目の応答速度 続き | 構造色事始

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構造色の面白さをお伝えします。

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構造色とはあまり関係ないのですが、視覚の勉強をしようと、先日、「目はどのくらいの速さの変化が分かるか」という実験をしました。今回はその続きです。

目の応答速度は光の明るさで大きく変化します。そこで、露出計で明るさを測って、応答速度を測定してみようと思い、また、生物の先生から露出計を借りてきました。

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露出計とはこんなものです。左の白い丸い部分を光源の方に向けて、スィッチを入れるとルクス単位で明るさが表示されます。ルクスは視感度を考慮に入れた明るさを表す単位です。人の視感度は555nmという黄緑色がもっとも高く、赤くても青くても感度は落ちてしまいます。だから、紫外線などはどんなに強い光でも目の感度がないので、照度は0となってしまいます。

さて、実験は以前と同じようにチョッパーという羽根車を回転させて、チラツキが見えなくなる周波数を記録するという方法を用いました。また、光源としてはパソコンの画面に白、赤、緑、青を順に表示させて行いました。実験の雰囲気は下の写真のようです。

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写真を貼りあわせたので見難いですが、パソコンのディスプレイの手前にチョッパーを置き、その隙間から画面を片目で覗き、回転速度をだんだん大きくしていき、チラツキが見えなくなる周波数を記録します。ディスプレイとチョッパーとの距離は、目の網膜全体に光が当たるようにと思って、30cmと近めに設定しました。ディスプレイの明るさはパソコンのファンクションキーで変化させました。周りが明るくないようにと思って、実験は夜、部屋の電気を消して行いました。

初めに、チョッパーの代わりに露出計を置いて、パソコンのファンクションキーを押して明るさを変化させながら、照度を測りました。その結果が次のグラフです。

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私の使っているバソコンでは、ファンクションキーを押していくと、ディスプレイの明るさが0から10まで順に変えられるようになっています。そのとき、30cmの距離で測った照度が上のグラフです。明るさは非直線的に増えていくことが分かります。色によっても異なり、赤は一番暗く、緑は一番明るいことが分かります。この赤、緑、青の照度の値をすべて足すと白の値とほぼ一致します。単純な足し算ができるみたいです。

各々の色とその明るさについて、チラツキが見えなくなる周波数を記録して、1936年のヘヒトらの実験結果と比較してみたものが次の図です(ヘヒトらの実験については以前のブログを見てください)。

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今回の実験では明るさがルクスになっているので、フォトン数の対数で表しているヘヒトらの実験と直接比較できません。そこで、明るさを対数に変え、横軸をずらし、周波数がほぼ合うようにして重ねた図が上の図です。いい加減な実験の割には、非常に明るいところを除いて、ヘヒトらの実験結果をよく再現しているようです。今回の実験では色の違いはあまり現れませんでした。また、暗い部分は露出計の感度がなかったために、全体としては明るい部分の2桁の明るさの範囲で実験しました。

ただ、この実験を別の日にもう一度行ってみると周波数が数ヘルツほどずれた結果が得られました。フリッカーテストが労働疲労のテストに使われるというので、目の疲労具合で少し変化するのかもしれません。上の実験でも、白、赤、緑、青の順で実験を行ったのですが、青では値がやや低くなり、ばらつきも大きくなっています。少し疲労したせいかもしれません。

色の違いについてはもう少し詳しく比べてみました。実験はディスプレイの明るさを赤、緑、青で等しくなるようにRGBの値を調整し、照度計ですべて5.1ルクスになるように設定しました。その明るさで色を変化させて実験をすると、3回の実験の平均で

赤 45.1 Hz 
緑 47.9 Hz
青 44.9 Hz

となり、緑が少し速い応答を示すことが分かりました。しかし、これが、露出計の感度の誤差などの実験誤差ではなくて、本当に応答速度の差なのかは、今のところ判定がつきません。(SK)

構造色研究会のホームページ:http://mph.fbs.osaka-u.ac.jp/~ssc/

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