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2018-10-13 12:25:32

ZOZO田端氏 @tabbata 「前澤社長は最高税率55%」→前澤社長も分離課税で税率2割程度

テーマ:経済・財政・税制の問題

 前回の記事「ZOZO田端信太郎氏 @tabbata の無知→富裕層所得の8割は株式譲渡で税負担低いby財務省」に対する田端氏のツイートです。

 

世の中全体のことは知らんけど、前澤さんに関しては分離課税じゃないことは明白でしょう。制度をキチンと知っていれば、それは容易に推測できるのに、それを認識して記事書いたとは思えないので「無知ですね」と申したまでです


 「世の中全体」にも、「富裕層所得の8割は株式譲渡で税負担低いby財務省」の「一般論」にも、前澤社長がきっちりあてはまっていることを今回は検証します。

 そもそも株式による儲けには、配当と譲渡所得があります。このうち配当については、まず、源泉分離課税で所得税15%、住民税5%の合計20%が課税されます。これは、配当を配るときに、証券会社などが源泉徴収するものですから、個人が確定申告する必要はありません。ですので、以下の所得税の負担率のグラフは、申告納税者の所得に関するものですから、源泉徴収だけで済んだ配当は対象外です。

 



 ただし、企業の発行済み株式の3%以上を保有する、いわゆる「大口株主」は、源泉徴収だけで済ますことはできず、確定申告する必要があります。そうすると、分離課税ではなく総合課税で計算され、源泉徴収分との差額を追加で納めることになります。このため、税率は20%ではすみませんが、次の点に留意する必要があります。

 いくら配当額が多くても、「3%以上の大口株主」でなければ確定申告する必要がないということを最大限に利用する富裕層がいるということです。

 例えば、トヨタの豊田章男社長は、トヨタ株を475万株持っていて、1株220円、年間9.5億円の配当を受けていますが、トヨタ全体では33億株も発行されていて、豊田章男社長の持ち株は0.2%にもなりません。そうすると、豊田章男社長は年間9.5億円もの配当を受けているにもかかわらず、「大口株主」にはならず確定申告の必要がなくなるため、税金は20%しか課税されていないのです。以下は国税庁のサイトにアップされている所得税の税率ですがこれに住民税10%を加えますから、豊田章男社長の年間9.5億円の配当の税金は「195万円~330万円」の所得税・住民税と同じ20%しか納めていないという富裕層優遇税制になっているわけです。

 



 それから、自分の名義でなければ「3%」にカウントされないということを利用している富裕層もいます。例えば、京セラの稲盛和夫氏は、本人の名義では2.78%しか保有していません。しかし、ケイアイ興産という資産管理会社名義の株が1.93%あり、合わせれば3%を超えます。しかし、本人名義で超えていないため、確定申告しなくて済んでいます。同様に、セブン・アイHDの伊藤雅俊氏は、本人名義では1.89%ですが、伊藤興業の名義で7.77%保有しています。こういうケースは、ほかにもたくさんあります。

 ZOZOの田端信太郎氏は「貧困層のために富裕層への課税強化を!!って言うばかりの人は、発想が貧困。」とツイートしていますが、富裕層の配当の税金が「195万円~330万円」の貧困層と同じ税金しか納めておらず、中間層の税金より低いのはどう考えてもおかしいので、少なくとも「富裕層は中間層と同じ税金を納めるべき」というのは当たり前です。なので、田端氏のように富裕層への課税強化を批判するばかりの人の方が「発想が貧困」なのです。

 また、ZOZOの田端信太郎氏は次のようにツイートしています。

 

前澤さんの配当所得が総合課税で税率がほぼ55%なことは明白なのに、事前に知らない制度の詳細をカウンターで指摘されたら、個人の話を全体にすり替えてフェイクニュースをさらに拡散する連中、みーっけ!

 

 「全体の話」は「前澤社長個人の話」とも全く同じなのですが、そもそも総合課税の最高税率55%と言うのも事実と違います。確定申告して配当所得を総合課税で最高税率で納めた場合でも税率は55%にはなりません。配当の場合、税額を計算した後に「配当控除」といって、所得税で配当の5%、住民税で配当の1.4%の税額控除を受けられますから、実質負担率は、最高でも48.6%(=55-5-1.4)です。

 次に、株式譲渡所得ですが、これは確定申告したうえで分離課税とする申告分離課税になります。配当と違って、譲渡の場合は譲渡所得だけではなく譲渡損失が発生する場合があります。買ったときより値下がりしている株を売った場合です。このため、確定申告をして、所得と損失を通算処理したうえで課税するのです。この場合は、金額が多くても、大口株主であっても、税率は住民税をあわせて20%です。この譲渡所得については、配当と違って確定申告をしているので、上記で紹介した所得税負担率のグラフに含まれ、富裕層の負担率を下げる原因になっているのです。

 ZOZOの前澤友作社長は次のツイートをしています。

 

2016年度77億円、2017年度34億円、2018年度70億円(予定)。個人での国内における所得税や住民税などの納税額です。買い物もするけど、税金もしっかり納めております。これからももっと稼いでいっぱい買い物して、いっぱい納税します!


 田端氏は「前澤さんに関しては分離課税じゃないことは明白」で、それを知らないのは「無知」と言っていますが、前澤社長の「2016年度77億円」には「分離課税」の方がはるかに多いので、田端氏の方がどう考えても「無知」です。具体的に検証してみましょう。(※2017年度以降は、まだデータが出ていなので確かめられないため「2016年度77億円」を検証します)

 まず、前澤社長の会社役員としての報酬ですが、これは1億円未満です。1億円以上なら有価証券報告書への記載が必要になるのですが、それがないからです。「2016年度77億円」の大半は株式配当と譲渡所得によるものです。

 まず、配当ですが、2017年3月決算時の有価証券報告書によれば、前澤社長の保有株式は1憶2141万株、保有比率は37.67%で、1株当たりの年間配当が36円でしたので、同氏が受け取った配当は43.7億円と計算されます。

 そして、前澤社長は3%以上の大口株主なので、総合課税の対象となり、実質税率48.6%により税金は21億円になります。

 次に譲渡所得です。国税庁の統計データによれば、2016年度に100億円超の所得を申告した人は17人いて、そのうち16人が株式譲渡益です。16人のうち2人が千葉県に在住しています。有価証券報告書によれば、前澤社長の住所は千葉県なのでその2人のうちの1人が前澤社長ということになります。つまり、前澤社長は2016年度に株式譲渡で100億円以上もうけたということになります。残念ながら、国税庁の統計では譲渡金額は不明ですが、金融庁の「大量保有報告書」でわかります。

 この金融庁のデータによると、前澤社長は2016年5月18日に590万株を4,604円で売っています。売却総額は271億円になります。譲渡所得は、買った時と売った時の差額ですから271億円全部が所得ではないかもしれませんが、前澤社長は創業時から持っていたのですから、もとはほとんどゼロに等しく、売却額のほとんどが所得でしょう。

 前澤社長の譲渡所得271億円は分離課税で住民税あわせて税率20%ですから54億円の課税になります。

 前澤社長の税金は、配当が21億円、譲渡所得が54億円となり、合計75億円です。前澤社長みずからの言う「2016年度77億円」に符号します。

 前澤社長の配当と譲渡取得を合わせた315億円のうちの譲渡所得271億円は86%ですから、前回紹介した以下の財務省データとも符号します。

 

 

 前回紹介したものは「一般論」「全体の問題」だけではなく前澤社長にもきっちり当てはまっているのです。前澤社長の税金が77億円といっても、もとになった配当と譲渡所得を合わせれば315億円で所得に対する税負担率は24%にしかなりません。前澤社長も「富裕層全体」「富裕層一般」と全く同じで富裕層優遇税制の恩恵を受けているのです。前澤社長は決して最高税率55%もの負担をしているわけではないのです。(井上伸)

