『渇愛の果て、』
脚本・監督・プロデュース:有田あん
監修医:洞下由記
取材協力:高杉絵理(助産師サロン)
撮影:鈴木雅也、谷口和寛、岡達也
編集:日暮謙
録音:小川直也、喜友名且志、西山秀明
照明:大﨑和、大塚勇人
音楽:多田羅幸宏(ブリキオーケストラ)
歌唱協力:奈緒美フランセス(野生児童)
振付:浅野康之(TOYMEN)
ヘアメイク:佐々木弥生 衣装監修:後原利基
助監督:藤原咲恵、深瀬みき、工藤渉
制作:有田あん、深瀬みき、廣川千紘、小田長君枝
字幕翻訳:田村麻衣子 配給協力:神原健太朗
宣伝美術・WEB:金子裕美
宣伝ヘアメイク:椙山さと美
スチール:松尾祥磨、佐々木美宇
メイキング:伊島青、松尾祥磨
出演:
有田あん(山元眞希)
山岡竜弘(山元良樹)
輝有子(助産師・清水香苗)
小原徳子(竹中里美)
瑞生桜子(白井桜)
小林春世(藤堂美紀)
大山大(里美の夫・竹中博)
伊藤亜美瑠(美紀の夫・藤堂ミッケル)
二條正士(桜の恋人・中西隆)
オクイシュージ(眞希の父・武田健司)
みょんふぁ(眞希の母・武田洋子)
辻凪子(眞希の妹・武田渚)
関幸治(産婦人科医・佐藤兼次)
松本亮(良樹の同僚・石井竜)
大木亜希子(難病の子供を持つ母・佐伯りか)
烏森まど(看護師・桜庭もも)
廣川千紘(看護師・秋山竜子)
伊島青(看護師・小島セイカ)
内田健介(遺伝カウンセラー・水野浩二)
藤原咲恵(カフェ店員・木ノ花香奈)
大塚菜々穂(高校時代の武田眞希)
峰つばき(高校時代の竹中里美)
工藤成珠(高校時代の白井桜)
柳明日菜(高校時代の藤堂美紀)
深瀬みき、松田竜一、船戸みゆき、鈴木こころ、福原美空、澤井愛里、山本耀、小田長君枝、実月いま、松尾祥磨、工藤渉
STORY
山元眞希は、里美・桜・美紀の4人から成る高校以来の親友グループに、「将来は絶対に子供が欲しい!」と言い続け、“普通の幸せ”を夢見ていた。妊娠が発覚し、夫・良樹と共に順風満帆な妊婦生活を過ごしていた眞希だが、出産予定日が近づいていたある日、体調不良によって緊急入院をする。子供の安否を確認するために出生前診断を受けるが、結果は陰性。胸をなでおろした眞希であったが、いざ出産を迎えると、赤ちゃんは難病を患っていた。我が子を受け入れる間もなく、次々へと医師から選択を求められ、疲弊していく眞希。唯一、妹の渚にだけ本音を語っていたが、親友には打ち明けられず、良樹と子供のことで悩む日々。
そんな中、親友たちは眞希の出産パーティーを計画するが、それぞれの子供や出産に対する考えがぶつかり…。【公式サイトより】
野生児童を主宰する有田あんさんが友人の体験談を基に作り上げた長篇監督デビュー作。元々は舞台作品として上演される予定だったがコロナ禍により中止となり、その後、映画化の話が持ち上がったのだとか。
たまたま果てとチーク『はやくぜんぶおわってしまえ』と同じ日に鑑賞することになって「果て」はしごとなったが、こちらも悩める女性たちの群像劇となっていた。
出生前診断についてはiaku『流れんな』でも言及があったが、夫婦が診断を受けるかどうかで悩む、あるいは受けた結果をめぐって悩むといった展開があるのかと思ったらそうでもなく、むしろ生まれてきた子供に指がなく、知的障碍があり、自分たちに似ていないので可愛く思えないといった出産後のことや周囲の人々との関係の方により重点が置かれている。
また、『はやく〜』と違うのは、本作には主人公の眞希とその友人たち3人には(頭文字をとってSMメンバーというのはどうなん。笑)それぞれ夫やパートナーがいて、男目線からの描写もある点。こういった問題に対して男性がどのように関わるかによって、ただでさえ重くのしかかる女性への負担が大きく変わってくるよなぁ。
タイトルに「、」とあるのはこれで終わりではない、まだまだこれからも山元家には様々な問題が起きるだろうし、社会としてもこの問題は考え続けていかなければならないということであろうと受け取った。
深刻なテーマでありながら、笑える場面やミュージカル調の場面もあり、知ることの大切さ、家族や周囲の人々のありがたみを改めて感じさせてくれる作品だった。
有田あんさんは劇団鹿殺し時代に何作か出演舞台は観ているが、堂堂たる主演っぷりで一つ一つの感情にリアリティがあった。夜中のベンチで妹に電話をかけて苦しい胸のうちをさらすシーンは本作の白眉の一つ。
また、主人公の両親がオクイシュージさんとみょんふぁさんで、妹が辻凪子さんという家族構成も演劇ファンなら見逃せない。特に一家が大阪から面会に来る時、ガラス(?)越しに赤ん坊を見るときと表情が素晴らしい。
この日のアフタートークは有田あんさん、小原徳子さん、瑞生桜子さん、小林春世さんのSMメンバーが集結。東京では3回目の上映となる本作だが、この4人が揃ったのは初めてだとか。