役員退職金に備える方法として
・小規模企業共済への加入
・定期保険への加入
が考えられます。
※前提~ 退職金は有利?
退職金がなぜ税務上有利なのか?
第一に「非課税枠」があるからです。
勤続年数20年以下なら ・・・ 年間40万円×勤続年数(最低80万円)
勤続年数20年超なら ・・・ 年間70万円×(勤続年数-20年)+800万円
この金額まで非課税になります。
でかいです!
なお、小規模企業共済なら勤続年数ではなく、加入期間になります。
(1,000円でもいいので早めに入りましょう)
第二にさらに退職所得はこの非課税枠(退職所得控除)を控除した金額から
さらに「1/2」した金額になります
勤続年数が5年以下の場合には1/2にならないという点には注意しましょう。
(法人の役員だけでなく、従業員も税制改正で制限が加わる予定あり)
第三に分離課税であることです。
役員報酬は「給与所得」として合算され、超過累進税率となりますが、
退職所得は合算されないので、一般的に低い税率に抑えられます
税務上メリットのある退職金
役員報酬だけではなく上手に利用することで
老後の財産づくりとして
非常に有利に活用することも大切ですね。
退職所得に興味がわいてきましたか?
(1)結論
小規模企業共済と定期保険、どちらが有利なのか?
ながいので先に結論を言います
それぞれ、有利不利がありますが
(定期保険が向いている人)
・退職金の準備に加えて、万が一の備えとして、死亡保障も欲しい
・そもそも小規模企業に該当しない
(小規模企業共済に向いている人)
・死亡保険は十分備えている
・退職金を掛金以上に増やしたい
・税務リスクなく、安全に受け取りたい
・退職しなくても老後に受け取れるようにしたい
(2)小規模企業共済を利用した役員退職金
小規模企業が加入できる経営者のための退職金共済。
個人事業者のみでなく、会社役員も加入できる。
月々の掛金は1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能。
加入後も増額・減額できます。
確定申告の際は、その全額を課税対象所得から控除できるため、高い節税効果があります。
共済金は、退職・廃業時に受け取り可能。
満期や満額はありません。
共済金の受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能です。
一括受取りの場合は退職所得扱いに、
分割受取りの場合は、公的年金等の雑所得扱いとなり、
税制メリットもあります。
法人の場合、
小規模企業共済をかけるのは「役員本人」であり
法人の通帳からの引き落としはできません。
役員本人が
退職金の準備に
小規模企業共済掛金を支払い、
退職金の受取も
法人を介さず
中小機構から直接退職金の支払いを受けることとなります。
(2)定期保険を利用した役員退職金
解約返戻率の高い定期保険に加入することにより
経営者に万が一のことがあった場合の保障と
経営者の退職金の準備のための保障として、解約返戻金を準備することができます。
生命保険会社が各種保険を準備しています。
保険の契約者は法人となり、
法人の支払いとなりますが、
解約返戻金の受取は法人となることが多いです
定期保険を解約し
解約返戻金の受取時には益金となりますので
解約返戻金の受取時には
役員が実際に退職して
法人から退職した役員に役員退職金を支払って損金を同時に計上することにより、
法人に法人税等の納付を発生させず
退職した役員本人にも、
退職所得の非課税枠を利用し
有利な税額で、多額の退職金を法人から受け取ることができることになります。
(3)比較
それぞれ有利不利があるので、比較していきましょう
①掛金支払時 ・・・ 引き分け
小規模企業共済は
役員本人の小規模企業共済掛金支払に備え
役員報酬を増額させることができれば
法人の損金は増えます
定期保険も
全額損金算入されないこともありますが、
条件によっては全額損金算入出来たり、
資産計上となっても
将来は損金算入されることになります。
よって、掛金(保険料)支払時は、
ケースバイケースともいえるので
「引き分け」です
②社会保険料の負担 ・・・ 定期保険有利
小規模企業共済は
役員本人の小規模企業共済掛金の支払いに備えて
役員報酬を増額させると、社会保険料が増えます。
定期保険は、社会保険料の増加はないです。
よって、社会保険料の負担は
「定期保険有利」です。
③退職金受取時
小規模企業共済は
任意解約でなければ基本的に掛金より増えます
受取方法も退職の事実がなくても
65歳以上・15年以上加入という条件を満たせば
老齢給付という方法も選択が可能です
定期保険は
基本掛金より解約返戻金は減ります
退職の事実がないと、役員は退職金を受け取ることはできません
よって、退職金受取時は「小規模企業共済有利」です
④税務リスク
小規模企業共済は
法人を介さず
中小機構に請求するので
基本的に受け取った退職金について
税務調査で指摘がある可能性はないです
定期保険により退職金を受け取った場合には
その退職金が適正額かどうかという税務上の問題があります。
退職金が不相当に高額と
税務調査で指摘されると
不相当に高額な部分は、損金不算入とされてしまいます。
役員退職金自体、税務署が目をつけている項目であり、
論点も多く、税務リスクが高い項目とも言えます。
⑤注意点
小規模企業共済については名前の通り、小規模企業しか加入できません。
具体的には
〇商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)
→ 常時使用する従業員の数が5人以下
〇それ以外(建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業など)
→ 常時使用する従業員の数が20人以下 などです。
今回のお話は小規模企業共済に加入できる事業所が前提になります。
(4)結論(繰り返しです)
それぞれ、有利不利がありますが
(定期保険が向いている人)
・退職金の準備に加えて、万が一の備えとして、死亡保障も欲しい
・そもそも小規模企業に該当しない
(小規模企業共済に向いている人)
・死亡保険は十分備えている
・退職金を掛金以上に増やしたい
・税務リスクなく、安全に受け取りたい
・退職しなくても老後に受け取れるようにしたい