2018-10-11 12:23:28

ZOZO田端信太郎氏 @tabbata の無知→富裕層所得の8割は株式譲渡で税負担低いby財務省

テーマ:経済・財政・税制の問題

 前回書いた「ZOZO前澤社長は年収100万円の貧困層より税・社会保険料が軽いのに田端氏が富裕層課税強化を批判」に対する、ZOZOのコミュニケーションデザイン室長の田端信太郎氏のツイートです。(※キャプチャ画像とともに「▼」にリンクを貼っています)




 どちらが「無知」なのか財務省のデータで検証してみましょう。

 下のグラフは財務省による「申告納税者の所得税負担率」です。

 



 上のグラフにあるように、財務省も「株式等の保有が高所得者層に偏っていることや、分離課税となっている金融所得に軽課していること等により、高所得層で所得税の負担率は低下。」と指摘しています。

 この財務省のグラフだけでもZOZOの田端信太郎氏の「無知」は証明できているのですが、田端氏は「上場企業の株3%以上持ってると配当は総合課税だから間違いなく最高税率の55%。客観的な事実と大見得切ってるが間違っとるで。」「要するに無知なんですよねぇ。」というツイートをするぐらい、田端氏は相当な「無知」なので説明しておきましょう。

 下のグラフは財務省による「高額所得者の主要な所得の構成割合」です。所得が高くなればなるほど株式譲渡所得の構成割合が高くなるのですが、所得階層ごとにグラフにすると煩雑なので「9千万円~1億円」と「10億円超」をグラフにしてみました。

 



 上のグラフにあるように、田端氏が誇る「上場企業の株3%以上持ってると配当は総合課税だから間違いなく最高税率の55%。」の「配当所得」はZOZO前澤友作社長のように10億円を超える富裕層ではわずか6.7%しかないのです。そして、分離課税20%と優遇される「株式譲渡所得」が8割を超えているのです。富裕層の所得で8割を超える「株式譲渡所得」が分離課税20%で優遇されて、最高税率であったとしても「配当所得」は6.7%しかないから、財務省も「株式等の保有が高所得者層に偏っていることや、分離課税となっている金融所得に軽課していること等により、高所得層で所得税の負担率は低下。」しこの富裕層の優遇税制で年間1兆円(財務省によると2016年度で分離課税による富裕層の減税額は1兆260億円)が失われていると指摘しているのです。田端氏、どちらが「無知」なのか、これでよくわかったのではないでしょうか。(井上伸)

2018-10-09 14:36:35

ZOZO前澤社長は年収100万円の貧困層より税・社会保険料が軽いのに田端氏が富裕層課税強化を批判

テーマ:経済・財政・税制の問題

 ZOZOの前澤友作社長のツイートです。(※画像キャプチャとともに「▼」にツイートへのリンクを貼っておきます)




 上記のツイートに対する藤田孝典さんのツイートです。



 

 そして、前澤社長に呼応しての田端信太郎氏(ZOZOのコミュニケーションデザイン室長)のツイートです。




 私は藤田さんと同じ意見なのですが、その理由を少し具体的に紹介しておきます。

 

 田端氏は課税強化を批判しているわけですが、そもそも富裕層の負担はどうなっているでしょうか? 見てみましょう。

 以下のグラフは所得税の負担率です。年所得が1億円を超えると所得税が軽くなることが分かります。なぜ年所得1億円以上になると所得税が軽くなるかというと、年所得1億円以上の人は株の売買で儲ける比率が高くなることに加えて日本は配当課税と株式譲渡益課税が分離課税で20%と主要国と比べても低いからです(※2018年1月現在でイギリス38.1%、フランス30%、ドイツ26.375%)。日本は額に汗して働くと所得税は30%近くまでになるのに、額に汗しない株による不労所得を得ると税金が安くなっていくという富裕層優遇国なのです。

 





 次に消費税です。以下のグラフにあるように、年収に占める消費税負担割合は、200万円未満は7.2%に対して、1,500万円以上は1.6%です。前澤社長と田端氏よりも200万円未満の貧困層が4.5倍も消費税を収めているのが客観的事実です。

 



 以下は消費税・所得税・社会保険料・住民税の税・社会保険料負担率を折れ線グラフにしてみたものです。

 

 


 上記の折れ線グラフを積み上げグラフにしてみたものが以下です。

 



 上記のグラフにあるように、年所得100億円超の税・社会保険料負担率は24.0%に対して、年所得70万円~100万円以下は27.6%です。ZOZO前澤社長は100万円以下の貧困層より税・社会保険料を負担していないというのが客観的な事実です。

 それから、前澤社長はこんなツイートもしています。




 ところが、東洋経済ONLINEの「社員と役員の年収格差が大きいトップ500社」によると、ZOZO(2018年9月まではスタートトゥデイ)もしっかりランクインしていて、社員と役員の年収格差は7倍とのことです。





また、前澤社長の無邪気なツイートです。





 子どもたちの夢を壊しているのは貧困であることは、繰り返し解説してきました。加えて先進主要国クラブのOECDでさえ、貧困と格差が日本経済をダメにしていると断言しているのです。そして、今の日本は「子どもたちが夢を見る」どころか、子どもが普通に存在すること自体が以下のように困難になっているのです。

◆子どもの数も割合も過去最少、教育と暮らしの貧困で「結婚・子育て」そのものが困難な日本

◆子どもの貧困放置は日本経済に50兆円の損失をもたらす

◆駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生、100円ショップの薬用オブラートで空腹まぎらわす子ども、深刻な6人に1人の子どもの貧困を深刻化させ経済成長も損なう安倍政権

◆自販機の裏で暖を取り眠る子ども、車上生活のすえ座席でミイラ化し消えた子どもの声が届かない日本社会


 この間のアベノミクスで貧困と格差はさらに広がっています。以下のグラフの富裕層40人の中に前澤社長も入っていますが、富裕層上位40人の金融資産は2倍増になる中で、貯蓄ゼロ世帯は401.2万世帯も増えているのです。そして前澤社長を含み富裕層上位40人の金融資産は日本の全世帯の52%(2,607万世帯)の資産と同じになっているのです。

 



 また、以下のように年齢階層別に見てもすべての年齢層において貧困が広がっています。

 



 ZOZOの前澤社長も田端氏も「貧困は自業自得」などと揶揄し「貧困を自己責任」にして、子どもの夢を壊した上に日本経済そのものもダメにすることはやめてほしいと思います。そして、少なくとも貧困層や中間層と同等の税・社会保険料をきちんと負担するようにしてもらいたいと思います。(井上伸)

2018-08-09 13:25:45

サマータイムで4千万人が寝不足・体調不良・仕事効率低下になる(霞が関の国家公務員の実証実験から)

テーマ:霞が関・公務関連情報

 前回の記事「森喜朗氏「サマータイムで地球環境の持続を」→省エネに逆行、労働者の命と健康を損なうサマータイム」に引き続き、サマータイムの問題についてです。

 私たち国家公務員は、2015年の夏(7~8月)からサマータイムと同様、1~2時間前倒しで働く「ゆう活」を安倍政権から押し付けられています。国公労連は導入時から「ゆう活」は公共サービス低下と国家公務員の健康・生活に悪影響を及ぼすと反対してきました。労使合意もなく政府が一方的に「ゆう活」を2015年7~8月に強行した際には、国公労連として「『ゆう活』に関する実態アンケート」を実施し、「ゆう活」で働いた国家公務員2,536人からアンケートの回答を得ました。

