間 黒助です。
一般的には、
正常組織に存在する組織幹細胞の頻度は極めて低いのです。
例えば、
骨髄中の造血幹細胞では、
骨髄細胞10万個につき1個と見られています。
他の臓器に関しては造血幹細胞ほど詳しく分かってはいませんが、
その頻度は同様に低いと見られています。
では、
ガンの組織にはどの程度のガン幹細胞が含まれているのでしょうか。
白血病細胞ではガン幹細胞は稀な細胞であることが報告されています。
そして、
正常組織では幹細胞の頻度が極めて低いことから、
ガン組織におけるガン幹細胞の頻度も低くて当然という理解が一般的です。
そのため、
例えば、
ガン組織を作っている全ガン細胞のうち、
4個に1個がガン幹細胞であるというような報告がなされると、
そのような高い頻度で存在する細胞は、
ガン幹細胞ではありえないと評されることになるのです。
このようにガン幹細胞の頻度は低いという固定観念が広がっているので、
ガン幹細胞の数が少ないというこの理論から逸脱した内容の発表が行われると、
にわかには受け入れられないのです。
しかし本当にガン幹細胞は頻度の低い細胞なのでしょうか。
例えば、
様々な研究者が同じ(※)ガン細胞株を用い、
同じ表面抗原に対する抗体を用いて細胞を分画・回収し、
それを免疫不全マウスに移植しても、
ガンが発生する確率は研究者間で異なります。
なぜこのような矛盾が生じるのでしょうか。
※細胞株とは、
1個の細胞から有性生殖をせずに(遺伝子構成の変化なく)、
増殖した細胞の系統を維持・保存したもの。
それに対する明確な答えはありませんが、
1つの可能性は、
ガン組織とガン幹細胞の状態の違いです。
一般的な考え方としては、
ガン組織の中のガン幹細胞は1種類と考えられがちですが、
ガン幹細胞は、
同一患者の腫瘍組織においても複数存在している可能性があるのです。
そしてそのようなガン幹細胞は、
常に一定の割合で同じ生物活性を示すとは考えにくく、
接着能、運動能(浸潤・転移能)、
それに増殖能(自己複製能)がまちまちの可能性があります。
そのため、
研究者間でガン幹細胞の研究結果に不一致が見られるのではないかと考えられるのです。
こうした理由から現在、
ガン組織に含まれるガン幹細胞の頻度に関しては、
確固たる定説が存在しないのです。
現時点でガン幹細胞は、
ガンの種類、ガンの進行度、個体差、
腫瘍内の場所の違いなどによって、
かなりランダムな頻度で存在する細胞と考えた方が良さそうです。
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