『もっと超越した所へ。』(山岸聖太監督) | 新・法水堂

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『もっと超越した所へ。』



2022年日本映画 119分
監督:山岸聖太 脚本:根本宗子
原作:月刊「根本宗子」第10号『もっと超越した所へ。』
撮影:ナカムラユーキ 照明:田中心樹 
録音:伊豆田廉明 編集:李英美
美術:倉本愛子 装飾:龍田哲児 
音楽:王舟 主題歌:aiko「果てしない二人」

出演:
前田敦子(岡崎真知子)
菊池風磨(朝井怜人)
趣里(櫻井鈴)
千葉雄大(星川富)
伊藤万理華(安西美和)
オカモトレイジ(万城目泰造)
黒川芽以(北川七瀬)
三浦貴大(飯島慎太郎)

STORY
家に転がり込んできたストリーマーの怜人をつい養ってしまう衣装デザイナーの真知子。意味不明なノリで生きるフリーター・泰造と暮らすショップ店員・美和は、泰造に絶大な信頼を置いている。プライドばかり高い承認欲求の塊の俳優・慎太郎のお気に入り、風俗嬢の七瀬は今日も淡々と仕事をこなす。父親の会社で働くボンボンで自己中心的な富と共同生活を送る元子役のタレント・鈴は、彼の世話をするだけで楽しそう。それなりに幸せな日々を送っていた4組のカップルに訪れた、別れの危機……。ただ幸せになりたいだけなのに、今度の恋愛も失敗なのか? それぞれの“本音”と“過去の秘密”が明らかになるとき、物語は予想外の方向へと疾走していく。【「KINENOTE」より】

月刊「根本宗子」第10号として2015年に上演された同名舞台を映画化。根本宗子さんは脚本の他、小説版も執筆。

舞台版は未見だけど、物語上は2020年1月15日、同年3月14日、2018年8月31日、そして2020年4月1日の出来事が描かれ、コロナ禍も織り込まれている。
基本的には4組の男女の物語が並行して進んでいくのだが、いかにも根本作品に出てくる登場人物という感じ(ちなみに舞台版では根本さんが真知子役)。
七瀬には子供がいて、その父親が泰造ということが明かされると、物語は2018年へ。その2人以外にも、真知子と富(富が真知子の服のモデル)、鈴と慎太郎(元子役同士で交際10年)、美和と怜人(美和が今も生活費を振り込んでいる相手が怜人)といった具合にそれぞれの結びつきが明かされていく。
再び2020年に戻り、それぞれ相手の男を部屋から追い出す女たち。真知子がいつものように買い物をしているとエンディングクレジットが流れ……と思いきや、このまま終わってはいけないと共闘する4人の女たち。どうやって元に戻すかという手法も実に演劇的ではあるのだが、それまで別々に映し出されていた4人の部屋も壁一枚隔てて存在しているなんていうのは寺山修司さんの実験映画なんかも想起させ、非常に痛快だった。阿波踊りやどじょうすくいも入り乱れるラストも祝祭的で、分断が進む現実世界とは正反対の彩りを見せてくれていた。

8人のキャストはいずれもよく、特に根本作品の常連でもある伊藤万理華さん扮する美和が病院に行ってきた結果を泰造に告げるくだりは心を動かされた。