月刊「根本宗子」『共闘者』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

月刊「根本宗子」第19号

『共闘者』



2024年8月31日(土)〜9月8日(日)

TOKYO FMホール


脚本・演出:根本宗⼦

劇中詩:加納愛⼦

⾳楽:清⻯⼈

舞台監督:幸光順平、鈴⽊拓 ⾐裳:酒井タケル

⾳響:藤森直樹 照明:中佐真梨⾹(空間企画)

舞台監督助手:木塚志帆

ヘアメイクプラン:⼆宮ミハル

ヘアメイク進⾏:⽊村久美

演出助⼿:若林佑真

メインビジュアル:M!DOR!

文字大道具監修:増田ぴろよ

衣裳制作進行:茶畑由紀

衣裳制作:長江美恵子、アトリエイナドメ/tanakadaisuke

衣裳素材手配:川勝裕哉

当⽇運営:MIMOZA 制作助手:⽯井萌

企画・制作:根本宗子


出演:

前⽥敦⼦(野村京子)

根本宗⼦(優香/区役所職員・山下華)

加納[Aマッソ](瑞希)

むらきゃみ[Aマッソ](吉田もちこ)

⻑井短(真理恵)


転換演出部:杏優、果⾳(太郎物語)


STORY

高校の演劇部で出会った京子、優香、瑞希、吉田、真理恵の5人は演劇科のある大学に進学し、劇団を結成することを誓い合っていた。しかし、看板俳優の京子が脚本担当の優香にだけ家庭の秘密を告げて姿を消してしまう。数年後、元夫のアメリカ人男性との間に生まれた赤ん坊の氏名変更をしようと区役所を訪れた真理恵は、そこで京子に出くわす。


旗揚げ15周年を迎える月刊「根本宗子」、『今、出来る、精一杯。』以来、およそ4年9ヶ月ぶりの劇場での本公演(この間にオンラインでの本公演あり)。


TOKYO FMホールはプロレスでも使用される多目的ホールで、舞台を囲んで四方を客席が取り囲む。島舞台の上には台があり、周囲には椅子や自転車など。


根本さん自身、握手会にも行ったことがある元アイドルグループのエース・前田敦子さん、お笑いに留まらない活躍を見せるAマッソの加納さんとむらきゃみさん、根本作品の常連にしてラジオ番組でも相方を務めた長井短さん、そして根本さんと、四角いジャングルならぬ四角い舞台で繰り広げられる異種格闘技戦。ただし、タイトルにある通り、敵として闘うのではなく、共に闘う5人の女性たちの姿が描かれる。


5人は高校の演劇部で知り合った友人同士。松たか子さんに憧れ、出待ちをして「演劇頑張ってね」と手ぬぐいをもらったという経験もあり、5人揃って同じ大学に進み、劇団を旗揚げするつもりだった。しかし、演劇部で松たか子的存在であった京子が失踪。脚本担当の優香は京子が戻ってこられる場所を残しておこうと頑張るが、真理恵は「花火のような役者になる」とニューヨークへ行き、タイムズスクエアで出会ったアメリカ人男性と結婚して子供も生まれるがすぐ離婚、吉田は男に騙されて高額な水を買わされ…と劇団としての体をなさない。更には京子が服役中だと知った4人は出所の日、京子を待ち構える。

終盤の展開は前田さんも出演していた映画『もっと超越した所へ。』を思い起こさせるもので(記事でも偶然「共闘」という言葉を使っていた)、5人は力を合わせて時間を遡り、それぞれのやり直したいポイントへと戻っていく。

そして3人が連れ去られて(笑)、残った京子と優香が対峙するラストシーンは涙せずにはいられない(それまでも随所随所で泣いていたけど)。人生はやり直せない、たとえやり直せたとしても同じ道を選ぶ。

「おもい地獄」のところで再び5人になるところもよかった。「野田秀樹ならー」とおどけてはいたけど、5人であれば重い地獄も背負っていける。そんな思いが伝わってきた。


前田敦子さんがとにかく素晴らしく、これまでの中でベストアクト。声の出し方とかもうまくなっていて、台詞を言うたびに感情を揺さぶられる。いつの間にこんなにレベルアップしたの?と驚かされた。

他の4人プラス転換要員の太郎物語の2人はそれぞれの役割をきちんと認識して一体感があった。


上演時間2時間15分。