「ルビー・スパークス」
エリア・カザンの孫娘ゾーイ・カザンが脚本を書き、
同時に主役のミステリアスな女性ゾーイを演じた
ファンタジー「ルビー・スパークス」。
この作品では、ゾーイ・カザンが生まれ育ったロサンゼルス(LA)の目映い陽光、
ヒッピー的自由さ、そして車社会のLAが醸し出す孤独さが作品の基盤を
形成している。
将来有望な作家としてそのデビュー作が高く評価されたカルヴィンは、
その評価故に第二作の執筆に難渋し、スランプ状態に陥っていた。
この時期のカルヴィンが小説の主人公として頭の中で作り上げた
理想の美しい女性ルビー。
逆光を背景にしたルビーはあくまでも美しく無垢な姿であった。
この作品の不思議さ、面白さはカルヴィンが小説の主人公として
創造したルビーが、誰にもその存在を認識できる生身の人間として
彼の前にそのままの姿であらわれること。そしてこの理想の女性ルビーに恋をした
カルヴィンは、創造と現実のはざまで様々な悩みを経験する。
エリオット・グールドがカルヴィンの心のケアをする髭面の精神科医として
登場したり、アネット・ベニングがヒッピー的生き方をしているカルヴィンの母として
登場したり、物語の面白さと共に、LAを代表する家屋.風景が素晴らしく、
そして間に挿入される音楽がヒップでクールな、ゾーイ・カザンが言うところの
「何があっても信じる」ことを実感させてくれる、2012年のジョナサン・デイトンと
バレリー・ファリス監督共同作品。
『リンカーン』
古くは、典型的なロンドン下町の労働者階級独特のアクセント
(米国英語に慣れた日本人には聞き取り難い)を駆使して、
労働者階級の仲間達が差別していたパキスタン移民の
友人との友情に固執する青年を演じて、独特の存在感を
漂わしていたロンドン生まれのダニエル・デイ=ルイス。
このダニエル・デイ=ルイスがリンカーン大統領が、ケンタッキーの農家出身
として話していた話し方を徹底的にマスターした語り口で、
聴衆に自分の心の内を伝える独特の話術そして、
ダニエル・デイ=ルイスが解釈するリンカーン大統領の
奴隷制に対するスタンス。
ダニエル・デイ=ルイス、そしてスティーヴン・スピルバーグ監督が
解釈したリンカーン大統領は、単なる理想主義ではなく、
大きな目的を達成するためには小事には目をつぶり、
理想の実現に邁進する、一人の人間臭い男であった。
共演するトミー・リー・ジョーンズが奴隷制度の廃止に対し
投票権を含めた“黒人”の全面的開放を考えていたことに対し、
リンカーン大統領の思惑はそこまでの解放は考えていなかったかも
しれないが、アメリカ合衆国から人間が人間を無条件で支配する
奴隷制という悪弊を終焉に導く人間としての使命感を持っていたことは
間違いない。
作品ごとに与えられた役を徹底的に演じ切るダニエル・デイ=ルイス。
本作は、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『NINE』よりより演じ者を共感しやすい
作品として仕上げられている。



