一安心である。山下は“これも久美子伝説になります。ちょっと涼しい風が来たので、続けます。HAPPY BIRTHDAYTO ME”と告げて、「Happy Birthday…to me」を披露する。“Rockin’ KUMIKO”の復活だ。

 

 

 

そして、「Lady xxx Pop!」を無事(!?)に歌い終えると、“ロックンロールタイム”から“クリスマスタイム”へ。すっかり復調した彼女はリリースされたばかりの9年ぶりの“フレンズアルバム”になる『Celebrate Christmas ~& FriendsⅢ』を観客に紹介する。同作のジャケットはジョン・レノンやカーリー・サイモン、ビリー・ジョエルのレコーディングに参加していて、山下や大澤とは縁のあるギタリスト、プロデューサー、ヒュー・マックラケン(1942年3月31日 - 2013年3月28日)がニューヨークのスタジオで撮影したものである。その写真はSNSを通じて、彼の息子から彼らに贈られたものだった。

 

同作から「Santa Baby」、「Have yourself a merry litlle Christmas」などが披露される――“クリスマスタイム”である。

 

そして再び、「Stay」、「Rock me Baby」と、『three into one』からのナンバーが続く、“ロックンロールタイム”へ。メンバーも彼女の復調に合わせ、演奏を加速させていく。“ロックンロール3部作”のアウトラインをなぞりながらもレギュラーメンバーとして長年、活動をともにしてきた生まれた色合いや風合いを加味していく。ある意味、”大人版のロックロール3部作”と言っていいかもしれない。“現在進行形のロックンロール3部作”だろう。

 

その後は、めまいが……など、信じられないくらいに心地良く疾走していく。元祖「学園祭の女王」、「総立ちの久美子」が2023年の東京に降臨した。「Stop Stop Rock'n Roll』と、歌っても彼女のロックンロールは終わりそうにない。

 

山下久美子とメンバー、そして観客との“コール&レスポンス”は、乗り越えたこそ、見えてきた風景だろう。2024年がどういう年になるかわからないが、普通に“Rockin’”できる状況であることを願わざるを得ない。2025年の“デビュー45周年”に向けて、彼女の快進撃を期待している。この日のアンコールは彼女の始まりの曲、1980年6月25日にリリースされたデビューシングル「バスルームから愛をこめて」だった。

 

 

12/16 (Sat)BM「Rockin’ KUMIKO and Christmas」

(Dr.椎野恭一 / B.千ヶ崎学 / Key.伊藤隆博 / G.後藤秀人 / A.S.ビリージーン)

 

 

01.Flip Flop & Fly

02.Single

03.Angel Beat

mc

04.Lilith(British Fantasy)

05.Happy Birthday…to me

06.Lady xxx Pop!

mc Celebrate Christmas

 

07.Santa Baby

08.Have yourself a merry litlle Christmas

mc

09.Stay

10.Rock me Baby

11.Melody-from Liverpool

12.優しくしたいの

13.逢いたい

mc

14.微笑みのその前で

15.Stop Stop Rock'n Roll

 

EN

16.バスルームから愛をこめて

 

 

 

この2つの“クリスマスライブ”は強烈だった。クリスマスだけでなく、正月も一緒に来たような楽しさと華やかさ。見逃した方は残念がって欲しい(笑)。

 

 

そして、この“クリスマスライブ”の前には10月14日(土)に同じく築地・汐留「BLUE MOOD」で椎野恭一が選曲を手掛けたライブが行われている。異色のライブだが、彼女の背中を長年、見続けてドラムを叩いてきた椎野の選曲は、彼だから見えるものがある。彼は“キュートで切ない、かっこいい久美ちゃん”を見せたいと言っていたが、まさにその通りだった。ヴォーカリストやリーダーが選曲するというのはよくあることだが、バンドのドラマーが選曲するというのは極めて珍しいことではないだろうか。そんな実験や冒険をするのが山下久美子である。同ライブにはDREAM The FUTURE LIVE 2023′✳未来を夢見るVol.4✳とタイトルされている。まさに彼女の未来が見えてくる。

 

 

