川越で、28日と言えば、成田山川越別院の「蚤の市」。
成田不動尊境内に、100以上のブースがひしめき合う様子は圧巻。
カオスのようで実は整然とし、絶妙なバランスをとった雑多感は、
どうやって搬入・搬出しているのだろう、といつも不思議に思うほどの美しさ。
「川越不動蚤の市 」
毎月28日
川越市久保町9-2 成田山川越別院境内
電話 049-222-0173
時間 5:00~16:00 ※雨天決行
食器類、着物類をはじめ、様々な雑貨が並び、全てあると言っていいほど、
ありとあらゆるものが毎月集まってくる。
毎月通う常連に加え、この日に合わせて川越観光に来る人、外国人観光客の姿が目立つのも近年の動きで、骨董を扱う主人が英語で対応する様子がなんともいい。
着物姿で立ち寄る風景も蚤の市ならでは。蚤の市があるから着物姿で出かける場があり、着物姿が川越に増えたという側面がある。
また、川越の骨董市としては、毎月8日蓮馨寺の呑龍デーもお馴染みの行事。
(毎月8日、蓮馨寺の呑龍デー)
蚤の市にしても呑龍デーにしても、毎月、同じ日に開催されている行事として、これだけの規模のものは川越でなかなか見当たらない。
蚤の市があるから、古い物を大切にするマインドが街に醸成されてきた部分はあると思うし、ここから発信される波が川越のいろんな箇所に影響を与えている事実がある。
28日といえば、もう一つ大事な日と同じことはご存知でしょう。
これまで18日だった川越きものの日は、現在は毎月8日、18日、28日の三日間に拡充され、つまり、蚤の市の日もきものの日ということになります。
「川越きものの日」
http://www.koedo.or.jp/%E5%B7%9D%E8%B6%8A%E3%81%8D%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%AE%E6%97%A5/
この日も着物姿の人が境内にちらほら見え、生地や骨董品を手に取って確かめていました。
蚤の市と着物と言えば、この日に合わせて着物散歩を開催しているのが、NPO法人川越きもの散歩の皆さん。
(蚤の市で購入したという着物。思わぬ掘り出し物と出会えるのもここならでは)
今の川越の着物復興に寄与した団体としては有名過ぎるくらいの存在。
「NPO法人川越きもの散歩」
https://kawagoe-kimono.jimdo.com/
この日もお不動様を集合地として、ここから着物散歩しながらランチへと赴いていったのでした。
蚤の市は、成田山川越別院という場所だけのことではなく、
周囲への影響が大きいからこそ、街を巻き込んだ盛り上がりを見せている。
28日の蚤の市に合わせて、周辺のお店では特別サービスをしているところも多く、
その一つ、喜多院向かいにある「CAFE ANTI」さんは、
毎月蚤の市の日は、お得な価格でドーナツを提供するスペシャルデーとしています。
おからを使ったドーナツは、どこまでも優しく、気持ちまで丸くしてくれる。
普段から成田山、喜多院から立ち寄る人が多い場所ですが、28日となったらやっぱり特別な日、賑わいが違います。
(「CAFE ANTI」おからと豆乳の優しいドーナツ 外はサクッ中はモッチリ
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11530278414.html)
そして、今年に入ってから蚤の市に合わせた特別出店が仲間入りしました。
蚤の市らしい、川越らしい、そしてこれからの展開が楽しみな空間へ。。。
成田山川越別院から、川越日高県道を連雀町方面へ歩いて行く。
通称、喜多院不動通りと呼ばれる通りを歩いて行くと、古い看板建築の建物が立ち並んでいる風景に引き込まれる。
ゆったりとした時間に浸りながら歩いていると、ある場所で足が止まる。
うん?なんだろう、この素敵な空間。
新しいお店・・・?いや、違う。普段はこのような営業はしていないはず。
古い物たちに目を奪われ、なにより、美味しそうな焼き菓子と珈琲に惹かれて、足を踏み入れていた。
まるで、カフェ。
奥にはテーブルと椅子が配され、既に珈琲で寛いでいる人がいた。
まるで、カフェ、そう思ったって不思議でないこの場所が、実は建築家の事務所だと知ったら、驚く人が多いのではないかと思います。いやむしろ、ああ、なるほど!としっくりくるかも?
