山下久美子Xmasライブ「♡JAZZ”N”KUMIKO」と「☆ROCKIN’KUMIKO」 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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漸くクリスマスが終わった。ここ数年とは違い、クリスマスがあるという日常が戻りつつあることを感じる。渋谷駅の大混雑など、いかにもではないだろうか。人が多過ぎ、移動も困難を極め、乗り換えなどに時間がかかり、開演に間に合わず、大事な曲を聞き逃してしまうなんていうこともあったようだ。

 

 

私自身は“自宅クリスマス派”(と言ってもケーキやチキンを食べるわけではない!)であるが、ここ数日、Facebookやアメブロなどで、過去のクリスマス時期に書いたエントリーが上がって来る。連日、○年前の○月○日に書いた記事がありますと、教えてくれる。特にシェアなどしていないので、わからないかもしれないが、山下久美子とクリスマスの話題ばかりのだ。私は毎年、クリスマス前後は山下久美子と一緒に過ごしていた(!?)。勿論、実際に過ごしたのではなく、毎年の如く、彼女のクリスマスライブを見ていて、そのリポートをその都度、上げていたということ。このところはリアルライブではなく、配信ばかりになるが、“金鳥の夏”ではないものの、“山下久美子のクリスマス”である。いろいろ世知辛い状況ではあるが、少し気持ちが軽くなり、華やか気分を提供してくれる。大事な冬の風物詩になっている。特に今年は12月6日に大澤誉志幸と山下久美子が共演した『Celebrate Christmas ~& FriendsⅢ』(テイチクエンタテインメント)というクリスマスアルバムが出たばかり。なおさら、クリスマス気分が盛り上がるというもの。

 

 

この12月8日(金)と16日(土)に山下久美子の“HOME”というべき築地・汐留『BLUE MOOD』で、“クリスマスライブ”があった。両日とも配信だが、しっかり見ている。山下久美子の一足早いクリスマスプレゼント、その中身を一足遅いが“締め”として報告させてもらう。

 

 

2週に渡るライブだが、同じ演目や同様の趣向を繰り返すのではなく、両日とも別メンバー、別メニューという設えである。

 

 

まず、12月8日(金)は「♡JAZZ”N”KUMIKO」。本2023年4月26日にリリースされた山下久美子がジャズに挑んだジャズアルバム『Jazz”n”Kumiko』、そしてそのレコーディングメンバーとのお披露目ライブ『「JAZZ”N”KUMIKO」& PLUS~New Album 「JAZZ”N”KUMIKO」レコ発ライブ & PLUS~』(2023年4月22日・築地「BLUE MOOD」)の再演になる。皆川太一(Arr&G)、中林万里子(P)、中林薫平(B)、工藤明(Dr)、ビリー・ジーン(A.S)というレコーディングメンバーが再集結した。クリスマスにジャズという絶好の組み合わせ。大人な気分も爆上がりする。このラインナップ、このセットリストのライブは彼女の新機軸であり、新境地でもある。デビュー40年を超えるベテランながら“SOMETHING NEW”(新しいこと)があるのだ。素敵なことではないだろうか。数々の冒険や実験をメインストリートで繰り返してきた彼女ならではだろう。

 

ビリー・ジーンはジャズアルバムの初共演以来、すっかり常連になったが、彼女が山下の横にいるだけで、バンドとしては2回目の共演ながら、違和感なく、しつくりくるのはビリー・ジーン効果かもしれない。

 

 

ジャズアルバムのナンバーからお馴染みのオリジナル、クリスマスソングまで、まさに盛りだくさんのメニューである。お腹いっぱいになりそうだが、重ったるさがなく、すんなりと心と身体に入り、滋養強壮になる。初のジャズライブが少し余所行きモードもあったが、途中、“ロックンロール”と叫んだり、突然、立ち上がったりと、いつも山下久美子モードもいい按配にミックスされている。ジャズアルバムを新たな地平へ持っていく。特に進化や進歩を目指したものではないかもしれないが、彼女が歌うことで新たなスタンダードに仕上げる。ブギウギやジャズなど、大衆音楽を文字通り、大衆のものにしてきた“ナベプロ”の軌跡や歴史などともリンクしていくのだ。

 

