『いきなり本読み!in EX THEATER ROPPONGI』 | 新・法水堂

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 『いきなり本読み!in EX THEATER ROPPONGI』



2024年9月3日(火)
EX THEATER ROPPONGI

進行・演出:岩井秀人
舞台監督:山下翼(スマイルステージ) 
照明:中西美樹
映像:手代木梓(トーキョースタイル) 
音響:高橋真衣 メイク:中根康恵
撮影:平岩亭
宣伝美術:土谷朋子(citron works)
収録:吉田りえ、富所浩一、込山璃久(トーキョースタイル)
キャスティング:奥田由美
制作:平沢花彩、斎藤努 制作協力:吉田敏
当日運営:足立信彦、伊藤永、加藤じゅんこ、かわいまりこ、北澤芙未子、別府亜美、松村珠美、南川泰規、山下知子
プロデューサー:松月虎次郎
企画・製作:こりっち株式会社/株式会社WARE

出演:
小泉今日子
小林聡美
高橋文哉
板垣雄亮

演奏:
千葉岳洋

2020年から始まった「いきなり本読み!」シリーズ最新版。


このシリーズ、記念すべき第1回から観ていて面白さは重々承知なのがら、最近は舞台美術やら稽古やらにお金がかかっていない割にはチケットが高すぎる!と足が遠ざかっていたのだけど、小泉今日子さん&小林聡美さんなら観に行くかというわけでお安めの席にて鑑賞。


開演10分前ぐらいに会場に着くとその時点でまだ外には行列がびっしり。これ、定刻までに入り切らんやろと思いつつ並んでいたら、案の定、7分遅れでの開演(思ったよりは早かった)。

いつものように岩井さんが法被姿でいちばん下手、そこから小泉今日子さん、高橋文哉さん、小林聡美さん、板垣雄亮さん、そして演奏の千葉岳洋さんの順で着席。


使用する台本は第3回での松本穂香さんの怪演が忘れられない「ごっちん」。しかもミュージカルシーンあり。

ゴッチンは小学3年生ながら、2メートル近い岩のような体躯を持つ少女。設定だけでも突拍子もないが、展開もなかなか突拍子もないので、初めてこの作品を見る周囲の人たちからはたびたび驚きの声が上がっていた(板垣さんも素で「えっ?」と声を漏らしてしまって岩井さんにツッコまれていたけど)。


小泉今日子さんと小林聡美さんは先日放送が始まったドラマ『団地のふたり』の衣裳で登場。終盤の11場ぐらいになってようやく岩井さんがそのことに触れ、撮影お疲れ様の花束贈呈も。

小泉さんの歌声が聴けるとは思っていなかったけど、小林さんも歌がうまくてびっくり。相手との掛け合いで歌うようなシーンでも器用に被せてミュージカルっぽく仕上げていた。

終盤、ゴッチンとゆきを担当したシーンでは、おふたりが息の合ったところを見せてくれていた。


映画『からかい上手の高木さん』とドラマをいくつか見たことがある程度だった高橋文哉さんは、なかなかの健闘ぶりで岩井さんも感心するほど。岩井さんの注文に対してとりあえず「はい、分かりました」と即答する素直さが素晴らしい。

板垣さんはラップパートでなかなかいい感じだったのに、その後の小林さんとのシーンでは岩井さんの「歌にしなくてもいい。詩のような感じで」というリクエストがしっくり来なかったのかなかなかうまくいかず。


今回、最前列の席は「お前も本読みシート」ということで、サッカーのシーンでの教師役と10年後のシーンでの化け物役をマイクをリレーして担当。化け物が咆哮するところでは岩井さんからもたびたびダメ出しが入っていたのだけど、最後の最後、いちばん盛り上がるところで担当になった方が脱力せざるをえない、アヒルのような鳴き声で岩井さんは悶絶し、場内大爆笑。


第3回の時は途中までしかできなかったが、今回は休憩なく最後まで。そうか、こういう結末だったのね。

終盤、時計を気にしつつ「後で(劇場関係者から)怒られよう」と言って続行する岩井さんに対し、小泉さんが「一緒に怒られてあげようか?」と一言。たまらんな、おい。


今回の役者陣もそれぞれ楽しませてくれたが、最大の功労者は音楽の千葉岳洋さんであろう。事前に一度話はしているそうだけど、何しろ即興で演奏し、岩井さんからのリクエストにも「かしこまりました」と涼しい顔で応えてみせる。横暴な黒田先生に肩入れしそうになる音楽がつけられていた時は岩井さんから駄目をされていたけど、見ている人の感情までコントロールしてしまうのが音楽の力なのよなぁ。


上演時間2時間27分。