「じゃりン子チエ」

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「じゃりン子チエ」(1981)

 

人気アニメの劇場版をNETFLIXで観ました。

 

 

監督は高畑勲。予告編は見つからず。

 

1970年代の大阪の西成近辺を舞台に、しっかり者チエちゃんと周囲の異様な人々が織り成す、濃い日常を浪花節的なベタさも交えながら面白可笑しく描いた内容。小学5年生の竹本チエ(声:中山千夏)は、働く気がまるでない父親テツ(声:西川のりお)に代わって、放課後は家業のホルモン焼き店をひとりで切り盛りしています。母親のヨシ江(声:三林京子)はテツのクズっぷりに愛想を尽かして家出中。テツは地元ヤクザをカツアゲするような名物男で、変わり者の父であることを同級生のマサル・タカシ(声:紳助・竜介)にもからかわれているチエ。テツにとって頭が上がらないのは、自分より強いオカン(声:京唄子)と、学生時代の恩師である花井拳骨先生(声:笑福亭仁鶴)

 

ストーリーとしては、バクチが大好きなテツと賭場の親分である百合根社長(声:芦屋雁之助)との争い、百合根社長の愛猫アントニオ(声:横山やすし)とチエの飼い猫になった小鉄(声:西川きよし)との争い、テツに内緒で母ヨシ江とたまに密会しているチエ、それを知って拗ねるテツ、父親らしく振舞おうとして父兄参観にやって来て大暴れしてしまうテツ、別居していた母ヨシ江の帰宅、親子三人で過ごす休日、小鉄とアントニオJr.(声:横山やすし)の争いといったエピソードを淡々と繋いでいます。

 

はるき悦巳の漫画が原作。高畑勲監督、作画監督に大塚康生、小田部羊一というレジェンド級の布陣。大阪の下町のアクの強い日常のスケッチがとてもユーモラス。劇場公開後すぐにTVシリーズが始まって人気を博したのもうなずける、普遍的でかつオリジナルの味わいがある人間ドラマで、関西では再放送アニメの常連だったようです。この番組を積極的に観た記憶がない私ですら、オープニングの花札デザインのアニメと歌の印象がいまだに強く残っています。チエのハツラツとした雰囲気を中山千夏が好演。劇場版では、マンザイブーム真っ只中で人気のあった吉本の漫才師たちを中心とした関西芸人が声優に挑戦。前述した以外では、チエの担任の先生役で桂三枝(現・桂文枝)、地元ヤクザのカルメラ兄弟役にザ・ぼんち、テツの幼なじみの警官役が上方よしお、テツの友人役でオール阪神・巨人といった面々も参加。人気優先のキャスティングで、可もなく不可もなくといった感じですが、特筆すべきは、テツ役の西川のりお。ドンピシャの配役としかいいようがありません。当然のように、西川のりおだけはTVシリーズでも声優を続投することになりました。

 

映画ネタでは、巨大なゲタが空を覆う描写は「スター・ウォーズ」(1977)の宇宙船のパロディ。チエが母ヨシ江と一緒に見に行く映画が「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」(1967)。これは実写のフィルムが使われています。また、『明日はまた、明日の太陽がピカピカやねん!』という「風と共に去りぬ」(1939)のセリフをもじったセリフをチエが言うシーンの背景に「風と共に去りぬ」の看板が出たりといったのがありました。あとは、チエの同級生役でなぜかペコちゃんが出てきました。劇場公開は1981年4月11日。同時上映は「フリテンくん」。