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九大昆虫班のブログ

九州大学生物研究部昆虫班です。班員が交代して更新します。

有田です。今更感ありますが9月に行った2回の遠征について書きます。

 

遠征① 9/19~21 宮崎県・熊本県 参加者:有田、野崎

折角九州で秋を過ごすのだからミーハー糞虫が採りたいな、と思い急遽遠征を企画しました。

 

メインターゲットはもちろんダイコクコガネ。一大産地であった阿蘇が採集禁止になってしまったためさらに九州道を南下していきます。

1日目は移動でつぶれ、2日目の朝に放牧地を探してさまよいます(具体的な牧場名まで聞いてしまうとつまらないのでノーヒントでの遠征です)。GPSがあまりあてにならなくて不安でしたが、ありがたいことに1軒目に行った牧場の方(放牧はされていませんでした)に事情を話すと、放牧されている牧場の場所を教えてくださいました。

 

その牧場へすぐに向かい、牧場主さんに事情を話すと、「ああニセカブト?消毒槽でいっぱい死んでるよ、あんなの欲しくてわざわざ福岡からくるなんてお兄さんたち変わってるね」と心強い言葉と採集許可をいただき、戦闘開始です!

ダイコクコガネは糞に集まって竪穴を掘り、その中に潜んでいます。探し方としては穴を掘る際に出た土(土盛り)を目印に、その量が多いほど深くまで潜っているのでなるべく小さな土盛りを探す、といったところでしょうか。

が、僕も野崎君もダイコク掘りは初めてで、土盛りなのか微妙な場所を掘って徒労に終わったり、坑道を当ててもロストしたり…の連続でしたが、どうにか何頭かは採集でき、念願の長角型のオスも2頭掘り当てられました!

 

 

その後、牧場主さんにお礼を言いにいったさいにお願いすると、電灯に来ていたという長角型の新鮮な死骸や牛糞といったものを(やや困惑気味に)お譲り下さるなど至れり尽くせりの対応をしていただきました。本当にうれしかったです。ありがとうございました。

 

牧場を後にした後はさらに南下してダイコクの追加をとる予定でしたが、いい放牧地が見つからなかったため、相談の結果熊本に行って九州ならではのとある糞虫を採集することに。

 

翌朝、牛糞を紙コップに詰めて埋めるという傍から見ると気がふれているとしか思えない行動をし、しばらく待ったのちに回収すると…

九州のごく限られた地域でしか見られないセンチコガネの個体群、通称”レインボーセンチ”が得られました。僕の写真の腕がしょうもないので「へえ、結構光沢強いな」くらいの感想しか持たれないかもしれませんが、実物を見ると感動します。ほんとに。

時間に余裕があり暇だったのでこの画像を班の下級生LINEに上げて盛大に自慢していると、「採りたいです」といった1年生がチラホラと…

 

というわけで、

遠征② 9/30,10/1 熊本県・宮崎県 参加者:有田、国田、佐藤、山本

夏に北海道やら与那国やらで採集して金がなかったので乗り気ではありませんでしたが後輩たちに頼まれたので性懲りもなく熊本へ。

レインボーセンチだけではあまりにもナンセンスだと感じたので、ソボコブでも探すか~、なんて思っていましたが、花粉症がひどく、トラップを仕掛けるだけで精一杯でした。ということで視点を変えてミヤマダイコクを狙ってみたのですが見事にスカ…

あ、みんな大好きレインボーセンチは採集できました。前回の遠征の後に先輩から「センチコガネは夕方に飛ぶ」と教えていただいたことを踏まえて丸1日仕掛けておいたのが功を奏したようです。なぜか誰も生態写真を撮っていなかったので後輩の標本写真を載せておきます。

 

最後に、ダイコク掘りについて。後で調べたところ、

・糞をひっくり返しても坑道が現れることがある

・ダイコクが掘った穴に草を挿しておくと見失わないで済む

といった知見が得られたので、来年以降の参考にしていきたいと思います。次は灯火でも狙ってみようと思います。

写真提供:野崎・国田

最後は集落での採集について書いていこうと思います。

他の虫屋さんからするとわざわざ集落で一つ設けるのは不思議かもしれませんが、集落にはハチが集まる花があったり、住居などに営巣するハチもいるため、一つの採集ポイントになります。

 