 当初から危惧した通り、「公務・公共サービスの提供に支障が出た」と回答した国家公務員は14.0%にのぼりました。国家公務員で実施されている「ゆう活」は、国民全体の時間が前倒しになるサマータイムと違って、国家公務員の勤務時間だけが1~2時間前倒しになるので、国民との関係で「公務・公共サービスの提供に支障が出る」ことは当然ですが、さすがの政府も窓口業務のところには「ゆう活」を強制できなかったので14.0%程度の数字にとどまったという面も強いと考えられます。

 同時に危惧していた国家公務員の健康・生活への悪影響の問題です。下のグラフにあるように、本府省で働く国家公務員の15.6%が「体調不良になった」と回答し、15.6%が「仕事の効率が落ちたり、疲れた」と回答しています。政府による「2015年度 国家公務員における「ゆう活」・ワークライフバランス推進強化月間取組結果」においても、24%が「寝不足になった」と回答していますから、1~2時間を前倒しにするサマータイムが労働者の24%~31.2%に「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」をもたらすことは明らかです。

 



 自由記入欄には、「身体リズムが崩れ、疲れやすくなり仕事の効率が悪くなった」(府県機関で働く女性)、「生活のリズムがくるい、疲労度が大幅にあがった」(本府省で働く男性)、「業務の量は変わらず、そもそも職員が不足しているので、勤務時間管理の事務処理が煩雑になり加わる分、負担が増加し仕事の効率も低下する」(出先機関で働く男性)、「結局、『ゆう活』と言いながら、霞が関不夜城で最も過酷な国会対応や予算担当の職員を最初から対象外としているわけで、超勤縮減やワークライフバランスに政府が本気で取り組んでいるなんてウソだ」(本府省で働く男性)、「朝が1~2時間前倒しになると、子どもを保育園に送って行くことができず、家族責任を果たせない」(出先機関で働く男性、※これは国家公務員だけが前倒しになった弊害です)などの声が寄せられています。

 こうした国家公務員における7~8月の1~2時間の前倒しは、日本におけるサマータイムの実証実験とも言えると思います。そうすると、24%~31.2%に「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」をもたらすことを国民全体にあてはめてみると、日本の総人口は1億2670万6千人(2017年10月1日現在)ですから、その31.2%は3,953万2千人になります。サマータイムによって、4千万人が「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」をもたらすことになるわけです。

 東京オリンピックの公式サイトを見ると、「3つの基本コンセプト」の1つめに、「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」を掲げ、「万全の準備と運営によって、安全・安心で、すべてのアスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、自己ベストを記録できる大会を実現。ボランティアを含むすべての日本人が、世界中の人々を最高の『おもてなし』で歓迎。」などと謳われています。サマータイムで日本に住む4千万人に「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」を強いておいて、アスリートには自己ベストを、すべての日本人には最高の「おもてなし」を求めるという、こんな倒錯した東京オリンピックのためのサマータイム導入は絶対に許されません。(井上伸)

2018-08-08 02:20:10

森喜朗氏「サマータイムで地球環境の持続を」→省エネに逆行、労働者の命と健康を損なうサマータイム

テーマ:働くルールづくり

 安倍首相が昨日(8月7日)、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長と会談し、暑さ対策として「サマータイム」の導入を検討するよう自民党に指示する考えを示しました。そのことを伝えるテレビ朝日の報道ステーションを見ていて、森会長の発言があまりにひどいと思ったので指摘しておきます。



 サマータイムの導入を求めて森会長は、「地球環境の持続を求めていくことは国際的に大事なことだ。ちょうどオリンピックが一つのいいきっかけになる」などと発言しました。サマータイムが地球環境の持続に役立つから導入すべきだと森会長は言っているわけですが本当でしょうか?

 サマータイムに省エネ効果があるかどうか、産業技術総合研究所が以下のように分析しています。

 

 すべての人が生活時間を1時間前倒しすると、暑さの厳しい夕方に、事務所で空調需要が減る一方、帰宅後の家庭で30%程度も空調需要が増えてしまいます。(※結果、東京電力管内全域で4%電力需要が増加する)

産業技術総合研究所「夏季における計画停電の影響と空調(エアコン)節電対策の効果」より


 1時間前倒しするサマータイムで家庭での電力需要が増えるため全体の電力需要は4%増加し、省エネどころか逆にエネルギーを浪費して地球環境の破壊をもたらすのです。今回の2時間前倒しのサマータイムになると、さらに家庭での電力需要が増えるため、もっと大きなエネルギー浪費をすることになります。サマータイムが地球環境の持続に役立つどころか、サマータイムは地球環境を一層破壊するのです。2011年にサマータイムを廃止したロシアでも省エネに逆行することが廃止した一つの大きな理由でした。

 そして、森会長は暑さ対策としてサマータイム導入が必要だと言っているわけですが、具体的にどうなるのか考えてみましょう。

 2020年の東京オリンピックの日程で、女子マラソンは8月2日の午前7時がスタートとなっています(男子マラソンは8月9日です)。そこで、今年の8月2日の1時間ごとの気温を気象庁のデータからひろって作ってみたものが以下の表になります(※東京の1時間ごとの気温は、気象庁のサイトの「過去の気象データ」で知ることができます)。

 



 上の表にあるように、マラソンのスタートがサマータイムで2時間前倒しになることによって、スタート時の気温が29.2度から28.4度へ0.8度下がり、ゴール時の気温が32.7度から29.2度へ3.5度も下がることになり、たしかにマラソンの暑さ対策にはなります。ところが、たとえば陸上競技のトラック&フィールドの日程は19:00からになっていますが、サマータイムの2時間前倒しで逆に31.2度から33.3度へ2.1度も暑くなってしまいます。暑さ対策で夜に開催する競技については、サマータイムが逆に作用してしまうのです。これはアスリートはもちろん、観客や大会スタッフ、ボランティアなどにも深刻な悪影響を及ぼすことになります。

 何よりも問題なのは、東京オリンピックの暑さ対策のためだけに、国民全体が巻き込まれてしまうことです。上の表にあるように、現在の10歳以上の平均起床時間は6時32分です(総務省「社会生活基本調査」2016年版)が、サマータイムで4時32分に起床することになってしまいます。4時の気温を見れば分かるように、1日24時間のうち最も涼しく質の高い睡眠が得られる時間帯に起床することになります。加えて、就寝時間が23時12分から21時12分に前倒しされることにより、28.8度から30.3度と30度を超える寝苦しい暑さの中で就寝しなければならず、眠りの質の劣化と睡眠不足を同時に引き起こします。日本睡眠学会が「サマータイム――健康に与える影響」の中で指摘しているように、サマータイムの導入は睡眠の質と量の両面を劣化させます。欧州諸国での研究によってサマータイムの導入前後で睡眠時間が1割短くなって睡眠不足と睡眠の質の劣化で、生体リズムを崩し、肥満、心筋梗塞などの心疾患、脳血管疾患、糖尿病など生活習慣病のリスクをため、睡眠障害が増加し、うつ病など精神疾患の増加をもたらすことになるのです。(※ツイッターでもサマータイムの問題点を簡潔にまとめておいたので参照ください→サマータイムの問題点

 サマータイムを日本も1948年、連合国軍総司令部(GHQ)の指示で導入したことがありますが、朝早く出勤しても明るいうちに退勤とはならず、長時間労働が増加して労働強化になったという批判などが国民から出されて4年で廃止されました。今現在は、さらに高度プロフェッショナル制度や過労死ライン合法化が加わっているわけですから、昔より一層の長時間労働がサマータイムによってもたらされる危険性は大きくなっています。労働者の命と健康を守るためにサマータイムの導入はやめさせる必要があります。(井上伸)

2018-08-06 01:20:29

東京医科大の女性差別入試、主要国最悪の女性差別オンパレードの日本vs男女平等が成長の原動力の北欧

テーマ:働くルールづくり

 東京医科大学による女性差別入試の発覚に続き、安倍政権による女性活躍進政策の補助金8,026万円が東京医科大学に交付されていたことが判明しました。2017年のジェンダーギャップ指数(男女格差指数)の世界順位を114位と過去最悪にした安倍政権。女性活躍推進と言いながら、じつは女性差別推進につながるものであったことがよく分かる事例でもあります。

