書斎それはたった一人の戦場
読了
嵐山光三郎【美妙 書斎は戦場なり】
中央公論社 2012年6月
うーん、筆圧強いノンフィクションです。嵐山さんの募る思いひしひし。
「ちくま日本文学」織田作之助、永井荷風という大正・昭和の作品を読ん
でみて、さらにさかのぼってみたくなっていたところで「美妙」のタイトル
大文字に嵐山さんの名前を発見。あぁ、次は是だっ!
即決の新刊でした。
言文一致の先鋒、明治軽薄体の作家、山田美妙。表紙タイトルバックの
写真は美妙の書斎。明治三十七年ですから、美妙三十七歳。養祖母が
亡くなった年。すでに世捨て人として、文壇から抹殺されたに等しいその
時代。
11年前、朝日新聞社刊「美妙 消えた。」の改題と大幅加筆によって再発
刊。今年の3月の復刊に際してのあとがきでは、山田美妙への思いのた
けを語られています。古希を迎えてのその達成感は伝わってきますね。
明治文壇たるや錚々たる作家が並ぶのですが、美妙斎の名前こそ知っ
ていても、山田美妙の作品は知りません。その程度の本好きですが、幼
馴染として登場する尾崎紅葉はさすがに既知。性格の異なる紅葉との交
友、出会い始めのころは舎弟のような関係でしたが、紅葉が美妙の才覚
を早々に見抜くことからにはじまって二人は志を共にするのです。
創作に明け暮れる文学青年達にあって、抜け駆けするかのように美妙は
自身の小説の売り込みに奔走。そして若くして自家用人力車に車夫を雇
い入れて乗り回す。医者や政治家、流行小説家がおかかえ車夫を雇う時
代に十九歳の若ぞうが自家用なんて (^▽^;)
あぶく銭でF40に乗るFXトレーダーの明治版とでも喩えられそう 笑
文壇同志との交友を絶ってしまってからの美妙の暮らしぶりは悲愴。
終盤は読む進めるに従って辛いストーリーへ。嫁姑の諍いに、逃げ場
のない文筆家の苦悩。(自宅が職場だから ... (´□`。))
気づいたキーアイテムは、“シュークリーム”。
艦船リンカーン号の物見遊山、紅葉に買わされる初めてのシュークリーム
「国民の友社」主筆、徳富蘇峰が付届け、シュークリーム
最後まで美妙を助けた石橋思案が病床の美妙を見舞うシュークリーム
思案の友愛が無かったら美妙はどんな末期を迎えることになったであろう
か。そう思うと溜め息が出ます。
この時代は、新聞小説が文芸エンタメの花形だったこともよくわかります。
紅葉の「金色夜叉」は人気が途切れず、途中からお話しがグダグダになる
というくだりがあって連載小説の大変さもわかりました 笑。
そしてまた、文明開化のその時代、小説家たちの交友関係や上下関係に
ついて学べるという一冊でもありました。
先出の尾崎紅葉に、正岡子規、夏目漱石、そして須藤南翠、饗庭篁村、
坪内逍遥、森鴎外、国木田独歩、与謝野鉄幹、晶子、そして樋口一葉に、
そしてそして稲舟。。。
「書斎は戦場なり」。真にもって的を射たタイトルでした。
嵐山光三郎さんの情熱、ひしと伝わります。
たくさんの方たちに読んでいただきたい、お奨めの一冊、是非。
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昨年だかに読んだ佐宮さんの「さわり」。
琵琶演奏家「鶴田錦史」の半生も感動しましたが、
さらに増して楽しめました。
史実を元に演出されている情景描写や会話のそれは
読み手をあきさせないストーリィテーラーの本望発揮というところ。
ちなみに先出の佐宮さんは、
十数年かけてノンフィクション小説として男装の麗人、
鶴田さんを生き様を綴った記者でしたが、
嵐山さんは三十年来の思いをこの本で果たしています。
特に解説はありませんが、美妙は
嵐山さんと非常に近い作家であることがわかります。
きっと親近感もお持ちだったんでしょうね、そう思いました (^O^)/
「あなたのテレビ」
二万件超えていました (^O^)/
超えたところで何もないのですけれど (^▽^;)
世界中からアクセスあることが未だに不思議な感じはします。
10年前には考えられなかった個人情報の公開と共有の場。
様々な物議もかもしますが、
いまやYouTube動画でテレビ番組が
成り立ってしまうことを考えるとその威力たるや
大したもんです。メディア優位性逆転の図。
YouTubeは“あなたのテレビ”。
Tubeはブラウン管なわけで、液晶ディスプレイの時代と
なってはそれもまた、懐かしいヒビキではありですね。
さて、先の二万アクセスですが、
そのほぼ1/4は、この演奏動画のアクセスとなっております。
Black Magic Woman/Acoustic Guitar.
