すくらむ
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>
2018-08-09 13:25:45

サマータイムで4千万人が寝不足・体調不良・仕事効率低下になる(霞が関の国家公務員の実証実験から)

テーマ:霞が関・公務関連情報

 前回の記事「森喜朗氏「サマータイムで地球環境の持続を」→省エネに逆行、労働者の命と健康を損なうサマータイム」に引き続き、サマータイムの問題についてです。

 私たち国家公務員は、2015年の夏(7~8月)からサマータイムと同様、1~2時間前倒しで働く「ゆう活」を安倍政権から押し付けられています。国公労連は導入時から「ゆう活」は公共サービス低下と国家公務員の健康・生活に悪影響を及ぼすと反対してきました。労使合意もなく政府が一方的に「ゆう活」を2015年7~8月に強行した際には、国公労連として「『ゆう活』に関する実態アンケート」を実施し、「ゆう活」で働いた国家公務員2,536人からアンケートの回答を得ました。

 当初から危惧した通り、「公務・公共サービスの提供に支障が出た」と回答した国家公務員は14.0%にのぼりました。国家公務員で実施されている「ゆう活」は、国民全体の時間が前倒しになるサマータイムと違って、国家公務員の勤務時間だけが1~2時間前倒しになるので、国民との関係で「公務・公共サービスの提供に支障が出る」ことは当然ですが、さすがの政府も窓口業務のところには「ゆう活」を強制できなかったので14.0%程度の数字にとどまったという面も強いと考えられます。

 同時に危惧していた国家公務員の健康・生活への悪影響の問題です。下のグラフにあるように、本府省で働く国家公務員の15.6%が「体調不良になった」と回答し、15.6%が「仕事の効率が落ちたり、疲れた」と回答しています。政府による「2015年度 国家公務員における「ゆう活」・ワークライフバランス推進強化月間取組結果」においても、24%が「寝不足になった」と回答していますから、1~2時間を前倒しにするサマータイムが労働者の24%~31.2%に「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」をもたらすことは明らかです。

 



 自由記入欄には、「身体リズムが崩れ、疲れやすくなり仕事の効率が悪くなった」(府県機関で働く女性)、「生活のリズムがくるい、疲労度が大幅にあがった」(本府省で働く男性)、「業務の量は変わらず、そもそも職員が不足しているので、勤務時間管理の事務処理が煩雑になり加わる分、負担が増加し仕事の効率も低下する」(出先機関で働く男性)、「結局、『ゆう活』と言いながら、霞が関不夜城で最も過酷な国会対応や予算担当の職員を最初から対象外としているわけで、超勤縮減やワークライフバランスに政府が本気で取り組んでいるなんてウソだ」(本府省で働く男性)、「朝が1~2時間前倒しになると、子どもを保育園に送って行くことができず、家族責任を果たせない」(出先機関で働く男性、※これは国家公務員だけが前倒しになった弊害です)などの声が寄せられています。

 こうした国家公務員における7~8月の1~2時間の前倒しは、日本におけるサマータイムの実証実験とも言えると思います。そうすると、24%~31.2%に「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」をもたらすことを国民全体にあてはめてみると、日本の総人口は1億2670万6千人(2017年10月1日現在)ですから、その31.2%は3,953万2千人になります。サマータイムによって、4千万人が「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」をもたらすことになるわけです。

 東京オリンピックの公式サイトを見ると、「3つの基本コンセプト」の1つめに、「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」を掲げ、「万全の準備と運営によって、安全・安心で、すべてのアスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、自己ベストを記録できる大会を実現。ボランティアを含むすべての日本人が、世界中の人々を最高の『おもてなし』で歓迎。」などと謳われています。サマータイムで日本に住む4千万人に「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」を強いておいて、アスリートには自己ベストを、すべての日本人には最高の「おもてなし」を求めるという、こんな倒錯した東京オリンピックのためのサマータイム導入は絶対に許されません。(井上伸)

2018-08-08 02:20:10

森喜朗氏「サマータイムで地球環境の持続を」→省エネに逆行、労働者の命と健康を損なうサマータイム

テーマ:働くルールづくり

 安倍首相が昨日(8月7日)、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長と会談し、暑さ対策として「サマータイム」の導入を検討するよう自民党に指示する考えを示しました。そのことを伝えるテレビ朝日の報道ステーションを見ていて、森会長の発言があまりにひどいと思ったので指摘しておきます。



 サマータイムの導入を求めて森会長は、「地球環境の持続を求めていくことは国際的に大事なことだ。ちょうどオリンピックが一つのいいきっかけになる」などと発言しました。サマータイムが地球環境の持続に役立つから導入すべきだと森会長は言っているわけですが本当でしょうか?

 サマータイムに省エネ効果があるかどうか、産業技術総合研究所が以下のように分析しています。

 

 すべての人が生活時間を1時間前倒しすると、暑さの厳しい夕方に、事務所で空調需要が減る一方、帰宅後の家庭で30%程度も空調需要が増えてしまいます。(※結果、東京電力管内全域で4%電力需要が増加する)

産業技術総合研究所「夏季における計画停電の影響と空調(エアコン)節電対策の効果」より


 1時間前倒しするサマータイムで家庭での電力需要が増えるため全体の電力需要は4%増加し、省エネどころか逆にエネルギーを浪費して地球環境の破壊をもたらすのです。今回の2時間前倒しのサマータイムになると、さらに家庭での電力需要が増えるため、もっと大きなエネルギー浪費をすることになります。サマータイムが地球環境の持続に役立つどころか、サマータイムは地球環境を一層破壊するのです。2011年にサマータイムを廃止したロシアでも省エネに逆行することが廃止した一つの大きな理由でした。

 そして、森会長は暑さ対策としてサマータイム導入が必要だと言っているわけですが、具体的にどうなるのか考えてみましょう。

 2020年の東京オリンピックの日程で、女子マラソンは8月2日の午前7時がスタートとなっています(男子マラソンは8月9日です)。そこで、今年の8月2日の1時間ごとの気温を気象庁のデータからひろって作ってみたものが以下の表になります(※東京の1時間ごとの気温は、気象庁のサイトの「過去の気象データ」で知ることができます)。

 



 上の表にあるように、マラソンのスタートがサマータイムで2時間前倒しになることによって、スタート時の気温が29.2度から28.4度へ0.8度下がり、ゴール時の気温が32.7度から29.2度へ3.5度も下がることになり、たしかにマラソンの暑さ対策にはなります。ところが、たとえば陸上競技のトラック&フィールドの日程は19:00からになっていますが、サマータイムの2時間前倒しで逆に31.2度から33.3度へ2.1度も暑くなってしまいます。暑さ対策で夜に開催する競技については、サマータイムが逆に作用してしまうのです。これはアスリートはもちろん、観客や大会スタッフ、ボランティアなどにも深刻な悪影響を及ぼすことになります。

 何よりも問題なのは、東京オリンピックの暑さ対策のためだけに、国民全体が巻き込まれてしまうことです。上の表にあるように、現在の10歳以上の平均起床時間は6時32分です(総務省「社会生活基本調査」2016年版)が、サマータイムで4時32分に起床することになってしまいます。4時の気温を見れば分かるように、1日24時間のうち最も涼しく質の高い睡眠が得られる時間帯に起床することになります。加えて、就寝時間が23時12分から21時12分に前倒しされることにより、28.8度から30.3度と30度を超える寝苦しい暑さの中で就寝しなければならず、眠りの質の劣化と睡眠不足を同時に引き起こします。日本睡眠学会が「サマータイム――健康に与える影響」の中で指摘しているように、サマータイムの導入は睡眠の質と量の両面を劣化させます。欧州諸国での研究によってサマータイムの導入前後で睡眠時間が1割短くなって睡眠不足と睡眠の質の劣化で、生体リズムを崩し、肥満、心筋梗塞などの心疾患、脳血管疾患、糖尿病など生活習慣病のリスクをため、睡眠障害が増加し、うつ病など精神疾患の増加をもたらすことになるのです。(※ツイッターでもサマータイムの問題点を簡潔にまとめておいたので参照ください→サマータイムの問題点