 「NewSphere」によると「東京医大の女子減点、海外メディアも大々的に報道 国内の反発にも注目」して、英テレグラフ紙は「女性は子供を産めと言われ、産まなければ『非生産的』と揶揄される。その一方で、子供を産むかもしれないという理由で減点される。いったい女はどうすればいいの?」というソーシャルメディア上のコメントを掲載しているとのことです。あらためて、日本社会における女性差別のいくつかの現状を、OECDなどの国際比較データで見ておきたいと思います。

 医師でタレントの西川史子氏が8月5日放送のTBS「サンデージャポン」で、東京医科大の女子受験者一律減点は「当たり前。女性と男性の比率は考えないと」などと発言したとのことです。西川史子氏は女性差別入試をしてでも男性の比率を上げることが「当たり前」と言っているわけですが、世界の状況を見てみましょう。

 下のグラフは、OECDの直近データから作った32カ国の「医師の女性割合」です。各国2016年のデータで、日本の医師の女性割合は21.0%と最下位です。日本の21.0%というのはトップのラトビア74.2%の3分の1にも満たない異常に低い割合です。こんなに「医師の女性割合」が低いわけですから、不正入試をしてでも男性の比率を上げることが「当たり前」などという言説がいかにデタラメであるかがよく分かると思います。




 東京医科大が受け取っていた8,026万円の正式名称は「女性研究者研究活動支援事業」の補助金です。下のグラフは内閣府「男女共同参画白書」2017年版に掲載されている「研究者に占める女性の割合の国際比較」です。日本は15.3%と断トツで最下位です。

 



 下のグラフはUNESCOの直近データから作った「高等教育の男女在学率」です。日本以外の国はいまや男性より女性の方が在学率が高いのです。しかも日本の女性の在学率は60.9%とアメリカの99.6%より40ポイント近くも低いのです。

 




 下のグラフはOECDの直近データから作った「高等教育の教員の女性割合」です。日本は26.8%と断トツの最下位で、フィンランド51.1%の半分程度しかありません。

 




 このような、医師・研究者・高等教育における世界でも異常なレベルの女性差別はどこから来るものなのでしょうか? その一つの要因として、下のグラフにあるように、立法府の「国会議員の女性割合」がOECD加盟国で唯一1割にも満たない現状があると思います。

 




 加えて、下のグラフにあるように国の行政を担う「国家公務員の女性割合」も日本は17.6%と断トツで最下位で、トップのポーランド69.3%のわずか4分の1しかありません。

 




 そして、下の2つのグラフにあるように、「国家公務員の上級管理職・中間管理職の女性割合」はトップの国と比較するとそれぞれ17分の1、22分の1と少な過ぎるにもほどがあるような異常な数字に日本はなっているのです。


 


 この異常な女性差別は、なにも国家公務員に限ったものではなく、下のグラフにあるように「上場企業の取締役の女性割合」も同様で、日本経団連の役員に女性がいない理由がよく分かるデータです。



 そして三権分立の最後、司法においても同様であることが下のグラフで分かります。



 前回の記事「東京医科大学の女性差別入試は日本社会を劣化させ日本経済も衰退させるもの」でも指摘していますが、女性差別は日本経済も衰退させるものです。この点について、OECDは今年5月14日に「北欧諸国における男女平等の経済的利益」という報告書を発表して、北欧諸国のデンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンにおける男女平等政策が経済成長に大きく貢献したことを指摘しています。以下この報告書のサマリーの一部です。

 

 デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンは、自宅・職場・公的な生活において近代的な家族政策とジェンダー平等政策を積極的に推進しています。ジェンダー平等の促進は、保健衛生、社会保障、教育、労働市場、全般的な公共政策の主流になり、雇用主組織、労働組合、大多数の労働者を対象とする団体協約においても推進されています。

 北欧諸国の政策アプローチは、すべての男女が働き続けることができる環境づくりを目指すことにあります。子育てや介護などケアが必要な際に性差が浮かび上がることを念頭に置いて、北欧の政策は、父親と母親の両方が労働市場に全面的に参加できるように、包括的な公立保育、公立児童教育と介護サービスを確立した上で継続的支援を大規模な公共セクターが提供することを目指しています。

 北欧諸国は、子育て、高齢者のケアの拡充に加えて、母親と父親のための育児休暇の取得を進め、労働組合は、労働者がより柔軟で家族にやさしい労働時間を選ぶことができるようにしました。

 北欧諸国は、他のOECD諸国よりもジェンダー平等への道を進み、1960年代後半以降、女性の雇用率は、すでに雇用率が高かったフィンランドを除いて、20~25ポイント上昇。今ではアイスランドの83.4%などOECD平均の59.4%を大幅に上回っています。

 その結果、北欧諸国における雇用のジェンダー格差は平均で約4%と最も低く(OECD平均は12%)、母親は他のOECD諸国よりもフルタイム雇用に就いています。

 こうした過去50年間に北欧諸国が導入したジェンダー平等政策により、1人当たりGDPの伸び率は10%から20%向上しました。

OECD5月14日報告書「北欧諸国における男女平等の経済的利益」



 以上がOECDの報告書のサマリーの一部ですが、この報告書を発表する際、アンヘル・グリアOECD事務総長は、「男女平等は基本的人権であり、包括的な成長の原動力である」と述べています。それに比べて、子育てや介護を「伝統的家族」に押しつけ女性差別を推進する安倍政権は成長そのものを自ら損ねているとしか言いようがありません。(井上伸)

2018-08-02 18:21:48

東京医科大学の女性差別入試は日本社会を劣化させ日本経済も衰退させるもの

テーマ:働くルールづくり

 東京医科大学が2月に実施した医学部医学科の一般入試で、女性受験者の点数を一律に減点し、女性の合格者数を減らしていたことが判明しました。大学側は「女性は大学卒業後に出産や子育てで、医師現場を離れるケースが多い。医師不足を解消するため」「いわば必要悪。暗黙の了解だった」とし、女性の合格者を全体の3割以下に抑える調整が行われてきたとのことです。こうした女性差別は日本社会を劣化させ日本経済もさらに衰退させるものです。

 下のグラフは、OECDの「ジェンダー白書」に掲載されている「男女差別の解消と経済成長の見通し(各国のGDPで、単位は10億米ドル)」に、私が「男女差別が解消するシナリオでのGDP」が「男女差別に変化なしのシナリオでのGDP」の何%にあたるかを書き加えたものです(男女差別は2010年の各国水準を起点にしています)。グラフを見て分かるように、「男女差別が解消するシナリオでのGDP」が最も高くなるのが、119%の日本です。男女差別を解消すると、アメリカやフランスの109%より、経済成長が10%も日本は高くなるとOECDは見通しているのです。

 



 そして、OECDの「ジェンダー白書」は、男女差別を解消すると日本のように経済成長が大きくなる国は、「大きな男女差別が存在するため、結果として女性労働力の有効活用による経済成長の可能性が高くなる。逆に男女差別が小さい国では、プラス効果は限定的になる」「政府と雇用主にとって今後の重要な課題は、女性が働くことにもっと魅力を感じるような労働条件と賃金の実現を進めること」「男女がもっと平等に有償・無償労働に参加する必要があり、そのために職場慣行をそれぞれの労働への需要を満たすのに適したものに変えることが必要」と指摘しています。世界的に見ても最悪レベルの女性差別が存在する日本のような国は、そもそも経済成長そのものを妨げているわけです。それなのに、さらに女性差別を日本社会で助長する東京医科大学の行為は経済成長をも低下させるものです。