ここは、水谷勉さんの水谷意匠一級建築士事務所。
通りにある他の建物と同じくらい歴史がある古い建物をリノベーションし、住居兼事務所にした空間は、普段は設計事務所として仕事をしながら、毎月28日の蚤の市に合わせて姿を変え、
秩父で焙煎所とカフェを構える「WAPLUS COFFEE」さんが特別出張出店しているのでした。
(蚤の市の時は、土間の他に、板の間部分もカフェスペースとして開放している)
喜多院不動通りがさらに面白くなる、というか、建築家がこのような発想することが面白い。
場所は、くらづくり本舗久保町本店さんの二軒隣になります。
「水谷意匠一級建築士事務所」
建築・インテリア・プロダクト・まちづくりなどの企画・設計・監理
〒350-0055
埼玉県川越市久保町5-7 県道沿い
TEL:049-227-6602
FAX:049-227-6603
水谷勉一級建築士
(免許登録番号:339330号)
1977年 埼玉県川越市生まれ
2000年 東京電機大学工学部建築学科卒業
2003年 ICS college of arts 卒業
2003~2009年 life+shelter associates
2013年 水谷意匠一級建築士事務所 設立
『都心より少し離れた埼玉県川越市を拠点に活動する建築設計事務所です。
川越市は歴史的な街並みが多く残る場所です。
そこで生まれ育ち日々過ごす中で、昔の記憶を受け継ぐことはとても大切なことだと自然に思うようになりました。
そのため、古い民家を改修した場所を事務所として、個人住宅の設計や店舗インテリアデザイン、まちづくりの支援など、多彩な活動を展開しています。
時を刻み世代を超えて受け継がれるものを提案するために一番大切にしていることは、クライアントとのコミュニケーションです。
対話を重ねる中で感じ取った想いを環境や時間とともにひも解くことで、新しい日常を提案することができればすごく嬉しいことだと思っています。
昔から伝わる歴史や文化、技術などを今の時代の良いものと共に受け継ぎ育てていく。
建築という分野を通じて川越より発信していきたいと思っています。』
これまでの設計の一例・・・
(東秩父村和紙の里バスターミナル http://mizutaniisyou.jp/portfolio/2016_chichibu/)
(多摩市の店舗併用住宅 http://mizutaniisyou.jp/portfolio/2015_tama/)
また、地元川越では、大正浪漫夢通りの店蔵の復元プロジェクトにも携わっています。
通り沿いで工事していたあの建物、完成はもう間近です。
(大正浪漫夢通りの蔵の改修工事)
そして・・・川越では、喜多院不動通りにある築40年になる建物の改修にも取り組んだ。
25年前まで荒物屋を営みながら住居として使用されていた平屋、
建物の雰囲気が面白いと感じ、ここを拠点にしようと、
なんとそこを、自宅兼自身の設計事務所にした。
改修後、ここに事務所を移したのが2016年11月、住み始めたのが2017年年明けのことでした。
「改修前は土間から奥へ板間・和室・台所という間取りから、
各部屋の仕切りをなくし広々としたレイアウトとしました。
ワークスペースとしてだけではなく様々な使い方ができるよう、あえてキッチン作業スペースを中心に配置しています」。
水谷さんの友人でイラストレーターのイシイサヤニーさんに事務所の襖絵を描いてもらい、
銀色の背景に年輪をイメージしたカラフルなイラストが事務所に不思議な雰囲気を出しています。既存の設計事務所とは一線を画するような雰囲気に。
また、県道に面する土間スペースは定期的にイベントを催し、街とのつながりの場として活用していきたいと話していました。
そんな発想をする建築家がいることが面白く、こういう建築家が川越にはたくさんいることがまた面白い。
喜多院不動通りに新事務所オープンと共に、早速水谷さんが仕掛けたのが、
毎月28日の蚤の市に合わせて土間部分を使ったイベントを開催すること。
水谷さんの友人夫婦が、珈琲&スコーンと古物のお店を出張出店していました。
それが、秩父で焙煎所とカフェを構える「WAPLUS COFFEE(ワプラス コーヒー)」さん。
「WAPLUS COFFEE」
水谷さんの繋がりから、秩父の人気店が川越までやって来ていたのでした。
WAPLUS COFFEEさんの出店は、2017年1月28日の蚤の市から始まり、この2月28日で二回目の開催。
蚤の市目当てに通りを歩く人は多く、戸が開け放たれ、開いているだけでも目を引き、土間の雰囲気に惹かれてふらりと立ち寄る人は引きも切らず、終始賑わっていました。
