《こころとハーモニーの講座フェルマータ》
～フェルマータは藤沢市の音楽教室です～
合唱・ピアノ・声楽・手話歌・音楽講座
♪プロフィール♪
前回からの続きです。
（前回のお話はこちらから）
ブルタバ川とスメタナ（その１）
ピアニストになる夢が破れ
傷心でプラハに戻ったスメタナが
この街で最初に遭遇したのは
チェコの自由を求める革命運動でした。
当時のチェコは
オーストリア帝国の支配下にありましたが
ヨーロッパ各国で起きた民主化運動の流れが
この頃ついにチェコにも
押し寄せてきていたからです。
愛国心に燃えたスメタナは迷わず
街に出てこの革命運動に参加します。
しかし、この最初の革命は
ハプスブルク家の軍によりあっという間に
鎮圧されてしまいました。
…とは言え
時代はどんどんと混乱へと向かい始め、
そしてスメタナは強く心に誓うのです。
自分の生涯を祖国に捧げよう。
祖国の芸術のために我が身を尽くす
…と。
そして、それから数年後、
再びチェコ独立の機運が高まった時
彼は母国の歴史を主題とした「交響詩」を
母国の為に書くと決意します。
そして彼はチェコ人でありながら
日常語がドイツ語である事に気づき
チェコ語が全く話せない自分を戒め
既に中年にはなっていましたが
この時からチェコ語を猛烈に勉強し始める
事になります。
（え⁉︎あんなに勉強嫌いだったのに？）
そうです。何事も、
自分が本気でやりたいと思った時には
簡単に達成できてしまうものなのですよね
ドイツ語を話すオーストリア帝国の
一部の民族だったけど、
明日からは独立したチェコ国として
美しいチェコ語と共に輝くべきだ。
そうさ
このブルタバ川が
我が祖国チェコからドイツに向かって
流れているように・・・
スメタナの信念
先生、リスト先生！手紙です。
誰から？
スメタナという聞いた事もない名ですが・・・
先生のお知り合いですか？
？？？
差出元はプラハですね・・・
弟子がフランツ・リストに一通の手紙
を
怪訝そうに届けに来ました。
その手紙を読んでくれないか？
親愛なるリスト先生
先生の演奏をプラハで聴きました。
ああ、何て素晴らしい音楽なんだ！
今でもあの音が私の耳に流れます。
私も音楽を愛しています。
音楽と祖国と共に生きています。
しかし演奏家として活動しようと
ボヘミアでデビューしましたが
お金が無くなり夢は破れました。
そこで私が新しく書いたピアノ曲
『6つの性格的な小品』を
先生に聴いて頂きたいのです。
そしてもし気に入って頂けたら
是非
先生から出版社に薦めて
頂けないでしょうか？
重ね重ね図々しいとは承知の上で
自分が開校しようと考えている
音楽学校の資金も400グルデンほど
貸して頂けたらとても嬉しいです。
私はプラハを代表する音楽家に
必ずなります。
そしてその時に
自分に出来る限りのお礼をします。
〈我が祖国プラハより〉スメタナ
先生、これあまりにも図々しいから
手紙は捨てますよ
全く譜面まで同封して
その譜面を貸しておくれよ。
どうせ今日は暇なのだから…
（これは、確かに図々しいよ。
面識もないのに普通借金まで頼む？
それに出版社紹介して～
とかさ・・
呆れたよー
）
今までの彼の行動を考えてみれば
常に「失敗は恐れず何でもダメ元」です。
彼は、例えここでリストに嫌われようと
リストを敬愛し続けただろうし、
そしてすぐに新しいチャレンジに
自分の頭を転換させていった事でしょう。
（・・・・納得
）
そしてある日
彼のもとに思わぬ返事が届きます。
本当にリスト先生からなのだろうか
先生が私に手紙を下さった
リストからの返信には、
彼の曲がとても素晴らしいという事
この曲を多くの人に聴いてもらいたいから
出版社にも紹介したという事
そして
その才能を活かして
未来の音楽家を育てる為に
音楽学校を開講する案には賛同するという事
しかし
その資金集めは決して人を頼らずに
自分の力で成し遂げてみよ
という事が書いてありました。
先生、本当にありがとうございます。
必ず先生にはこの恩返しをします。
ん？あれ
彼は手紙の最後に追伸が書かれている事に
気づきました。
追伸
母国を愛する気持ちは同じだよ。
君はチェコを愛し、
私はいつもハンガリーに
想いを寄せているんだ・・・
フランツ・リスト
