金融資産をどのような視点から見て、その支配の移転を判断するのかはリスク経済価値アプローチ財務構成要素アプローチの二通りの考え方がある。ちなみに日本の現行では財務構成要素アプローチによっているが、海外ではややリスク経済価値アプローチに基づいている。

リスク経済価値アプローチは全部アプローチ、財務構成要をアプローチは部分アプローチとも言われる。

・リスク経済価値アプローチ
こちらはオールオアナアッシングな考え方。金融資産のリスクと経済価値のほとんどすべてが田に移転した場合に当該金融資産の消滅を認識する方法。しかし経済が高度化し、「証券化」という手法が増えるにつれて、リスク経済価値アプローチでは実態を正しく表せなくなる


・財務構成要素アプローチ
金融資産の構成要素の一部を譲渡し、一部を手元に残す。こうしたケースでは構成要素ごとに支配の移転を判断し計上することでより正確な情報を把握できる。会計記録上、移転した構成要素は消滅を認識し、留保される構成要素はその存続を認識する。
金融資産の財務構成要素とは、例えば将来CF、回収サービス権、信用リスクなどがある。こうした要素をひとつひとつ支配の移転の要件に当てはめて判断していくことは、「法的形式に着目」した判断が求められる。

・リスク経済価値アプローチ
これに対して、リスク経済価値アプローチは「経済的実質に着目」した判断である。金融資産のリスクと経済価値がどの程度移転したときにオフバランス(帳簿上の消滅の認識)することができるのかという、実質的な判断が求められる。これは反面、恣意性の介入の余地を残しているとも言える。

・財務構成要素アプローチ
しかし財務構成要素アプローチでは、契約に基づく法的判断が求められる。すなわち客観的な基準に基づく金融資産の消滅の認識が可能となる。ただしこれは財務構成要素ごとに時価を見積もる必要があるため、会計処理はより複雑となる。

~財務構成要素アプローチが採用される理由~
証券市場や金融市場が成熟し、金融資産の証券化が発達した結果、債券は譲渡したものの、回収サービス業は引き受けるなど、1か0かでは考えにくい経済的な実態が表れるようになった。こうした場合、金融資産を構成要素に分解して正しく表示する必要があるものの、リスク経済価値アプローチによった場合、金融資産を部分的に消滅させ、または留保するような処理が行えない。こうした問題から現行制度上、財務構成要素アプローチが採用されている。

ということで、基準ではリスク経済価値アプローチではなく財務構成要素アプローチ。ただし例外的にリスク経済価値アプローチが適用される場合がある(ローンパーティシペーション
こちらの記事の書き直し。

金融資産の消滅の認識要件。つぎの3つのいずれかの消滅要件を満たした場合は消滅を認識しなければならない。

?権利行使:金融資産の契約上の権利を行使したとき。
例えば貸付金を回収した時には借方で現金預金を取得し、貸方で貸付金を消滅させる。

?権利喪失:金融資産の契約上の権利を喪失したとき。
新株予約権を保有していたものの権利行使期間が満了してしまった場合。このときは借方で新株予約権未行使損を認識し、貸方で新株予約権の消滅を認識する。

?支配の移転譲渡のケース):金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転したとき。今回はこれがメイン。
ここで「支配」という言葉が重要になる。概念フレームワークでは資産を「過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源」と定義している。ここでいう支配とは、必ずしも法的な所有権を意味しない。(支配≒所有権
資産の所有とは、所有権を支配しているということではなく、「そこから得られる将来CFを支配している」ということである。リースを資産計上するのは、所有権を取得したからではなく、将来CFを支配したからである。

つまり資産の譲渡とは、「ある資産から得られる将来CFが他に移転したこと」を指す。

~支配の移転の要件~
会計上、何をもって「支配が移転した」と判断されるのであろうか。これは次の3つの要件が全て満たされた場合である。

?譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が、譲渡人やその債権者から法的に保全されていること(倒産隔離・法的保全)
?譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接または間接に通常の方法で享受できること(利益享受)
?譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利および義務を実質てきに有していないこと(買戻特約)

それぞれ以下でもう少し詳しく説明。

?金融資産を譲渡した場合。譲受人はこの金融資産に対して、法的に保全されている必要がある。たとえば譲渡人が倒産した場合、譲渡人の債権者が当該金融資産に対して何らかの権利を持っている場合は(この金融資産は)「倒産隔離されていない」状態であって、法的に保全されているとは言えない。こうしたケースでは譲渡金融資産は(契約上どうあれ)実質的に譲受人のものとは言えない。譲受人のものでないということは、譲渡人はこれを引き渡していない、つまり消滅の認識はできないということである。

