王子小劇場ショーケース『見本市2024〜しばいぞめ〜』【Aチーム】 | 新・法水堂

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王子小劇場ショーケース

『見本市2024〜しばいぞめ〜』



2024年1月5日(金)〜9日(火)
王子小劇場

舞台監督:水澤桃花(箱馬研究所)
舞台監督補佐・宣伝美術:内田倭史
音響:イサカトモフミ
照明:黒太剛亮(黒猿)
照明補佐:中村仁(黒猿)
企画担当:葛生大雅、山本真生
企画アドバイザー:平井寛人
当日運営:井上瑠菜、笠浦静花
撮影:渡邉結衣

ふわふラプニカ
『出血大サービス‼︎天使の羽根もぎもぎ放題〜ただいまセール中〜』

作・演出:おさべせりな
制作:岩瀬優
宣伝イラスト:おさべせりな
宣伝デザイン・小道具:野間晟樹

出演:
おさべせりな(木津根翼)
しょげ(綿貫まりあ)
岩瀬優(狩屋優人)

STORY
自分の性嗜好を肯定できない木津根翼(きづねたすく)は、その苦しみを作品にすることで満足と葛藤を覚えていた。幸か不幸か、同じ性的嗜好を持つ後輩綿貫まりあと出会い、2人は自分たちの生まれ持った性嗜好と向き合うことになる。多様性が認められつつある現代社会でも、誰かを傷つけることでしか得られない幸せは肯定されるべきなのか。傷ついているのは他者か自分か。生きやすい社会の裏に生きる、生きにくい人々のお話。【「王子小劇場のnote」より】

ちょっとはいしゃく
『ダイエッター』
古城十忍「肉体改造クラブ―女子高生版―」より

作:古城十忍 演出:虻蜂トラヲ
演出補佐:中村乃愛
美術:本田萌子 制作:脇谷有香

出演:
岡本真奈(セリナ)
和田宙稀(弟・ミツル/セリナの友人)
高山五月(父/セリナの友人)
佐瀬恭代(母/セリナの友人)

STORY
高校生のセリナは容姿端麗で人気者。実は、その姿は過酷なダイエットの末に手に入れたものであった。自分のコンプレックスを直すことで全てが手に入ると思っていた彼女の前に3年前の自分が現れる。【「王子小劇場のnote」より】

三転倒立
『(なみだ)』

作・演出:狩野瑞樹
美術:板谷有紀子 演出助手:森山千代
宣伝美術:竹内日菜乃 制作:安藤保佳

出演:
竹内日菜乃(ゆう)
星和也(わだ)
森山千代(品川)

STORY
最近泣いていないことに気づいたゆう。思い起こせば去年のクリスマスから泣いていなかったが、なぜ泣いていたのかが思い出せない。ゆうは友人のわだや品川とともに記憶を辿っていく。

結成間もない団体が3組ずつ、30分の短篇を上演する王子小劇場ショーケース、まずはAチームから。
ちなみに全部お初の団体。

最初はおさべせりなさんの創作ユニット・ふわふラプニカ。劇場は入口側に舞台が設置され、奥に客席といういつもとは逆のパターン。
のっけから加虐趣味、被虐趣味という性的嗜好(劇中でも使われていた性癖は本来の意味とは違う)を扱った作品をぶちこんでくるとは。
翼とまりあがホテルに行くシーンでは、上階にある調光室の窓にカーテンを敷き、シルエットで2人が殴り殴られをしている様子を描くという演出もあり(「アヴェ・マリア」が流れるのにはちょっと笑ってしまったが)。
かと思ったら、暗転後、客席最前列で居眠りをしていた女性が隣りに座っていた恋人に起こされ、それまで観ていたのが女性が書いた劇中劇だったことが判明する。2人は劇中劇をなぞるようにホテルに行くのだが、確かに「芝居と現実は別」とは言え、こういう作品を作っているとそういう趣味があるのかと思われがちではあるよな……。

続いてちょっとはいしゃく。
主宰の虻蜂トラヲさんが2021年に旗揚げした団体で、古今東西の名作戯曲を上演しているとのこと。
舞台はそのまま使うのかと思ったら、平台と箱馬は男女のスタッフによって撤収され、テーブルと椅子が運び込まれる。テーブルの前にはゴミ袋を被されたマネキン人形が一体。この場面転換の見事なことにも感心。
前半はセリナと友人たち3人とのシーン。その後、セリナの家に場面が移り、17歳の誕生日を迎えたセリナのために母親は夕食を準備し、父親はバラの花束を贈り、弟がケーキを買ってくる。ダイエットに成功し、一見幸せそうな日々を送るセリナだが、それが拒食…じゃない、虚飾に満ちたものであることは当の本人がいちばん分かっていることなのだろう。
セリナがケーキを手づかみで貪り食ったり、テーブルの天板を引きちぎって食べたりするシーンが印象的。

最後は2022年4月旗揚げの三転倒立。森山千代さんと竹内日菜乃さんが共同主宰を務め、桜美林大学出身者中心に結成されたとのこと。
舞台には長椅子が1つ。男女3人が座っているところからスタート。主人公のゆうがいつから泣けなくなったのかと疑問に持ち、泣いていた記憶がある昨年のクリスマスに何があったのかを探っていく。
ゆうが「幸せとは星が降る夜と〜」と歌い出すと、わだが「ゆうはback number歌わないよ」と返したり、わだが泣いているゆうを抱きしめた場面に私がいたら…と品川が想像の話を始めたり、3人のやりとりがなかなか面白かった。

上演時間1時間33分(ふわふラプニカ25分、転換4分、ちょっとはいしゃく31分、転換5分、三転倒立28分)。