すでに30年ほど昔の楽曲なのですが。
サンタナのこの曲は
世界中にファンがいるんだなーと
思わざるをえません。
私小説は何に向かって襲いかかるか。
読了
西村賢太【苦役列車】
新潮文庫 2012年4月
この作品で芥川賞を受賞されて、メディア露出も多かった西村さん。
あまりテレビを見ないわたしが見ているのですから、けっこうお忙しい
昨年だったことでしょう。そんなことで読んでみました。
受賞作「苦役列車」と、その後調で語られる「落ちぶれて袖に涙のふり
かかる」の二作品。「苦役列車」は、社会性に乏しい青年が日当数千円
の日雇い労働で、日々の暮しを消費していく私小説。
「落ちぶれて~」は、肉体労働で腰を痛め一人暮らしで悶絶する日々に
作家を目指してく彼にとっての日常。
帯には「私小説の逆襲」の文字。私小説が文芸たるか?という気持ちが
湧かないこともないですが、その一生涯なり半生なりが、エンタメと評さ
れるのならば、問題はないことでしょうね。
うーん、でも全編漂う独身男の生活臭に、女性は耐え切れないかも(笑)
"他と違う”ことが個性なのだとすれば、自身の境遇と生き様を綴ったこの
小説は“個性的”ということでしょう。話しの中身は別にして、西村さんの
文章は、わたしは嫌いではありませんでした。(わざわざ難しい言葉を持
ってくる感はありますが、それも嫌味とまでは受け取りませんでした)
解説は東京都知事。いえ、選考委員の立場で小説家として、評されてい
ます。選ばれただけになかなかの好評です (^-^)/
鬼の現れた夜
読了
赤江 瀑 【 鬼 会 】
講談社 1989年12月
昭和52~57年初出の短篇秀作7作品。どのお話しも、エンディングに
独特のエアー感があってイイです。お好みでしょうから、納得しない方も
いらっしゃるかもしれませんが。
もっとちゃんとお話しを終わらせろー、みたいな。
先月お亡くなりになった赤江さんは79歳でした。懐かしかった、です。
表紙は、この時代、この手の文庫にはめずらしい写真。
それもジュサブローさんの人形。本編のキャラクターにつながりを発見で
きず。(みんなもっと若い女性ばかりだし) 水商売の女性でしょうね。どん
なコンセプトだったのか知りたいものです。戦後の風情残る、昭和の中庸
をイメージできる彼女は、うら悲しい表情。
よく見るとですね、片方の目からは涙が一筋。
ジュサブローさんもたぶん、赤江さんと同じ世代の昭和一ケタ生まれだ
と思います。ジュサブローさんといえば私は、NHKの人形劇「新八犬伝」
ものすごい数の個性的な人形たちが登場して、馬琴のストーリーも面白
いながら、人形たちの個性に大いに惹かれました。縁あって、千葉県人と
なりまして、鎌ヶ谷に越した当初から、いづれは八犬伝のお話しを辿る房
総めぐりをしてみたいと思っているわけです。やっぱりもっと先になっちゃ
うのかなぁ (^▽^;) マー,イイケドネ
自分にとっては皆川博子、赤江瀑の両氏は青春時代の思い出でありまし
た。中学の卒業前の冬から春の頃でしたか、同じ町内の同級生の実兄が
読書家で、遊びに行くと気になるタイトル(笑)に勝手に手を伸ばしては、
こそこそ読んでいたものです。そこの本棚、・・・というより部屋からはみ出
して廊下に平積みされていたハードカバーの山で、わたしは赤江さんや皆
川さんたちとはじめて出会うわけなんです。
九州の端っこから東京へ生活の場が変わってまもなく、その同級生の兄
さんが死んだ(自死)ことを母親から伝え知ることになるのですけれど。
私たちよりも4つ、5つ歳嵩でしたが、とっても大人びているように思ったも
のです。だから、ことさらに印象深いのです。
そんな時代へトリップしました。
1989年の初版本なので、ホンモンの小口は黄ばんで表紙も退色もしてい
るようです。30有余年前に文字組みされ、製版され、印刷され、製本された
文庫本がこうやって私の手元で開かれて、そのお話しを楽しんでいる、とい
