「暴力行為」(1948)

 

戦争の暗い影が生んだフィルムノワールをAmazonプライムビデオで観た。

 

 

監督はフレッド・ジンネマン。予告編はコチラ

 

フランク・エンリー(ヴァン・ヘフリン)は戦争から帰還して、地元の建設業の発展に貢献、模範市民として周囲から尊敬されている男。美しい妻エディス(ジャネット・リー)とカワイイ赤ちゃんもいて、幸せな生活を送っています。ある日、彼を賞賛する新聞記事を読んだジョー・パークソン(ロバート・ライアン)は、ニューヨークからフランクが暮らすカリフォルニアのサンタ・リザへとバスで向かいます。フランクの家を訪ねると留守で、妻から湖へ魚釣りに行ったと聞いて、すぐさま後を追って、釣りをしているフランクに物陰から銃口を向けますが、引き鉄を引くチャンスを逸します。帰宅したフランクは足を引きずる長身の男(ジョー)が尋ねて来たと聞いて恐怖の表情を浮かべます。妻に問いつめられて、その男ジョーは軍隊時代の部下で、戦後になってから自分のことを逆恨みしている頭のおかしな奴なんだと話します。心配して警察を呼ぼうとするエディスをひとまず制止するフランク。しかし、その後も家に忍び寄ったり、しつこくつきまとうジョーに怯えるフランクは、意を決して自分の命を狙う本当の理由をエディスに告白します

 

戦時中、フランクの部隊が乗った戦闘機が撃墜されてナチスドイツの捕虜となってしまいました。ナチの虐待に耐えかねた部下達がトンネルを掘って脱出を図ります。浅はかな計画を心配したフランクは、良かれと思って、収容所長に彼らの罪を問わない約束で脱出計画を密告、すると、ジョー以外の部下10名がナチの守衛に虐殺されてしまいます。足の負傷のみで助かったジョーは殺された戦友10人の敵を討つために、のうのうと生き長らえているフランクを殺そうとしているのでした。不可抗力だといっても聞き入れてくれない状況であることを悟っているフランクは思い悩んで自殺を試みますが、未遂に終わります。そして、酒に溺れて自暴自棄になってフラリと訪れたバーで会った女(メアリー・アスター)に怪しい弁護士を紹介されて、邪魔者のジョーを1万ドルで殺害する話を持ちかけられたフランクは首をタテに振ってしまいます。翌朝、目覚めたフランクは自分の過ちに気づくも、殺害計画はすでに進行中。フランクは凶行を止めるべく、殺人者がジョーをおびき寄せた夜の操車場に向かうのだが・・・というのが大まかなあらすじ。


戦争が起こした悲劇をずっと引き摺って社会に馴染めないでいる男と、その悲劇を振り払って真面目に働いて平和な戦後社会に溶け込んだ男、共に根は善良で、それぞれに言い分があります。フランクには大切な妻子が、ジョーにもニューヨークから彼を追いかけてきた献身的な恋人が登場します。しかし、家庭を壊したくないフランクの弱味につけ込んだ悪女、弁護士、殺し屋の存在が話を良からぬ方向へと導いていきます。フィルムノワールらしい夜のショット奥行きのあるショットも決まっていて、サスペンスの演出も丁寧。IMDBトリビアによると、グレゴリー・ペックとハンフリー・ボガートの組合せで作る予定だったとか。実際の主演二人の方が小市民ぽさがあって、リアリティがあります。フランクの妻役のジャネット・リー(当時21才)が可愛らしいです。フランクを悪の道に誘うメアリー・アスターの小悪女ぶりも良し。小粒ながら、結末についても考えさせられる良い映画でした。