 サマータイムを日本も1948年、連合国軍総司令部(GHQ)の指示で導入したことがありますが、朝早く出勤しても明るいうちに退勤とはならず、長時間労働が増加して労働強化になったという批判などが国民から出されて4年で廃止されました。今現在は、さらに高度プロフェッショナル制度や過労死ライン合法化が加わっているわけですから、昔より一層の長時間労働がサマータイムによってもたらされる危険性は大きくなっています。労働者の命と健康を守るためにサマータイムの導入はやめさせる必要があります。(井上伸)

2018-08-06 01:20:29

東京医科大の女性差別入試、主要国最悪の女性差別オンパレードの日本vs男女平等が成長の原動力の北欧

テーマ:働くルールづくり

 東京医科大学による女性差別入試の発覚に続き、安倍政権による女性活躍進政策の補助金8,026万円が東京医科大学に交付されていたことが判明しました。2017年のジェンダーギャップ指数(男女格差指数)の世界順位を114位と過去最悪にした安倍政権。女性活躍推進と言いながら、じつは女性差別推進につながるものであったことがよく分かる事例でもあります。

 「NewSphere」によると「東京医大の女子減点、海外メディアも大々的に報道 国内の反発にも注目」して、英テレグラフ紙は「女性は子供を産めと言われ、産まなければ『非生産的』と揶揄される。その一方で、子供を産むかもしれないという理由で減点される。いったい女はどうすればいいの?」というソーシャルメディア上のコメントを掲載しているとのことです。あらためて、日本社会における女性差別のいくつかの現状を、OECDなどの国際比較データで見ておきたいと思います。

 医師でタレントの西川史子氏が8月5日放送のTBS「サンデージャポン」で、東京医科大の女子受験者一律減点は「当たり前。女性と男性の比率は考えないと」などと発言したとのことです。西川史子氏は女性差別入試をしてでも男性の比率を上げることが「当たり前」と言っているわけですが、世界の状況を見てみましょう。

 下のグラフは、OECDの直近データから作った32カ国の「医師の女性割合」です。各国2016年のデータで、日本の医師の女性割合は21.0%と最下位です。日本の21.0%というのはトップのラトビア74.2%の3分の1にも満たない異常に低い割合です。こんなに「医師の女性割合」が低いわけですから、不正入試をしてでも男性の比率を上げることが「当たり前」などという言説がいかにデタラメであるかがよく分かると思います。




 東京医科大が受け取っていた8,026万円の正式名称は「女性研究者研究活動支援事業」の補助金です。下のグラフは内閣府「男女共同参画白書」2017年版に掲載されている「研究者に占める女性の割合の国際比較」です。日本は15.3%と断トツで最下位です。

 



 下のグラフはUNESCOの直近データから作った「高等教育の男女在学率」です。日本以外の国はいまや男性より女性の方が在学率が高いのです。しかも日本の女性の在学率は60.9%とアメリカの99.6%より40ポイント近くも低いのです。

 




 下のグラフはOECDの直近データから作った「高等教育の教員の女性割合」です。日本は26.8%と断トツの最下位で、フィンランド51.1%の半分程度しかありません。

 




 このような、医師・研究者・高等教育における世界でも異常なレベルの女性差別はどこから来るものなのでしょうか? その一つの要因として、下のグラフにあるように、立法府の「国会議員の女性割合」がOECD加盟国で唯一1割にも満たない現状があると思います。

 




 加えて、下のグラフにあるように国の行政を担う「国家公務員の女性割合」も日本は17.6%と断トツで最下位で、トップのポーランド69.3%のわずか4分の1しかありません。

 




 そして、下の2つのグラフにあるように、「国家公務員の上級管理職・中間管理職の女性割合」はトップの国と比較するとそれぞれ17分の1、22分の1と少な過ぎるにもほどがあるような異常な数字に日本はなっているのです。


 


 この異常な女性差別は、なにも国家公務員に限ったものではなく、下のグラフにあるように「上場企業の取締役の女性割合」も同様で、日本経団連の役員に女性がいない理由がよく分かるデータです。



 そして三権分立の最後、司法においても同様であることが下のグラフで分かります。



 前回の記事「東京医科大学の女性差別入試は日本社会を劣化させ日本経済も衰退させるもの」でも指摘していますが、女性差別は日本経済も衰退させるものです。この点について、OECDは今年5月14日に「北欧諸国における男女平等の経済的利益」という報告書を発表して、北欧諸国のデンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンにおける男女平等政策が経済成長に大きく貢献したことを指摘しています。以下この報告書のサマリーの一部です。

 

 デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンは、自宅・職場・公的な生活において近代的な家族政策とジェンダー平等政策を積極的に推進しています。ジェンダー平等の促進は、保健衛生、社会保障、教育、労働市場、全般的な公共政策の主流になり、雇用主組織、労働組合、大多数の労働者を対象とする団体協約においても推進されています。

 北欧諸国の政策アプローチは、すべての男女が働き続けることができる環境づくりを目指すことにあります。子育てや介護などケアが必要な際に性差が浮かび上がることを念頭に置いて、北欧の政策は、父親と母親の両方が労働市場に全面的に参加できるように、包括的な公立保育、公立児童教育と介護サービスを確立した上で継続的支援を大規模な公共セクターが提供することを目指しています。

 北欧諸国は、子育て、高齢者のケアの拡充に加えて、母親と父親のための育児休暇の取得を進め、労働組合は、労働者がより柔軟で家族にやさしい労働時間を選ぶことができるようにしました。

 北欧諸国は、他のOECD諸国よりもジェンダー平等への道を進み、1960年代後半以降、女性の雇用率は、すでに雇用率が高かったフィンランドを除いて、20~25ポイント上昇。今ではアイスランドの83.4%などOECD平均の59.4%を大幅に上回っています。

 その結果、北欧諸国における雇用のジェンダー格差は平均で約4%と最も低く(OECD平均は12%)、母親は他のOECD諸国よりもフルタイム雇用に就いています。

 こうした過去50年間に北欧諸国が導入したジェンダー平等政策により、1人当たりGDPの伸び率は10%から20%向上しました。

OECD5月14日報告書「北欧諸国における男女平等の経済的利益」



 以上がOECDの報告書のサマリーの一部ですが、この報告書を発表する際、アンヘル・グリアOECD事務総長は、「男女平等は基本的人権であり、包括的な成長の原動力である」と述べています。それに比べて、子育てや介護を「伝統的家族」に押しつけ女性差別を推進する安倍政権は成長そのものを自ら損ねているとしか言いようがありません。(井上伸)

2018-08-02 18:21:48

東京医科大学の女性差別入試は日本社会を劣化させ日本経済も衰退させるもの

テーマ:働くルールづくり

 東京医科大学が2月に実施した医学部医学科の一般入試で、女性受験者の点数を一律に減点し、女性の合格者数を減らしていたことが判明しました。大学側は「女性は大学卒業後に出産や子育てで、医師現場を離れるケースが多い。医師不足を解消するため」「いわば必要悪。暗黙の了解だった」とし、女性の合格者を全体の3割以下に抑える調整が行われてきたとのことです。こうした女性差別は日本社会を劣化させ日本経済もさらに衰退させるものです。

 下のグラフは、OECDの「ジェンダー白書」に掲載されている「男女差別の解消と経済成長の見通し(各国のGDPで、単位は10億米ドル)」に、私が「男女差別が解消するシナリオでのGDP」が「男女差別に変化なしのシナリオでのGDP」の何%にあたるかを書き加えたものです(男女差別は2010年の各国水準を起点にしています)。グラフを見て分かるように、「男女差別が解消するシナリオでのGDP」が最も高くなるのが、119%の日本です。男女差別を解消すると、アメリカやフランスの109%より、経済成長が10%も日本は高くなるとOECDは見通しているのです。

 



 そして、OECDの「ジェンダー白書」は、男女差別を解消すると日本のように経済成長が大きくなる国は、「大きな男女差別が存在するため、結果として女性労働力の有効活用による経済成長の可能性が高くなる。逆に男女差別が小さい国では、プラス効果は限定的になる」「政府と雇用主にとって今後の重要な課題は、女性が働くことにもっと魅力を感じるような労働条件と賃金の実現を進めること」「男女がもっと平等に有償・無償労働に参加する必要があり、そのために職場慣行をそれぞれの労働への需要を満たすのに適したものに変えることが必要」と指摘しています。世界的に見ても最悪レベルの女性差別が存在する日本のような国は、そもそも経済成長そのものを妨げているわけです。それなのに、さらに女性差別を日本社会で助長する東京医科大学の行為は経済成長をも低下させるものです。

