4.経営者は本来、投資家の保守的なリスク評価によって企業価値が損なわれないよう、自分の持つ私的な企業情報を自発的に開示する誘因を有している。それゆえ、たとえ公的な規制がなくても、投資家に必要な情報はある程度まで自然に開示されるはずである。ただし、その場合でも、虚偽情報を排除するとともに情報の等質性を確保する最小限のルールは必要であり、それを当事者間の交渉(契約)にゆだねていたのではコストがかかりすぎることになる。それを社会的に削減するべき、標準的な契約を一般化して、会計基準が形成される。ディスクロージャー制度を支える社会規範としての役割が、会計基準に求められているのである。
5.会計基準が「最小限のルール(ミニマムスタンダード)」として有効に機能するか否かは、契約の標準化ないし画一化による便益がそれに伴うコストを上回っているか否かに依存する。そこでいうコストや便益は環境に依存して決まるため、その環境変化に応じて、会計基準のあり方も変わり得る。

4項の頭の部分は、経営者が情報開示のインセンティブを有していることを説明している。財務諸表を作成しなければ資金調達が出来ないからだ。ただし、この財務報告の虚偽情報は排除しなければならない。
次に「情報の等質性」とは、一定の記帳ルールーを設けなければ企業間の比較等が困難になってしまうことである。
ちなみに海外では「経営者は情報開示に後ろ向きである」との前提にたって、財務状況についての情報弱者である投資家保護の考え方によっている。

会計基準の有効性
財務報告を画一化するコストが、社会的な便益を上回るのであれば、これは有効に機能していると考えられる。ただしコストや便益の値は環境に依存するため、普遍的ではないとされている。
・部門別計算とは
実際原価計算では3ステップでコストを集計する。
?費目別計算:材料費、労務費、経費の実際発生額を計算し、これを直接費と間接費に区分する。
?部門別計算:上で分類されたコストのうち、製造間接費を受け入れ、製造部門費と補助部門費に分けて計算する。
?製品別計算:上で計算された部門費を製品に按分する。

ということで、今見ていくのは実際原価計算の2ステップ目。
原価を部門別に計算する目的は、製品原価を正確に計算すること、およびより合理的に原価管理を遂行することである。製品原価の正確な計算は、BSに幾らの金額で計上するのが適切なのかといった財務会計目的である。一方、合理的な原価管理は、部門ごとの効率性を把握するなど管理会計目的である。

これらをまとめて「原価部門」を定義すると以下のようになる。
原価部門とは、原価の発生を機能別、責任区分別に管理するとともに、製品原価の計算を正確にするために、原価要素を分類集計する計算組織上の区分をいう。

・原価部門の設定
原価部門を設定するにあたっては以下の4つに注意しなければならない。
?作業の性質と原価部門の一致
製品原価の正確な計算のため、原価部門を作業の性質(製造活動の種類)に合致させるようにする。一方で機械生産、他方で手作業による生産を行っている場合、それぞれの清算公邸を別々の部門として設定することがこれにあたる。
?職制上の権限・責任と原価部門の一致
原価部門が原価管理に有用であるために、原価部門をできるだけ権限・責任の区分と合致させる。
?原価計算目的と部門の設定
「原価計算目的」とは財務諸表作成なのか合理的な原価管理なのかといった違い。上の?は前者に、?は後者に有用であるが、いずれを重視するかによって原価部門の設定基準も異なってくる。
?計算の経済性
部門が細かいほど詳細で正確な原価データを入手できるが、細かすぎても計算の手間が大きい。コストパフォーマンスも考慮すべきである。

・原価部門の分類
原価部門は製造部門と補助部門に区分される。さらに製造部門は主経営部門、副経営部門に、補助部門は補助経営部門、工場管理部門に分けられる。

まず大きくは、製造作業が直接行われる製造部門と、製造作業を補助する補助部門に分けられる。
製造部門の中でも、会社の目的たる製品を製造する主経営部門と、副産物の加工や包装品の製造を行う副経営部門に分けられる。
補助部門は、その用役や製品を製造部門に提供する補助経営部門と、工場全体の管理業務等を行う工場管理部門とに分けられる。

以下のような例が挙げられる。

~製造部門~
・主経営部門:機械加工部、切削部、組立部、仕上部
・副経営部門:副産物加工部、包装品製造部

~補助部門~
・補助経営部門:修繕部、動力部、運搬部
・工場管理部門:材料部、企画部、工場事務部
財務諸表論で扱う「製造業会計」では、管理会計論を簡略化したような論点も見受けられるが、両者は多くの点で共通する処理が行われている。
勘定科目で言えば、材料仕入(材料費)、賃金(労務費)、製造経費(経費)などが主に使われている。また、管理会計における仕掛品勘定は、製造業会計では製造a/cとなっている。製品勘定はおそらく両者に共通するもの。
※括弧は管理会計でよく使われる勘定科目。

勘定科目の名称が問われることはないだろうが、ここでも重要なのは、(通年での)コストを計算すること(管理会計における完全工業簿記と異なり、商業簿記では主に年間の費用計算)。
また、製造原価報告書(Cost Report)が他のFSとどのように関連しているのかもしっかり把握したい。CRとBSの繋がりは、CRにおける「期末材料棚卸高」、「期末仕掛品棚卸高」である。CRは当期の製品製造にかかるコストを把握するためのものであり、末尾には「当期製品製造原価」が記載される。

この「当期製品製造原価」はそのままPLでも「当期製品製造原価」として記載される。PLではこれに期首分を加え、期末棚卸高を除いて製品売上原価を記載する。また、PLにおける「期末製品棚卸高」はBSの製品勘定を形成する。

ポイントは仕掛品勘定と製造勘定が対応していること。