モルヌピラビル
モルヌピラビル。新型コロナウイルスの経口投与薬として、メルク社が承認申請しており、国内でも報道されています。その効果が絶大、入院・死亡リスクが半減、緊急使用申請へ見出しでBBCニュースでも取り上げられていました。経口薬の開発は個人的にも待ち望んでいました。ただ、本薬剤。その作用メカニズムから、不安な点を感じていました。モルヌピラビルは致死性突然変異誘起(lethal mutagenesis)のメカニズムを利用しています。先行して使用が検討されていたアビガンと類似した作用機序で、SARS-CoV-2のRNA複製時に、RNA依存性RNAポリメラーゼを阻害するといったものです。ただです。最近の関連の論文を調べると、気になる記述が散見されます。例えばこの論文。Molnupiravir: coding for catastrophe - Nature Structural & Molecular BiologyMolnupiravir, a wide-spectrum antiviral that is currently in phase 2/3 clinical trials for the treatment of COVID-19, is proposed to inhibit viral replication by a mechanism known …www.nature.com本薬剤に関わる論文の末尾。However, it has been suggested that exposure to molnupiravir can be mutagenic to host DNA during host DNA replication.(Nat Struct Mol Biol 9月掲載)すなわち、モルプピラビルへの暴露はホストのDNA複製の際に、ホストDNAそのものにも突然変異を誘起することを示唆しているという文言です。また、この論文の場合。(J Biol Chem. 2021 Jul;297)Decoding molnupiravir-induced mutagenesis in SARS-CoV-2 - PubMedMolnupiravir, a prodrug of the nucleoside derivative β-D-N4-hydroxycytidine (NHC), is currently in clinical trials for COVID-19 therapy. However, the biochemical mechanisms involve…pubmed.ncbi.nlm.nih.govこのような文言があります。しかしながら本アプローチには固有の問題がある。NHC nucleoside derivative* はホストの細胞により代謝され(中略)ホスト細胞に取り込まれる。NHCによる突然変異誘発効果は、哺乳類培養細胞でも確認されており、このことは腫瘍形成、精幹細胞や胚発生における有害突然変異の危険性リスクを増大させる。(田岡訳)*NHC nucleoside derivative : N4−ヒドロキシシチジンヌクレオシド誘導体国内のモルヌピラビルの報道記事を見ると、「アビガン錠」で懸念された催奇形性の副作用は今のところ(モルヌピラビルでは)指摘されていない」と記述されています。今のところ、という表現も微妙ですが、これらの論文情報を顧みた時。承認申請が進む中、一方で最新の論文で危険性が指摘されている…この両輪は何を意味するのでしょうか。この培養細胞試験(in vitro)でのエビデンスが、治験や一般処方された際には(in vivでは)、発生しない確たる情報があればいいのですが。情報を切り取ってみる。それを見る時と、複数の情報を重ねた時の乖離を感じてしまう。心が騒がしくなりますよね。ある情報を見る。本当にそうなんだろうか。テレビの画面SNSの文言象徴的な写真それらを一対一で向き合う時、よく考えるべきではないかなあ。新型コロナの顛末は、コロナだけではない、何か新しい考え方・生き方を問うているのかもしれませんね。さて、お腹がすきました。今から飼育水槽の掃除をして、夕ご飯を食べに家族のもとに帰りましょうか。皆さん、良い夜を。