オフィスコットーネプロデュース『赤色エレジー』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

オフィスコットーネプロデュース
『赤色エレジー』


2011年10月8日(土)~12日(水)
ザ・スズナリ

原作:林静一『赤色エレジー』(朝日新聞出版)
脚本・構成・演出:天野天街
音楽:あがた森魚 プロデューサー:綿貫凜
美術:田岡一遠 映像:浜島将裕 照明:阿部康子
音響:岩野直人(ステージオフィス)
振付:石丸だいこ 舞台監督:伊東龍彦
美術製作:小森祐美加、一色矢映子
衣裳:ワダユキコ&スミレ団
演出助手:石田恭子 制作助手:加藤亜依
宣伝美術:アマノテンガイ

出演:
緒川たまき(幸子)
寺十吾(一郎)
石丸だいこ(サチコ)
あがた森魚(イチロウ)

演奏者:青木菜穂子(Pf.)、東谷健司(C.B.)、佐々木純一(Vn.)、早川純(Bandoneon)

STORY
昭和40年代後半。漫画家を目指す駆け出しのアニメーター・一郎はトレーサーの幸子と同棲生活を送っている。貧しいながらも一郎を献身的に支える幸子だったが、いつしか2人の歯車が狂い始め、やがて終焉を迎える。

林静一さんが「月刊ガロ」に連載した同名漫画を少年王者舘の天野天街さんが舞台化。漫画にインスパイアされて同名の楽曲をヒットさせたあがた森魚さんが音楽を務め、自ら出演。

出演者は4人いるが、ほとんどが一郎と幸子の2人芝居。KUDAN Project『真夜中の弥次さん喜多さん』が男同士だったのに対し、本作は男女になっているだけで基本的にやっていることは変わらない。
そこが路上なのか部屋の中なのか、酒のカップは1つなのか7つなのか。テーブルはひっくり返っているのかいないのか。一郎と幸子、どちらかが妄想を膨らませているのか、それとも両者ともなのか。
『弥次喜多』と違うのは、あの2人にはお伊勢参りという目標があって多少は動きがあったが、一郎と幸子はどこにも行き場がなく、どうにもならない閉塞感が漂う。

どんな原作でも天街ワールドに染めてしまう天野天街さんの演出はもはや何の説明も必要ないが、そんな中でひょっこり現れてギターを奏でながら歌い上げていくあがた森魚さんの泰然自若とした様はさすがの存在感。
個人的にはドラマ『ウェルかめ』や映画『マイ・バック・ページ』など俳優としての活動の方が馴染みがあるが、フォークソングやタンゴの歌い手としてのあがた森魚さんにも俄然興味が沸いてきた。

緒川たまきさんも天街ワールドとの親和性が高く、ちょっとオツムが弱く一途な幸子を好演。長い手足を活かしての「ひゅ~ストン」が可愛いかった。