 また、世界経済フォーラムの2017年版ジェンダーギャップ指数(男女格差指数)の世界順位で、以下のように安倍政権で2017年は114位と過去最低を記録しています。

 



 この世界経済フォーラムの「男女格差指数(経済活動への参加・機会)」(※100に近いほど平等)とIMFの「1人当たり名目GDP(年平均為替レートベースでの米ドル換算)」(※いずれも2017年のデータ)でグラフを作ってみたものが以下です。

 



 上のグラフにあるように、女性が経済活動に参加する国ほど経済成長するのです。2017年版ジェンダーギャップ指数で男女平等度が2位のノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相は、読売新聞のインタビューに以下のように答えています。

 

 ――なぜ男女平等か。

 「一義的には公平性の問題だ。だが、経済的な理由もある。女性が経済活動に参加すると国内総生産(GDP)が増加する。ノルウェーでは女性の77%が働くが、北海油田が産出する石油よりもGDPに貢献しているという研究もある」

 「高福祉なのになぜ経済成長が可能なのかとよく聞かれるが、公的な育児支援が充実していれば、家庭と仕事を両立できる。所得格差が大きく育児支援が貧弱な国では、保育サービスを買える裕福な女性でないと仕事もできないし、政治にも参加できない」

 ――日本では「すべての女性が輝くことができる社会」を成長戦略の中心に位置づけているが、道のりは遠い。

 「重要なのは仕事と家庭のバランスだ。どちらか一方を選ぶべきではない。選択を迫ると、子どもの数も働く女性も少なくなる」

 ――2000年にノルウェーで男女平等を取材した時、男性からもっと育児に参加したいという訴えが増えていると聞いた。

 「この20~30年、育児は男性にとってますます重要になっている。育休の父親割り当て制度など、父親が早期から育児に関われるよう法制度も整備された」


読売新聞2018年3月3日付 [編集委員が迫る]「男女不平等」幸せですか エルナ・ソルベルグ氏

 

 ノルウェー首相が指摘している「一義的には公平性の問題だ。だが、経済的な理由もある。女性が経済活動に参加すると国内総生産(GDP)が増加する。ノルウェーでは女性の77%が働くが、北海油田が産出する石油よりもGDPに貢献しているという研究もある」という言葉を、日本社会が理解して女性差別を解消してしかない限り、日本社会の劣化と日本経済の衰退は止まるわけがないと思います。

 

(井上伸)

2018-06-27 12:57:20

二階自民党幹事長「産まないは勝手な考え、食べるに困らない」→産めない高プロ、600万人が食料ない

テーマ:働くルールづくり

 共同通信の配信記事です。

 

 自民党の二階俊博幹事長は26日、東京都内で講演し、少子化問題を巡り「この頃、子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」と述べた。子どもを持たない家庭を批判したようにも受け取れ、波紋を広げそうだ。

 同党の加藤寛治衆院議員が5月、新婚夫婦に3人以上の出産を呼び掛けていると発言し、批判を浴びたばかり。二階氏は講演で「皆が幸せになるため、子どもをたくさん産み、国も発展していこう」とも語った。

 貧困問題に関しては「今は食べるのに困る家はない。こんなに素晴らしい幸せな国はない」と言及した。
共同通信2018/6/26 23:19「二階氏「産まない」は勝手な考え 都内で講演、少子化問題巡り発言」


 そして、TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」のサイトで文字起こしが紹介されています。

 

 出席者の質問:自民党と政府が一体になって、早く結婚して早く子どもを産むように促進してもらいたい。

 二階幹事長:大変、素晴らしいご提案だと思います。そのことに尽きると思うんですよね。しかし、戦前の、みんな食うや食わずで、戦中、戦後ね、そういう時代に、「子どもを産んだら大変だから、子どもを産まないようにしよう」といった人はないんだよ。この頃はね、「子どもを産まない方が幸せに送れるんじゃないか」と勝手なことを自分で考えてね。国全体が、この国の一員として、この船に乗っているんだからお互いに。だから、みんなが幸せになるためには、これは、やっぱり、子どもをたくさんを産んで、そして、国も栄えていくと、発展していくという方向にみんながしようじゃないかと。その方向付けですね。みんなで頑張ろうじゃないですか。食べるに困る家は実際はないんですよ。一応はいろいろと言いますけどね。「今晩、飯を炊くのにお米が用意できない」という家は日本中にはないんですよ。だから、こんな素晴らしいというか、幸せな国はないんだから。自信持ってねという風にしたいもんですね。

【音声配信・文字起こし】自民党・二階幹事長の「子どもを産まないは勝手な考え」発言を検証▼2018年6月26日(火)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)



 高度プロフェッショナル制度を含む「働き方一括法案」について、安倍政権は明日(6/28)強行採決するかまえですが、昨日(6/26)AEQUITAS(エキタス)が取り組んだ「#0626高プロ反対国会前抗議行動」でスピーチした上西充子法政大学教授は要旨次のように指摘しました。

 「この間の野党の追及で、高プロを労働者は求めておらず、高プロには立法事実がないことが明確になりました。安倍首相は経団連の会長から要請を受けたとして高プロは経済界からの求めであることを明言しました。そして、参院厚生労働委員会で社民党の福島瑞穂議員が重要な質問をしています。女性が高プロを選んで働いているときに子どもを産みたいと思ったとき果たして産めるでしょうか?という質問をしました。高プロというのは、自分の世話も誰かに頼んで、自分の時間も仕事に目一杯つぎ込む働き方です。この働き方を男性がしていると、その男性の妻となった女性の方はそれを支えなければいけない。女性の方は同じようには働けない。逆に女性が高プロで働いていると結婚して出産することは無理です。安倍政権は少子高齢化の中でいったい何をやっているのでしょうか。この福島議員の質問に対して、いや希望した人の働き方ですから、交渉力のある人の働き方ですから、最終的には本人の選択ですからみたいなことを加藤厚労大臣は言いました。あまりにも無責任です」
(「#0626高プロ反対国会前抗議行動」での上西充子法政大学教授のスピーチの一部要旨。※文責=井上伸)


 あらためて指摘しておきますが、高プロは「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない」という、労働基準法の労働時間等に関する規定を適用除外するだけです。「働いた時間ではなく、成果で評価する仕組み」は高プロには一切ありません。そうすると、以前指摘したように「高度プロフェッショナル制度がもたらす地獄絵図=48日間連続の休憩なし24時間労働が合法」になるので以下のようになってしまいます。

 

 



 安倍首相は昨年(2017年)9月の記者会見で「この解散は、国難突破解散であります。急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く。」「この国難とも呼ぶべき問題を、私は全身全霊を傾け、国民の皆様と共に突破していく決意であります。」と語りました。少子高齢化という国難を突破するどころか、安倍首相は高プロ強行採決でさらに少子高齢化を加速させようとしているのです。そして、二階自民党幹事長は「子どもを産んだら大変だから、子どもを産まないようにしよう」「子どもを産まない方が幸せに送れるんじゃないか」は「勝手な考え」と批判していますが、「子どもを産んだら大変」「子どもを産まない方が幸せ」どころか、自分自身をケアする時間さえ奪ってしまう高プロは子どもを産むことすらできないのです。もっと言うと日本は以下のように長時間労働によって生活時間を奪われているため、睡眠時間も家事労働時間も短く今でも子育てが困難なのです。高プロは今でも子どもを産み育てることが困難な日本の状況をさらに悪化させるものです。

 

 

 



 それから、二階自民党幹事長は、「食べるに困る家は実際はない」「今晩、飯を炊くのにお米が用意できないという家は日本中にはない」「こんな素晴らしいというか、幸せな国はない」と言っています。下のグラフを見てください。OECDの直近データから私が作成したものです。

 



 上のグラフにあるように、ひとり親世帯の子どもの貧困が日本は世界最悪です。そうしたことから、自販機の裏で暖を取り眠る子ども、車上生活のすえ座席でミイラ化し消えた子どもの声が届かない日本社会ですし、駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生、100円ショップの薬用オブラートで空腹まぎらわす子ども、深刻な6人に1人の子どもの貧困を深刻化させ経済成長も損なう安倍政権という実態が広がっているのです。

