特に重要な「資産」の消滅の認識について。消滅の認識とは、つまりどのタイミングで「貸方資産」としての仕訳をきるかということ。
金融資産が消滅したと認識されるのは次の3つのパターン

?金融資産の契約上の権利を行使したとき
?権利を喪失したとき
?権利に対する支配が他に移転したとき

?は例えば貸付金を回収したような場合。この時は貸方で貸付金が消滅する。
?は例えば新株予約権が失効したような場合。新株予約権は取得時に有価証券として資産計上している(売買目的、またはその他有価証券)。これを行使せずに失効した場合、当然貸方で消滅し、取得価額を当期の損失とする。
?は『譲渡』のケース。これは特に重要。まず「支配」とはなにか。概念フレームワークでは、資産を「過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源」としている。ここでも「支配」と表現されているが、これは「所有」ではないということ。
所有権が自らに帰属せずとも、そこから生ずる利益を支配しているのならば、これを資産計上することは適切であると会計上は考えられている。
「経済的資源」とは将来キャッシュ・フローの源泉を意味するが、これを支配しつつも法的な所有権を有しない場合もある。現にリースは取得時に資産計上されるが、この所有権は(取得時には)有していない。
譲渡とは所有権の移転だが、会計上の認識では法的な所有ではなく、実質的な支配の移転で判断される。

それでは金融資産の「支配が移転した」と判断されるのはどのような場合だろうか。
金融資産の支配の移転を認識するには次の3つの要件を全て満たしている必要がある。

(1)譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人およびその債権者から法的に保全されていること(倒産隔離・法的保全
(2)譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接または間接に通常の方法で享受できること(利益享受
(3)譲渡人が譲渡した金融資を当該金融資産の満期日前に買戻す権利および義務を実質的に有していないこと(買戻特約


(1)支配の移転の必要条件のうちひとつめ、「倒産隔離・法的保全」について。当社が譲渡した金融資産は、当社および当社の債権者から法的に保全されていなければならない。譲渡した金融資産は、当社の倒産リスクから確実に引き離されている必要がある。
当社がある金融資産を譲渡したが、このときの契約に、「当社が倒産した場合、譲渡した金融資産に対して当社の取引銀行が強制執行できる」もしくは、「当社が倒産した場合、譲渡した金融資産を当社が買戻す」などといった内容が付されているのであれば、例え法的に所有権が移転していようとも、支配が移転しているとは認められない。重要なのは、この金融資産が譲渡人(当社)から法的に切り放されているかどうか。
また(3)の買戻特約。譲渡契約の内容に、「譲渡人が買戻すことが出来る」ことが書かれている場合。この特約を使用されれば譲受人は、再び譲渡人に金融資産を引き渡さなければならない(決済はするものの)。これは譲渡した資産が法的に保全されているとは言えない。つまり買戻特約がある譲渡契約の対象資産は、必然的に法的保全の要件を満たさないということ。(3)を満たせなければ当然に(1)も満たせない。

ただし買戻権について、これが譲渡契約の内容に付されているにも関わらず、支配の移転として例外的に認められるケースもある。買戻価格が買戻時の時価であるとき、である。例えば譲渡された金融資産が有価証券だとする。譲受人は有価証券を譲渡人から取得して、その後譲渡人が買戻権を行使した。しかしこのときの決済が時価で行われるのなら、当該金融資産に係る時価変動の損益は100%譲受人に帰属するため、譲受人はこの取得時に資産計上が可能であるし、反対に譲渡人は譲渡時に金融資産の消滅として認識できる。また、買戻時の時価であっても譲受人が継続的にその金融資産を欲するのであれば、買戻された時価を用いて同一の有価証券を購入すればよいと判断される(このため、譲渡金融資産は市場でいつでも取得できる、という条件は要するが)。

(2)利益享受とは、譲渡金融資産から生じる将来CFを譲受人が実質的に享受できるという要件。ごく当たり前のことだが、所有が移転した金融資産は、そこから生じる将来キャッシュ・フローも移転させていなければ消滅を認識できないという話。さてここでも買戻権と、これに加えて譲渡制限といった論点が絡んでくる。金融資産に付される譲渡制限、例えば貸付金を譲受人が第三者に転売してはならない、といった条件。この譲渡制限があっても支配の移転は認められる。金融資産の譲渡とは、譲受人にノーリスクで将来キャッシュ・フローの源泉を引き渡すこと。これが保証されていれば譲渡制限の有無は問題とならない。ただし『実質的な譲渡制限となるような買戻条件の存在』は、譲受人の譲渡金融資産から生じる将来キャッシュ・フローの享受を何らかの形で阻むことになる。これがあっては支配の移転とは認められない。