まずルリジガバチについて紹介します。日本産ルリジガバチはヤマトルリジガバチとベンガルルリジガバチがおり、ベンガルは琉球列島にのみ生息しています。昨年沖縄島に遠征した際はついぞ見つけることはできなかったので、今回は採集したいと思っていました。

 

林道にいたのはヤマトばかりだったので、またもや採集できずか――と落胆していましたが、なんと普通の集落の中で採集できました。

 

ベンガルルリジガバチ Chalybion bengalense

 

ヤマトに比べて色素薄子さんです。というか白を混ぜた感じ。検索表だけだと何を書いているかよくわからなかったのですが、現物を見るとまったく違うハチでした。

 

また同じ場所でミドリセイボウも採集しました。

 

ミドリセイボウ Praestochrysis lusca

 

ヤマトルリジガバチに寄生するとされるミドリセイボウですが、この場所にはベンガルしかいませんでした。状況証拠ですがミドリセイボウはどちらにも寄生できるのではないかと考えられます。

 

そして最後にヤツが……。

 

ヤエヤマキバラハキリバチ Megachille (Amegachille) yaeyamaensis

 

いやお前海浜性ちゃうんかいな!!!

海岸からは程遠い集落周辺の畑の近くで採集しました。あれだけ海岸を探していなかったというのに……。まあ実のところ、以前キバラハキリバチの仲間を採集した場所から、一般に言われているほど良好な海岸がなくとも生息できるのではないかと個人的に考えているのですが。

 

ちなみに色々なところで言っていますが、本土のキバラやオキナワキバラとは別種ですので、あしからず。

 

以上で西表遠征についての記事は終了です。当初採集したかったハチはほぼおさえられたので非常に満足度が高かったのですが、同定をしていくうちに採り逃がした連中が多くてまた行きたくなっています。コオロギバチお前のことだぞ……。

西表にはいくつも有名な林道があります。西表といえば林道で採集という印象が強かった私ですが、実際に行ってみると、正直ハチ採集にはあまり向いていないような感じでした。特にどんどん林内に入っていくタイプの林道は難易度が高かったです(採集スキルは別として)。

 

 

実は今年、梅雨の時期に雨があまり降らないなど、西表は干ばつに見舞われていたらしく(現地のおっちゃんが教えてくれた)、虫の数がとにかく少なかったようです(初めての私にはわかりませんでしたが)。諸先輩方も「ここはもっと虫が採れるいい場所のはずなんだ」と嘆いていました。

 

とはいえ様々なハチを採りました。その一部をご紹介します。

 

タカオルリモンハナバチ Thyreus takaonis

 

最近ナミルリモンが話題ですが、実はいるところにはたくさんいるハチです。このタカオもそうで、初めは嬉しがって採集していたのですが、山ほど飛んでいるのを認識してからは採るのをやめました(笑)。

 

イシガキカバフドロバチ Pararrhynchium isigakiense

 

八重山にのみ生息するドロバチの一種です。本土で普通に見られるドロバチに比べ、なんというか――エッジの効いた斑紋をしておりかっこいいです。あまり数は多くなさそうで、一匹しか採集できませんでした。

 

クロイワジガバチモドキ Trypoxylon inornatum

 

ギングチバチ亜科の中でも、腹柄節が伸長するのが特徴的なハチです。この仲間はそこまで大きくない種類が多いのですが、本種は20mmくらいあって存在感があります。

ジガバチモドキの仲間は今回クロイワ・イシガキ・オキナワの三種採集しましたが、どれもぬかるんだ地面付近を飛び回っていました。これは泥を巣材にするため集めに来ているものと思われます。本州でも同じように湿った地面付近をスウィープすることで得られることが多いです。

 

コシブトスズバチ Pseudozumia indosinensis

 

私が本遠征でもっとも嬉しかったハチが本種です。そこそこ珍品らしく、それだけでも嬉しいのですが……。

 

 

まず全身黒色で顔面の一部にのみ黄色部があるのがお洒落です。また、画像から伝わりますでしょうか、この表面点刻の荒々しさ! 私、点刻にほれ込んだのは初めてです。気品が違いますよ。

 

有剣図鑑によると「生態は未知」だそう。本種を採集したのはかなり山の方だったことから、山奥の方に生息しているため観察例が少ないのではないかと考えています。