う図式を思うと、感慨深くもなってしまう、しゃんはいさんでひたー (^∇^)
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続けて読んでいる本が、嵐山光三郎さんの山田美妙の伝記。
曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」のことが幾たび出てきますねー。
ジュサブローさんの人形たちと、つながる、つながるー(笑)
荷風が市川に暮らした理由
読了
ちくま日本文学 【永井荷風】
松の木のある風景に江戸の情緒を感ずる、というクダリがあって、
荷風が晩年、市川市の菅野に暮らしたことと、つながりを感じました。
黒松の多い景色なんです、市川は。
昨日は、その菅野の町を通り抜けて勤め先に行きました。
もちろん松の木も、黒塀の旧家も残っています。
土曜日出勤も、都合3週にわたると、休んだ気がしないです (´□`。) アー
二十代に暮らした海外の想い出話しと、愛する東京の風景を拾い集める日々を
綴った日記がメイン。高等師範学校に学びながら18歳にして吉原へ通い、卒業
後に落語家の門下に入るかと思えば、新聞社へ勤めて連載の小説を書き始め、
夜学でフランス語を学び、渡米するはミシガンの学校へ通い、中途のままに(父
親の配慮で)横浜正金銀行のニューヨーク支店に勤める。
28歳にしてリヨン支店に移るのは、フランスへの憧れがあって、そんなことが実
現するのも父親のおかげなのです。解雇、辞職のあたりから察すると仕事熱心
ではなかったのだろうと思います。
日々散策。特に日没を伴った人々の暮らし、風景にとても感慨を深くしています。
暮らしには交友関係も女性を含めてそんなに地味でも無いのですが、やはり一
人散策することを楽しみにフラフラ出歩いているんです。帰国前に泣くんですね。
30手前のオトコが帰りたくないと(笑)
詳しくは帰国後に記した「ふらんす物語」。
名作「すみだ川」も帰国翌年の作品。主人公の幼なじみは芸子として離れていく。
墨田、江東、亀戸あたりの下町風情に織り交ぜたお話し。
大正元年結婚するも二年こらえず離婚。再婚するも翌年にはまた離婚。帰国後
は、小説家として認められ生活も成り立っていくわけですが、戦時中にあっては文
筆家としてのナリは、街中を一人ぶらつくには周りに警戒もされるし、そもそも危険
なわけです。荷風はわざわざ身なりを汚い、庭で土いじりをする時の格好に着替
えて散策。それでも予め警察の詰所のある場所は地図で確認して近づかない気
配りまでする念の入れよう。大正末期の下町、実体験にフィクション織り交ぜの
「墨東綺譚」で楽しめます (^O^)/
夫婦善哉
読了
ちくま日本文学 【織田作之助】
筑摩書房 2009年5月
昭和十五年から二十一年の作品、11話収録。それぞれ個性的な
ストーリなので、一冊十分楽しめました。テキストは、同社の現代日
本文学集などがオリジナル。
著者は昭和二十二年に34歳という若さで亡くなっています。
生きていらっしゃればオントシ100歳ぐらい。平成の時代にも生きて
いらしてもよかったはずで、もしもそうあったらどんなお話しを読ませ
てもらえたろうかと思います。残念。
現代作家が綴る場合と、こういったリアルな昭和の描写はやっぱり
異なるようだなぁという感想。読みたかった冒頭の夫婦善哉は3回
読み通しました。慣れるまでちょっとかかりましたが、入り込むと十分
はまります。「夫婦善哉」、「アド・バルーン」 いいですね。
私小説っぽい「世相」もイイ。「猿飛佐助」は、あれ?こんなお話しだ
ったっけ?というのが本音。違う作家のストーリーがインプットされて
いるのかも知れませんが、石川五右衛門との術合戦のクダリは、合
っている気がするのですけれど (^▽^;)
最後の「可能性の文学」はエッセイ。近代日本文学に対する手厳し
い意見が述べられています。海外のそれと比較して、日本文学は
