「ナイロン100%」復活!ニューウェイブの新時代が来る「LOST NEW WAVE 100%」 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

 

▲高木完

 

 

 

 

「ナイロン100℃」ではなく、「ナイロン100%」。勿論、ナイロン100℃がナイロン100%から取られていることを知っている方も少なくないだろう。ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が青年時代に入り浸っていたという東京の渋谷センター街にあった“ニューウェイブ喫茶店”(カフェー&バーとも言われる)である。80年前後のニューウェイブの時代を象徴する東京の“モダーンポット”だ。同所では8 1/2やヒカシュー、アーント・サリー、プラスティックス、P-MODEL、ハルメンズ、東京ブラボー、有頂天……などのライブも行われた。1980年代の東京を象徴する音をまき散らしていた。また、岡崎京子や川勝正幸、香山リカ、野々村文宏、地引雄一などが常連として通ったところとしても知られている。ポップカルチャーの拠点でもあった。そのナイロン100%が高木完の音頭取りで、一昨日、12月1日(金)、渋谷猿楽町のライブスペース「Daikanyama SPACE ODD」で「 LOST NEW WAVE 100%」として1日だけ、復活した。

 

出演は8 1/2、Phew、ヒカシュー、She Talks Scilence、主催の高木完はDJとして会場を盛り上げる。“懐かしのニューウェイブバンド大集合”とでもいうべき座組だが、しかし、そこに懐古モードはない。当時は前衛的で最先端であったように2023年も前衛的で最先端であり続ける。ただ、ニューウェイブ時代は屈折や痙攣などがキーワードだったが、いまは直截と疾走がキーワードか。高木完のDJから8 1/2まで、高揚感と多幸感にフロアは包まれる。久々に再結成した8 1/2を始め、ベテランバンドだけでなく、She Talks Scilenceという現在のニューウェイバーを敢えて加えたこともいい意味での化学変化が起きたようだ。

 

ニューウェイブがニューウェイブたる矜持を見せつけられる。疾走感溢れる演奏を聞かせてくれたベテラン、ヒカシューの圧巻のパフォーマンス、“8 1/2が活動を続けていたら、どんな音を出すバンドになっていたんだろう。今回のライブでは、そんな顔もたっぷりと見せようと思っています”という久保田慎吾の言葉通り、久保田慎吾(Vo)と上野耕路(Kb)、泉水敏郎(Dr)にサポートのベースを加え、ギターレスながら骨太の歌と演奏に襲撃を受ける。また、テクノやニューウェイブを改めてダンスミュージックとい観点から再解釈した高木完のDJプレイ、ステージで姿を見せず、DJブースで淡々と音を聞かせるPhew、若手ながらベテラン勢に引けを取らない堂々たる演奏ぶりのShe Talks Scilenceなど、五者五様の多様性を当時から体現していた彼らすべてが破格であった。こんな刺激的なニューウェイブなイベントは久しぶりではないだろうか。

 

実はこのイベントはナイロン100%の初代店長で、昨2022年11月19日に急逝した中村直也を追悼したものでもあった。どれだけの方が彼のことを知っているか、わからないが、彼が日本のニューウェイブシーンに果たした役割は計り知れないものがある。そんな大げさな表現をすると、彼ははにかむかもしれないが、あまり知られてない事実だろう。彼とは取材や原稿など、何度か、お会いしているが、ちょっと、飄々としたところがあり、はぐらかすようなところもある。そんなところもニューウェイブ的だった(!?)。

 

高木完はこのイベントに際して、当時のナイロン100%」(NYLON100%)のネオンサインのレプリカの制作を依頼し、それはイベント会場に使用された(オリジナルも会場に持ち込んだが、電飾関係の不具合のため、灯りをともすことなく展示のみ)。

 

高木完を始め、中村直也への愛が溢れ、参加したバンドが全バンドとも嬉しそうにしていたのが印象的。ヒカシューの巻上公一も出演後、楽しかったと語ってくれた。このイベントをやり遂げるために尽力をした高木完のことを絶賛している。やはり、この日も“温故知新”ではなく、“温故智新”――古きを訪ねて、新しい知恵を得るだろう。新しいニューウェイブの時代を予感させる。

 

この日、たくさんの知り合いきていた。勿論、同所での再会もあったが、その場に来ていたことを後から知った。実は会場の照明が暗く、気づかなかったのだが、ツイッター(X)など、SNSを見ると、「Daikanyama SPACE ODD」に来ていたことがわかった。“ナイロン100%”や“中村直也”のことをみんな、忘れていないのだ。

 

会場の照明に関しては、先の通り、暗かったため、東京のストリートムーブメントを撮り続けた写真家・地引雄一の写真がフロアに展示されたいが、よく見えなかった。よく見ると、懐かしい写真が並んでいる。ちなみにブログに掲載したPhewの写真は会場に展示された地引の写真である。Phewのライブは何度か見ているはずが、ちゃんと取材はしていなかった。彼女のことを思うと、LIZARDのMOMOYOが話してくれたエピソードが出てくる。京都で彼女と初対面の際、何故か、近くにあった木に登ったそうだ。文学少女と言うイメージとのギャップがあり過ぎて、戸惑ったことがある。

 

 

今回は“Vol.1”で、次もあるらしい。このところ、自らの歴史を振り返りつつ、日本のオルタナティブなロックの歴史を自らの著書『東京 IN THE FLESH』(イースト・プレス )やラジオ番組『TOKYO M.A.A.D SPIN』(J-WAVE)で掘り下げている。彼の活動によって、オルタナティブな足跡が顕在化されつつある。楽しみでならない。

 

ちなみに劇団『ナイロン100℃』の主催者、(ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)も同会場へ来ていた。彼も自らの原点を見つめ直しにきたのかもしれない。

 

 

 

 

 

▲8 1/2(ハッカニブンノイチ)

 

 

 

 

▲ヒカシュー

 

 

▲PHEW(撮影・地引雄一)

 

 

▲She Talks Scilence

 

 

 

 

 

 

なお、イベントのことを高木完はFBに書いている。私の駄文は飛ばしてもいいから、これは是非、読んでいただきたい。このイベントを開催した思いが綴られている。入口で配布されたTENGAのエナジードリンクにはそういう意味があったのか――。

 

高木 完 - 78年。歌謡曲やニューミュージック、ディスコも楽しんでいたが、肝心のロックだけはパンク、ニューウェーブしか好きじゃなかっ... | Facebook