1014 Kumiko BM

KUMIKO YAMASHITA

DREAM The FUTURE LIVE 2023′

✳未来を夢見るVol.4✳

「椎野恭一 Selected !! ⭐︎Images of Kumiko Yamashita」

at BLUE MOOD

 

山下久美子 with Band:

G.: 後藤秀人、Key.: 伊藤隆博、B.: 千ヶ崎学、Dr.: 椎野恭一 A.Sax: ビリー・ジーン

 

1 恋はスクーターに乗って

2 キス&ベッド

3 Baby Baby (I love you tonight)

 

4 LOVER ステッカー

5 LOVER MAN

 

6 スローナンバーのあとで

7 星になった嘘

 

8 愛すればこそ

9 あなたが、いた夏

 

10 笑ってよ フラッパー

11 君がいれば

12 踊り明かしたい

13 REINCARNATION

 

14 瞳いっぱいの涙

 

アンコール

 

1 時代遅れの恋心

2 いっぱいキスしよう (century kiss)

 

 

 

 

そして、本日、12月27日(水)は東京 町田「まほろ座 MACHIDA」の大澤誉志幸 SASURAI TOUR 2023「そし僕ツアー8 〜Xmas Tour〜」の★Xmas Special★ Finalに山下久美子がゲスト出演する。『Celebrate Christmas ~& FriendsⅢ』を生で見られる絶好の機会だ。当日だが、町田へ駆けつけて欲しい。配信もあるようだ。

 

 

まほろ座 MACHIDA

https://www.mahoroza.jp/

 

【出演】

大澤誉志幸(Vo, Gt)

<SPECIAL GUEST>

山下久美子(Vo)

<SUPPORT>

後藤秀人(Gt)

青木庸和(Key)

 

配信チケット

https://mahoroza.zaiko.io/item/361794

 

 

配信日時

12/27 (水) 19:00 - 21:30 JST

アーカイブ終了日時(最大)2024/01/03 (水) 23:59 JST

 

 

 

 

 

 

▲高木完

 

 

 

 

「ナイロン100℃」ではなく、「ナイロン100%」。勿論、ナイロン100℃がナイロン100%から取られていることを知っている方も少なくないだろう。ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が青年時代に入り浸っていたという東京の渋谷センター街にあった“ニューウェイブ喫茶店”(カフェー&バーとも言われる)である。80年前後のニューウェイブの時代を象徴する東京の“モダーンポット”だ。同所では8 1/2やヒカシュー、アーント・サリー、プラスティックス、P-MODEL、ハルメンズ、東京ブラボー、有頂天……などのライブも行われた。1980年代の東京を象徴する音をまき散らしていた。また、岡崎京子や川勝正幸、香山リカ、野々村文宏、地引雄一などが常連として通ったところとしても知られている。ポップカルチャーの拠点でもあった。そのナイロン100%が高木完の音頭取りで、一昨日、12月1日(金)、渋谷猿楽町のライブスペース「Daikanyama SPACE ODD」で「 LOST NEW WAVE 100%」として1日だけ、復活した。

 

出演は8 1/2、Phew、ヒカシュー、She Talks Scilence、主催の高木完はDJとして会場を盛り上げる。“懐かしのニューウェイブバンド大集合”とでもいうべき座組だが、しかし、そこに懐古モードはない。当時は前衛的で最先端であったように2023年も前衛的で最先端であり続ける。ただ、ニューウェイブ時代は屈折や痙攣などがキーワードだったが、いまは直截と疾走がキーワードか。高木完のDJから8 1/2まで、高揚感と多幸感にフロアは包まれる。久々に再結成した8 1/2を始め、ベテランバンドだけでなく、She Talks Scilenceという現在のニューウェイバーを敢えて加えたこともいい意味での化学変化が起きたようだ。

 