(3)つづき
日本の概念フレームワークと海外(IASBやFASB)における概念書を比較してみると、財務報告の目的については「投資家への情報提供」として基本的に共通していることが分かる。

しかし海外は資産負債アプローチであり、日本は資産負債アプローチと収益費用アプローチのハイブリッド構造になっている。海外では資産負債アプローチである以上、利益は包括利益(貸借対照表の差額で求まる利益)でありストック情報を最も重視されている。対して日本では純利益が重要視されている。損益計算書の最後の数字で持って日本では利益を求めている。このように、日本と海外の財務報告は、目的は同じくしても手段が異なっている状況である。これはASBJが概念フレームワークを作成する際に、「日本の独自性を重視」した結果と見ることができる。

それでは、なぜ日本では包括利益ではなく純利益が重視されるのだろうか。
理由の一つとして、日本では『純利益が意思決定にとって有用なものとして支持されている』からである。財務報告が投資家への情報提供である以上、投資家に取って最も有用な記載の方式が採られるのは自然なことであると考えられる。

「投資家の意思決定に有用な情報が純利益である」とする根拠は、現在株価が純利益と連動していることから分かる。例えば会計ビッグバン以前の時代、有価証券報告書では個別財務諸表が連結財務諸表よりも重要視されていた(実際、有報での記載順序は個別、連結の順であったらしい)。この時代の株価は単体の利益に連動していた(現在では連結の利益と株価が連動している)。財務報告の目的が「投資家への情報提供」である以上、投資家が何を(どの情報を)見ているのかに基づいて、財務報告の形式も自ずと規定される。現在では、「代替的な情報には純利益を超える価値が確認されていない」とのことである。代替的な情報とは包括利益を指しているものだが、現在の日本では、「包括利益は純利益ほどに株価との連動関係がない」と実証されている。しかし概念フレームワークでは、純利益よりも有用な情報の存在が明らかになれば(包括利益が純利益以上に株価と結びつく時代が来るのならば)、その情報を重視する(=PLの末尾は包括利益にすべきである)との立場も含意している。このように概念フレームワークは、現行の基準を強制的に変更することはなく、また将来の基準に対しても柔軟性があることがわかる。
金融資産・負債の発生の認識

金融資産の発生の認識、つまりどのタイミングで借方資産という仕訳をきるのかという問題。あるいは金融負債については、貸方負債という仕訳をいつきるのか。

これは「商品売買または役務の提供の対価に係る金銭債券債務」の場合(つまり売掛金や買掛金)と、「金融資産または金融負債自体を対象とする取引」(つまり有価証券)に大きく分けて考える。つまりこのふたつの性質ごとに発生の認識のタイミングが異なるということでもある。

前者(売掛金等)のケースは受渡日基準
後者(有価証券)のケースは約定日基準。または修正受渡日基準。

有価証券であれば、契約した瞬間から時価変動リスクや相手方の財政状態に基づく信用リスクが移転する。よってこの段階で(双方が未履行の段階で)取得を認識できる。(借)有価証券 (貸)未払金 
未だ株式は取得しておらず、また代金決済も済んでいなくとも、契約後の変動リスクは全て自らに帰属する。ただし貸付金の取得については受渡日基準。これは企業法で見たように、金銭消費貸借契約は要物契約であるため、資金の引渡しなくして法的に契約は成立しない(契約日であっても)。もちろん契約時から移転するリスクは存在するが、金銭の貸し借りについては法的形式を重視した会計基準となっている。

次に前者、商品売買やサービスの対価に係る金銭債権債務の発生の認識について。これは概念フレームワークで学習したように、財務諸表の構成要素の認識の契機は、構成要素の定義を満たすことだけではなく、契約の少なくとも一方の履行(=商品の引渡)や蓋然性(一定程度の発生可能性)を求めている。契約時点で売掛金を計上することはできず、契約後に商品を引き渡した時点で財務諸表の構成要素として計上できる。もちろん双方の履行を求められるなら売掛金などは計上できないことになるが。
これは貸付金に対しても同様で、契約時に貸付金は計上できない。また双方の履行(資金の引渡とその返済)の段階ではそもそも貸付金を計上するには遅すぎる。一方の履行、資金の引渡の時点で貸付金という資産の発生を認識できるのである。

このように、双方が未履行の段階で計上できる有価証券は例外的な扱い(約定日基準)である。ただし、BSよりもPLを重視する収益費用アプローチ的な処理として、修正受渡日基準がある。これは契約日に取得することになった有価証券(例えばトレーディング目的)を、受渡日までは資産計上せず、その時価変動のみを損益として計上する方法。ただしこちらは容認規定であり、あくまで有価証券の発生の認識における原則は約定日基準である。