 また、世界経済フォーラムの2017年版ジェンダーギャップ指数(男女格差指数)の世界順位で、以下のように安倍政権で2017年は114位と過去最低を記録しています。

 



 この世界経済フォーラムの「男女格差指数(経済活動への参加・機会)」(※100に近いほど平等)とIMFの「1人当たり名目GDP(年平均為替レートベースでの米ドル換算)」(※いずれも2017年のデータ)でグラフを作ってみたものが以下です。

 



 上のグラフにあるように、女性が経済活動に参加する国ほど経済成長するのです。2017年版ジェンダーギャップ指数で男女平等度が2位のノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相は、読売新聞のインタビューに以下のように答えています。

 

 ――なぜ男女平等か。

 「一義的には公平性の問題だ。だが、経済的な理由もある。女性が経済活動に参加すると国内総生産(GDP)が増加する。ノルウェーでは女性の77%が働くが、北海油田が産出する石油よりもGDPに貢献しているという研究もある」

 「高福祉なのになぜ経済成長が可能なのかとよく聞かれるが、公的な育児支援が充実していれば、家庭と仕事を両立できる。所得格差が大きく育児支援が貧弱な国では、保育サービスを買える裕福な女性でないと仕事もできないし、政治にも参加できない」

 ――日本では「すべての女性が輝くことができる社会」を成長戦略の中心に位置づけているが、道のりは遠い。

 「重要なのは仕事と家庭のバランスだ。どちらか一方を選ぶべきではない。選択を迫ると、子どもの数も働く女性も少なくなる」

 ――2000年にノルウェーで男女平等を取材した時、男性からもっと育児に参加したいという訴えが増えていると聞いた。

 「この20~30年、育児は男性にとってますます重要になっている。育休の父親割り当て制度など、父親が早期から育児に関われるよう法制度も整備された」


読売新聞2018年3月3日付 [編集委員が迫る]「男女不平等」幸せですか エルナ・ソルベルグ氏

 

 ノルウェー首相が指摘している「一義的には公平性の問題だ。だが、経済的な理由もある。女性が経済活動に参加すると国内総生産(GDP)が増加する。ノルウェーでは女性の77%が働くが、北海油田が産出する石油よりもGDPに貢献しているという研究もある」という言葉を、日本社会が理解して女性差別を解消してしかない限り、日本社会の劣化と日本経済の衰退は止まるわけがないと思います。

 

(井上伸)

2018-06-27 12:57:20

二階自民党幹事長「産まないは勝手な考え、食べるに困らない」→産めない高プロ、600万人が食料ない

テーマ:働くルールづくり

 共同通信の配信記事です。

 

 自民党の二階俊博幹事長は26日、東京都内で講演し、少子化問題を巡り「この頃、子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」と述べた。子どもを持たない家庭を批判したようにも受け取れ、波紋を広げそうだ。

 同党の加藤寛治衆院議員が5月、新婚夫婦に3人以上の出産を呼び掛けていると発言し、批判を浴びたばかり。二階氏は講演で「皆が幸せになるため、子どもをたくさん産み、国も発展していこう」とも語った。

 貧困問題に関しては「今は食べるのに困る家はない。こんなに素晴らしい幸せな国はない」と言及した。
共同通信2018/6/26 23:19「二階氏「産まない」は勝手な考え 都内で講演、少子化問題巡り発言」


 そして、TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」のサイトで文字起こしが紹介されています。

 

 出席者の質問:自民党と政府が一体になって、早く結婚して早く子どもを産むように促進してもらいたい。

 二階幹事長:大変、素晴らしいご提案だと思います。そのことに尽きると思うんですよね。しかし、戦前の、みんな食うや食わずで、戦中、戦後ね、そういう時代に、「子どもを産んだら大変だから、子どもを産まないようにしよう」といった人はないんだよ。この頃はね、「子どもを産まない方が幸せに送れるんじゃないか」と勝手なことを自分で考えてね。国全体が、この国の一員として、この船に乗っているんだからお互いに。だから、みんなが幸せになるためには、これは、やっぱり、子どもをたくさんを産んで、そして、国も栄えていくと、発展していくという方向にみんながしようじゃないかと。その方向付けですね。みんなで頑張ろうじゃないですか。食べるに困る家は実際はないんですよ。一応はいろいろと言いますけどね。「今晩、飯を炊くのにお米が用意できない」という家は日本中にはないんですよ。だから、こんな素晴らしいというか、幸せな国はないんだから。自信持ってねという風にしたいもんですね。

【音声配信・文字起こし】自民党・二階幹事長の「子どもを産まないは勝手な考え」発言を検証▼2018年6月26日(火)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)



 高度プロフェッショナル制度を含む「働き方一括法案」について、安倍政権は明日(6/28)強行採決するかまえですが、昨日(6/26)AEQUITAS(エキタス)が取り組んだ「#0626高プロ反対国会前抗議行動」でスピーチした上西充子法政大学教授は要旨次のように指摘しました。

 「この間の野党の追及で、高プロを労働者は求めておらず、高プロには立法事実がないことが明確になりました。安倍首相は経団連の会長から要請を受けたとして高プロは経済界からの求めであることを明言しました。そして、参院厚生労働委員会で社民党の福島瑞穂議員が重要な質問をしています。女性が高プロを選んで働いているときに子どもを産みたいと思ったとき果たして産めるでしょうか?という質問をしました。高プロというのは、自分の世話も誰かに頼んで、自分の時間も仕事に目一杯つぎ込む働き方です。この働き方を男性がしていると、その男性の妻となった女性の方はそれを支えなければいけない。女性の方は同じようには働けない。逆に女性が高プロで働いていると結婚して出産することは無理です。安倍政権は少子高齢化の中でいったい何をやっているのでしょうか。この福島議員の質問に対して、いや希望した人の働き方ですから、交渉力のある人の働き方ですから、最終的には本人の選択ですからみたいなことを加藤厚労大臣は言いました。あまりにも無責任です」
(「#0626高プロ反対国会前抗議行動」での上西充子法政大学教授のスピーチの一部要旨。※文責=井上伸)


 あらためて指摘しておきますが、高プロは「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない」という、労働基準法の労働時間等に関する規定を適用除外するだけです。「働いた時間ではなく、成果で評価する仕組み」は高プロには一切ありません。そうすると、以前指摘したように「高度プロフェッショナル制度がもたらす地獄絵図=48日間連続の休憩なし24時間労働が合法」になるので以下のようになってしまいます。

 

 



 安倍首相は昨年(2017年)9月の記者会見で「この解散は、国難突破解散であります。急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く。」「この国難とも呼ぶべき問題を、私は全身全霊を傾け、国民の皆様と共に突破していく決意であります。」と語りました。少子高齢化という国難を突破するどころか、安倍首相は高プロ強行採決でさらに少子高齢化を加速させようとしているのです。そして、二階自民党幹事長は「子どもを産んだら大変だから、子どもを産まないようにしよう」「子どもを産まない方が幸せに送れるんじゃないか」は「勝手な考え」と批判していますが、「子どもを産んだら大変」「子どもを産まない方が幸せ」どころか、自分自身をケアする時間さえ奪ってしまう高プロは子どもを産むことすらできないのです。もっと言うと日本は以下のように長時間労働によって生活時間を奪われているため、睡眠時間も家事労働時間も短く今でも子育てが困難なのです。高プロは今でも子どもを産み育てることが困難な日本の状況をさらに悪化させるものです。

 

 

 



 それから、二階自民党幹事長は、「食べるに困る家は実際はない」「今晩、飯を炊くのにお米が用意できないという家は日本中にはない」「こんな素晴らしいというか、幸せな国はない」と言っています。下のグラフを見てください。OECDの直近データから私が作成したものです。

 



