モルフォチョウの構造色4 簡単な実験 | 構造色事始

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構造色の面白さをお伝えします。

今日はモルフォチョウの特徴を示す簡単な実験を紹介します。

一般に、モルフォチョウの翅は青色だと思われていますが、実は、見る方向で変化します。この変化の様子を示したのが次の実験です。

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これは2種類のモルフォチョウ、ディディウスモルフォとキプリスモルフォについて見る方向を変えて撮影した写真です。一番左は正面から、真ん中は正面斜め手前から、右は左側から撮影したものです。それぞれ前方から照明しています。正面斜め手前から見ると、モルフォチョウの青は色が濃くなり、少し紫がかって見えます。横から見ると、今度は色が薄くなり、特に、キプリスモルフォは真っ黒に見えます。このように見る方向で色が大きく変化するのがモルフォチョウの特徴です。

次に、モルフォチョウの翅を液体に浸けてみましょう。

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これは、翅をエタノールとトルエンという2種類の液体に浸けたときの変化です。エタノールに浸けると、空気中で青色だった翅は緑色になります。トルエンに浸けると、色がなくなり、地の色だった茶色になってしまいます。この変化は液体の屈折率で決まっていて、屈折率が同じだと同じ色になります。

液体に入れた翅を今度は斜めから見てみましょう。

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空気中で青色だった翅は斜めから見ると紫色に見えますが、エタノール中で緑色だった翅は今度は青く見えるようになります。トルエン中で茶色だった翅は斜めから見ても変わりません。このように液体に入れると空気中とは色が変化するのも、モルフォチョウの翅のもう一つの大きな特徴です。

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これまでは翅全体で観察した実験でしたが、次に、鱗粉一枚で行った実験をお見せします。ディディウスモルフォには上層鱗と下層鱗という2種類の鱗粉があるといいましたが、それぞれの鱗粉に光を当ててみました。

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実験の配置はこんな感じです。光源からの光をスクリーンの真ん中にあいた穴を通して鱗粉に当てます。鱗粉により反射された光、鱗粉を通り過ぎた光をそれぞれ別のスクリーンに当て、その写真を撮ったものが次の図です。

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この実験からさまざまな情報が得られます。まず、上層鱗では透過パターンは虹色の点に分かれますが、反射パターンは青色だけになり、上下二つに分かれてしまいます。さらに、上のパターンは点に分かれています。これに対して、下層鱗の透過パターンは、虹色に見える部分が横に広がり、中央には黄色のハローのようなパターンが見えますが、反射パターンは紫がかった青色の筋が横に細長く広がるだけです。

鱗粉の代わりにカバーガラスのような薄い板を置いた時には、反射パターンも透過パターンも、光源の色と形を反映して、白く丸いパターンが見えるはずですが、このように複雑なパターンを示すのが、モルフォチョウの鱗粉の大きな特徴だといえます。モルフォチョウの構造色の秘密を解き明かすには、このような複雑な現象の原因を一つ一つ解明していく必要があるのです。

【参考文献】
S. Kinoshita et al., Proc. R. Soc. Lond. B269, 1417 (2002).
S. Kinoshita and S. Yoshioka, ChemPhysChem 6, 1442 (2005).

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