 さらに、舞田敏彦さんが「この1年間,十分な食料がない状態で過ごしたことがある」「飢餓経験率は5.0%と算出されます。国民20人に1人です。この比率を人口の概数(1億2千万人)に乗じると,600万人となります。」と指摘しています。「食べるに困る家は実際はない」「今晩、飯を炊くのにお米が用意できないという家は日本中にはない」どころか、日本において国民20人に1人、600万人が「十分な食料がない状態で過ごしたことがある」のです。

 高プロで少子化を一層加速させ、貧困問題の存在すら認識しない安倍自民党政権。いまの日本社会の最大の「国難」は、こんな安倍自民党政権が継続していることにあると私は思います。

(井上伸)

2018-06-25 01:55:45

竹中平蔵パソナ会長「8時間労働なんてあり得ない話」「高プロは残業概念なくなるから残業代払わない」

テーマ:働くルールづくり

 前回の記事「竹中平蔵パソナ会長「残業代を出すのは一般論としておかしい」「労働者でなく私のニーズで高プロ提唱」」の続編を、というリクエストがあったので、竹中平蔵パソナ会長の直近の書籍の言説をいくつか見ていきたいと思います。

 まず、数日前の6月21日に発行されたばかりの竹中平蔵パソナ会長著『この制御不能な時代を生き抜く経済学』(講談社+α新書)からです。

 

 私は東大が復活するには民営化するのが手っ取り早いと考えている。

 日本の有力大学は膨大な遊休資産を持っている。とくに東京大学や京都大学は不動産を含め、莫大な資産を保有する。しかし、こうした資産の使い道がこれまで限られていた。教育や研究目的以外に使用することができなかったのである。私は各大学が持つ資産をもっと自由に活用させるべきだと思う。たとえば、民間企業に土地を貸し、ショッピングセンターでも老人ホームでも運営させればいい。極端な話、貸しビル業をしてもいいかもしれない。そこで生まれた収益を教育や研究開発費に回せばいいのである。
竹中平蔵パソナ会長著『この制御不能な時代を生き抜く経済学』(講談社+α新書)


 さすが竹中パソナ会長です。国立大学は民営化すれば復活するんだけど、とりあえず大学は広大な土地とか切り売りしたり、ショッピングセンターを運営して稼いだお金を教育や研究開発費に回せばうまくいくとのこと。わかります。大学が運営するショッピングセンターや、民営化された大学で、パソナの派遣労働者が多く働くことができるというわけですね。

 この話、冗談なのかと思っていたら、安倍政権の未来投資会議なるものの議員にしっかり入っている竹中パソナ会長が、「第四次産業革命推進に不可欠な4つの政策」のうちの1つとして「研究開発のための大学資産活用」をあげて、すでに安倍政権下で実際の政策として推進しています。残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度も竹中パソナ会長のニーズでしたが、「未来投資会議」での国立大学資産の活用も竹中パソナ会長のニーズで推進されているのですね。竹中パソナ会長のニーズでいろいろな政策を展開する安倍政権、さすがです。

 さらに突っ込むと、安倍政権は軍事費や軍事研究予算は毎年増やしていますが、国立大学法人の基盤的経費(運営費交付金)は毎年削減しています。必然的に研究環境は悪化して論文数や「論文の質の高さを示す指標の一つである被引用数Top10%補正論文数ランキングについては大きく低下」と日本の科学技術力が大きく衰退しているとする「科学技術白書」(下の表)を安倍政権自ら6月12日に閣議決定するなど認めざるを得なくなっているのです。安倍政権が研究の基盤的経費を毎年削減して日本の研究環境を悪化させておいて、国立大学はもうダメだから民営化するしかないとか、ショッピングセンターを運営しろとか、さすが竹中パソナ会長としか言いようがありませんね。

 



 それからこの出版されたばかりの竹中パソナ会長の本にはこんなことも書いてあります。

 日本の消費税が景気に打撃を与えるのは、高額商品に対する軽減税率がないことが大きい。

 年収400万~800万円程度の中間所得層に対する税率を引き上げるべきである。「普通の人」にもっと税負担をしてもらわないと、日本の税制度は成り立たない。
竹中平蔵パソナ会長著『この制御不能な時代を生き抜く経済学』(講談社+α新書)

 さすが富裕層の代弁者、新自由主義者の竹中パソナ会長です。消費税が富裕層に打撃を与えたり、中間層こそ税負担せよなどと現実とは真逆のことを平然と主張するなんて普通の人間は真似できません。

 



 あの日本経済新聞社でさえ「低所得者ほど負担割合高く」としたグラフ(上記)を示し、現状の消費税率8%の負担割合は、年収200万年未満7.2%で年収1,500万円以上は1.6%と4.5倍も低所得層の方が負担が重いことを指摘しています。この最悪の逆進税の消費税を増税して安倍首相は教育や社会保障を充実するとしていますが、そもそも高所得層より低所得層から4.5倍も収奪する消費税の増税を先行させてしまうと富の再分配が逆方向になり生活破壊が進むだけです。

 

 



 また、上のグラフにあるように、所得税は年所得1億円を超えると軽くなるという異常な状況にあります。さらに、消費税と住民税と社会保険料を積み上げると年所得100億円超の富裕層の負担は、下のグラフにあるように年所得100万円の貧困層の負担より軽くなります。中間層が税負担をしていないなどと言う竹中パソナ会長の主張は事実と違います。富裕層が税負担をしていないことが問題なのです。そもそも、竹中パソナ会長のニーズで労働者派遣法など労働法制が改悪され、雇用破壊が進み、中間層が細っていくことで貧困と格差が拡大しているのに、さらに中間層を細らせて貧困を増やして、富裕層のみを太らせようとする竹中パソナ会長、すさまじい人間としか言いようがありません。そういう意味では、残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度年収300万円台まで適用可能ですから、竹中パソナ会長は、税負担だけでなく中間層から残業代と命と健康も奪おうとしていることになり、この点でも中間層没落・貧困層拡大へ一貫して安倍政権を支えているわけです。

 そして、竹中パソナ会長の必殺技もこの本で炸裂しています。

 

 間もなく「平成」という時代が終わろうとしている。30年間の平成時代は、経済の面では「失われた25年」と呼ばれることが多い。その総括は、私は間違っていると思う。いいときも悪いときもあった「まだらな25年」という呼び方が正しいと考えている。とはいえ、最も反省すべきは、この間の構造改革のスピードがきわめて遅かったことだ。
竹中平蔵パソナ会長著『この制御不能な時代を生き抜く経済学』(講談社+α新書)


 今の日本経済が上手くいっているとはさすがの竹中パソナ会長も言えません。竹中パソナ会長が先頭になって推進してきた構造改革で良くなるはずの日本経済がなぜ未だダメなのか?と問われると、竹中パソナ会長が最近よく繰り返しているのが「構造改革のスピードが足らないから日本経済はダメなんだ」というものです。さんざん好きなように自ら進めた構造改革(労働法制改悪等)で「失われた25年」をもたらしておきながら(下の4つのグラフ参照)、反省すべきは構造改革のスピードがきわめて遅かったことにするって、もうとてもない詭弁でしかありません。もしもっと構造改革のスピードが速くなれば下のグラフで言えば、労働者の実質賃金はもっと急降下し、大企業の内部留保はさらに急角度で上昇し、ワーキングプアはもっと増加しアメリカと肩を並べる格差大国になるだけです。さすが、派遣労働者から強奪し「改革利権」「究極の天下り」「学商の独り勝ち」の竹中平蔵パソナ会長だし、辛い思いする人、痛みこうむる人がいる格差社会こそ経済にプラス、社会保障は集団的なたかり若者は「貧しさをエンジョイしたらいい」と豪語する竹中パソナ会長だけのことはあります。

 

 

 

 



 次に今年3月1日に発行された『経済学は役に立ちますか?』(東京書籍、2018年3月1日発行)です。

 

 長時間労働を一律に抑えるとかなり大変なことになって、ベンチャー企業が生まれなくなる恐れがあります。先日、ある女性ベンチャリストが、「私は24時間、死にものぐるいで働いてここまできたのよ。なぜ、それを縛るの」と言っていましたが、ベンチャー企業で8時間労働なんてあり得ない話です。
竹中平蔵パソナ会長著『経済学は役に立ちますか?』(東京書籍、2018年3月1日発行)

 

 わかります。長時間労働を一律に抑えたくない、8時間労働なんてあり得ない、だからこそ、休憩なしの24時間労働を48日間連続させても合法になる高度プロフェッショナル制度の旗振り役を竹中パソナ会長は果たされているのですね!