ニューウェイブがニューウェイブたる矜持を見せつけられる。疾走感溢れる演奏を聞かせてくれたベテラン、ヒカシューの圧巻のパフォーマンス、“8 1/2が活動を続けていたら、どんな音を出すバンドになっていたんだろう。今回のライブでは、そんな顔もたっぷりと見せようと思っています”という久保田慎吾の言葉通り、久保田慎吾(Vo)と上野耕路(Kb)、泉水敏郎(Dr)にサポートのベースを加え、ギターレスながら骨太の歌と演奏に襲撃を受ける。また、テクノやニューウェイブを改めてダンスミュージックとい観点から再解釈した高木完のDJプレイ、ステージで姿を見せず、DJブースで淡々と音を聞かせるPhew、若手ながらベテラン勢に引けを取らない堂々たる演奏ぶりのShe Talks Scilenceなど、五者五様の多様性を当時から体現していた彼らすべてが破格であった。こんな刺激的なニューウェイブなイベントは久しぶりではないだろうか。

 

実はこのイベントはナイロン100%の初代店長で、昨2022年11月19日に急逝した中村直也を追悼したものでもあった。どれだけの方が彼のことを知っているか、わからないが、彼が日本のニューウェイブシーンに果たした役割は計り知れないものがある。そんな大げさな表現をすると、彼ははにかむかもしれないが、あまり知られてない事実だろう。彼とは取材や原稿など、何度か、お会いしているが、ちょっと、飄々としたところがあり、はぐらかすようなところもある。そんなところもニューウェイブ的だった(!?)。

 

高木完はこのイベントに際して、当時のナイロン100%」(NYLON100%)のネオンサインのレプリカの制作を依頼し、それはイベント会場に使用された(オリジナルも会場に持ち込んだが、電飾関係の不具合のため、灯りをともすことなく展示のみ)。

 

高木完を始め、中村直也への愛が溢れ、参加したバンドが全バンドとも嬉しそうにしていたのが印象的。ヒカシューの巻上公一も出演後、楽しかったと語ってくれた。このイベントをやり遂げるために尽力をした高木完のことを絶賛している。やはり、この日も“温故知新”ではなく、“温故智新”――古きを訪ねて、新しい知恵を得るだろう。新しいニューウェイブの時代を予感させる。

 

この日、たくさんの知り合いきていた。勿論、同所での再会もあったが、その場に来ていたことを後から知った。実は会場の照明が暗く、気づかなかったのだが、ツイッター(X)など、SNSを見ると、「Daikanyama SPACE ODD」に来ていたことがわかった。“ナイロン100%”や“中村直也”のことをみんな、忘れていないのだ。

 

会場の照明に関しては、先の通り、暗かったため、東京のストリートムーブメントを撮り続けた写真家・地引雄一の写真がフロアに展示されたいが、よく見えなかった。よく見ると、懐かしい写真が並んでいる。ちなみにブログに掲載したPhewの写真は会場に展示された地引の写真である。Phewのライブは何度か見ているはずが、ちゃんと取材はしていなかった。彼女のことを思うと、LIZARDのMOMOYOが話してくれたエピソードが出てくる。京都で彼女と初対面の際、何故か、近くにあった木に登ったそうだ。文学少女と言うイメージとのギャップがあり過ぎて、戸惑ったことがある。

 

 

今回は“Vol.1”で、次もあるらしい。このところ、自らの歴史を振り返りつつ、日本のオルタナティブなロックの歴史を自らの著書『東京 IN THE FLESH』(イースト・プレス )やラジオ番組『TOKYO M.A.A.D SPIN』(J-WAVE)で掘り下げている。彼の活動によって、オルタナティブな足跡が顕在化されつつある。楽しみでならない。

 

ちなみに劇団『ナイロン100℃』の主催者、(ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)も同会場へ来ていた。彼も自らの原点を見つめ直しにきたのかもしれない。

 

 

 

 

 

▲8 1/2(ハッカニブンノイチ)

 

 

 

 

▲ヒカシュー

 

 

▲PHEW(撮影・地引雄一)

 

 

▲She Talks Scilence

 

 

 

 

 

 

なお、イベントのことを高木完はFBに書いている。私の駄文は飛ばしてもいいから、これは是非、読んでいただきたい。このイベントを開催した思いが綴られている。入口で配布されたTENGAのエナジードリンクにはそういう意味があったのか――。

 

高木 完 - 78年。歌謡曲やニューミュージック、ディスコも楽しんでいたが、肝心のロックだけはパンク、ニューウェーブしか好きじゃなかっ... | Facebook