これを読んだ途端、彼の表情は変わり
目から大粒の涙が流れ始めました・・・
チェコの独立と栄光を
必ず音楽にして歌い上げてみせる！！
このブルタバ川を主人公にして…
そして、これを完成させる事こそが
僕の恩返しなんだ！
さて、リストからの手紙によって
彼の挑戦力が更にパワーアップした事は
確実です。
彼が学生時代から憧れていたあのリストから
直接手紙をもらい、
しかも自分の曲を評価されて
学校開設の応援までしてもらえたのです。
そして何より、
お互いの愛国心を確認し合えたことは
彼にとって一番の大きな励みに
なった事でしょう。
彼はそれから自力で何とか資金を調達して
最初はたった12人の生徒ではありましたが
プラハで音楽学校の開設を実現させました。
そして時代がどんどん混乱へと進む中、
愛国心の強いスメタナの学校の評判は
チェコ民族主義者の間で高まり始めたので
彼の学校は順調に大きくなっていきます。
ところで、
彼がこのように成功出来た事には
勿論、リストの応援もありましたが、
彼には「成功する為の条件」が
全て満たされていたという事もありました。
この｢成功する為の条件」とは、
・自分でそれをコントロール出来る事
・自分に対応性がある事
・自分に適度な困難さを課している事
・良くも悪くも成果が可視化出来る事
そして、
・最後まで自分がその事に
挑戦し続ける事が出来る事
です。
彼は、
自分の生涯を祖国に捧げ、
祖国の芸術のために我が身を尽くそう
と決意していました。
彼の中にあるこの決意には
自分のこの挑戦が必ず自分の国を
いい方向に動かす事が出来るのだ
という強い思いが含まれており
それは彼が挑戦を続けられるための
何事にも勝る最大のモチベーションにも
なっていたはずです。
そして彼の
自分の力でこの国を素晴らしい国にする
という強い信念こそが
実は彼が挑戦し続ける事の
大きなやりがいになっていたのだろうとも
思っています。
（そうだよね。
前にある障害が大き過ぎると
どうしても一歩引いちゃうけど、
スメタナは結果を受け入れても尚かつ
常に前に進んでいくから
そこには自分の人生にやりがいが
あったはずなんだよね・・・）
そして彼は、このように資金を貯めて
いよいよ最終目的地に向かいます。
（ついに交響詩「我が祖国」の
スタートなんだね？！）
ヨーロッパ大陸の中央に位置する
このブルタバ川は、
文化や物資を運ぶ交流の道として
チェコに繁栄をもたらす
『チェコを象徴する川』となっていました。
そしてスメタナは自分が幼い時に考えた
｢川を源流から大河になるまで音で描写する」
という計画を決して忘れず、
彼はブルタバ川の流れに沿ってチェコの
『美しい自然』と『人々の暮らし』を
音楽で描こうと考えていました。
最初の源流では短調で曲をスタートさせ
しかし2つの水源の「川」が合流して
だんだんと大きな「河」となるのに合わせ
楽器編成をどんどん増やして
そしてついには
華やかな長調のメロディーと共に
チェコ民族の独立と勝利を表現しよう！
と彼は計画したのです。
ただこの後彼に、
家庭内で数々の悲しい出来事が起こり
彼は体調を崩ししかも失聴した状態で
この作品を完成させる事になります。
そして、
彼はこの作品が完成した数年後に
病が原因で亡くなってしまうのです。
・・・彼の葬儀の日には
チェコ国民が彼への敬意を表して
黒い布で覆われた国民劇場の中で
彼の曲を演奏しました・・・
現在でもこの曲が
チェコを代表する曲となって
チェコの人々の心に響き、
そして世界からも愛されているのは
彼が最後まで自分の挑戦を貫いたからです。
幼い頃からの夢をついに最期に実現させ
母国への想いと共に彼自身の人生をも語る
この感動的な交響詩『ブルタバ』を
【今日の一曲】欄に載せます…
彼の作品は、
最近最も私の注目を集め
しかも最も優れている。
この曲はとても細かく感じられて
細かく仕上げられている。
〈フランツ・リスト〉
【交響詩 我が祖国より〈ブルタバ〉】
第７テーマ（フルート、ピッコロ）
〈ビシェフラトの動機〉
川が大きく広がり、ついに
ビシェフラトの丘を通り抜ける
チェコの栄光となるフィナーレ
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