COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ2024―歌舞伎町黙示録―』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

COCOON PRODUCTION 2024

『ふくすけ 2024―歌舞伎町黙示録―』



【東京公演】

2024年7月9日(火)〜8月4日(日)

THEATER MILANO-Za


作・演出:松尾スズキ

音楽:国広和毅 舞台装置:池田ともゆき

照明:大島祐夫 音響:藤森直樹

衣裳:西原梨恵 ヘアメイク:板垣実和

映像:O-beron inc. 振付:振付稼業air:man

演出助手:大堀光威

舞台監督:二瓶剛雄、広瀬泰久

制作助手:島田琴未

制作:石井おり絵、川越ひかる、藤崎晃雅 
チーフ・プロデューサー:森田智子

エグゼクティブ・プロデューサー:加藤真規

企画・製作:Bunkamura


出演:

阿部サダヲ(警備員コオロギヨシオ)

黒木華(妻サカエ)

荒川良々(エスダヒデイチ)

秋山菜津子(エスダマス(スマダスエ))

岸井ゆきの(フクスケ(スガマナツオ))

松尾スズキ(製薬会社御曹司ミスミミツヒコ)

皆川猿時(風俗ライター・タムラタモツ)

松本穂香(ホテトル嬢フタバ)

伊勢志摩(コズマヒロミ)

猫背椿(コズマエツ)

宍戸美和公(コズマミツ)

内田慈(看護師マツシタチカ/坊さん)

町田水城(団長/アナウンサー)

河井克夫(スガマ医師/せむし男)
菅原永二(元放送作家・赤瀬川/蟹助/ゴロー)

オクイシュージ(蒲生/問掛屋紅玉)

加賀谷一肇(蒲生の部下・菱餅ほか)

石井千賀(北九州聖愛病院看護師/農民1/記者ほか)

石田彩夏(看護師風の女/天使ほか)

江原パジャマ(元子役・影村洋介/記者ほか)

大野明香音(記者/天使ほか)

久具巨林(警官/信者/農民2ほか)

橘花梨(記者/天使/母親ほか)

友野翔太(痩せていた頃のタムラ/記者/出前の男/男1ほか)

永石千尋(ヒロミの恋人チャンミー/天使ほか)

松本祐華(スガマ医院看護師ほか)

米良まさひろ(ピンヘッド/記者ほか)

山森大輔(医者風の男/記者/刑事/ゆかた姿の老人(北九州聖愛病院院長)/男2ほか)

ミュージシャン:山中信人(三味線)


STORY

とある病院の怪しい警備員コオロギは盲目の妻サカエに歪んだ愛情を抱き、サカエはコオロギを献身的に愛していた。そんなある日、コオロギの勤める病院に、薬剤被害で身体障がい児として生まれ、長い間監禁されていたフクスケが保護される。彼を監禁していた製薬会社の御曹司ミスミミツヒコは逃走し行方不明。エスダヒデイチは、精神のバランスを崩してある日行方不明になった妻マスを、14年も探し続けている。知人からマスは歌舞伎町にいるらしい、と情報を得たヒデイチは上京し、歌舞伎町で出会ったホテトル嬢のフタバと自称ルポライターのタムラタモツの協力のもと、マスの行方を追う。裏社会で暗躍するコズマ三姉妹は、食うや食わずの境遇から歌舞伎町の風俗産業で一発当てて、飛ぶ鳥を落とす勢い。ひょんなきっかけでマスと出会い、生み出した<一度死んで生まれなおすゲーム>輪廻転生プレイが大ヒット。裏社会に影響力を持ち、政界にまで進出しようと企んでいる。彼らの渦巻く情念は、やがて多くの人々と歌舞伎町自体を巻き込み、とんでもない方向に動き出す…【公式サイトより】


1991年初演作、12年ぶりの四演。


今回、四演にして初めて作品の舞台でもある歌舞伎町の劇場で上演されることになった本作、劇中では都知事選も出てくるのでタイムリーな上演となった(ま、あえてかもしれないけど)。

もちろん、今回の上演に合わせて改稿されているとのことだけど、二十代だった松尾さんの荒々しさの残滓が随所に感じられる。

本篇は大きく3つに分かれ、病院に保護された身体障碍児・フクスケと警備員のコオロギと盲目の妻・サカエの物語、行方不明になった妻を捜すヒデイチと彼に協力するホテトル嬢のフタバ、ルポライターのタムラの物語、その行方不明になった妻・マスがたどり着いた歌舞伎町でコズマ三姉妹と出会い、都知事選に立候補する物語が並行して描かれていく。

個々のエピソードだけでも充分に濃いが、3つの物語が掛け合わされ、絡み合っていくに従って終盤はもはやカオスとしか形容できない状況になっていく。

とにもかくにも猥雑でエネルギッシュで、何よりもドス黒い人間の欲望と業が渦巻いていて、歌舞伎町で上演するのにふさわしい作品だった。


これまで初演では温水洋一さん、再演、再再演では阿部サダヲさんが演じてきたフクスケを岸井ゆきのさんが演じるという点。松尾スズキさんが理想的なキャスティングが出来たと仰っていたけど、確かにこの役をできる女優さんは他にちょっと思いつかない。

他にも黒木華さんや松本穂香さんも映画やドラマではお目にかかれないような役どころ。秋山菜津子さんの何かが取り憑いたかのような演技も見事だった。


上演時間2時間58分(一幕1時間29分、休憩20分、二幕1時間9分)。