【追記あり!】←この文字色の部分です
エレファントカシマシ 35th ANNIVERSARY TOUR YES. I. DO
2023年3月12日(日) 横浜アリーナ
エレファントカシマシの 35周年アリーナツアー、2日目の横浜アリーナに行ってきた。エレカシ初のアリーナツアー。
まず一言、
トミのドラム、どかどかどおぉーーーん!
って、もうそれだけでいい、それも私の紛うこと無き感想であり気持ちなのだが、これは決して悪い意味でもマイナスな意味でもないのだが、かつて「エレカシ胎動記」の連載(※1)で書いてた時期のような、実験的というか、今度のエレカシはどんなだろう?と毎回ドキドキワクワクするような感覚は、もうないのだろうなと思ってしまったのもあった。
(※1…テーマ「エレファントカシマシ」のところに記事あります)
まず、「トミ(冨永義之)のドラム、どおぉーーーん!」についてだが、トミだけでなく、「成ちゃん(高緑成治)のベース、どぅ・どぅ・どぅ・どぅ」とか「石くん(石森敏行)のギター、きゅいん~じゃーんじゃか」とか、どれも素晴らしくというか、今までと同じようで違う、確かにパワーアップしたエレカシだった。
今回サポートに、キーボード・蔦谷好位置、ギター・ヒラマミキオ、金原千恵子ストリングスチームの 4人が入ることが事前に告知された。
「4人のエレファントカシマシ」が観たいという思いはありながら、蔦谷好位置とヒラマミキオを加えた「エレファントカシマシS」には思い入れがある。それは音うんぬんではなく、長い間ライブを観てきた編成だったし、「俺たちの明日」を前後に生まれ変わっていくエレカシを体験&体現してきた仲間という意識があったから。サポートについては誰が入るとかあまりこだわりのない≒音の違いがわからない私であるが、蔦谷好位置&ヒラマミキオにはぐっとくるものがある。そして、金原千恵子ストリングスはストリングスならおなじみで。
でも、それよりも大きいのは、昨年の野音を配信で見たときに感じた、「サポートが気にならなかったこと」がある。キーボードは細海魚で昔からの仲間ということもあったかも知れないが、サポートがいても「エレカシの 4人」というのが伝わってきた。だから、きっとサポートがいても「4人のエレファントカシマシ」が伝わってくるんだろうなと思った。
そしたらもう、「トミのドラム!成ちゃんのベース!石くんのギター!」だったのである。
この音に飢えてたのもあったかも知れない。2020年の新春ライブのとき、「私にはエレカシに飢えているという感覚がない。むしろエレカシで満たされている」と言い切ってみたが、やはり私はエレカシに飢えていたのだろうか。それとも宮本ソロ活動を経て、徐々に飢えていったのか。正直、先日『スッキリ』で 4人の姿を見たとき、姿を見ただけで涙が出そうになってしまって、これはいかん!と思ってしまったのだが、それほど私は飢えてたのか?やばくない? それじゃあ、ただの感傷じゃない? そうやって飢えさせるために宮本ソロがあったの?
いや、それは違う。いいや、もしかしたらそういう側面もあるかも知れない。が、そんな感傷があってもなくてもの「どおぉーーーん!」だったのだ。
音がでかい!