 上のグラフにあるように、ひとり親世帯の子どもの貧困が日本は世界最悪です。そうしたことから、自販機の裏で暖を取り眠る子ども、車上生活のすえ座席でミイラ化し消えた子どもの声が届かない日本社会ですし、駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生、100円ショップの薬用オブラートで空腹まぎらわす子ども、深刻な6人に1人の子どもの貧困を深刻化させ経済成長も損なう安倍政権という実態が広がっているのです。

 さらに、舞田敏彦さんが「この1年間,十分な食料がない状態で過ごしたことがある」「飢餓経験率は5.0%と算出されます。国民20人に1人です。この比率を人口の概数(1億2千万人)に乗じると,600万人となります。」と指摘しています。「食べるに困る家は実際はない」「今晩、飯を炊くのにお米が用意できないという家は日本中にはない」どころか、日本において国民20人に1人、600万人が「十分な食料がない状態で過ごしたことがある」のです。

 高プロで少子化を一層加速させ、貧困問題の存在すら認識しない安倍自民党政権。いまの日本社会の最大の「国難」は、こんな安倍自民党政権が継続していることにあると私は思います。

(井上伸)

2018-06-25 01:55:45

竹中平蔵パソナ会長「8時間労働なんてあり得ない話」「高プロは残業概念なくなるから残業代払わない」

テーマ:働くルールづくり

 前回の記事「竹中平蔵パソナ会長「残業代を出すのは一般論としておかしい」「労働者でなく私のニーズで高プロ提唱」」の続編を、というリクエストがあったので、竹中平蔵パソナ会長の直近の書籍の言説をいくつか見ていきたいと思います。

 まず、数日前の6月21日に発行されたばかりの竹中平蔵パソナ会長著『この制御不能な時代を生き抜く経済学』(講談社+α新書)からです。

 

 私は東大が復活するには民営化するのが手っ取り早いと考えている。

 日本の有力大学は膨大な遊休資産を持っている。とくに東京大学や京都大学は不動産を含め、莫大な資産を保有する。しかし、こうした資産の使い道がこれまで限られていた。教育や研究目的以外に使用することができなかったのである。私は各大学が持つ資産をもっと自由に活用させるべきだと思う。たとえば、民間企業に土地を貸し、ショッピングセンターでも老人ホームでも運営させればいい。極端な話、貸しビル業をしてもいいかもしれない。そこで生まれた収益を教育や研究開発費に回せばいいのである。
竹中平蔵パソナ会長著『この制御不能な時代を生き抜く経済学』(講談社+α新書)


 さすが竹中パソナ会長です。国立大学は民営化すれば復活するんだけど、とりあえず大学は広大な土地とか切り売りしたり、ショッピングセンターを運営して稼いだお金を教育や研究開発費に回せばうまくいくとのこと。わかります。大学が運営するショッピングセンターや、民営化された大学で、パソナの派遣労働者が多く働くことができるというわけですね。

 この話、冗談なのかと思っていたら、安倍政権の未来投資会議なるものの議員にしっかり入っている竹中パソナ会長が、「第四次産業革命推進に不可欠な4つの政策」のうちの1つとして「研究開発のための大学資産活用」をあげて、すでに安倍政権下で実際の政策として推進しています。残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度も竹中パソナ会長のニーズでしたが、「未来投資会議」での国立大学資産の活用も竹中パソナ会長のニーズで推進されているのですね。竹中パソナ会長のニーズでいろいろな政策を展開する安倍政権、さすがです。

 さらに突っ込むと、安倍政権は軍事費や軍事研究予算は毎年増やしていますが、国立大学法人の基盤的経費(運営費交付金)は毎年削減しています。必然的に研究環境は悪化して論文数や「論文の質の高さを示す指標の一つである被引用数Top10%補正論文数ランキングについては大きく低下」と日本の科学技術力が大きく衰退しているとする「科学技術白書」(下の表)を安倍政権自ら6月12日に閣議決定するなど認めざるを得なくなっているのです。安倍政権が研究の基盤的経費を毎年削減して日本の研究環境を悪化させておいて、国立大学はもうダメだから民営化するしかないとか、ショッピングセンターを運営しろとか、さすが竹中パソナ会長としか言いようがありませんね。

 



 それからこの出版されたばかりの竹中パソナ会長の本にはこんなことも書いてあります。

 日本の消費税が景気に打撃を与えるのは、高額商品に対する軽減税率がないことが大きい。

 年収400万~800万円程度の中間所得層に対する税率を引き上げるべきである。「普通の人」にもっと税負担をしてもらわないと、日本の税制度は成り立たない。
竹中平蔵パソナ会長著『この制御不能な時代を生き抜く経済学』(講談社+α新書)

 さすが富裕層の代弁者、新自由主義者の竹中パソナ会長です。消費税が富裕層に打撃を与えたり、中間層こそ税負担せよなどと現実とは真逆のことを平然と主張するなんて普通の人間は真似できません。

 



 あの日本経済新聞社でさえ「低所得者ほど負担割合高く」としたグラフ(上記)を示し、現状の消費税率8%の負担割合は、年収200万年未満7.2%で年収1,500万円以上は1.6%と4.5倍も低所得層の方が負担が重いことを指摘しています。この最悪の逆進税の消費税を増税して安倍首相は教育や社会保障を充実するとしていますが、そもそも高所得層より低所得層から4.5倍も収奪する消費税の増税を先行させてしまうと富の再分配が逆方向になり生活破壊が進むだけです。

 

 



 また、上のグラフにあるように、所得税は年所得1億円を超えると軽くなるという異常な状況にあります。さらに、消費税と住民税と社会保険料を積み上げると年所得100億円超の富裕層の負担は、下のグラフにあるように年所得100万円の貧困層の負担より軽くなります。中間層が税負担をしていないなどと言う竹中パソナ会長の主張は事実と違います。富裕層が税負担をしていないことが問題なのです。そもそも、竹中パソナ会長のニーズで労働者派遣法など労働法制が改悪され、雇用破壊が進み、中間層が細っていくことで貧困と格差が拡大しているのに、さらに中間層を細らせて貧困を増やして、富裕層のみを太らせようとする竹中パソナ会長、すさまじい人間としか言いようがありません。そういう意味では、残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度年収300万円台まで適用可能ですから、竹中パソナ会長は、税負担だけでなく中間層から残業代と命と健康も奪おうとしていることになり、この点でも中間層没落・貧困層拡大へ一貫して安倍政権を支えているわけです。

 そして、竹中パソナ会長の必殺技もこの本で炸裂しています。

 

 間もなく「平成」という時代が終わろうとしている。30年間の平成時代は、経済の面では「失われた25年」と呼ばれることが多い。その総括は、私は間違っていると思う。いいときも悪いときもあった「まだらな25年」という呼び方が正しいと考えている。とはいえ、最も反省すべきは、この間の構造改革のスピードがきわめて遅かったことだ。
竹中平蔵パソナ会長著『この制御不能な時代を生き抜く経済学』(講談社+α新書)


 今の日本経済が上手くいっているとはさすがの竹中パソナ会長も言えません。竹中パソナ会長が先頭になって推進してきた構造改革で良くなるはずの日本経済がなぜ未だダメなのか?と問われると、竹中パソナ会長が最近よく繰り返しているのが「構造改革のスピードが足らないから日本経済はダメなんだ」というものです。さんざん好きなように自ら進めた構造改革(労働法制改悪等)で「失われた25年」をもたらしておきながら(下の4つのグラフ参照)、反省すべきは構造改革のスピードがきわめて遅かったことにするって、もうとてもない詭弁でしかありません。もしもっと構造改革のスピードが速くなれば下のグラフで言えば、労働者の実質賃金はもっと急降下し、大企業の内部留保はさらに急角度で上昇し、ワーキングプアはもっと増加しアメリカと肩を並べる格差大国になるだけです。さすが、派遣労働者から強奪し「改革利権」「究極の天下り」「学商の独り勝ち」の竹中平蔵パソナ会長だし、辛い思いする人、痛みこうむる人がいる格差社会こそ経済にプラス、社会保障は集団的なたかり若者は「貧しさをエンジョイしたらいい」と豪語する竹中パソナ会長だけのことはあります。

