果てとチーク『はやくぜんぶおわってしまえ』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

果てとチーク・あらためて公演

『はやくぜんぶおわってしまえ』



2024年8月1日(木)〜4日(日)

アトリエ春風舎


作・演出:升味加耀

舞台監督:水澤桃花(箱馬研究所)
音響・照明:櫻内憧海(お布団)
美術協力:いとうすずらん
宣伝イラスト:little red boy
制作:月館森(露と枕/盤外双六)
制作補佐:寺垣沙織 当日運営:岡村梨加
外から眺めるひと:中島梓織(いいへんじ)

映像編集:山縣昌雄(まがたまCinema)

映像撮影:山縣幸雄、岩倉具輝、松本純弥

録音:成田章太郎
企画制作・主催:果てとチーク


出演:

川村瑞樹(ミスコン実行委員長・ソノ(18))

山田遥野[青年団](ミスコン実行委員、美術部・ヤギまーちゃん(18))

宝保里実[コンプソンズ](帰国子女・アキヤマ(18))

中島有紀乃(ミスコン実行委員・ナカイユミ(18))

升味加耀(ソノの幼馴染・ノザワ(17))

くれみわ(ミスコン実行委員会の顧問、クラス担任・サキちゃん先生(32))


STORY

「生徒の性自認が揺らぐ」「外見で順位をつけてはいけない」私立清正(せいせい)女子ミス・ミスターコンは、夏休み前日、突然その中止を余儀なくされた。結果発表直前の指示に、未だ納得できない実行委員、そして特に関係ない友人たちの放課後は、騒がしくも淡々と過ぎていく。【当日パンフレットより】


2023年初演作を早くも再演。

初演は配信で観たが、今回はキャストを半分入れ替えての上演。


舞台上には教室用の机と椅子がいくつか。上手側が教室の出入口となっていて、下手側に廊下の一部。その奥の劇場の階段も使用。


物語は2012年、升味さん自身が体験したことが基になっているとのことだけど、テーマは実に今日的。

のっけから「性自認」という言葉が出てくるが、当時LGBTQという言葉も馴染みがなく、性別と言えば男か女かというのがほとんどの人の認識だったであろう。まだまだ差別は根強いし、権利が認められているとは言い難い状況ではあるけれど、少なくともジェンダーに関する認識はここ十数年で飛躍的に高まったのは間違いない。

本作においてはノザワが他のクラスの生徒と付き合っているということでユミからはレスビアンと見なされるのだが、どうもノザワ自身は自分をそうは捉えていない節がある。「どっちにもなりたくない。どっちの性別にも分けないでほしい」という台詞からすると、ノザワは恐らくはノンバイナリーなのだろうけど、まだこの段階では自分を言い表す言葉を持ち得ていないのかもしれない。そういった不安定な状態だからこそ、女子高を卒業すれば「女子高マジック」が解けると無神経なアドバイスをするサキちゃん先生に殺意にも似た感情を持つのだろう。

そういうやりとりを見ていると、自分も過去において知らない間に傷つけたことがあるかもしれないし、ある程度認識はしているとしても、これからも傷つけていくことがあるかもしれない。

短いながらも様々なことを考えさせられる作品だった。

升味さんと宝保さんは先月の野外劇『パレード』に続いての共演だが、当然と言えば当然のことながらお二人とも別人のよう。どちらも女子高生に見えてしまう演劇マジック。


上演時間1時間5分。


アフタートークはいいへんじの中島梓織さんとモミジノハナの野花紅葉さんがゲスト。野花さんは次回作のために金髪にしてギャル風。宣伝させてあげればよかったのに。笑