 

 私は奨学金を一律に給付型にすることは賛成できません。

 学生時代に受けた奨学金返済ができずに破産してしまうのは、収益率の高いはずの投資を回収できないということであり、その人が投資に失敗したことを意味します。それはあたかも企業が設備投資に失敗して破綻するようなもので、すべての奨学金を給付型にするということは、銀行は企業に無償で融資すべきだという議論に通じる。今現在でも奨学金を受けて勉強しない大学生はたくさんいるので、すべてを給付型奨学金にすれば大学生はますます勉強しなくなる。つまり、極端な言い方をすれば、ただでお金をもらうわけですから勉強する必要が低下するという逆のインセンティブを与えるような気がします。
竹中平蔵パソナ会長著『経済学は役に立ちますか?』(東京書籍、2018年3月1日発行)

 

 

 これも強烈です。「奨学金を給付型にするということは、銀行は企業に無償で融資すべきだという議論に通じる」とか、「給付型奨学金にすれば大学生はますます勉強しなくなる」って、北欧などにおいて、「教育への投資が将来の経済成長につながり、税収が拡大し、教育にかかるコストよりも教育で得られる利益の方が大きく、平等と経済の活力というものは相反するものではなく、教育機会の平等があってこそ、活力ある社会が生まれている」ことについて、竹中パソナ会長はきちんと勉強した方がいいと思います。しかし、新自由主義者の貧相な考え方がつくづく日本社会をダメにしていることがよくわかる言説でもあります。しかもこの竹中パソナ会長が安倍政権の「未来投資会議」の中心メンバーというのもすさまじい話です。下のグラフは先ほど紹介した政府の「科学技術白書」の中のものですが、資源のない日本は科学技術力こそ重要だと安倍政権自身も言っているのですが、竹中パソナ会長のような貧相な考え方によってますます日本をダメにしている一端がよくわかるグラフです。

 



 今年1月18日に発行された『最強の生産性革命 時代遅れのルールにしばられない38の教訓』(PHP研究所)からです。

 

 実際、派遣にはいろいろメリットがあります。人間関係に囚(とら)われなくていいし、転勤や残業もない。仕事より子育てを優先したい人などには最適でしょ。一人の人生の中でも、ライフステージによって今は残業をしたくないとか、当面は午前中だけの勤務にしたいとか、働き方のニーズはいろいろあると思うんです。そういう多様な働き方を認めるということは、自由な生き方を認めることとほとんど同義なんですよね。
竹中平蔵パソナ会長著『最強の生産性革命 時代遅れのルールにしばられない38の教訓』(PHP研究所、2018年1月18日発行)

 

 派遣労働者は「人間関係に囚(とら)われなくていい」などいろいろメリットがあるという竹中パソナ会長ですが、下記のように派遣労働者のリアルな生の声を900人近くから集めたことがありますので、ぜひ竹中パソナ会長にきちんと読んでもらいたいものです。

【派遣労働者の声1】部品扱い、餓死しかけた、父が亡くなっても忌引き休暇も香典もなし、3年ごとに蟻地獄へ突き落とす派遣法改悪は許せない
【派遣労働者の声2】「派遣法改悪で仕事・生活・命を奪わないでください」 ? 派遣労働者の声聞かず政治は「派遣切り」進めるのか
【派遣労働者の声3】将来への不安、閉ざされる未来、派遣法は本当に癌だ、早死にできるよう病院に行くのをやめた
【派遣労働者の声4】派遣法改悪は3年ごとに必ずクビ切る人権侵害法案、派遣途中での「派遣切り」が横行しているのに派遣期間満了で次の仕事が安定的にあるなど幻想にすぎない
【派遣労働者の声5】派遣法改悪は私たちに「生きるな」と言っているのと同じ、瞬く間に仕事失い、結婚や出産どころか使い捨てられ鬱病へと導く改悪に日本の未来はない
【派遣労働者の声6】ホテルにつきあえば正社員、断れば派遣、3年でクビ切る派遣法改悪で国は私たちに「自殺ほう助」を行うのですか?
【派遣労働者の声7】交通費も制服代も自腹、家族の葬式も墓参りも行けず、3年ごとに居場所まで奪う派遣法改悪でどんなに頑張っても派遣労働者は人として扱われない

 

 労働組合にとっては、非正規の待遇を向上させることで、自分たちの待遇が引き下げられるおそれがある。だから反対しているわけです。いわゆるマルクス主義の理論で言えば、資本主義は資本家が労働者を搾取するという構図でしたよね。でも今起きていることは違うんです。正規社員が非正規社員を搾取している。いわば「労労搾取」であり「労労対立」の構図です。

 生産性より高い給料をもらい、絶対にクビにならないという雇用で過剰に守られている正規社員と、その犠牲になっているその他の労働者という関係です。これはまさに「労労対立」ですよ。

 地方議会でやったらいいと思うのは「土日県議会」や「土日市議会」。そうするとPTAと同じです。ふつうに働いている人が、別の仕事をしながら自分たちが住む街のことを決めればいい。この変化は大きいでしょ。
竹中平蔵パソナ会長著『最強の生産性革命 時代遅れのルールにしばられない38の教訓』(PHP研究所、2018年1月18日発行)

 

 正規社員が非正規社員を搾取してとか、地方議会はPTAと同じように兼業で週末にやればいいとか、これが安倍政権の政策の舵取りをしている産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議、未来投資会議で中心になって役割を果たしている竹中平蔵パソナ会長であることをみなさんよく認識された方がいいと思います。

 下記は昨年2月18日に発行された『第4次産業革命!日本経済をこう変える。』(PHPビジネス新書)からです。
 

 ホワイトカラーに残業代を支払わないのではなく、ホワイトカラーには、残業という概念自体がない

 

 同一労働同一賃金と言うと、待遇の悪い非正規の人たちの待遇改善に注目が集まるが、それはとりも直さず、守られすぎて給料が高すぎる正社員の給料を下げることでもある。この不都合な真実については、多くの人は語らないが…。
竹中平蔵パソナ会長著『第4次産業革命!日本経済をこう変える。』(PHPビジネス新書)

 

 デジタル大辞泉によると、「ホワイト‐カラー(white-collar)《白い襟のワイシャツを着ているところから》雇用従業員のうち、知的・技術的労働や事務・販売の仕事についている者。→ブルーカラー」ですが、「ホワイトカラーに残業代を支払わないのではなく、ホワイトカラーには、残業という概念自体がない」というのは、先の記事「竹中平蔵パソナ会長「残業代を出すのは一般論としておかしい」」と同じような次元にある竹中パソナ会長の妄想ですね。そもそも残業という概念自体もおかしいし、ましてや残業代を出すなんてことは一般論としておかしいから残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度は当然だと竹中パソナ会長の頭の中ではなるわけですね。残業概念もなくなり、残業代もゼロですから、定額働かせ放題・過労死促進法のできあがりです。そして竹中パソナ会長は派遣法と同様に高度プロフェッショナル制度を小さく産んで大きく育てる必要性を力説するわけですね。最後のところにある安倍政権の「働き方改革」の「同一労働同一賃金」がじつは正社員の賃下げに過ぎないというのはとても本質を突いたわかりやすい解説です。

 

 最後に、興味深い竹中パソナ会長の指摘を紹介します。

われわれが行っていた経済財政諮問会議は、総理を中心に10人ほどで構成され、そのうち4割が民間人だった。各省庁を代表する大臣は官僚の立場を代弁することもあるが、議論ではつねに民間人のほうが優勢だった。総理がそこで「そのとおりだ」といえば、それで決まる。これこそが、改革を実現するための方法なのである。(竹中平蔵)

文藝春秋編『アベノミクス大論争』(文藝春秋、2013年3月20日発行)

