2016年7月30日、31日、二日間に亘って開催された「川越百万灯夏まつり」。
二日目は事前の天気予報では雨か?という不安が広がる中、
それでも信じた川越人に熱気で、なんとか持ちこたえてくれそうな空模様だった。
会場各所でさまざまな催しが行われ、川越最大の夏祭りは盛り上がっていました。
本川越駅前交差点でどこかから聞こえてくるお囃子の音色。
夏の川越百万灯夏まつりも秋の川越まつりも、川越のお祭りには欠かせない川越のお囃子。
音の残り香を辿って行くと、クレアモールの中へ。
だんだんと音が大きくなっていく先にいたのは、連雀町の囃子連「雀會(すずめかい)」の屋台だった。
川越百万灯夏まつりでは、いくつかの町内が移動式の屋台の上でお囃子を演奏し、
町内はじめ街中を曳き回して回るのも目玉の催し。
街中に下がる風情ある提灯の風景に、お囃子の演奏がよく合います。
もちろん、演奏しているのは、川越まつりで山車の上で演奏している面々と同じ。
至近距離で聴く事ができるという点で、川越まつりよりお囃子がさらに身近です。
ちなみに屋台は、山車のように常時保存されているものではなく、
百万灯夏まつり用に囃子連が手作りし、終わったらまた解体して来年まで取って置く。
雀會の屋台は、連雀町の自町内を出てちょうどクレアモール、
新富町一丁目にある文明堂さんのところに挨拶に行っているところでした。
屋台の方向を変えて正面をお店に向ける。
この後はまた、クレアモールを来た道を戻って行きました。
屋台を曳くのは・・・これもまた雀會の面々が、
演奏する人以外の人が屋台を押して行く。手作り感満載の屋台と曳き回しです。
小江戸蔵里まで来ると、見えてきたのが・・・新富町一丁目の榎会囃子連の屋台。
新富町一丁目の山車蔵があるのが小江戸蔵里で、
その前に屋台を停めているという榎会のホームグラウンドです。
雀會の面々が屋台を押し出し、榎会との距離を縮めていく、もちろんお囃子の演奏は続いている、
至近距離まで近づくと、雀會の屋台は止まり、そして「ソーレ!」と総出で方向を変える。
「もう少し!」
方向の先にあるのは、榎会の屋台。
ゆっくり加減しながら屋台を押して榎会に近づけていく。
「まだいける、もっと押して!」「より、OK!」
ついに、榎会の正面にぴったり寄せるところまで来ると、
二つの屋台が向かい合わせになり、お囃子の競演を魅せる。
突如始まったお囃子の競演に、「なんか凄いことが始まった!」と
雀會と榎会による二つのお囃子が入り乱れ、場はカオス状態に。
これは・・・まさに、「あれ」のよう、と連想した人もいたでしょう。
二つの屋台のお囃子競演は、
そう、川越まつりにおける山車同士の「曳っかわせ」を彷彿とさせるもので、
川越百万灯夏まつりの屋台曳き回しでも今や名物になっているもの。
この二つの囃子連は、川越の中でも特に熱心な活動で知られ、
そして、数々のドラマを生んできた因縁の関係でもある。
思い返せば昨年2015年の川越まつりでは、蔵里からすぐ近く、本川越駅前交差点で、
連雀町道灌の山車と新富町一丁目家光の山車、脇田町の家康の山車による
奇蹟の曳っかわせを魅せ、川越まつりの醍醐味を知らしめました。
2015年10月18日のあの夜。。。
(夜の部「川越まつり2015」10月18日 百花繚乱の曳っかわせ
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12087021872.html )
『交差点中央、これ以上ない川越まつりが盛り上がる舞台、
二つの山車に挟まれるようにして道灌の山車を入れていく。
3つの囃子が混ざり、場はまさに興奮のるつぼ。
山車を回転させ、3台が正面を向け合った。そして、さらに寄せていく山車さばき。
「ほら!入れ!入れ!前行け!」
提灯を持った町方の背中を押し、どんどん3台の真ん中に入れていく。
「もっと前行け!入れ!曳っかわせだぞ!!」
・・・と言いながら、「ばかやろう!こんなに人が入ったら山車が寄せらないよ!」
ここで盛り上がらなかったらどこで盛り上がるのだと、みな分かっていた。
さらに山車が寄せられ、囃子がカオスのように混ざり合う。
提灯を乱舞させて「オオ!オオ!オオ!オオ!オオ!」雄叫びが夜空に響いていた。
時計の針は午後7時45分、
脇田町の徳川家康の山車、
新富町一丁目の徳川家光の山車、
連雀町の太田道灌の山車、
