製造業会計とは製造業において適用される簿記、つまり工業簿記である。
商業簿記が仕入と販売を記帳するのに対して、工業簿記は仕入と製造と販売を記帳する。大雑把に言えば工業簿記と製造業会計は同義である。

しかし管理会計で学習しているのは完全工業簿記であり、ここで見ていくのは不完全工業簿記(商的工業簿記)である。
両者の違いは原価計算精度を適用しているか否かにある。原価計算制度を適用しているものを完全工業簿記、原価計算制度を適用していないものを不完全工業簿記と呼ぶ。
具体的に「原価計算制度を適用している状態」とは、期中に継続的に原価の計算・記帳を行っている状態を言う(一般に月次単位、もしくは週単位での記録)。
反対に「原価計算制度を適用していない状態」、つまり不完全工業簿記とは、期中は一切記録せず、期末に一括して計算・記録を行っている製造業会計を指す。


各構成要素の基本的な処理

1.照合勘定
これは前の記事でも触れたが、照合勘定は本店を基準に確実に相殺するということ。本店の支店勘定が100円、支店の本店勘定が1ドルだったとしよう。これは債権債務が生じた時点では1ドル=100円のレートで、貸借が一致していたとしても、CRが1ドル=110円となっていては照合勘定が相殺できない場合がある。この為、支店側の(未達処理後の)照合勘定はすべて本店を基準として、単純に本店に一致させる処理を行う。

2.売上原価
原則としてはすべてを発生時の為替相場で換算することが求められる。
しかし実際は次のように換算することが多い。
・期首商品棚卸高=HR換算
・当期商品仕入高=AR換算
・期末商品棚卸高=HR換算

3.棚卸資産
上で述べたように、棚卸資産はHR換算する場合が多い。しかし収益性の低下に伴う簿価切り下げにより外貨建正味売却価額が付されている場合がある。正味売却価額、すなわち時価はもちろん期末時点のものだが、時価とHRではタイミングが一致しない。このため、棚卸資産を時価評価している場合にはCRを適用することがある(HRと原価(=取得時の価額)はタイミングが一致している)。

4.固定資産
・取得原価=HR
・減価償却累計額=HR
・原価償却費=HR
これはまあそのまま。DEPは取得原価を使用にともなって取り崩していく手続なので、ここにARやCRを適用する余地はない。



・在外支店の財務諸表項目の換算手順
まず絶対に抑えておきたいのが、最初にBSを換算して、次にPLを換算するという手順。在外支店の利益は、純利益ではなく包括利益によって求められる。BSの差額を当期純利益として、この数字をそのままPLの末尾に記載する。このときPLに生じた差額はすべて為替差損益として処理する。
在外支店が存在する場合でも合併財務諸表はあくまで邦貨建で作成する。
在外支店の財務諸表を円換算するタイミングは在外支店の後T/B作成後である。つまり在外支店では外貨建の後T/Bを作成した後、それを邦貨建の後T/Bにする作業が必要となる。

このとき問題となるのは、在外支店の財務諸表の構成要素、資産や収益などをどの時点での為替レートで換算するのかということ。これに尽きる。

原則としては本店と同様に処理することが理想ではある。7.1に取得した資産は7.1のレートで、12.31の取引で得た収益は12.31のレートで、売買目的有価証券であればCRで換算することが求められる。しかしこれは取引の数がある程度増えれば現実的な処理ではなくなってしまう。このため、収益費用、資産負債は次の3つの特例で処理することが認められている。

収益および費用の換算の特例
収益や費用の発生は、通常極端に偏ることなく期中を通じて平均的に分布していると考えられる。このため、収益と費用は期中平均相場(AR)で換算することが認められる。ただし収益性負債の収益価額および費用性試算の費用化額を除く。収益性負債とは前受金、前受収益などを言い、費用性試算とは棚卸資産、有形固定資産、前渡金、前払費用などを言う。

外貨表示財務諸表項目の換算の特例?
これは資産および負債のレートを(その取得字ではなく)決算時の為替相場(CR)で換算することを容認する特例。ただし照合勘定は除く。照合勘定は決算時に相殺して残高をゼロとする必要がある。このため、照合勘定は為替相場がどうあれ、常に本店の照合勘定と一致する金額として認識する。

・外貨表示財務諸表項目の換算の特例?
これは一つ目と同様、収益・費用の換算レートについて。一つ目はARを適用することを認めるものだが、こちらは決算時の為替相場(CR)で換算すること容認する特例。ただしこの特例を適用する為には上の特例?を適用している場合に限られる。これは上の特例?(資産負債のCR換算)を適用した場合に強制されるものではなく、資産負債がCR、収益費用がARといった組み合わせは可能である。