 

これは“育てるべきもの”だろう。『Jazz”n”Kumiko』はかつて彼女を担当していたプロデューサーとの再会が生んだものだが、御縁や御恩を大切にしてきた山下久美子と彼女のスタッフだからこそ、なし得たこと。その大切な出会いが彼女を育てる。

 

 

12/8 (Fri)BM「Jazz"n“Kumiko and Christmas」

Arr&G.皆川太一/ P.中林万里子/ B.中林薫平/ D.工藤明 / A.Sビリー・ジーン

 

01.LOVIN' YOU

mc

02.MY ROMANCE

03.シャンプー

mc

04.こっちをお向きよソフィア

05.Night and Day

mc

06.Santa Baby

07.Have yourself a merry litlle Christmas

mc

08.Lady Jean

09.Moongrow

10.Danny Boy

mc

11.All of me

12.Love Letters

13.What a difference a day makes

 

mc

14.On The Street Where You Live

15.Bye Bye Blackbird

 

EN

16.Smile

 

 

 

そして、12月16日(土)は「Rockin’ KUMIKO and Christmas」。セットリストをご覧いただければわかるように、このライブは山下久美子が日本コロムビア在籍時、布袋寅泰がサウンドプロデュースした“ロックンロール3部作” <『1986』(1986年)・『POP』(1987年)・『Baby alone』(1988年)>からコンパイルしたベストアルバム『three into one』(1988年)に収録されたロックンロールの名曲達が選曲されている。年末を飾るに相応しい“ロックンロールクリスマス”の開催である。

 

彼女は3曲目の「.Angel Beat 」後のMCで“激しいロックステージをやっています。今年最後のソロライブなので、ここで燃え尽きてもいい気持ちでやっています”と告げる。

 

ところがハプニングが起こる。4曲目の「リリス」を歌い終えると、“ちょっとお水を飲むは”と言い出す。どうやら、酸欠ではないものの、めまいを起こしたらしい。会場が熱かったことが原因のようだ。かつて「学園祭の女王」と言われた彼女で、酸欠を起こしたことがあったという。“大丈夫か、私……”と自問自答する。水分補給をして、会場の暖房を下げてもらい、一息入れたらたら落ち着いたようだ。ロック界の至宝・山下久美子である、彼女に大事があってはいけない。少し、おしゃべりしていると体調が回復らしく、いつもの彼女になった。一安心である。山下は“これも久美子伝説になります。ちょっと涼しい風が来たので、続けます。HAPPY BIRTHDAYTO ME”と告げて、「Happy Birthday…to me」を披露する。“Rockin’ KUMIKO”の復活だ。

 

 

 

そして、「Lady xxx Pop!」を無事(!?)に歌い終えると、“ロックンロールタイム”から“クリスマスタイム”へ。すっかり復調した彼女はリリースされたばかりの9年ぶりの“フレンズアルバム”になる『Celebrate Christmas ~& FriendsⅢ』を観客に紹介する。同作のジャケットはジョン・レノンやカーリー・サイモン、ビリー・ジョエルのレコーディングに参加していて、山下や大澤とは縁のあるギタリスト、プロデューサー、ヒュー・マックラケン(1942年3月31日 - 2013年3月28日)がニューヨークのスタジオで撮影したものである。その写真はSNSを通じて、彼の息子から彼らに贈られたものだった。

 

同作から「Santa Baby」、「Have yourself a merry litlle Christmas」などが披露される――“クリスマスタイム”である。

 

そして再び、「Stay」、「Rock me Baby」と、『three into one』からのナンバーが続く、“ロックンロールタイム”へ。メンバーも彼女の復調に合わせ、演奏を加速させていく。“ロックンロール3部作”のアウトラインをなぞりながらもレギュラーメンバーとして長年、活動をともにしてきた生まれた色合いや風合いを加味していく。ある意味、”大人版のロックロール3部作”と言っていいかもしれない。“現在進行形のロックンロール3部作”だろう。

 

その後は、めまいが……など、信じられないくらいに心地良く疾走していく。元祖「学園祭の女王」、「総立ちの久美子」が2023年の東京に降臨した。「Stop Stop Rock'n Roll』と、歌っても彼女のロックンロールは終わりそうにない。

