王子小劇場ショーケース『見本市2024〜しばいぞめ〜』【Cチーム】 | 新・法水堂

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王子小劇場ショーケース

『見本市2024〜しばいぞめ〜』



2024年1月5日(金)〜9日(火)
王子小劇場

舞台監督:水澤桃花(箱馬研究所)
舞台監督補佐・宣伝美術:内田倭史
音響:イサカトモフミ
照明:黒太剛亮(黒猿)
照明補佐:中村仁(黒猿)
企画担当:葛生大雅、山本真生
企画アドバイザー:平井寛人
当日運営:井上瑠菜、笠浦静花
撮影:渡邉結衣

渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らない
渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らないの外縁

作・演出:渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らない
スタッフ:前田葉

出演:
山下鼓夏
神谷明穂
如月冬雪

STORY
あなたとわたしのはなしです。螺旋階段のように続いていくこの世界の過ぎ去ってしまった時間の中で私/たちは、再び想像する。【「王子小劇場のnote」より】

山口綾子の居る砦
『目が覚めて、冬』

作・演出:山口綾子の居る砦
演出補佐・声の出演:高田ゆきな

出演:
小澤南穂子(クマ)
飯尾朋花(ベア)

STORY
冬眠から早く目覚めすぎてしまった熊と、冬眠しないつもりだったのに寝落ちした熊が、せっかくだからと初詣に出かける話。【「王子小劇場のnote」より】

あくびがうつる
『シアターで夕食を』

演出:あくびがうつる
衣装:飯田翔馬
Special Thanks:中野平和の森公園で出会ったこどもたち

出演:
清水詩央璃
三谷亮太郎
薄田澄子
下沢杏奈[映像]
森田諒一[映像]

STORY
「食」をテーマにした作品です。この劇は、30分を通して「料理」になっています。買い物にいき、食品を調理し、みんなでご飯を食べるまでの演劇です。俳優が三人登場し、最終的には舞台に投影される映像も含めて五人でご飯を食べられないだろうか、と思っています。ご飯を食べること、誰かと一緒にいること、を考えていきます。【「王子小劇場のnote」より】

Aチームに続いてCチーム。こちらは山口綾子の居る砦のみ観たことあり(こちら)。
意図的なものなのか、3組とも作・演出が団体名名義(あくびがうつるは作はなし)。小劇場劇団の場合、主宰者が作・演出を務めることが多いが、誰か一人に主導権を与えるのではなく、全員で作り上げていくというのが昨今の風潮ともマッチしているのかも。

渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らない(しぶしら)は昨年7月、中高生を対象に開かれたワークショップで出会った12人で結成された劇団で、リレー形式で脚本を書いたとのこと(今回、4人は不参加)。
舞台中央奥に脚立が1つ。上方の幕に「7:23」と時間表示。床には当日パンレットが落ちていて、女子高生がそれを拾うところから始まる。
「場面1・想像上の話1」「場合2・学校」のように場面をコールしてからシーンが始まり、全部で9つのシーンで構成。最後に「7:24」と表示され、これが1分間に繰り広げられた共同幻想だったのかと気付かされる。
最初はやや声が小さくてちょっと不安を感じもしたけど、大量の紙束が降ってきたり、雨合羽を着た2人が渋谷で飛び降り自殺をした人の遺品整理ということでその紙をゴミ袋に入れたりと場面は断片的ながら、見せ方がうまい。

山口綾子の居る砦は2021年、いいへんじの飯尾朋花さんと小澤南穂子さんにより結成されたユニット。
舞台には物が雑然と置かれ、3色ほどのビニール紐が床を這う。
2頭の熊が初詣に出かけ、どんぐりを賽銭箱に入れ、ちゃんと二礼二拍手一礼をして願掛けをする。まだ冬なのだからと大掃除をしようとするなど、全体的にとぼけた味わい。近年、熊が山から下りてくるというニュースが増えたような気がするが、下手に街に現れるんじゃないよと思わずにはいられなかった。

あくびがうつるは劇場創造アカデミーで出会った男女5人で結成され、昨年の7月に旗揚げ公演。
背景部分には黒い幕が垂らされ、奥に鏡餅。
これまた一風変わった作品で、序盤はオーバーオールにキャップを被った清水さんとシャツにジーパン、帽子を被った三谷さんが登場し、台詞にならない発話をして何やらやりとりをしている。その後、奥からテーブルを持ってきて、コンロを設置。
そこへ薄田さんがリュックを背負ったまま一輪車に乗って登場。しかもくるくる回りながらギターまで弾いてしてしまう。後で知ったけど、全日本一輪車競技大会団体三連覇を成し遂げた方なんだとか。佐久間麻由さんと共演してほしい。

てっきりノンバーバルの演目なのかと思っていると、清水さんと三谷さんが突然喋り出し(ノッポさんか!)、吉祥寺にあるクレヨンハウスの「ケーキおばさん」の話を始める。そこから食事の時に「いただきます」を言うようになった熊倉功夫さんの説などの蘊蓄を披露しつつ、三谷さんがギターで「MOON RIVER」を奏でながら清水さんが料理を始める。やがて三谷さんが日本語歌詞で歌い始めると、清水さんに代わって薄田さんが料理を仕上げにかかる。
料理が出来上がり、背景には食事をしている人々の映像が映し出される中、食事をする清水さんと三谷さん。
演劇というよりはパフォーマンスに近い感じもあるが、今回鑑賞した6団体の中ではいちばん好きかも。いずれの団体もまた次が観たくなるものばかりで、王子小劇場の選球眼にも感心しきり。

上演時間1時間29分(しぶしら23分、転換5分、山口綾子の居る砦33分、転換3分、あくびがうつる25分)。