伝統的な小説を定跡とし、可能性をまったく失していると。
(気づいたのでちょっと補足)
定跡(定石なら碁ですね)は、将棋の決まりきった一手を言うのです
が、これは冒頭で坂田三吉の話しから始まるところからつながって
います。天衣無縫の棋手として、それまでのやり方によらない、まっ
たく独自の差しかたをする彼の生き様にシンパシーを俄然、感じ入
ってらっしゃることがわかります。織田氏は、当時の日本の文壇の
坂田三吉でありたかったんだと思います。
戦中の表現の不自由、抑圧があって、戦後の復興の中で、どうして
も時代に阿る、権威へ傅く表現者たちに嫌気がさしている彼の気持
ちがヒシヒシと伝わってくる随筆でありまする (^-^)/
むかーし、むかーしあるところに。
読了
松本なお子【これから昔話を語る人へ】
昔ばなし研究所 2012年3月
副題は語り手入門。
「語り」をはじめたいビギナーへ向けたハウツー本。
松本さんは浜松市立図書館に三十年勤務されて、市内全域の図書館
を取りまとめられていた方。たくさんの語りの経験から、松本さんなりの
“あるべき語り”、その話法アプローチのあり方がまとめられています。
ストーリーテリングは語り聞かせ。活字を読みなぞる読み聞かせとは
ベツモノ。 うーん、こどもたちにとってはベツモノなのかな、やっぱり。
断定的な部分に、そうじゃなくてもという感想も。コワイロを変えて話し
てもいいのではないかと。感情移入して抑揚をつけて語りかけてもいい
んではないかと。そんな感想もありました。
経験を積むことで子供たちに合ったストーリーの選定、そして落としど
ころのノウハウは会得するしかないのでしょう。やはり、年齢によって
持ち合わせる感受性は変わっていくわけで、そんな失敗談もいくつか
紹介されていて、ためになりました。
鎌ヶ谷の図書館で定期的(?)に行われている「語り聞かせ」を聞か
せてもらいにいったことがあります。車椅子の語り部さんが登場したり、
オカリナをBGMに語りがあったり。千葉県下のむかしばなしなども聞く
ことができて楽しめました。けっこうなキャリアーと思われる女性の方
が、途中すっかりお話しがすっ飛んでしまうシーンなどにも出くわして
人ごとながら、むかしのステージ演奏のソレを思い出してしまうところ
もありました (^▽^;) ツライナー!
ギターは、歌うたいだけでなくて、「語り」を交えた弾き語り(この場合、
語り弾きかな)にも興味あります。 退職後になってしまうかなー 笑
今年も「東京国際ブックフェア」
毎年暑い盛りのブックフェア。
今年もやってきます。
※写真は、昨年のブログ。レポートまがいから 笑
当選しました受講券届いております、 読書推進セミナー。
ID付きメールが受講券。そのままプリントアウトして入場の算段。
今年の講演は、京極夏彦さん (^O^)/ワーイ!
講演タイトルは「世界の半分は書物の中にある」京極さんの声って
聞いたことがありません、それも楽しみ。今年は、7月7日の土曜日。
きっと、暑っいことでしょうが、東京ビッグサイトまで出かけます。
五人以上は数え切れない。
読了
真梨幸子【殺人鬼フジコの衝動】
徳間書店 2011年9月 10刷 初出2008年
トーブブックスで真梨さんの新刊をみつけて、このタイトルが原点!
的なメッセージにのせられて(笑)、あらためて古書ワゴンで手にしま
した。
シビれてください、という書評が印象的。口当たりの悪い灰汁の強い
「旨味」こそ真梨さんの作品と、まとめられています。
“痺れる”という言い回しがとっても意味シン。受容れられるかどうか
は、読んでみないと分からないでしょうけれど、気軽に試すには、ちょ
っと度胸のいるフジコちゃんの一生、と書き留めておきます。
それでも意外な登場人物がとっても重要なキャラだったことが最後の
最後でほのめかされるあたり、惹かれました。
新刊? んんと、とりあえす パス (^▽^;)