この場面に言葉を添えるのは野暮と承知して付け加えますが、
今年は、徳川家康公没後400年事業として、川越でも数々の関連行事が行われてきました。
川越まつりでも、家康にゆかりのある
脇田町の徳川家康の山車と新富町1丁目の徳川家光の山車が、
まつり初日の10月17日に仙波東照宮と喜多院へ記念参拝を行っています。
そして、川越まつり最終日の夜、この3台による曳っかわせは、
偶然にして最高の400年イベントになったのではないでしょうか。
そう思わずにいられないのは、
脇田町は会所が離れているため、時間内に帰るためにもう時間が迫っている頃で、
連雀町がもう少し遅かったら3台は合わなかったかもしれない。
後々まで語り草になるであろう3台の曳っかわせは、
400年目の夜に、家康公が最後に目に焼き付けたいと、
見えない采配をふるったとして思えないような奇蹟でした。
見事な曳っかわせを披露し、
沿道から惜しみない拍手が送られました。』
小江戸蔵里では、雀會と榎会のお囃子競演が続く。
上記の川越まつりと舞台は違いますが、
囃子連の人も演奏する曲もほとんど変わらないスペシャル感。
・・・と、頭上からぽつりと雨粒が落ち顔に当たる。
「やっぱり振ってきたか!」
微妙な天気予報になっていましたが、ここまでは見事に晴れ。
雨がぽつりと降ってきても、そんなの全く関係ないと言わんばかりに、演奏は止む事なく続く。
よっぽどの雨でない限り、演奏を止めることはないでしょうね。。。
だって、あの雨でも川越まつりで山車を動かした二つの町内ですから。。。
(「川越まつり2013」二日目最終日 『行ってみないと分からない。でも川越まつりだから』
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11645080965.html )
夏がやって来ると、「もうすぐ川越まつりだ」とだんだん期待が膨らんでくる川越。
今年は一体どんなドラマが生まれるでしょうか。
蔵里前の榎会の屋台から離れると、クレアモールを北に進んでいく雀會の屋台。
狭い上に、さらに祭りの屋台出店が並んでいる道を注意しながら進めて行きます。
また連雀町に戻って来ると、さすがに自分たちの町内、
雀會の面々は伸び伸びとした表情に。
立門前通りから蓮馨寺前に行き、引き返して県道に設営された広小路商栄会の本部テントで小休止。
いつも思いますが、祭りは、祭りに「行く」人より、祭りを「する」人の方が楽しんでいますね。
雀會だって、百万灯夏まつりをお囃子で盛り上げようと思いながらも、
自分たちが一番百万灯夏まつりを楽しんでいるようで、
街中を演奏して回るなんて、こんな楽しい祭りの楽しみ方はないです。
祭りは参加してなんぼ、という永遠普遍な真理を思います。
「さあ、そろそろ行くか」
再び出発した屋台は、立門前通りから蓮馨寺前に出て、中央通りを北を目指していった。
仲町交差点まで来るとこの先は一番街。
だんだんと日が傾き始め、町並みが赤く照らされていく。
さあ、ここからの時間が川越百万灯夏まつりの本番だ。
全く止まる気配を見せず進んでいく雀會の屋台、まさか、このまま一番街を北上する・・・??
一番街はすでに通りが人で埋まっている状況、
ここを進んでいくのは川越まつり並みのハードルの高さ。。。
いやしかし、雀會ならノリで行っちゃいそうな気もして、
どうするんだどうするんだ、と沿道がざわざわして固唾を飲んで推移を見守っていた。
「この先は・・・難しいな」
先の方に目をやり、後ろ髪を引かれるように、一番街を目の前に仲町交差点を右折していく。
一番街では川越藩火縄銃鉄砲隊保存会の演武などが行われていて、屋台を押していくのは困難だった。
川越商工会議所から大正浪漫夢通りを南進していく、
と、ここも簡単な道ではなく、パフォーマンスやテントの間を縫うようにして細心の注意で進んで行きました。
立門前通りからまた、蓮馨寺前に出てくると、
北へ行くか?今度は南へ?進路を取るか、遠くを見つて思案する。
さてさて次はどっちに進めて行こうか。
屋台を曳くルートは事前に決めていて、その中で動いていたわけですが、
あとは現場の状況を見て臨機応変に、という名のその場のノリで進んで来た屋台。
・・・と、蓮馨寺境内に目をやると、ハッと何かを閃いたらしい。
「ここ入れちゃおうか」的なニヤリとした表情を浮かべる。
え・・・!まさか。本当に?