?利益享受。譲受人が譲渡金融資産から生ずる将来CFを支配していること。つまり譲渡人が支配していた将来CFが引き渡されたこと。これも消滅要件のひとつである。もちろんこれがなければ、その金融資産は譲受人にとって資産=将来CFではなく、譲渡人からすれば消滅ではない。
ここで「譲渡制限」について問題になることがある。売買目的として購入しようとした株式に譲渡制限が付されていれば、これは譲受人からすれば投資の目的である将来CFを支配しているとは言えない。しかし「譲渡制限が付されていてもなお将来CFの支配に影響がない」もある。例えば満期保有目的等の金銭債券。譲渡制限があるとはいえ、一概に利益享受できないとは判断されない。
もうひとつ、引き渡した直接の相手が利益享受できなくとも、その更に下の相手が利益享受できている場合はこの条件を満たしたものと判断される場合がある。これはSPVなど、債券の流動化を行う特別目的会社が、譲渡金融資産を細分化してその購入者に引き渡すようなケース。この時の利益享受の判定は、SPVではなくその先の購入者が利益享受できているかどうかである。

?買戻特約。現先取引は以前見たように、「買い現先=貸付金、売り現先=借入金」で処理される。現先は契約上は売買だが、経済的実態に基づき支配の移転として認められない。金融商品会計基準以前は現先取引であっても有価証券の売買として処理することもできていた。

次に極端な例として1000で有価証券を譲渡したが、時価が2000に上昇したので契約に基づき買戻した。このような場合、譲受人にとっての資産ではもちろんないし、譲渡人にとっても資産の消滅ではない。
このような状態は、?の条件である「法的に保全されている状態」も満たさない。同時に、譲受人は得られたはずの運用益を得られなくなるため、?の利益享受も満たさない。つまり?と?が設定されていれば、自然と買戻特約のある契約は弾かれるはずであるが、これは敢えて設けられた規定である。その目的はクロス取引を抑制するもの。

クロス取引とは期末の益出しに利用されていた取引。決算時に含み益を有するその他有価証券を売却し、直後(翌期)にこれを再び購入するもの。これによって純資産の増加とされていた評価差益がPLに計上される。翌期に時価で買戻すことで取得原価となる。売却に制限のあるその他有価証券であってもこうした極めて短期間であれば都合のつく場合もある。しかし買戻特約が金融資産の消滅の認識要件に組み込まれたことによって、これは支配の移転を満たさず、売却益は計上できないということになる。
会計情報の副次的な利用

11.ディスクロージャー制度において開示される会計情報は、企業関係者の間の私的契約等を通じた利害調整にも副次的に利用されている。また、会計情報は不特定多数を対象とするいくつかの関連諸法規や政府等の規制においても副次的に利用されている。その典型例は、配当制限(会社法)税務申告制度(税法)、金融規制(例えば自己資本比率規制、ソルベンシーマージン規制)などである。
12.会計基準の設定にあたり最も重視されるべきは、本章第2項に記述されている目的の達成である。しかし、会計情報の副次的な利用の事実は、会計基準の設定・改廃する際の制約となることがある。すなわち会計基準の設定・改廃を進める際には、それが公的規制や私的契約等を通じた利害調整に及ぼす影響も、同時に考慮の対象となる。そうした副次的な利用との関係も検討しながら、財務報告の目的の達成が図られる。


おおまかに言って、概念フレームワークが定義する以前の財務報告の目的は情報提供機能利害調整機能の二項対立として捉えられてきた。しかし概念フレームワークは、本章第2項によって、財務報告の目的は投資家の投資意思決定に資する情報提供であるとの立場を明らかにしている。しかし、副次的とされた利害調整機能も、基準の設定や改廃においては考慮される、とある。利害調整はサブの機能とは言え軽視できるものではない、といったスタンスだろうか。

財務報告は情報提供機能を果たすことを目的としており、利害調整は目的としていない。財務報告の目的は『投資家による企業成果の予測と企業価値の評価に役立つような、企業の財務状況(企業の投資のポジションとその成果)を開示すること』だからだ。しかし、そうはいっても目的から外れた利害調整機能も同時に果たしている。利害調整機能を担う法令は会社法、法人税法であり、財務報告の目的である情報提供機能を担う法令が金商法(と一部会社法)である。