iaku『流れんな』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

iaku

『流れんな』



【東京公演】
2024年7月11日(木)〜21日(日)
ザ・スズナリ

作・演出:横山拓也

舞台美術:柴田隆弘 照明:葛西健一

音楽:山根美和子 音響:星野大輔

音響オペ:今里愛(Sugar Sound)
衣裳:今井由希 演出助手:朝倉エリ
舞台監督:青野守浩 宣伝:吉田プロモーション
宣伝美術:下元浩人(EIGHTY ONE)
宣伝写真:井手勇貴

宣伝ヘアメイク:田沢麻利子

舞台写真:木村洋一

映像収録:堀川高志(kutowans studio)
制作協力:吉乃ルナ、中川拓也、三國谷花、米田マナ海

鑑賞サポートコーディネート:舞台ナビLAMP

ラインプロデューサー:笠原希


出演:
異儀田夏葉(鳥居睦美)
宮地綾(睦美の妹・佐藤皐月)
今村裕次郎[小松台東](睦美の幼馴染、漁師・田山司
松尾敢太郎[劇団あはひ](皐月の夫・佐藤翔)
近藤フク[ペンギンプルペイルパイルズ](ホクワンフーズ社員・駒田広)

STORY
小さな港町・久寿尾(くずお)にある食堂とまりぎ。父が一人で切り盛りしている店をずっと手伝ってきた娘、長女の睦美と、結婚して家を出た妹、皐月は一回り歳が離れている。母親が店のトイレで倒れたのは睦美が中学1年生のとき。そのとき、1歳にも満たなかった皐月には母親の記憶が無い。母の死から26年という長い年月が経った今、とまりぎは災難の渦中にある。店でも使っている食材、地元で獲れた月日貝から貝毒が見つかった。時を同じくして父が倒れ、店は休業を余儀なくされた。流すことができない苦悩を抱えた人々、その家族、店、町、海…。それでも、ここで生きていく。【公式サイトより】

2014年初演作を全篇広島弁に改稿しての再演。

舞台はお食事処「とまりぎ」。下手奥に店名の書かれたガラス戸。入ってすぐのところにウォーターサーバーとコップ。壁沿いにトイレのドア。その横にオススメメニューなどが書かれた黒板。上手奥に厨房へと続く出入口。店内にはテーブル3脚、椅子8脚。上手に段差があり、小さな座敷席となっている。

全篇を通して田舎特有の空気がまとわりつく。
主人公の睦美は母親がトイレで亡くなったことを自分のせいだと責め苦を負い、結婚をすることもなく父親が営む食堂を支えてきた女性。睦美には漁師をしている幼馴染の司がいて毎日のように食堂にも通っているが、彼の睦美への気持はまったく届いていない(どころか明確に拒絶されるべき理由が終盤に明らかになる)。
そんな彼女が地元のPR企画を担当するホクワンフーズの駒田と不倫関係に陥るというのは、ともすれば安易な設定のように見えてしまうかもしれないが、そこは横山拓也さんの筆力によって、更には演じる異儀田夏葉さんの演技によってリアリティのあるものになっている(夢を映像化するなんていうSFチックな話も出ては来るが)。
結局、駒田も「とまりぎ」に止まった一羽の鳥に過ぎなかったわけだが(まさに駒鳥)、睦美は駒田との思い出を水に流しつつ、これからもとまりぎを守っていくのであろう。

異儀田さん以外のキャストも全員よかった。
いつもは宮崎弁の今村裕次郎さん、お生まれは広島だそうで、こちらの方がネイティブなのね。終盤まではコミックリリーフとしての役割を十二分に果たしていた(司が高校時代に睦美にしたことは笑えない…)。
また、妹・皐月役の宮地綾さんは横山さんが講師を務める広島でのワークショップで出会った俳優さんだとか。睦美との口論もギスギスしすぎることなく、母親を知らずに育ち、今、母親になろうとしている女性を繊細に演じていた。

上演時間1時間35分。


終演後、横山さんとキャスト全員でアフタートークあり。