 

 

 

 



 次に今年3月1日に発行された『経済学は役に立ちますか?』(東京書籍、2018年3月1日発行)です。

 

 長時間労働を一律に抑えるとかなり大変なことになって、ベンチャー企業が生まれなくなる恐れがあります。先日、ある女性ベンチャリストが、「私は24時間、死にものぐるいで働いてここまできたのよ。なぜ、それを縛るの」と言っていましたが、ベンチャー企業で8時間労働なんてあり得ない話です。
竹中平蔵パソナ会長著『経済学は役に立ちますか?』(東京書籍、2018年3月1日発行)

 

 わかります。長時間労働を一律に抑えたくない、8時間労働なんてあり得ない、だからこそ、休憩なしの24時間労働を48日間連続させても合法になる高度プロフェッショナル制度の旗振り役を竹中パソナ会長は果たされているのですね!

 

 私は奨学金を一律に給付型にすることは賛成できません。

 学生時代に受けた奨学金返済ができずに破産してしまうのは、収益率の高いはずの投資を回収できないということであり、その人が投資に失敗したことを意味します。それはあたかも企業が設備投資に失敗して破綻するようなもので、すべての奨学金を給付型にするということは、銀行は企業に無償で融資すべきだという議論に通じる。今現在でも奨学金を受けて勉強しない大学生はたくさんいるので、すべてを給付型奨学金にすれば大学生はますます勉強しなくなる。つまり、極端な言い方をすれば、ただでお金をもらうわけですから勉強する必要が低下するという逆のインセンティブを与えるような気がします。
竹中平蔵パソナ会長著『経済学は役に立ちますか?』(東京書籍、2018年3月1日発行)

 

 

 これも強烈です。「奨学金を給付型にするということは、銀行は企業に無償で融資すべきだという議論に通じる」とか、「給付型奨学金にすれば大学生はますます勉強しなくなる」って、北欧などにおいて、「教育への投資が将来の経済成長につながり、税収が拡大し、教育にかかるコストよりも教育で得られる利益の方が大きく、平等と経済の活力というものは相反するものではなく、教育機会の平等があってこそ、活力ある社会が生まれている」ことについて、竹中パソナ会長はきちんと勉強した方がいいと思います。しかし、新自由主義者の貧相な考え方がつくづく日本社会をダメにしていることがよくわかる言説でもあります。しかもこの竹中パソナ会長が安倍政権の「未来投資会議」の中心メンバーというのもすさまじい話です。下のグラフは先ほど紹介した政府の「科学技術白書」の中のものですが、資源のない日本は科学技術力こそ重要だと安倍政権自身も言っているのですが、竹中パソナ会長のような貧相な考え方によってますます日本をダメにしている一端がよくわかるグラフです。

 



 今年1月18日に発行された『最強の生産性革命 時代遅れのルールにしばられない38の教訓』(PHP研究所)からです。

 

 実際、派遣にはいろいろメリットがあります。人間関係に囚(とら)われなくていいし、転勤や残業もない。仕事より子育てを優先したい人などには最適でしょ。一人の人生の中でも、ライフステージによって今は残業をしたくないとか、当面は午前中だけの勤務にしたいとか、働き方のニーズはいろいろあると思うんです。そういう多様な働き方を認めるということは、自由な生き方を認めることとほとんど同義なんですよね。
竹中平蔵パソナ会長著『最強の生産性革命 時代遅れのルールにしばられない38の教訓』(PHP研究所、2018年1月18日発行)

 

 派遣労働者は「人間関係に囚(とら)われなくていい」などいろいろメリットがあるという竹中パソナ会長ですが、下記のように派遣労働者のリアルな生の声を900人近くから集めたことがありますので、ぜひ竹中パソナ会長にきちんと読んでもらいたいものです。

【派遣労働者の声1】部品扱い、餓死しかけた、父が亡くなっても忌引き休暇も香典もなし、3年ごとに蟻地獄へ突き落とす派遣法改悪は許せない
【派遣労働者の声2】「派遣法改悪で仕事・生活・命を奪わないでください」 ? 派遣労働者の声聞かず政治は「派遣切り」進めるのか
【派遣労働者の声3】将来への不安、閉ざされる未来、派遣法は本当に癌だ、早死にできるよう病院に行くのをやめた
【派遣労働者の声4】派遣法改悪は3年ごとに必ずクビ切る人権侵害法案、派遣途中での「派遣切り」が横行しているのに派遣期間満了で次の仕事が安定的にあるなど幻想にすぎない
【派遣労働者の声5】派遣法改悪は私たちに「生きるな」と言っているのと同じ、瞬く間に仕事失い、結婚や出産どころか使い捨てられ鬱病へと導く改悪に日本の未来はない
【派遣労働者の声6】ホテルにつきあえば正社員、断れば派遣、3年でクビ切る派遣法改悪で国は私たちに「自殺ほう助」を行うのですか?
【派遣労働者の声7】交通費も制服代も自腹、家族の葬式も墓参りも行けず、3年ごとに居場所まで奪う派遣法改悪でどんなに頑張っても派遣労働者は人として扱われない

 

 労働組合にとっては、非正規の待遇を向上させることで、自分たちの待遇が引き下げられるおそれがある。だから反対しているわけです。いわゆるマルクス主義の理論で言えば、資本主義は資本家が労働者を搾取するという構図でしたよね。でも今起きていることは違うんです。正規社員が非正規社員を搾取している。いわば「労労搾取」であり「労労対立」の構図です。

 生産性より高い給料をもらい、絶対にクビにならないという雇用で過剰に守られている正規社員と、その犠牲になっているその他の労働者という関係です。これはまさに「労労対立」ですよ。

 地方議会でやったらいいと思うのは「土日県議会」や「土日市議会」。そうするとPTAと同じです。ふつうに働いている人が、別の仕事をしながら自分たちが住む街のことを決めればいい。この変化は大きいでしょ。
竹中平蔵パソナ会長著『最強の生産性革命 時代遅れのルールにしばられない38の教訓』(PHP研究所、2018年1月18日発行)

 

 正規社員が非正規社員を搾取してとか、地方議会はPTAと同じように兼業で週末にやればいいとか、これが安倍政権の政策の舵取りをしている産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議、未来投資会議で中心になって役割を果たしている竹中平蔵パソナ会長であることをみなさんよく認識された方がいいと思います。

 下記は昨年2月18日に発行された『第4次産業革命!日本経済をこう変える。』(PHPビジネス新書)からです。
 

 ホワイトカラーに残業代を支払わないのではなく、ホワイトカラーには、残業という概念自体がない

 

 同一労働同一賃金と言うと、待遇の悪い非正規の人たちの待遇改善に注目が集まるが、それはとりも直さず、守られすぎて給料が高すぎる正社員の給料を下げることでもある。この不都合な真実については、多くの人は語らないが…。
竹中平蔵パソナ会長著『第4次産業革命!日本経済をこう変える。』(PHPビジネス新書)

 