 竹中パソナ会長は、今の安倍政権でも産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議、未来投資会議で中心的な役割を果たしています。上記の文章の「民間人」というのは竹中パソナ会長をはじめとする財界人ということです。竹中パソナ会長はじめ財界人のニーズに基づいて改革が実現しているのです。今回の残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度も、残業代を払いたくない、いや残業そのものの概念すら消し去って、24時間死にものぐるいで労働者を働かせる「世界で一番派遣会社パソナが活躍しやすい国」にしたいがための改革です。そして残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度が一端導入されてしまえば、以下のようにすべての労働者の残業代が失われていくことになってしまいます。労働者のニーズは残業代ゼロ=高度プロフェッショナル制度の廃案しかありません。

 



(井上伸)

2018-06-21 14:40:41

竹中平蔵パソナ会長「残業代を出すのは一般論としておかしい」「労働者でなく私のニーズで高プロ提唱」

テーマ:働くルールづくり

 竹中平蔵パソナ会長が今朝(6/21)の東京新聞で、残業代ゼロ=高プロ賛成派として登場して呪いの言葉を連発しています。

 

 竹中パソナ会長「時間に縛られない働き方を認めるのは自然なことだ。時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代という補助金を出すのも一般論としておかしい」
 東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は

 わかります。残業代を払いたくないのですね。現時点では派遣労働者に高プロ適用できないとのことですが、労働者派遣法と同じようにパソナ会長として「対象拡大」をして、派遣労働者も「時間に縛られない働き方」にすれば、「パソナの派遣労働者は定額働かせ放題・残業代ゼロです!」を売りにできパソナはさらにボロ儲けできますから、パソナ会長が先頭を切って残業代ゼロ=高プロに賛成することは自然なことですね。

 

 竹中パソナ会長「(高プロを提唱した)産業競争力会議の出発点は経済成長。労働市場をどんどん改革しなければならず、高プロはその第一歩だ。」
 東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は

(※注:政府の産業競争力会議の議員は大企業の役員ばかりで労働者は一人もいません。竹中パソナ会長も議員ですから、竹中パソナ会長は自分が高プロを提唱した、労働者でなく私のニーズで高プロ導入だ!と言っているのと同じですね)

 高プロに対する労働者のニーズはゼロなのに、安倍政権は労働者のニーズがあるから高プロ導入が必要だと未だにウソをつきまくっていますが、さすが竹中パソナ会長! ここは正直ですね! 竹中パソナ会長はじめ大企業役員だけのニーズで高プロは提唱されたのですね! そして、高プロの目的は「経済成長」であって、「働き方改革」でも過労死根絶でも長時間労働根絶でもないのですね! 竹中パソナ会長のお話は非常によくわかります!

 もっと突っ込むと、「高プロは経済成長のため」とする言説もウソです。高プロがむしろ経済成長を阻害して日本経済を低迷させることは、田中信一郎千葉商科大学特別客員准教授が「高度プロフェッショナル制度が日本経済を低迷させるこれだけの理由」という記事の中でわかりやすく指摘しています。それにこの間も、竹中パソナ会長は高プロと同じように派遣労働を拡大することが経済成長につながると主張してきましたが、むしろ労働生産性を低下させ経済成長を損ない日本経済を失速させてきたことを見れば、また竹中パソナ会長の大ウソが発動しているだけだということがよくわかるでしょう。

 高プロが労働生産性を低下させ経済成長を阻害して日本経済を低迷させるとなると、それでは一体、高プロのニーズはどこにあるのでしょうか? それは竹中パソナ会長の話を追っていくとわかってきます。

 

 竹中平蔵パソナ会長「時間ではなく成果で評価する高プロで、労働生産性を上げるインセンティブは間違いなく働く」
 東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は


 「時間ではなく成果で評価する高プロ」というのは大ウソです。高プロの法案には「時間ではなく成果で評価する高プロ」などと書かれていないことは、嶋崎量弁護士や佐々木亮弁護士が繰り返し指摘していることです。
 ★嶋崎量弁護士「本当は存在しない「高度プロフェッショナル制度」~欺瞞性を曝く~」
 ★佐々木亮弁護士「高プロの法案を全文チェックしてみた。【前編】」

 また、高プロがむしろ労働生産性を下げることは、先に紹介した田中信一郎千葉商科大学特別客員准教授が指摘しています。高プロ労働者の裁量は一切ないのでインセンティブは間違いなく下がります。

 

 ――高プロを含む「働き方」関連法案は、過労死促進法案との批判がある。
 竹中平蔵パソナ会長「全く理解していない。過労死を防止するための法案だ。その精神がすごく織り込まれている。例えば年間104日以上の休日をとれと。(適用には)本人の同意も要る。なぜこんなに反対が出るのが、不思議だ」
 4週で4日以上の休日も定めているが、裏を返せば24日間、24時間働かせても違法ではない。
 竹中平蔵パソナ会長「そういう言い方はいくらでもできるが、休みを義務づけているわけだから。しかも、適用されるのはごく一部のプロフェッショナル。」「個人的には、結果的に(対象が)拡大していくことを期待している」「世の中の理性を信じれば、そんな(24時間働かされるかのような)変な議論は出てこない」
 東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は

 


 竹中パソナ会長の「理性」はすごい! 高プロは休憩なしの24時間労働を48日間連続させても違法にならなくなりますが、労働者の命と健康を企業の「理性」にまかせる上に、高プロの対象拡大の期待を表明。毎日1人以上が過労死で命を奪われ労災最多、パワハラ、セクハラ、残業代不払いなどおかまいなしのブラック企業が跋扈している中で、法律を取っ払ってブラック企業の「理性」をブレーキにするのが高プロだと竹中パソナ会長が断言! 高プロ、すごい!というほかありません!

 細かいツッコミも入れておくと、「年間104日以上の休日をとれ」というのは、1年間で祝日もお盆も年末もお正月もないという前提での週休2日に過ぎません。「(適用には)本人の同意も要る。」ことについては、修正された「同意の撤回」すらまったく意味をなさないことを佐々木亮弁護士が指摘しています。(※→佐々木亮弁護士「高プロの法案を全文チェックしてみた。【真の後編】」)また、対象を拡大させたいと言いながら「適用されるのはごく一部のプロフェッショナル」などと竹中パソナ会長は言っていますが、年収300万円台でも適用されたり(※→佐々木亮弁護士「高プロ制度は地獄の入り口 ~ High-pro systm is the gate to hell~」)、通勤手当など諸手当込みであることから年収要件はグッと下がり、竹中パソナ会長の期待する対象拡大をしなくても導入当初から多くの労働者に適用可能であることも判明しています。

(井上伸)

2018-06-19 12:10:13

カルビー松本会長、ZOZO田端氏「高プロ(残業代ゼロ)が残業なくす」という #呪いの言葉の解き方

テーマ:働くルールづくり

 上西充子法政大学教授が「逃げ恥」百合さんに学ぼう!「呪いの言葉」に「思考の枠組み」を支配されないための切り返し方( #呪いの言葉の解き方 )を拡散する必要があるのではないかと指摘しています。いま問題になっている高度プロフェッショナル制度をめぐる呪いの言葉の一つに「残業代ゼロが残業なくす」というのがあるなと思い、少し検証してみました。

 ITmedeiaビジネスオンラインのインタビュー「残業手当はすぐになくしたほうがいい」の中で、カルビーの松本晃会長兼CEOは次のように語っています。

 

 日本の働き方において何が一番悪いかといえば、言うまでもなく残業ですよ。残業手当てという制度がある限り、問題は解消されません。
 働き方改革に関しては、あながち政府が言ってることも間違ってるとは思いません。裁量労働制にしたらいい。特にオフィスで働いている人たちは、「時間」ではなく「成果」で働いているのですから。
 ところが、そうした人たちに残業代を払うとなれば、そんなのするに決まっているじゃないですか。
 例えば、「伏見さん、明日から残業手当を払うよ。1時間100万円」。しますか?