特に 1部。
私は途中、貧血か酸欠か倒れそうになった。それで、エピック時代のライブで、座ってじっと聴いていたというお客さんの話を思い出した。我慢するように、耐えるように、じっと動かず聴いていて、「俺は一体何を観に来てるんだろう?」と思ったと話してくれた人がいた。その人が、ある時期から宮本が「いえーい!」とか言うようになったことを「もう奴隷解放宣言ですよ!」って話してくれて(当然エレカシの「奴隷天国」にかけてる)、笑ったのを覚えてる。その話を思い出して、私は倒れそうになりながら「ああ、こういう感じだったのかな?」と思った。エピック時代の苦しみ(?)を体験できたというかなんというか。嬉しかったよ。
それをもっと観ていたいと思ったんだけど、2部からがらっと変わった。まぁ本当に倒れちゃったら困るからそれで良かったのかも知れないが、そこからはユニバーサルの曲が中心で。「みんなのエレカシ」になっていったというか。
蔦谷好位置やストリングスがいるんだから当然といえば当然なんだけど、もう音が出るか出ないかの時点で次なんの曲かわかってしまったりするんだよ。別にそれでも良いんだよ。そんなこと言ったら、1部だって「ええ?この曲?」っていうのはなかったし、なんていうか、緊張感が変わったのかな? もともと 4人でやった曲というのには独特な緊張感が宿っているのかも知れない。
もっと違う曲が聴きたいという思いもありつつ、でもこれはアニバーサリーライブだし、初のアリーナツアーではじめてエレカシを観る人だっているんだから、そしたら「あの曲」も「あの曲」もやらなきゃだもんね…とは思う。「みんなのエレカシ」で正解なのだ。それに、なんてったって全部名曲だし、贅沢なことを言ってるのもわかってる。
例えば、ポール・マッカートニーだってそうじゃん。来日公演、何度も行ってるけど、そんなにセットリスト変わらないじゃん。数曲変わったり、今までやったことないビートルズの曲とか増えたりするけど、それだって過去の曲ではあるし、「いま現在」のポールってわけじゃないじゃん。や、新曲も少しやるんだけどね。
でもさ、ポール・マッカートニーの場合、私がはじめてライブに行ったときからそうだったから、もうそれで良いのよ。それで毎回興奮するし。
でも、エレカシは違う。少なくとも私にとっては違う。
「エレカシ胎動記」で書いてきたような時期を観て来てしまったから、毎回毎回違う「いま現在」のエレカシを叩き付けてくるエレカシをリアルタイムで観て来てしまったから、だから、私にとってはエレファントカシマシとポール・マッカートニーは違う。
でも、これはポール・マッカートニーに教えられたことでもあるけど、ライブは「セットリスト」だけで決まるわけではないんだよ。同じようなセットリストであろうがなかろうが、感動するものは感動するし、しないものはしない。
それで言えば、私はこの日、エレファントカシマシの演奏に感動した。興奮した。
けどね、もっと他の曲も聴いてみたいって思ったのも正直な気持ちなんだ。
それは必ずしも「新曲」でなくても良いのかも知れない。
新曲新曲ってとらわれてたけど、エレカシには膨大な数の曲があるじゃんよ?
それを「今のエレカシ」がやったらと思うと、ドキドキワクワクしない?
もう昔のようにドキドキワクワクすることはないんだろうなって思っちゃったけど、それはマイナスな意味じゃない。
新しいドキドキワクワクへの一歩だ。
と、書いてはみたけれど、私の趣味が渋いだけなのかも知れない。私が聴きたいと思ってるような曲は少数派なのかも知れない。
けど、さっき「『みんなのエレカシ』で正解なのだ」って書いたけど、「みんなのエレカシ」って何が正解かわからなくない?
ただ、エレカシというか宮本浩次にとって、「エピック時代に売れなかった」ということは、想像以上にトラウマなのかも知れないなと思った。
ファンはエピック時代のコアな曲が聴きたい!とかって無責任に言えるけど、それはやっぱ想像以上にトラウマだったのかもって。
ひょっとしたらそれ以上に、EMI時代に『俺の道』『扉』ぐらいからお客さんが減っていったことの方がトラウマが大きくて深いのかも知れない。ああそんな!
それとこれは、初のアリーナツアー。初だよ初!
これはいよいよエレカシもやっと「人気バンド」の仲間入りをしたってことかも知れない。もちろん私にとってはずっと「スーパーバンド」だけど、何せアリーナツアーは初なのだ。
どういうことかというと、「ずっと観てきた人」と「はじめて観る人」との兼ね合いだ。「昔からのファン」と「新しいファン」との兼ね合いと言ってもいい。今までのエレカシはそんなことあまり気にしなくても良かったかも知れないが、これからはそうもいかない。今までもそういうターニングポイントはあったろうけど。
そこが見えてきたとき、また変わってくるのかも知れない。
しかし、宮本浩次の振り幅というか多面ぶりというかに、圧倒される。
これ、ほんの少し前に歌謡曲のカバーコンサートやってた人だよね?
でもやっぱ、同じなんだよな。同じなの!
ソロのことしか言わない人とか、エレカシのことしか言わない人とか、ずるく思えてくるくらい。