蚤の市が朝早くから開催していることもあって、午前中から、まずは珈琲を一杯、と寄っていく人の姿がある。
今後も28日の蚤の市には、土間部分にWAPLUS COFFEEさんは出店予定となっていて、また、他にもいろんな展開を思案していて、お不動様からの行き帰りにこの場に立ち寄るのも定番コースになっていきそう。
また、水谷さんは、土間部分を蚤の市の時のみならず、貸しスペースとしても考えていて、ミニイベントやギャラリー、ワークショップなど利用の幅は広がっていく。
なぜ、建築家が自身の事務所をここまで開放するのか、発信拠点にまでしようとするのか、
そこが今の時代らしい動きで、街の中に溶け込みながら変えていこうとする発想が、川越の、というだけでなく、今の建築家の自然体の考え方なのかもしれない。
川越で建築家からの今までとは違う切り口のまちづくりの発想、行動は最近特に目立つようになっていて、今後も伝えることになりますが、今年の川越の動きの中で特に注目している。
古い建物が保存、維持されている川越だからこそ、裏で活躍する建築家がいて、彼らが積極的に街に関わり、今、自身それぞれが発信を始めようとしている。その最初の最初、胎動が伝わってきます。
場の雰囲気に浸っていると、どこかに似ているなと思ったら、すぐにピンときた。
そうだ、Banonさんに似ているんだ。
入口に土間、その先に木の空間があってテーブルや椅子で寛ぐ人がいる。あの場所。
(「BANON」喫茶とあれこれ
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11997590488.html)
Banonさんも水谷さんの事務所も、かつては店舗があった場所、
新しい感性と息吹が流れ込み、新たな魅力になって生まれ変わっている。
水谷さんは、事務所があるこの通りを、骨董通りにしたいと話していた。
骨董通り。
それは骨董店が増えることを意図した呼び名ではなく、昔から営むお店が通りに軒を連ね、古いものを大切にする文化が根付いている地域であるから、その姿をよりくっきりと際立たせて街の個性にしていきたい、と。
成田山川越別院の蚤の市・骨董市がこれだけ浸透し、毎回熱気に溢れるその波を周辺に伝えるために、骨董という名を取り、骨董通り。
近隣には、蔵造りの町並みの一番街はもちろんのこと、大正浪漫夢通り、昭和の街、と古いものを残した魅力ある地域が歩いてすぐ近くにあります。川越日高県道からそれぞれアクセスしやすい。
喜多院不動通りはこれまで、まちづくりとしての積極的な発信はあまり見られませんでしたが、歴史を振り返れば川越として喜多院や成田山川越別院の存在感は圧倒的。
歴史的寺院に昔から続く商店街と看板建築、街としての潜在力は半端ない。
この地域に光が当てられていくと、川越としての魅力もさらに高まっていくはずです。
喜多院入口から松江町交差点付近まで続く喜多院不動通り商店街には、
骨董、古美術店、和菓子店、寿司店、書店、お茶店、昔から続くお店が多い通りで、看板建築に象徴される建物にも注目が集まる地域。
通りにある、手打ちそば鎌倉」さんや「和カフェ 夢宇」さんのことは以前記事にしました。
(「手打ちそば鎌倉」シンプルなものだからこそ手間をかける
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12119153590.html)
(「和カフェ 夢宇」喜多院、成田山、川越散策の途中に和のやさしさでホッと一息
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12042563076.html)
また、以前、一帯の久保町のディープな魅力を掘り起こした「小江戸のらり蔵り」さんの散策ツアーも開催されたことがありました。
(「小江戸川越のらり蔵り」知られざる久保町をのらり蔵り
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12044256034.html)
川越の着物熱は年々高まっていて、着物姿で出かける場所として蚤の市は最適。
これから益々蚤の市の活気は高まっていくでしょう。
そして。
周辺地域のまちづくりも面白くなってきました。境内から、周辺へ。蚤の市の楽しみが広がっていきます。
「川越不動蚤の市 」
毎月28日
川越市久保町9-2 成田山川越別院境内
電話 049-222-0173
時間 5:00~16:00 ※雨天決行