 

山下久美子とメンバー、そして観客との“コール&レスポンス”は、乗り越えたこそ、見えてきた風景だろう。2024年がどういう年になるかわからないが、普通に“Rockin’”できる状況であることを願わざるを得ない。2025年の“デビュー45周年”に向けて、彼女の快進撃を期待している。この日のアンコールは彼女の始まりの曲、1980年6月25日にリリースされたデビューシングル「バスルームから愛をこめて」だった。

 

 

12/16 (Sat)BM「Rockin’ KUMIKO and Christmas」

(Dr.椎野恭一 / B.千ヶ崎学 / Key.伊藤隆博 / G.後藤秀人 / A.S.ビリージーン)

 

 

01.Flip Flop & Fly

02.Single

03.Angel Beat

mc

04.Lilith(British Fantasy)

05.Happy Birthday…to me

06.Lady xxx Pop!

mc Celebrate Christmas

 

07.Santa Baby

08.Have yourself a merry litlle Christmas

mc

09.Stay

10.Rock me Baby

11.Melody-from Liverpool

12.優しくしたいの

13.逢いたい

mc

14.微笑みのその前で

15.Stop Stop Rock'n Roll

 

EN

16.バスルームから愛をこめて

 

 

 

この2つの“クリスマスライブ”は強烈だった。クリスマスだけでなく、正月も一緒に来たような楽しさと華やかさ。見逃した方は残念がって欲しい(笑)。

 

 

そして、この“クリスマスライブ”の前には10月14日(土)に同じく築地・汐留「BLUE MOOD」で椎野恭一が選曲を手掛けたライブが行われている。異色のライブだが、彼女の背中を長年、見続けてドラムを叩いてきた椎野の選曲は、彼だから見えるものがある。彼は“キュートで切ない、かっこいい久美ちゃん”を見せたいと言っていたが、まさにその通りだった。ヴォーカリストやリーダーが選曲するというのはよくあることだが、バンドのドラマーが選曲するというのは極めて珍しいことではないだろうか。そんな実験や冒険をするのが山下久美子である。同ライブにはDREAM The FUTURE LIVE 2023′✳未来を夢見るVol.4✳とタイトルされている。まさに彼女の未来が見えてくる。

 

 

1014 Kumiko BM

KUMIKO YAMASHITA

DREAM The FUTURE LIVE 2023′

✳未来を夢見るVol.4✳

「椎野恭一 Selected !! ⭐︎Images of Kumiko Yamashita」

at BLUE MOOD

 

山下久美子 with Band:

G.: 後藤秀人、Key.: 伊藤隆博、B.: 千ヶ崎学、Dr.: 椎野恭一 A.Sax: ビリー・ジーン

 

1 恋はスクーターに乗って

2 キス&ベッド

3 Baby Baby (I love you tonight)

 

4 LOVER ステッカー

5 LOVER MAN

 

6 スローナンバーのあとで

7 星になった嘘

 

8 愛すればこそ

9 あなたが、いた夏

 

10 笑ってよ フラッパー

11 君がいれば

12 踊り明かしたい

13 REINCARNATION

 

14 瞳いっぱいの涙

 

アンコール

 

1 時代遅れの恋心

2 いっぱいキスしよう (century kiss)

 

 

 

 

そして、本日、12月27日(水)は東京 町田「まほろ座 MACHIDA」の大澤誉志幸 SASURAI TOUR 2023「そし僕ツアー8 〜Xmas Tour〜」の★Xmas Special★ Finalに山下久美子がゲスト出演する。『Celebrate Christmas ~& FriendsⅢ』を生で見られる絶好の機会だ。当日だが、町田へ駆けつけて欲しい。配信もあるようだ。

 

 

まほろ座 MACHIDA

https://www.mahoroza.jp/

 

【出演】

大澤誉志幸(Vo, Gt)

<SPECIAL GUEST>

山下久美子(Vo)

<SUPPORT>

後藤秀人(Gt)

青木庸和(Key)

 

配信チケット

https://mahoroza.zaiko.io/item/361794

 

 

配信日時

12/27 (水) 19:00 - 21:30 JST

アーカイブ終了日時(最大)2024/01/03 (水) 23:59 JST