 デジタル大辞泉によると、「ホワイト‐カラー(white-collar)《白い襟のワイシャツを着ているところから》雇用従業員のうち、知的・技術的労働や事務・販売の仕事についている者。→ブルーカラー」ですが、「ホワイトカラーに残業代を支払わないのではなく、ホワイトカラーには、残業という概念自体がない」というのは、先の記事「竹中平蔵パソナ会長「残業代を出すのは一般論としておかしい」」と同じような次元にある竹中パソナ会長の妄想ですね。そもそも残業という概念自体もおかしいし、ましてや残業代を出すなんてことは一般論としておかしいから残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度は当然だと竹中パソナ会長の頭の中ではなるわけですね。残業概念もなくなり、残業代もゼロですから、定額働かせ放題・過労死促進法のできあがりです。そして竹中パソナ会長は派遣法と同様に高度プロフェッショナル制度を小さく産んで大きく育てる必要性を力説するわけですね。最後のところにある安倍政権の「働き方改革」の「同一労働同一賃金」がじつは正社員の賃下げに過ぎないというのはとても本質を突いたわかりやすい解説です。

 

 最後に、興味深い竹中パソナ会長の指摘を紹介します。

われわれが行っていた経済財政諮問会議は、総理を中心に10人ほどで構成され、そのうち4割が民間人だった。各省庁を代表する大臣は官僚の立場を代弁することもあるが、議論ではつねに民間人のほうが優勢だった。総理がそこで「そのとおりだ」といえば、それで決まる。これこそが、改革を実現するための方法なのである。(竹中平蔵)

文藝春秋編『アベノミクス大論争』(文藝春秋、2013年3月20日発行)

 竹中パソナ会長は、今の安倍政権でも産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議、未来投資会議で中心的な役割を果たしています。上記の文章の「民間人」というのは竹中パソナ会長をはじめとする財界人ということです。竹中パソナ会長はじめ財界人のニーズに基づいて改革が実現しているのです。今回の残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度も、残業代を払いたくない、いや残業そのものの概念すら消し去って、24時間死にものぐるいで労働者を働かせる「世界で一番派遣会社パソナが活躍しやすい国」にしたいがための改革です。そして残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度が一端導入されてしまえば、以下のようにすべての労働者の残業代が失われていくことになってしまいます。労働者のニーズは残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度の廃案しかありません。

 



(井上伸)

2018-06-21 14:40:41

竹中平蔵パソナ会長「残業代を出すのは一般論としておかしい」「労働者でなく私のニーズで高プロ提唱」

テーマ:働くルールづくり

 竹中平蔵パソナ会長が今朝(6/21)の東京新聞で、残業代ゼロ=高プロ賛成派として登場して呪いの言葉を連発しています。

 

 竹中パソナ会長「時間に縛られない働き方を認めるのは自然なことだ。時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代という補助金を出すのも一般論としておかしい」
 東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は

 わかります。残業代を払いたくないのですね。現時点では派遣労働者に高プロ適用できないとのことですが、労働者派遣法と同じようにパソナ会長として「対象拡大」をして、派遣労働者も「時間に縛られない働き方」にすれば、「パソナの派遣労働者は定額働かせ放題・残業代ゼロです!」を売りにできパソナはさらにボロ儲けできますから、パソナ会長が先頭を切って残業代ゼロ=高プロに賛成することは自然なことですね。

 

 竹中パソナ会長「(高プロを提唱した)産業競争力会議の出発点は経済成長。労働市場をどんどん改革しなければならず、高プロはその第一歩だ。」
 東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は

(※注:政府の産業競争力会議の議員は大企業の役員ばかりで労働者は一人もいません。竹中パソナ会長も議員ですから、竹中パソナ会長は自分が高プロを提唱した、労働者でなく私のニーズで高プロ導入だ!と言っているのと同じですね)

 高プロに対する労働者のニーズはゼロなのに、安倍政権は労働者のニーズがあるから高プロ導入が必要だと未だにウソをつきまくっていますが、さすが竹中パソナ会長! ここは正直ですね! 竹中パソナ会長はじめ大企業役員だけのニーズで高プロは提唱されたのですね! そして、高プロの目的は「経済成長」であって、「働き方改革」でも過労死根絶でも長時間労働根絶でもないのですね! 竹中パソナ会長のお話は非常によくわかります!

 もっと突っ込むと、「高プロは経済成長のため」とする言説もウソです。高プロがむしろ経済成長を阻害して日本経済を低迷させることは、田中信一郎千葉商科大学特別客員准教授が「高度プロフェッショナル制度が日本経済を低迷させるこれだけの理由」という記事の中でわかりやすく指摘しています。それにこの間も、竹中パソナ会長は高プロと同じように派遣労働を拡大することが経済成長につながると主張してきましたが、むしろ労働生産性を低下させ経済成長を損ない日本経済を失速させてきたことを見れば、また竹中パソナ会長の大ウソが発動しているだけだということがよくわかるでしょう。

 高プロが労働生産性を低下させ経済成長を阻害して日本経済を低迷させるとなると、それでは一体、高プロのニーズはどこにあるのでしょうか? それは竹中パソナ会長の話を追っていくとわかってきます。

 

 竹中平蔵パソナ会長「時間ではなく成果で評価する高プロで、労働生産性を上げるインセンティブは間違いなく働く」
 東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は


 「時間ではなく成果で評価する高プロ」というのは大ウソです。高プロの法案には「時間ではなく成果で評価する高プロ」などと書かれていないことは、嶋崎量弁護士や佐々木亮弁護士が繰り返し指摘していることです。
 ★嶋崎量弁護士「本当は存在しない「高度プロフェッショナル制度」~欺瞞性を曝く~」
 ★佐々木亮弁護士「高プロの法案を全文チェックしてみた。【前編】」

 また、高プロがむしろ労働生産性を下げることは、先に紹介した田中信一郎千葉商科大学特別客員准教授が指摘しています。高プロ労働者の裁量は一切ないのでインセンティブは間違いなく下がります。

 

 ――高プロを含む「働き方」関連法案は、過労死促進法案との批判がある。
 竹中平蔵パソナ会長「全く理解していない。過労死を防止するための法案だ。その精神がすごく織り込まれている。例えば年間104日以上の休日をとれと。(適用には)本人の同意も要る。なぜこんなに反対が出るのが、不思議だ」
 4週で4日以上の休日も定めているが、裏を返せば24日間、24時間働かせても違法ではない。
 竹中平蔵パソナ会長「そういう言い方はいくらでもできるが、休みを義務づけているわけだから。しかも、適用されるのはごく一部のプロフェッショナル。」「個人的には、結果的に(対象が)拡大していくことを期待している」「世の中の理性を信じれば、そんな(24時間働かされるかのような)変な議論は出てこない」
 東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は

 


 竹中パソナ会長の「理性」はすごい! 高プロは休憩なしの24時間労働を48日間連続させても違法にならなくなりますが、労働者の命と健康を企業の「理性」にまかせる上に、高プロの対象拡大の期待を表明。毎日1人以上が過労死で命を奪われ労災最多、パワハラ、セクハラ、残業代不払いなどおかまいなしのブラック企業が跋扈している中で、法律を取っ払ってブラック企業の「理性」をブレーキにするのが高プロだと竹中パソナ会長が断言! 高プロ、すごい!というほかありません!

 細かいツッコミも入れておくと、「年間104日以上の休日をとれ」というのは、1年間で祝日もお盆も年末もお正月もないという前提での週休2日に過ぎません。「(適用には)本人の同意も要る。」ことについては、修正された「同意の撤回」すらまったく意味をなさないことを佐々木亮弁護士が指摘しています。(※→佐々木亮弁護士「高プロの法案を全文チェックしてみた。【真の後編】」)また、対象を拡大させたいと言いながら「適用されるのはごく一部のプロフェッショナル」などと竹中パソナ会長は言っていますが、年収300万円台でも適用されたり(※→佐々木亮弁護士「高プロ制度は地獄の入り口 ~ High-pro systm is the gate to hell~」)、通勤手当など諸手当込みであることから年収要件はグッと下がり、竹中パソナ会長の期待する対象拡大をしなくても導入当初から多くの労働者に適用可能であることも判明しています。

(井上伸)

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