蓮馨寺はルート想定外。
そのアイディアに、周りの雀會の面々は「いやいや、さすがにそんないきなりはマズイでしょ!」と反対・・・
するどころか、「いいね~。入れちゃうか(笑)」とみなニヤニヤしながら賛成していた。
誰も止めようとしないという。。。(笑)川越まつりの例のノリをここでも如何なく発揮。
「このまま真っ直ぐ!蓮馨寺ね!」
方向を変えることのない屋台は、蓮馨寺山門に向かい合った。
「ゆっくりゆっくり!段差気をつけて!」
山門の段差を気にしながら、屋台を押し出し一気に境内に乗り入れる。
驚いたのは、境内参道にいた祭り客、
「え、なになに、こっちに来るよ!」「お囃子が来るぞ!」
すぐさま左右に散らばり、屋台の進路を開ける。
そして、一番驚いたのは境内に屋台出店していた人だったでしょう、
これまでの百万灯夏まつりでお囃子の屋台が蓮馨寺に入って来たことはない、
というか、今年も入って来るなんて聞いてない、という表情で見遣る。
雀會は涼しい顔で屋台を参道に進めていく、
そうだ、これはきっとお堂近くまで押していくつもりなんだ、と察知した。
「??」と思った人もいたかもしれません。
お堂に行かないの??
駐車場の先、ひと際古い建物であるお堂に近づいていく雀會。
ここでスピードを落とし、ゆっくり正面を合わせていく。
向きをぴたりと合わせて停車、また力強いお囃子が続いていきました。
この場所に停めた雀會の真意を、どれだけの人が分かってくれたでしょうか。
あ、そうか。!
境内に居合わせた人たちがここでようやく雀會の真意に気付く。
屋台は・・・蓮馨寺の「本堂」を目指したのです。
参道正面にあるのは蓮馨寺でお馴染みですが、呑龍堂(どんりゅうどう)と呼ばれるお堂。
そして、その向かって右横にあるお堂こそ、蓮馨寺の本堂にあたるのです。
呑龍堂ではなく、本堂に屋台を向けたところが雀會の心憎い粋な演出。
この、誰も予想していなかったドラマチックな展開
川越百万灯夏まつり史上初、雀會の屋台蓮馨寺乗り入れに、
境内に居た人たちがわっと周りに集まってくる。
雀會ならきっと今年も何かを起こしてしまうだろうという密かな期待に、
それ以上のことで応えてしまう果敢さ。という無謀さ。。。が好き。
さらに言えば、想定外の行動にも、
蓮馨寺さんもまあまあで許してくれるだろう連雀町のノリの良さ。
本堂まで来てくれて逆に喜んでいたかもしれない。
こういうところに祭りならではの醍醐味を感じさせます。
目一杯、本堂に、本尊に向けてお囃子に演奏すると、また来た道を戻っていく。
サプライズな屋台登場に、境内にいた人たちから惜しみない拍手が送られました。
川越百万灯夏まつり、間違いなくここがこの日のハイライトかと思いきや、
まだまだ山があった屋台曳き回し。
いや、一般的には境内乗り入れが盛り上がりやすかったが・・・
雀會の屋台は中央通りから再び県道に出て広小路商栄会のテント前へ。
ここで魅せてくれた、雀會会長はじめ、雀會重鎮たちによる演奏が、最高でした。
(カチューシャしているのは、祭りのノリだから(笑))
やっぱり川越は、お囃子なくしては語れませんね。祭りにお酒にお囃子の音色。
交通規制が解除される時間になる前に、屋台を熊野神社に戻して
連雀町囃子連雀會の今後の活動としては、
毎月第三日曜日、熊野神社の縁日で神楽殿にてお囃子の演奏があります。
そして今年の川越まつりは、2016年10月15日、16日。
さらに12月3日の熊野神社酉の市など、活動は一年を通して続きます。
川越まつりの街、川越。
お囃子の街、川越。
お囃子に彩られ、
夏祭りの提灯は、煌びやかに街に灯っていました。
「雀會ホームページ
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Poplar/3088/suzume/top.html 」