――します。

 当たり前でしょ。「松本さん、あなたカルビーの会長だけど残業代払うよ。1時間10万円」。やるに決まってますよ。
 もらっている給与に対して、残業手当は高いです。あんな悪しき制度を作っているから社員は使うんです。いま残業を月に数十時間している人がいたとして、明日から残業手当を1時間30円にすれば、きっと誰もやらないですよ。(残業手当はすぐになくしたほうがいい カルビー・松本会長



 それから、zozoの田端信太郎氏(zozoを展開する株式会社スタートトゥデイのコミュニケーションデザイン室長)も同じようなことをツイートしています。(※「▼」にツイートのリンクを貼っています)

 



 さて、「呪いの言葉」です。「残業手当を払うよ。1時間100万円。しますか?」「します」、「もらっている給与に対して、残業手当は高いです。あんな悪しき制度を作っているから社員は使うんです」――ここには高い残業手当を目当てに労働者は残業をすることを「残業手当1時間100万円」などというあり得ない例え話を持ち出して労働者に「呪い」をかけようとしています。

 客観的事実は、日本は先進主要国に比べて、残業手当がわずか半分と低過ぎるから残業が蔓延する上に、その低い残業手当も踏み倒す企業が多いから――いわば今現在は「残業代ゼロ」は違法なのに「残業代ゼロ」を横行させている企業が多いから、長時間残業が蔓延しているということです。(※正確には残業に対する割増賃金ですがカルビー松本会長に合わせて残業手当と表現しています)

 日本の残業に対する割増賃金率は25%。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国の割増賃金率は50%と日本の2倍です。(※ドイツは1日の最初の2時間は25%でそれ以降は50%。フランスは1週間の法定労働時間43時間以内は25%でそれを超えると50%です)

 



 新しく労働者を雇うより、今いる労働者に残業させた方が人件費を抑制できることになってしまうのが日本の低い残業手当です。日本以外の国の高い残業手当だと、今いる労働者に残業させるより、新しく労働者を雇った方が人件費を抑制できるのです。高い残業手当は、一人ひとりの労働者の残業をなくすだけでなくワークシェアリングにとっても必須なのです。

 そして、日本の問題は、他国に比べて半分という異常に低い残業手当であるにもかかわらず、さらに残業代不払い、サービス残業を企業が横行させていることです。企業が労働基準法を違反してでも「残業代ゼロ」で「働かせ放題」にしたいことは、労働基準監督署が毎年発表している「監督指導による賃金不払残業の是正結果」を見れば明らかです。直近の2016年度で、労働基準法違反による賃金不払残業の是正企業数は1,349企業、支払われた割増賃金合計額127億2,327万円にも上っているのです。(※すでに残業代ゼロの高プロで働かされているような状況にある国家公務員や教員に長時間残業が横行していることを見れば、一目瞭然でもあります。※参考→#高度プロフェッショナル制度 の近未来は霞が関不夜城=過労死・うつ病と隣り合わせの国家公務員

 それから、厚生労働省の2017年版「過労死等防止対策白書」には、次の指摘があります。

 

 「残業手当の支給の有無が与える影響度」をみると、把握されている『残業手当が支給されていない者』に比べて、『全額支給されている者』の方が「週の残業時間」は短く、「年間の年休取得日数」は多くなり、また、「メンタルヘルス状況」が良好になる傾向が見られた。
 本分析結果から、『労働時間を正確に把握すること』及び『残業手当を全額支給すること』が、「残業時間の減少」、「年休取得日数の増加」、「メンタルヘルスの状態の良好化」に資することが示唆される。


 また、アメリカには高度プロフェッショナル制度と同じホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼロ法)がありますが、アメリカにおいても残業代ゼロ労働者の方が、残業代支払労働者より長時間残業を強いられています。(※以下のグラフは日弁連のパンフレット「働くあなたや家族の大問題!! 高度プロフェッショナル制度[過労死促進・残業代ゼロ制度]より)

 




 以上のことから導かれる、「残業代ゼロが残業なくす」という呪いの言葉の解き方の結論です。

 

 ▼「残業手当が高いから労働者はダラダラ残業する」という呪いの言葉の解き方

 

「残業手当が他国の半分と異常に低いからこそ日本では残業が蔓延する」

「残業手当が他国の半分と異常に低いからこそ企業は長時間残業に頼って過労死を頻発させている」


「労働者の残業手当目的のダラダラ残業が問題ではなく、低い残業手当、サービス残業に頼る企業が長時間残業を蔓延させている」

 

▼ 「残業代ゼロが残業なくす」という呪いの言葉の解き方


残業代ゼロ法がなくても残業代不払いを横行させている企業が残業代を全額支給するだけでも残業時間は減少する(厚生労働省の指摘)」
 

残業代ゼロでなく、残業代不払い・サービス残業をゼロにすれば残業は改善される」


「アメリカでも残業代ゼロが長時間残業を増加させている」
 

「日本は残業代ゼロでなく、残業手当を今の2倍(諸外国と同じ)にすれば長時間残業は改善される」


残業代ゼロ(高プロ)こそが残業をさらに増やす」

 

(井上伸)

2018-06-14 16:17:25

#高度プロフェッショナル制度 の近未来は霞が関不夜城=過労死・うつ病と隣り合わせの国家公務員

テーマ:霞が関・公務関連情報

 5月9日の水曜日に、私たちは「霞が関不夜城ウオッチング」と電話相談にとりくみました。水曜日は全省庁一斉の定時退庁日なのですが、23時30分でも国土交通省(下の写真)はまさに「霞が関不夜城」の状態で煌々と部屋の灯りがついていました。(※5月9日の「霞が関不夜城ウオッチング」では19時半、21時半、23時半に各省庁を写真撮影しました。他の省庁も同様で23時半以降も煌々と部屋の灯りがついていました)

 



 電話相談には、「人が減らされているのに仕事量は増えるばかりなので、毎日電車で帰れずタクシーを使っている。みんなで残業してみんなで倒れようという職場の雰囲気が尋常ではない」「過労死ラインを超える月90時間超の残業をしているが、20時間分しか残業代が支払われていない」「国会対応の応援の仕事があるのだが、先日、午後11時頃に応援が要請され、そのまま午前4時まで仕事をした。本来業務に支障が出ている」などの相談が寄せられました。

 これらのとりくみを一緒に行った全経済産業省労働組合副委員長の飯塚盛康さんは、「もともと霞が関の長時間労働はひどかったのですが、モリカケ問題や『働き方改革』の裁量労働制データ問題や高度プロフェッショナル制度に関わる様々な問題が起こってからさらに拍車がかかっています。ある省庁のいちばん酷い部署では月300時間の残業があり、ほとんど家に帰れなくて段ボールの上で寝ているような状態です。私たちがとりくんだ残業実態調査で判明していることですが、霞が関では3割(約1万人)の国家公務員が過労死の危険を感じて日々働いています。そもそも国家公務員には長時間労働規制がなく、残業代もきちんと払われていません。24時間働かせ放題で残業代も出ないのが国家公務員の実態で、“高度プロフェッショナル制度の見本は霞が関にある”と言っても過言ではありません。高度プロフェッショナル制度で残業代がゼロになれば労働者の残業はなくなるとか、長時間労働がなくなるとか、吹聴する人がいますが、高度プロフェッショナル制度の近未来ともいえる霞が関の惨状を見ればそれらが全くの大ウソであることがわかります。高度プロフェッショナル制度が導入されれば、過労死とうつ病が多発することになるのです」と話してくれました。加えて、ここ数カ月間に寄せられた霞が関で働く仲間のリアルな声や職場実態を飯塚さんが教えてくれたので以下紹介しておきます。

 ◆国会対応に加えて、森友公文書改ざんの影響があり、場当たり的な文書管理に関する会議や実務がやたらと増えてさらに残業が増えている。もちろん文書管理はきちんと行われるべきだが、現場にだけしわ寄せするようなやり方はやめてもらいたい。(40代男性)

 ◆昔から上の意向ばかりで仕事するヒラメのようなキャリア官僚はいたが、首相官邸が内閣人事局を使って幹部職員の人事を握ってからというもの、首相官邸の意向で無理難題を現場に強制してくることが多くなっている。首相官邸の意向によって長時間残業が増えているようなものだ。(50代男性)

 ◆人事担当者から「最近、若手が転職してしまうが、どうすればいい?」と聞かれたが、首相官邸の意向で仕事しても個人の責任だけにされて佐川前国税庁長官のようにキャリア官僚のトップでさえ切り捨てられるようなところで、まともな神経の人間が展望を持って働き続けられると思う方がどうかしてると思った。(30代女性)

 ◆土日もなく連日深夜まで働かされて頭がボーッとしていて、世の中の動きも知らないで国による良い施策ができるのかといつも考えている。(30代男性)

 ◆入省して2カ月、連日最終電車です。朝も8時半出勤で睡眠時間は4時間くらい。今週の月曜日は欠勤した。残業代もほとんど出ないし、もう辞めることを考えている。後輩に国家公務員になるのはやめろと言っている。(20代男性)

 ◆連日、終電で帰れずタクシーで帰っている。人気のない都心の風景を見ていたら涙があふれて止まらなくなった。心が病んできている気がする。田舎に戻りたい…。(30代女性)

 ◆プレミアムフライデーだから同期会しようと提案したら数人が参加するよと言ってくれた。でも当日は自分も含めて誰も行けなかった。全員、徹夜で働いてた。そのうち何人かは、そのまま土曜も働いてた。俺達すでに高プロだぜと笑いあった。もう限界が近い。(30代男性)

 ◆地方から霞が関に出向が決まったので妻を連れて赴任した。出向初日から帰宅できず、そんな状態が半年過ぎたら妻がうつ病になった。見知らぬ土地で知人もなく、夫の自分もいない日々が妻の心を蝕んだ。(30代男性)

 ◆毎日、上司から詰められ、深夜まで仕事が続いた。女性だからと甘やかさない霞が関の職場だが、さすがに男性でも辛いだろうなあと思っているうちに自分のメンタルが壊れてしまった。それから霞が関のビル群が見えると足が震えて歩くことができなくなった。(30代女性)

 ◆午前2時、3時にメールを発信していたら、相手の会社の人が「こんな時間まで働いているのですか?」と驚いていた。こんなの普通だよと思っていたら「メールの内容がよくわからない」と言われた。完全に心が病んでいたのだ。今は休職している。(40代男性)

 ◆年末に実家に帰ったら、両親から「あなたは誰?」と聞かれました。体重は10キロ減り、髪の毛はボサボサ。自分でも変わったとは思ってたけど、さすがに両親に言われたのはショックだった。このまま、結婚もしないでこんな生活が続くのかと思うと心が折れそう。(20代女性)

 ◆毎月、自殺・自殺未遂の報告が流れてくる。仕事が増えているのに職員を削減することをやめてもらいたい。(40代男性)

 ◆毎月100時間から120時間の残業をしている。残業代は20時間分ほどしかついていない。プレミアムフライデーは「地獄のくじ引き」と呼ばれ、当たると休日出勤しなければならない。「働き方改革」と言うなら政府はこの地獄を改善すべきだ。(30代女性)

 ◆人員削減と業務増で連日、残業の上、きちんと残業代は出ず、挙句の果てに残業したことで人事評価が悪くなる…という理不尽なことばかりが横行しています。企業での残業代ゼロ・長時間労働は、公務員にも直結するので、私は高プロに反対です。明日(6月15日)19時からとりくまれる「仕事帰りの新橋デモ」に参加したいと思っています。(50代男性)

 以上が飯塚さんが紹介してくれた霞が関で働く国家公務員の直近の声です。こうした大変な中ですが、霞が関の国家公務員も明日(6月15日)19時からとりくまれる高度プロフェッショナル制度に反対する「仕事帰りの新橋デモ」に参加します。みなさんもぜひ参加ください。



(井上伸)

2018-06-12 19:32:43

安倍首相「労働者のニーズに応える高プロ待ったなし」→事実はたった1人の労働者のニーズしかなかった

テーマ:働くルールづくり

 共同通信の報道によると「働き方改革一括法案」に含まれる高度プロフェッショナル制度について、国会に法案が提出される前に「労働者のニーズ」を聞いたのはたった1人であることが判明しました。高度プロフェッショナル制度の立法事実は「たった1人の労働者のニーズ」だったのです。

 その唯一の「労働者のニーズ」は、研究開発職(製造業において研究開発業務に従事)で「1日4~5時間の研究を10日繰り返すよりも、2日間集中した方が、トータルの労働時間は短くて済む。」(厚労省「高度専門職に対するヒアリング概要」)というものです。これが高度プロフェッショナル制度の唯一の立法事実になるわけですが、2日間集中して働くことは高度プロフェッショナル制度がなくても今でも可能です。何も問題がありません。逆に高度プロフェッショナル制度が導入されると、残業代ゼロ、休日出勤手当ゼロになり、労働者に裁量性は全くないので、さらに残り8日間も使用者に命令されれば24時間労働を継続することになるまさに高プロ地獄が待っています。

 安倍首相は5月23日の衆議院厚生労働委員会において次のように発言しています。

 安倍首相「まるでこの高プロを導入すると過労死が増えるかのごときのお話をされているわけでございますが、そうではなくて、今、それぞれのニーズ(※厚労省「高度専門職に対するヒアリング概要」のこと)があって、働く側にも自分の好む働き方をしたいという方々がいらっしゃるわけでございまして、このグローバルな経済に対応していく中において、いわば9時~5時の働き方では対応できないという方もいらっしゃるわけでございまして、その中で、成果を上げて、しっかりと自分たちも収入を上げていきたいと考えている人はいるわけでありまして、その中で自分の能力を、達成していきたいという人はいるわけであります。」(柚木道義衆院議員に対する答弁より)

 安倍首相「いわゆる時間ではなくて成果で評価されるという働き方が可能となれば、例えば9時から17時といった画一的な勤務時間に縛られることなく、自分に合ったペースや段取りで仕事を進め、そして創造性を遺憾なく発揮することが可能となるわけであります。新しいアイデアがひらめいたときには、一気呵成に、集中的に仕事をして成果を上げることが可能となるわけでありまして、短時間で仕事が仕上がれば、余暇を楽しみ、あるいは自らのさらなる成長にチャレンジすることも可能になる、このように考えるわけでございます。このように、高度プロフェッショナル制度は、時間ではなく成果で評価される働き方を望む労働者のニーズ(厚労省「高度専門職に対するヒアリング概要」)に応えるものであります。」(高橋千鶴子衆院議員に対する答弁より)

 安倍首相「時間ではなく成果で評価される働き方を選択できるようにする高度プロフェッショナル制度の導入は、わが国にとって、これは待ったなしの課題であると考えています。法律案から高度プロフェッショナル制度を削除する考えはございません。」(柚木道義衆院議員に対する答弁より)

 さらにこの日、加藤勝信厚生労働大臣は、高橋千鶴子衆院議員に対して、「12人しかおられないということでありますが、聞いた方が12人ということで申し上げさせていただいたところでありますし、また、今の裁量労働制の中にあっても、自律的に働きたいという希望がその中でも示されたということでございますので。まさに、先ほど総理が言われたような意味の中において、こうした時間の、そうした今までと、規制とは異なるもとで、その思う、能力、それを十二分に発揮したい、そういう希望に対応するということで今回提案をさせていただいているところでございます。」と答弁しています。

 上西充子法政大学教授が、この「高プロニーズ聞き取り」について、加藤厚労大臣が虚偽答弁悪質な「ご飯論法」を駆使していることを告発していますが、今回加えて「高プロの立法事実はたった1人の労働者のニーズ」であることが判明したわけです。

 安倍首相によると、たった1人の労働者のニーズに応える高度プロフェッショナル制度は「待ったなしの課題である」とのことです。そして、加藤厚労大臣によると、たった1人の「希望に対応するということで今回提案」されたのが高度プロフェッショナル制度であるとのことです。

 



 上のグラフにあるように、2006年度から2016年度までの11年間で5,074人の労働者の命が過労死で奪われています。安倍政権にとって、「5,074人の労働者の命」と「たった1人の労働者のニーズ」のどちらの立法事実が重いものなのでしょうか? この日本社会で毎日1人以上の労働者の命が過労死で奪われているという極めて重大な立法事実を捨て去って、さらに過労死を促進する高度プロフェッショナル制度を「たった1人の労働者のニーズ」で強行採決することは許されません。高度プロフェッショナル制度の廃案を求めるネット署名や、 #0615仕事帰りの新橋デモ などにぜひ皆さん、ご協力いただければと思います。

 



(井上伸)

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス