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「働き方改革」に逆行する #霞が関のリアル

 5月29日(水)午後6時から10時まで「霞が関公務員相談ダイヤル」を実施します。

 



 この「霞が関公務員相談ダイヤル」と並行して、「霞が関不夜城ウオッチング」に取り組み、各省庁の実態をツイッターで発信します。

 こうした取り組みに先立ち、霞が関で働く国家公務員のみなさんに集まっていただいて座談会を開催しました。(司会=井上伸

 井上 みなさん、お忙しいなかお集まりいただき、ありがとうございます。これまで何度か座談会を開催していますが、今回の大きな違いは、この4月1日から霞が関でも「働き方改革」が実施されていることです。すでに1カ月以上経過していますが、霞が関の「働き方」は改善されているでしょうか?

  私の職場では、「働き方改革」を推進するための担当官なるものが生まれました。その担当官が職員みんなに「早く帰ろうね」と声かけしたり、残業時間が多い順番に職員の個人名でワーストランキングを発表したりして、組織全体としての問題というより職員個人の自己責任のような形で「長時間残業する職員が悪い」とばかりに職員個人の問題に矮小化して追及するようになっています。そうやって個人の問題のすり替えて、形だけ平日の残業をなくそうとすると、私はみんな休日出勤して仕事するようになるのでは?と思っていました。そして実際、本当にほぼ全員が休日出勤しています。土日や祝日の休日だと平日よりはるかに電話がかかってこないし静かに集中して仕事ができるということもあり、みんな出勤しています。休日も職場の風景が全く変わらないのです。それで、休日出勤で仕事をしても職員は申請しませんから単なるただ働きです。うちの職場では、「働き方改革」によって平日の残業をなくせと言われて休日のただ働きが横行しているというのが実際です。

  私の職場では夜に残業をするといろいろ注意されるので、始発電車で早朝に仕事をする職員が増えています。早朝に仕事をしている職員は、自分の能力がないから定時で仕事がこなせないと思い込んでいて早朝仕事分を残業時間として申請していません。なかには早朝は早く来てるから「残業」じゃないなどと、非常勤職員も一緒に早朝仕事のただ働きをさせている部署もあります。

 井上 ひどいですね。「働き方改革」によって霞が関でも4月1日から、①一般の職員は1カ月の残業が45時間以下(1年360時間以下)、②「他律的な業務の比重の高い部署」で仕事する職員は1カ月の残業が100時間未満(2~6カ月平均で80時間以下、1年720時間以下)、③1カ月で100時間以上の残業を行った職員は医師による指導を行うこと(健康確保措置)、④管理職も含む残業時間の適切な把握、などが人事院規則として規定されいるのに、実効性が全くないような状況ですね。

  その「働き方改革」が実施された4月1日以降も私の職場はタイムカードも何もなくて、出勤時間も残業時間も全く把握されていません。表向きはきょうは午後9時まで残業を申請したとなるのだけど、だいたいは申請した時間を大幅にオーバーする。しかし、そもそも残業時間が把握されていないから何の「働き方改革」にもなっていないという職場実態です。

  私の職場では連続して職員の自殺者が出たことがあって、労働組合としてこの問題を改善するために当局を様々な形で追及してきました。その結果、在庁時間管理は厳しくやるようになりました。エクセルシートで登庁時間と退庁時間で管理しているのと、各職員のパソコンのログイン時間とログオフ時間でも管理しています。残業時間と言わずに在庁時間としているのは問題がありますが、課ごとの平均の在庁時間を月一回ランキングにして発表しています。私の課は平均の退庁時間がこの4月で21時でした。退庁時間が20時を超えると改善計画というのを出す必要があるのですが、その残業改善計画をつくるのも職員が残業してつくるという本末転倒の実態も起こっています。

  法改正に携わっていた若い職員が過労死しました。職場で寝泊まりしていて、その法改正の仕事が終わった後に気持ちが切れたことも一つの要因になってしまったようです。そもそも、国会対応で「他律的な業務の比重の高い部署」に、全職員の97%がされていて、1カ月の残業が100時間まで最初から認められているのだから、「働き方」は全く改善されないし、過労死や過労自殺もなくなりようがありません。

  国公労連が昨年の6月に実施した「セクハラ・パワハラ実態調査」だと、霞が関職場でのパワハラ被害は34%(1万1,500人)、セクハラ被害は21%(7,100人)にのぼっていて、いま国会では実効性がほとんどないハラスメント法案が審議されていますが、霞が関職場のパワハラも相変わらずです。パワハラの常習犯になっているいわゆるクラッシャー上司、クラッシャーキャリア官僚が、部下のキャリア職員をパワハラで病休に追い込んだと思ったら今度はノンキャリ職員も次々とパワハラで病休に追い込みました。それで人手が足りなくなったと言って、今度は残った職員に休日出勤も強制するという地獄のようなブラックな実態も広がっています。人事院は一刻も早く実効あるハラスメント対策を具体化すべきです。

  私は地方自治体から霞が関に出向してきたのですが、私が着任してからその部署に関連する大きな事件が起こって毎日終電の日々が続きました。日中は、地方自治体からの問い合わせや国民からの問い合わせへの対応で大変になってしまったので、定時を過ぎてからが本来業務をするほかなく毎日終電で、極度のストレスで白血球が異常値になってしまいました。今までやったこともない国会対応や、これまで霞が関からいろいろな文書を受ける側だったのに突然文書を出す側になってこれもやったこともないの突然やれと言われて、しかもそのやり方を教えてもらえない。前任者が異動してすでにいないというのと、ほかの職員も自分の仕事だけで忙しいので教える余裕がないのとそもそもその仕事を誰も知らないというので、自分で前任者が残した資料等を調べるしかなくて本当に大変です。

  地方自治体や地方出先から霞が関に出向してくる職員は優秀な人が多いのに、きちんとした前任者からの引き継ぎもなく今までやったこともない国会対応などの仕事を、そのやり方をどうすればいいのかも教えられず突然やるしかない状況に置かれています。とてもストレスフルなので地方から出向した職員は霞が関で1年間仕事すると2割ほどがメンタル疾患での病休に追い込まれて、さらに2割が仕事を辞めていっています。

  地方から出向してきた職員が土日もなくほとんど家に帰れないような仕事が続いていたのですが、職員本人はタフらしく今のところその仕事を続けているのですが、一緒に上京した奥さんがメンタル疾患になってしまいました。突然上京して官舎に住むことになった奥さんは全く知人もいないところで夫も家に帰って来ないということで話し相手もおらずメンタル疾患になってしまったとのことです。NHKで、「厚労省で妊婦が深夜3時まで残業!」という報道がありましたが、霞が関で働く女性職員についても育児休業を強制的に切り上げさせられたり、霞が関職場では「働き方改革」などどこ吹く風という感じです。それと、森友問題と加計問題が起こってから、公文書管理にあたって電子決済を流す前に紙で流してOKになると電子決済に回すという二度手間の仕事の流れにもなっていて余計な仕事が増えています。二度手間の公文書管理で残業が増えるなどという不合理な仕事のやり方は今すぐやめるべきです。

  公文書管理にあたって私の職場ではそういう二度手間にはなっていませんが、森友・加計問題以降、基本的に文書やメモを長い期間は残さないというような流れになってしまっています。職員個人のメールについても長い期間は基本的に残さないようなことになっていて、何か問題が起こって問い合わせがあった場合にも「すでに破棄してありません」と答えるような状況です。しかし現場の職員は自分の仕事を進めるために必要な文書やメールは残しているわけで全くおかしなことになっています。

  私の職場もメールは表向きはどんどん破棄していることになっています。7日で廃棄と対外的には言い切っていて、何か聞かれたら破棄しましたと言え、とにかく文書は残すな、となっています。

  そうした公文書管理もひどいですが、首相官邸と霞が関とのバランスが崩れてしまっています。官邸からのトップダウンの仕事ばかりが増えていて、国民からの行政ニーズを反映していくというボトムアップの仕事になっていません。内閣人事局が2014年5月30日に発足してキャリア官僚の人事を首相官邸が握ってから各省庁は他省庁と調整して仕事を進めるのではなく、官邸と直接やりとりしてとにかく官邸のおぼえをよくすることしかやっていない感じです。そして官邸のおぼえがよくなった省庁のキャリア官僚は出世できることになっています。しかし、今の安倍政権が未来永劫続くわけもないわけで、常軌を逸しているような安倍政権べったりの省庁はいったい何を考えているのかとも思います。

  先日、20代の若手キャリア官僚の人たちに会って話したのですが、何人かは、「官邸が霞が関の職員を下僕のように扱うようでは日本はダメになる。こんな仕事を30代半ばまでやらされて海外留学して40歳ちょっとになるようなキャリアを積むのはイヤなので国家公務員はやめたいと思っている」と言っていました。キャリア官僚は仕事で海外留学した後に民間企業に転職するとその留学費は自己負担になるのだけど、最近は民間企業が留学費も払ってキャリア官僚に転職をうながすケースも増えていて、優秀なキャリア官僚の民間企業への流出も止まらないようです。

  内閣人事局ができて首相官邸が人事を握ってキャリア官僚を下僕扱いしていることも大きな問題ですが、同時に「政治主導」の名で政治任用ポストの政務官など政治家が霞が関の現場の仕事にもやたらからんできて、その政務官への対応で職員の仕事が増えています。たとえば、何かの施策にからんで突然、思いつきのように税務官が現場に視察に行くとなったりして、わかがままな政務官の場合だと視察で宿泊するホテルに自分の好みのものを揃えないと不機嫌になったりしてやたら仕事を進めづらくなるわけです。それこそ問題になった日本ボクシング連盟の山根会長のような事態で、現場の職員はいい迷惑です。そんな政治家のわがままに振り回されて長時間労働になってしまうというのは、そもそも国家公務員は「国民全体の奉仕者」なのに、現実は「一部のわがままな政治家の下僕」にさせられてしまっているわけで、客観的にも国家的な損失になっている事態だと思います。

  若手職員はそうした不合理な働き方に対して敏感だし見切りが早いので辞めていっていますね。

 井上 グラフにあるように、そもそもキャリア官僚をめざす学生もノンキャリめざす学生も安倍政権下で3割も減少しています。NHKが報道していましたが、東大生の官僚離れ、官僚の不人気が広がっていて、試験でトップ合格だったのに官僚を辞退した東大生(2018年度卒)は「政治家の判断で仕事する文化に染まりたくない」と言っていて、安倍政権の下僕にされて、統計改ざんや公文書改ざんなどやりたくないと東大生が思うのは当たり前だと思います。

 

 

 

 井上 それから、あわせて指摘しておくと、統計不正の大きな背景には「官邸による国家公務員の下僕化」とともに、この15年間で国の統計職員を7割も削減したことがあるし、国際比較でもフランスの6分の1と統計職員数が以上に少ないという問題があります。

 

 



  国会対応で霞が関の職員はずっと大変な長時間労働を強いられているわけですが、今回この座談会にあたって若干整理して考えてみました。まず国会対応の答弁書ができるまでの概要は以下に整理できます。

 



  国会対応でなぜ長時間過密労働が生まれるかと言うと、以下にあるように、質問通告から答弁までに行う作業量は物理的に同じなわけで、この仕事にかわる職員数が同じなら質問通告から答弁までの時間が短くなればなるほど職員は家に帰る時間や寝る時間を削ってそこにあてなければ間に合わないということです。なので、質問通告時間をきちんと守るシステムにして作業時間を確保するか、職員数を大幅に増やすかしかありません。たまに、「質問通告時間をきちんと守らない野党が悪い」などと言う人がいますが、これは国会運営全体、委員会運営全体の歪みの中で生まれているわけですから「野党だけが悪い」という問題ではありません。

 



  国会対応には質問主意書への対応もあります。以下にあるように、質問主意書も国会質問への対応と同様で、時間と職員数の問題になります。基本的に質問主意書に対して一週間で答弁書を作成しなければならないことになっているわけですが、この答弁書作成で多くの職員が徹夜したりする長時間労働に現実問題としてなっているわけですから、職員数を増やすか、答弁書作成時間をたとえば二週間にのばすなど時間の確保が必要です。

 

 

過労死と貧困の時代だった「平成の30年間」vs #メーデー の原点「8時間働けば暮らせる社会」

 きょうは90回目となるメーデーです。メーデーの起源は、1886年5月1日、8時間労働制実現を要求してシカゴを中心に全米で35万人の労働者が参加したゼネストです。日本の第1回メーデーは1920年5月2日。東京の上野公園に1万人が集まりました。そして1935年の第16回メーデーまで毎年開催されていましたが、戦時体制下で労働組合運動も弾圧され、その後メーデー開催は10年間禁止され敗戦翌年1946年5月1日に復活しました。ですので、もし戦時体制下の弾圧がなくメーデーが開催されていれば、きょうのメーデーは第100回目、メーデー100周年となっていました。こうした歴史からも労働組合運動にとって平和が大切であることがわかります。

 今年のメーデーで最も大事な要求は、「8時間働けば普通に暮らせる賃金、働くルールづくり」です。下のグラフにあるように、日本の男性は週13時間もデンマークやノルウェーより長く働いています。デンマークの1年間の労働時間は、日本の男性のペースで1月から働いたとすると10月頭に到達してしまうので、10~12月の約3カ月間は休暇となる計算になります。いかに日本の男性が長時間労働かが分かるでしょう。

 



 こうした長時間労働なので、必然的に日本の男性の睡眠時間は下のグラフにあるように短くなります。

 



 そして、睡眠時間も十分に確保できない上に、「ジェンダー差別」「性別役割分担」がいまだ根強い日本では下のグラフ群にあるように、家事労働が女性に押しつけられ、日本の女性も睡眠時間が短くなっています。

 



 労働者の5人に1人が長時間労働の日本では、下のグラフ群にあるように、過労死・過労自殺等の件数が過去最悪になっています。

 

 

 



 賃金を見ると、下のグラフ群にあるように、大企業の労働者の賃金も額面ベースで下がっていますし、各国通貨の額面での比較でもOECD加盟国36カ国で賃金が下がっているのは日本だけで、賃下げに連動してGDPも低迷しています。また、実質賃金で見ても日本だけが下がっています。

 

 

 

 

 



 日本は賃金が下がっているだけでなく、下のグラフ群にあるように、税・社会保険料が応能負担(負担能力がある個人や大企業が負担すること)になっていないため、所得再分配が弱く、可処分所得が大幅にマイナスになり貧困と格差が拡大しています。

 

 

 

 



 

 

 


 そして、下のグラフにあるように、今現在でもすべての年齢階層に貧困が広がっています。よく高齢者が得をして若い世代が損をしているかのような「世代間格差」「世代間分断」をあおる言説がありますが、事実は高齢層も若年層も貧困であり、「世代間格差」が問題ではないことがこのグラフでわかります。



 消費税率を3%から5%、5%から8%に上げた結果、下のグラフにあるように家計消費は大幅にマイナスになっています。この上にさらに、低所得者ほど負担の重い消費税増税を今年10月に強行することは許されません。

 

 

 



 下のグラフにあるように、社会保障の財源などは、消費税増税でなく史上最高の利益をあげている大企業や富裕層が応能負担すべきです。

 

 



 税・社会保障の再分配機能を大幅に改善することと、日本の低い最低賃金を全国一律で大幅に引き上げることは急務です。2018年3月期決算での役員報酬額のトップはソニーの平井一夫氏で、27億1300万円でした。これを管理職の年間労働時間(総務省「労働力調査」の2116.7時間)で時給換算すると、時給128.2万円になります。最低賃金761円の1684倍です。

 

 



 今年のメーデーは「令和」なるものの最初の日となりました。マスコミは「平成から令和へ」と何か新しい時代が自動的に始まるかのような大騒ぎをしていますが、最後に「平成」なるものの「失われた30年」を概括するグラフを紹介しておきます。

 

 

 

 上のグラフを見てわかるように、「平成」の30年は、労働者・国民には貧困と過労死が襲い、その裏返しとして大企業と富裕層には富が極端に集中した「失われた30年」でした(※子どもの自殺率については舞田敏彦さんの論考「日本の子どもの自殺率が2010年以降、急上昇している」を参照ください)。「令和」などに浮かれている場合ではなく、「失われた30年」からの脱却、貧困と格差の解消のためには、すでに指摘したように、最低賃金の全国一律での大幅引き上げと、税・社会保障による所得再分配機能の大幅な改善をはかる必要があるのです。(井上伸)

根拠なく組織的隠蔽でないと報告書は結論づけるが統計不正は厚労省の組織的隠蔽と言わざるを得ない

 統計の専門家、弁護士等の外部有識者で構成される「毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会」が昨日(1月22日)、「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書」を公表しました。この調査報告書を読んだ全経済産業省労働組合副委員長の飯塚盛康さんが感想を書いてくれましたので以下紹介します。

 組織的隠蔽はなかった?

 報告書によると、(1)2004年に始まった東京都の抽出調査は、2003年に企画担当係長名で東京都の一部産業を抽出調査にする旨の事務連絡を発出後、統計情報部長名で同様の内容の「事務取扱要領」を発出した。(2)2008年、2011年には厚生労働大臣から総務大臣に毎月勤労統計調査の変更を申請しているが、これは大臣官房統計調査部長の専決決裁で行われた。この変更申請は他対象事業所の変更で、抽出調査への変更ではなく全数調査をしていることになっていた。(3)2015年統計委員会で毎年3分の1ずつ替えていくローテーション・サンプリングの議論でも500人以上の事業所は全数調査と説明し、政策統括官が専決決裁をした調査変更申請書にも全数調査の記載があった。(4)「法令順守意識が欠如している」が「意図的な隠蔽とまでは言えない」として組織的隠蔽はなかった、と結論づけています。

 役所が文書を発出する場合、必ず文書番号をとって決裁した上で発出されますが、各役所には「専決規程」というものがあって、大臣名、部長名で発出するものは、どこまでの決裁を取ればいいか決まっていますので、大臣名と大臣印が押してあるからといって、全部大臣が見ているわけではありませんが、上記(1)(2)(3)はそれぞれ統計調査部長名、大臣名で発出されているので「必ず」決裁を回しています。

 もし、専決規程に則った決裁文書を組織的な関与がなかったというのであれば、役所の文書はすべて組織的な関与がなかったということになります。

 最初は東京都から調査件数が多いので何とかならないのかと言われたことがきっかけで抽出調査にしたとしても、「事務取扱要領」を発出した段階で組織としてやったことになるのです。

 2004年に統計委員会に抽出調査に変更することの承認を取っていれば、当然、抽出調査結果の復元方法についても併せて承認を取るので、抽出調査しても信頼できるデータになったはずです。しかし、それをしなかったという判断を一担当者ができるはずもなく、少なくとも担当課長、担当部長の指示があったはずですが、これも組織的な関与がなかったというのであれば、「組織的な関与」という定義があまりに狭すぎるのではないでしょうか。

 加えて、国家公務員は仕事のあり方を変更するとき、「個々人の関与」だけで判断せず「組織的な関与」で判断します。ですから、東京都だけ抽出に変更したり、2018年1月の意図的な復元をしたりする変更を「個々人の関与」だけでせず「組織的な関与」で変更することが基本です。普段は「組織的」に仕事をする国家公務員がどうしてこのときだけ「組織的」でなくなったのかがこの報告書は明らかにしていないと思います。

 また、2018年12月13日に2018年1月の調査から段差が生じているため、統計委員会委員長と総務省との打ち合わせで雇用・賃金福祉統計室長が東京都で抽出調査をしており、その前は復元処理をしていないこと、抽出調査の対府県(神奈川、愛知、大阪)を拡大することを説明した際に、統計委員会委員長はテレビ報道の中で統計室長が「悪びれることなく堂々と説明していた」と言っていましたが、この統計室長は個人の判断でやっていることではなく「組織としてやっていることの何が悪いんだ」と思っているから統計委員会委員長の前で堂々と説明したのだと思います。

 それから、報告書の以下の点です。

 

政策統括官(当時)Hは、在任中に当時の担当室長Fから「東京都の規模500人以上の事業所については全数調査を行っていない」旨の説明を受けた(説明を受けた時期は平成29(2017)年度の冬頃であったと述べている。)。その際Hが、公表資料と齟齬があるのであれば手続き的に問題であり、「然るべき手続きを踏んで修正すべき」旨指示したと述べているが、統計技術的な問題となる復元は当然行われていると思い込んでいたと述べており、その後の処理はFに委ね、放置した。Hが復元処理の有無を含めた調査設計・実施方法について自ら的確に把握し、部下であるFへの適切な業務指示及びその後のフォローアップ等を行っていれば、今般の事案に対する早期対応が可能となったと考えられることから、適切な対応を行わなかったと認められる。また、後任者であるJに対し、東京都の規模500人以上の事業所については全数調査を行っていない旨を引き継いでおらず、適切な対応を行う機会を逸した。(報告書24ページ)

 上記にある、政策統括官(当時)Hの「統計技術的な問題となる復元は当然行われていると思い込んでいた」「後任者であるJに対し、東京都の規模500人以上の事業所については全数調査を行っていない旨を引き継いでおらず」という点は、組織的隠蔽を政策統括官(当時)Hの「不適切」な対応だけに矮小化するもので、これをもって組織的隠蔽の意図がなかったと断言できないと思います。

なぜこんなことが起こったのか?
――異常に軽んじられている統計


 報告書では組織としてのガバナンスが欠如しているとの指摘がありますが、それも要因の一つであることは間違いないところです。しかし報告書には政策統括官付参事官が調査対象事業所数が少なくなっていることについて、「良くないと考え、予算を増やせないか相談したが、予算の作業が大変になるのでやめてくれと言われた」という記載があります。

 これは厚生労働省が「統計調査」というものを軽んじている証拠であり、実際、厚生労働省の統計職員も2006年の331人から2016年には237人と激減しています。

 全省庁の統計職員も、2006年の5,581人から2016年の1,886人とこの10年間で66%(3,695人)も削減され激減しており、統計調査の民営化まで考えている省庁もあります。

 報告書は総括で「国民生活に直結する各種政策立案や学術研究、経営判断の礎として常に正確性が求められ、国民生活に大きな影響を及ぼす公的統計」と書いていますが、政府はこのことを頭に入れて必要な人員は確保しないと、同様のことが起きてしまいます。

 最後に、厚生労働省は毎月勤労統計が雇用保険、労災保険などの給付額の上限に影響することは、わかっていたはずです。この金額が不正な調査によって低くなれば給付は減ることもわかっていたはずです。それでも、続けていたのは厚生労働省の特別会計である雇用保険、労災保険などの支出が減るので見逃していた面があるのではないかと思っています。

毎月勤労統計不正の背景の一つにはフランスの6分の1と異常に少ない日本政府の統計職員数がある

 厚生労働省「毎月勤労統計調査」の不正な統計調査によって、雇用保険などの過少支給がのべ2千万人を超す事態となっています。

 この「毎月勤労統計調査」は、雇用・賃金・労働時間の動向を毎月調査するもので。従業員500人以上の事業所はすべて調べることになっています。ところが事業者の約3割が東京に集中するなか、厚労省は東京都分の約1,400事業所のうち約3分の1を不正抽出。2004年から2017年にかけたこの不正抽出で東京の事業所の調査数が大幅に少なくなり、賃金が低くく出ていたため、この「毎月勤労統計調査」をもとに給付水準が決まる雇用保険や労災保険、船員保険で本来より少なく給付されていた人が延べ約2,015万人、雇用調整助成金など事業主向け助成金でのべ約30万件、合計の追加給付額は約560億円に現時点でなってしまっています。

 国会では衆院厚生労働委員会において1月24日から、この不正統計問題で閉会中審査も予定されていますが、なぜこんな不正統計調査がまかり通って来たのか、徹底した真相究明が必要です。

 加えて、不正統計調査という質的な問題を引き起こした大きな背景の一つとして、日本政府における脆弱な統計調査体制の問題もあらためて指摘しておきたいと思います。

 



 上のグラフは、総務省「主要国の統計機関における職員数」から人口10万人当たりの統計職員数を国際比較したものです。日本の統計職員数はカナダの10分の1、フランスの6分の1、イギリスの約4分の1、アメリカの約3分の1、ドイツの約2分の1と極めて少ないのです。

 



 上のグラフは、総務省「府省等別統計職員(本省職員)等の推移」から、全省庁の統計職員数と、厚生労働省本省の統計職員数の推移を見たものです。全省庁の統計職員数は、2006年の5,581人から2016年の1,886人とこの10年間で66%(3,695人)も削減されているのです。今回の不正統計調査で問題になっている厚生労働省本省の統計職員数も2006年の331人から2016年の237人へと激減しています。今回の不正統計はもちろん質の問題がいちばん大きくそこを改める必要があると思いますが、一方で脆弱な日本政府の統計の体制も統計職員数を大幅に増やすことをはじめとして拡充する必要があると思います。(井上伸)

日銀も政府のGDP・賃金統計に疑義、国の進路決める基となる基幹統計も改ざんする安倍フェイク政権

 「労働総研ニュースNo.345 2018年12月(2018年12月10日発行)」に書いたものですが、昨日からマスコミ報道で、厚生労働省「毎月勤労統計調査」が従業員500人以上の事業所について、本来はすべてを調べなければいけないのに東京都分は約3分の1しか調査せず統計データにずれが生じている可能性が指摘されています。この「毎月勤労統計」は雇用や賃金を調べる国の重要な基幹統計でGDP算出にも用いられているということで、昨日からのこのマスコミ報道の前に書いたものですが紹介しておきます。

モリカケ、公文書改ざんから基幹経済統計の改ざんへ

 昨年から今年にかけて、一連の森友・加計学園問題、自衛隊日報問題、「働き方改革」関連法案でのデータ問題など、本来分立しているべき政治と行政が一体化し、首相官邸によって行政が私物化されていることを示す問題が次々と発生しています。その過程で、公文書のねつ造・改ざん・隠蔽、公的調査・統計データの恣意的な操作が数多く行われたことは、社会全体に大きな衝撃を与えています。

日銀も政府統計に不信感を示す

 こうした中で、日本経済新聞(2018年11月13日付)による以下の報道はさらなる衝撃を与えています。

 

政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど日銀が不信感(日本経済新聞2018年11月13日付)

 日本の現状を映す統計を巡り、内閣府と日銀が綱引きしている。国内総生産(GDP)など基幹統計の信頼性に日銀が不信を募らせ、独自に算出しようと元データの提供を迫っているのだ。内閣府は業務負担などを理由に一部拒否しているが、統計の精度をどう高めるかは、日本経済の行く末にも響きかねない大きな問題をはらんでいる。

 この日本経済新聞の記事では、「GDP」と「賃金」についての政府統計に日銀が不信感を募らせていることが報じられています。まず、「GDP」の問題のついて見てみましょう。

 この「GDP」の問題を最初に指摘した『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル)の著者である明石順平弁護士に私、インタビューしましたので、その一部を以下紹介します。

国公労連の雑誌『KOKKO』2018年11月発行第33号所収「若き弁護士が可視化したアベノミクスの失敗と粉飾:明石順平弁護士インタビュー」より

 不透明な操作でGDPを「かさ上げ」

 ――本書では、政府がGDPの計算方法を変えた結果、アベノミクス以降のGDP値が異常なほど「かさ上げ」された問題も指摘されています。簡単に説明するとどういった問題ですか?

 明石 2016年12月公表分から、「2008SNA」(2008年版国民勘定体系)という新しい国際基準への対応を口実にGDPが大幅に改定されましたが、実はその国際基準と全然関係ない「その他」という項目が入っており、その影響が一番大きいという問題です。注目されるべきは、「その他」によって、アベノミクス以降だけがギューンと「かさ上げ」され、反対に90年代は軒並み「かさ下げ」調整されるという、誰が見てもおかしな現象が起きていることです(図1)。この改定前は2015年度と1997年度で20兆円くらい差があったのに、改定されてほとんど差がゼロになってしまいました(図2)。この2016年改定によって、「GDP史上最高更新」という「成果」が打ち出されています。

 

 



 科学技術の論文において、内容不詳のデータを算入したりすれば論文不正にあたることは明白ですが、安倍政権の下で日本経済の舵取りの基幹統計であるGDPも改ざんするという不正が行われていることを強く疑わせる事態と言えるでしょう。

なぜGDPを「かさ上げ」する必要があるのか?

 安倍政権はなぜGDPを「かさ上げ」する必要があったのでしょうか?

 安倍晋三首相は2015年9月24日の記者会見で「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言し、経済成長の推進力として「アベノミクスの新3本の矢」を発表しました。その「新・第1の矢」が「希望を生み出す強い経済」で、その具体的な中身が「名目GDP500兆円を戦後最大の600兆円に」するだったのです。

 「GDP600兆円」を掲げた2015年9月以降、安倍政権はGDPが増えることこそ「アベノミクスの成果」の証とし事あるごとに強調してきました。例えば、毎年6月に閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)には必ず「GDP600兆円」を達成することを明記しています。この安倍政権に呼応するように、経団連も2018年5月31日に「GDP600兆円経済に向けて-Society 5.0を推進する-《2018年度事業方針》」を発表しています。こうして「GDP600兆円」は政・財あげて「アベノミクスの成果」を示すために必ず成し遂げる必要がある課題になったわけです。この「政・財」に加えて「官」は2014年5月30日に設置された内閣人事局によって安倍政権に幹部人事を握られ、国家公務員が私物化されています。森友学園問題における佐川宣寿元国税庁長官の姿を見れば、安倍政権のためなら公文書改ざんも実行する「官」に成り下がっていることがわかります。



GDPの「かさ上げ」で影響すること

 GDPは一国の経済規模を示し、景気判断の際に基幹となる経済統計です。アベノミクスの期間だけGDPを「かさ上げ」すれば、アベノミクスによって日本の経済規模は大きくなり景気も良くなったということになります。安倍政権が掲げる「戦後最大のGDP600兆円」が実現すれば、安倍政権は「戦後いちばん経済政策で成果をあげた政権」になるというわけです。モリカケ問題などの不祥事が連発しても安倍政権の支持率が大きく下がらないのは日銀やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の「官製相場」による「株高」演出が背景にあるのではと言われていますが、かさ上げによる「戦後最大のGDP600兆円」も安倍政権を支える一つの要因になることは明らかでしょう。

 また、GDPは各国のさまざまな政策への歳出・歳入を対GDP比として国際比較する際に活用されますから、安倍政権にとってGDPかさ上げのメリットは歳出・歳入を小さく見せたい政策課題について効果を発揮します。例えば、軍事費は1976年に三木武夫内閣が軍事大国化の歯止めとして「GDP1%枠」を閣議決定しました。その後、1987年に中曽根康弘内閣が1%枠を撤廃したものの「軍事費GDP1%枠」が現在でも基本になっています。GDPをかさ上げしてしまえば、1%枠そのままでも軍事費を増やすことが可能になるのです。

 財政面では日本は巨額の財政赤字が膨らみ続けていますが、財政赤字も国際比較する際は対GDP比になりますから、GDPをかさ上げすれば財政赤字を国際的に小さく見せることも可能になります。

 一方で、安倍政権が大きく見せたいのに小さくなってしまうものもあります。例えば、安倍首相は「人づくり革命」で「教育の無償化」が必要だと盛んに言っていますが、OECDの直近の国際比較データで日本政府の教育への公的支出は2015年に対GDP比で2.9%と34カ国中最低の上に、この10年間の中で最も低い数字になってしまっています。「教育の無償化」を力説しながら実際にやっていることはOECD加盟国で最も教育にお金を出さないのが日本政府であることが、GDPのかさ上げでいっそう鮮明になってしまっているのです。また、社会保障費なども同様のことが起こります。

 この他にも国際比較する際にGDPのかさ上げは影響してきますので注意することが必要になります。

賃金も「かさ上げ」

 代表的な賃金統計である厚生労働省の「毎月勤労統計調査」も「かさ上げ」されて、アベノミクスで「賃上げ」が実現したかのように一部で報道されています。これは賃金を算出する際に使用するベンチマーク(別表の厚生労働省資料参照)の変更が大きく影響しています。2018年以降について、事業所規模の小さな労働者数を減らして事業者規模の大きな労働者数を増やし、賃金がより高く出る新しいベンチマークを採用するなどしたのです。以前はベンチマークを変更した場合、過去データまで遡及していたのですが、それもしなくなりました。

 



 これに対して、政府の有識者会議である統計委員会でも9月28日に批判が出され、冒頭で紹介した日銀も批判する事態になっているわけです。

 この問題を追及している「西日本新聞」は直近で次のように報道しています。

 

内閣府統計を修正へ 雇用者報酬 厚労省調査の上振れ受け

西日本新聞2018年10月24日付

 厚生労働省の毎月勤労統計調査で今年に入って賃金上昇率が高めに出ている問題で、内閣府は同統計を基に算出している統計「雇用者報酬」の実績値を修正する方針を固めた。雇用者報酬の前年同期比上昇率も過大になっていると判断、名目ベースで今年1~3月期は3・1%から2・7%程度、4~6月期は4・1%から3・4%程度にそれぞれ引き下げる。基となる統計の異常による実績値の修正は極めて異例。内閣府は景気判断への影響は限定的とみているが、統計の作成経緯があらためて問われそうだ。

 内閣府によると、毎月勤労統計では算出に用いる労働者数データが1月に変更されるなどした影響で、実績値が上振れしていることを確認。雇用者報酬も連動する形で上振れしていると考えられるため、2009年7~9月期から18年4~6月期までの実績値を変更の影響を独自に加味し再計算する。
 

 もはや安倍政権はフェイクニュースの発信源となっています。現在開かれている臨時国会においては、外国人労働者の受け入れ拡大を目的とする出入国管理法改定案をめぐり、安倍政権の調査結果改ざんや虚偽答弁が横行しています。国の政策を左右する基本的な経済統計が安倍政権によって改ざんされるなか、私たちはこうした事実を広く告発すると同時に、常に政府統計を監視しチェックする必要があります。(井上伸)

霞が関で働く国家公務員の28%が過労死の危険を感じパワハラ被害は34%(1万1,500人)

(▲深夜も灯りが煌々とともる厚生労働省)

 

 

 11月28日(水)午後7時から午後10時まで「霞が関公務員相談ダイヤル」を実施します。

 



 私たちが実施したアンケート(国家公務員の残業実態アンケート2018等)によると、霞が関で働く国家公務員の28%(9,500人)が過労死の危険を感じ、パワハラ被害は34%(1万1,500人)、セクハラ被害は21%(7,100人)にのぼっています。「霞が関公務員相談ダイヤル」にあわせて「霞が関で働く国家公務員の座談会」を行いましたので、以下紹介します。(※座談会出席者=A省Aさん、B省Bさん、C省Cさん、司会・井上伸

  今回の残業実態アンケートの結果を見ると、過労死の危険ラインとされる月80時間以上残業した人は、前年より0.2ポイント減少して6.3%(2,142人)ですが、このアンケートに答えてくれている組合員は比較的残業が少ないというのが現場の実感です。

  そうですね。残業が多い人はアンケートに回答する時間もないというのが霞が関のリアルな実態ですから、アンケート結果に現れてこない「声なき声」の方に耳を傾けるべきだと思います。

霞が関の働き方ワースト1は厚生労働省
「過労死の危険を感じた」59%、「残業代不払い」84%


  省庁別のワースト3を見ると、厚生労働省(労働)は「過労死の危険を感じたことがある」58.9%(全体は28.0%)と、「残業手当に不払い部分がある」84.4%(全体は41.2%)と突出して多いですね。

  「働き方改革」を民間企業に対して進めなければいけない厚生労働省(労働)が「霞が関での働き方ワースト1」というのは深刻な問題です。

 



  「残業になる主な要因」を見ると、過労死ライン(月平均残業80時間以上)で働く人は、「業務量が多い」と「国会対応」がやはり突出しています。

  定員削減で係員なしの一人係長になってしまって、昔は数人で回していた仕事を補佐と係長だけで回す状況が広がっています。行政需要が増えて業務が複雑高度化しているので仕事は増大するばかりなのに、定員削減で職員は減らされ続けて欠員も補充されない。これでは過労死ラインで働く人が減らないのは当たり前です。

  休日出勤が前年より1.6ポイント増えて58.3%になっていますが、仕事が終わらないから実際休日の深夜でも霞が関不夜城になっていて庁舎の灯りが煌々とついています。

  職員が減らされ続ける中で、国会対応はますます大変になっていますね。

  私自身も国会対応で月の残業が120時間、140時間、160時間と3カ月続いたときは過労死の危険を感じました。毎月のように在職死亡や自殺などの報告がありますし、メンタル疾患に陥る職員も増え続けています。

  最近も過労死で亡くなった人がいて休憩室で倒れていました。3年前に政府が始めた「ゆう活」で生活リズムを崩してメンタル疾患に陥り最近退職に追い込まれた人もいます。業務量が増えているのに職員を減らしておいて「ゆう活」とか「プレミアムフライデー」とか政府主導の小手先の対策は問題だらけですね。

  業績評価に定時退庁や月1の有給休暇取得などが盛り込まれ、管理職は部下の残業が多いとマネジメントができていないと評価が下がる。職員も同様なので「隠れ残業」が増えています。有給休暇を取得したことにしておいて部下を働かせる管理職もいるなど酷いものです。

育休取り上げ、残業時間改ざんで残業なしに

  月の残業時間が40時間を超えないよう上司が厳命している職場では、早朝出勤したり、パソコンをシャットダウンして残業したり、挙句の果てに公文書改ざんならぬ残業時間改ざんで残業しても残業しなかったことに上司がしてしまうようなことも広がっています、

  残業代がきちんと出ないので、午前4時、5時まで働いて残業代を計算すると自給が400円になってしまう正規職員もいるのですが、最近は非常勤職員にまで終電がなくなるほど残業をさせておいて残業代をきちんと払わない酷い部署もあって許されないです。

  政府は「イクメンプロジェクト」を実施していますが、育児休暇中の女性職員に対して、「新年度の体制で職員が不足している」という理由で育児休暇を切り上げさせることも起きていたり、国会待機も家族的責任がある職員に配慮しないなど、子育ても困難な状況です。

 井上 ここで、全経済産業労働組合副委員長の飯塚盛康さんが最近寄せられた実態を送ってくれたので紹介しておきます。

 ◆現在うつ症状で病気休職中の職員
 「未経験の業務で勉強しようと思っても次から次に仕事が降ってくる。内容を理解できないし、周囲に聞いても自分で調べろと言われ、毎日終電で帰っていた。3か月でうつ病になって、今休んでいる。ひどくならないうちに労働組合が助けてくれたので、年内には復帰できそう。あの時、労働組合から声をかけてくれなかったらと思うとぞっとする」

 ◆20代女性職員
 「4月から10月開催のシンポジウムを準備していた。上司の了承を受けて課長に持っていくと全部やり直しを命じられた。その後、課長の了承をうけたものは部長に、部長の了承を受けたものは局長に、局長の了承を受けたものは大臣に全部ひっくり返された。こんなことを毎日終電までやらされていた。何が働き方改革だと思う」

 ◆今年入省の職員
 「入ってすぐに8時半出勤、最終電車の生活。他省庁にも合格したが、親も親戚も経済産業省を勧めたので入省したが、もう辞めたい。後輩には絶対に経済産業省には入るなと言う」(※その後、労働組合が対応して9時半出勤で遅くとも21時には退勤する体制をとらせたので、なんとか辞職は思いとどまっている)

 ◆30代男性職員
 「国会待機が本当にきつい。朝まで仕事をして家に風呂と着替えに帰るだけで、また午前9時半から勤務など、インターバル時間の確保どころか寝る時間も確保できない。霞が関はブラックである」

 ◆40代女性職員
 「質問主意書の答弁作成は、スケジュールが短いため、必ず深夜残業を伴う業務になっている。定員削減で対応できる職員が少なくなるばかりなのだから、質問主意書の答弁作成スケジュールにきちんと余裕を持たせるべきだ」

 ◆40代男性職員
 「国会の会期中は朝方まで働くので睡眠不足から仕事中に意識を失ったこともある。政府は働き方改革と言うならお膝元の霞が関職場をまともな労働環境にすべきだ」

 ◆30代男性職員
 「国会対応のことばかりが取り上げられるが、通常業務をこなすだけで終電になるのが実際で、国会が始まると朝方まで仕事ととなる。毎日仕事を辞めるかどうか考えながら仕事をする生活に疲れている」

 ◆20代女性職員
 「パワハラによる病気休職者が後を絶たない。根本的にパワハラを止める仕組みが作りが必要だと思う。パワハラの横行による精神的な負担に加えて、長時間過密労働で家に帰れないことも多く、私は女性ですが、こんな仕事をしていると将来子どもを生めなくなる体になるのでは、と怖くなるときがある」

 ◆30代男性職員
 「パワハラを受けてうつ病になり休職したが、労働組合の支援で現在は復帰。当時は国会対応で午前4~5時まで仕事することが当たり前だった。体調を崩す人が出ないように労働組合に頑張ってほしい」

 ◆30代男性職員
 「財務省の決裁文書改ざん後、全部の決裁は電子決裁システムで行うことになったが、電子決裁後の決裁文書を変更しないように、あらがじめ紙の書類で決裁をして修正がないようにしてから電子決裁システムで回すので二度手間になっている。こんなことで残業しているのが馬鹿馬鹿しい」

 井上 以上が経済産業省の最近の実態ですが、どう思われますか?

首相官邸のパワハラが霞が関クラッシャー上司のパワハラに拍車かける

  確かに森友学園問題での財務省の公文書改ざんの余波で、文書管理の実務を担う職員は益々仕事が増えていますね。そして、とりわけ官邸対応の仕事が増えています。土日深夜に官邸に呼び出されることが最近頻発しています。

  キャリア官僚はプライベートの携帯番号も官邸におさえられていて、24時間いつでも連絡がある。突然、官邸から「あと2時間で資料を作って持って来い!」などということが安倍政権になって劇的に増えています。首相官邸の言うことを聞かないとキャリアの出世の道は閉ざされる仕組みになっているわけですから、出世を望むキャリアは従わざるを得ない。首相官邸のパワハラでキャリア官僚が倒れていっています。

  内閣人事局による幹部職員人事一元化の弊害ですよね。官邸から言われた通りに仕事するキャリア官僚はどんどん偉くなっていって、モノ申す人は飛ばされる。モリカケや裁量労働制データ、直近では外国人の受け入れ拡大に向けた入管法改定案をめぐっての審議の基礎となるデータの偽装など、まさに私たちが危惧した通りの状況になっているわけです。

  首相官邸の圧力で仕事をするキャリア官僚は下へ向かってパワハラを発動することが多くなるわけです。昔から霞が関の職場にはクラッシャー上司と呼ばれるノンキャリ職員をパワハラで潰して回るキャリア官僚がいたのですが、安倍政権下では首相官邸という政治的権力も加えて部下を怒鳴り散らす。その結果、一人倒れ、二人倒れということになる。首相官邸の強権発動が霞が関のクラッシャー上司のパワハラ行為に拍車をかけているのがここ数年の特徴でもあります。

  そうした状況で、私たち労働組合へのパワハラ相談が増えていますが、労働組合としてきちんと取り組んでパワハラの問題は解決する事例も増えています。

 井上 霞が関の長時間労働をなくすにはどうすればいいでしょうか?

  定員削減をストップして職員を増やすことが根本的には必要です。加えて、国会対応を改善する必要があって、よく野党の質問通告が遅いから霞が関の国家公務員が大変なんだと指摘する方がいますが――実際深夜12時を過ぎて質問通告が来ることなどが多くて、そこから仕事をするので朝までかかるわけです――しかし、もとはと言えば与党の強引な国会運営等で野党は時間がない中で質問準備をせざるを得ないという側面も強いわけで、これは与野党両方の問題だと思うわけです。脱線しますが、与党議員の質問は政府へのおべんちゃらのような質問が多いので準備にそれほど時間がかからないというのもあったりします。

  そう思いますが、枝葉末節の問題にまで乱発する野党の質問主意書については、もう少しルールをつくっていかないと、質問主意書が出されて1週間で対応しなければいけない霞が関の現場にとっては大変ですね。

  現場の工夫としては、国会対応を当番制にするのと、人数を絞って、できるだけ国会待機を少なくする。そして、与野党の国会ルールをきちんとつくる。地方議会などでは質問通告は2日前に必ず締め切るというようなこともできているわけですから、国権の最高機関である国会が人間らしいルールをつくることは可能だと思います。

 

(井上伸)

ZOZO田端氏 @tabbata 「前澤社長は最高税率55%」→前澤社長も分離課税で税率2割程度

 前回の記事「ZOZO田端信太郎氏 @tabbata の無知→富裕層所得の8割は株式譲渡で税負担低いby財務省」に対する田端氏のツイートです。

 

世の中全体のことは知らんけど、前澤さんに関しては分離課税じゃないことは明白でしょう。制度をキチンと知っていれば、それは容易に推測できるのに、それを認識して記事書いたとは思えないので「無知ですね」と申したまでです


 「世の中全体」にも、「富裕層所得の8割は株式譲渡で税負担低いby財務省」の「一般論」にも、前澤社長がきっちりあてはまっていることを今回は検証します。

 そもそも株式による儲けには、配当と譲渡所得があります。このうち配当については、まず、源泉分離課税で所得税15%、住民税5%の合計20%が課税されます。これは、配当を配るときに、証券会社などが源泉徴収するものですから、個人が確定申告する必要はありません。ですので、以下の所得税の負担率のグラフは、申告納税者の所得に関するものですから、源泉徴収だけで済んだ配当は対象外です。

 



 ただし、企業の発行済み株式の3%以上を保有する、いわゆる「大口株主」は、源泉徴収だけで済ますことはできず、確定申告する必要があります。そうすると、分離課税ではなく総合課税で計算され、源泉徴収分との差額を追加で納めることになります。このため、税率は20%ではすみませんが、次の点に留意する必要があります。

 いくら配当額が多くても、「3%以上の大口株主」でなければ確定申告する必要がないということを最大限に利用する富裕層がいるということです。

 例えば、トヨタの豊田章男社長は、トヨタ株を475万株持っていて、1株220円、年間9.5億円の配当を受けていますが、トヨタ全体では33億株も発行されていて、豊田章男社長の持ち株は0.2%にもなりません。そうすると、豊田章男社長は年間9.5億円もの配当を受けているにもかかわらず、「大口株主」にはならず確定申告の必要がなくなるため、税金は20%しか課税されていないのです。以下は国税庁のサイトにアップされている所得税の税率ですがこれに住民税10%を加えますから、豊田章男社長の年間9.5億円の配当の税金は「195万円~330万円」の所得税・住民税と同じ20%しか納めていないという富裕層優遇税制になっているわけです。

 



 それから、自分の名義でなければ「3%」にカウントされないということを利用している富裕層もいます。例えば、京セラの稲盛和夫氏は、本人の名義では2.78%しか保有していません。しかし、ケイアイ興産という資産管理会社名義の株が1.93%あり、合わせれば3%を超えます。しかし、本人名義で超えていないため、確定申告しなくて済んでいます。同様に、セブン・アイHDの伊藤雅俊氏は、本人名義では1.89%ですが、伊藤興業の名義で7.77%保有しています。こういうケースは、ほかにもたくさんあります。

 ZOZOの田端信太郎氏は「貧困層のために富裕層への課税強化を!!って言うばかりの人は、発想が貧困。」とツイートしていますが、富裕層の配当の税金が「195万円~330万円」の貧困層と同じ税金しか納めておらず、中間層の税金より低いのはどう考えてもおかしいので、少なくとも「富裕層は中間層と同じ税金を納めるべき」というのは当たり前です。なので、田端氏のように富裕層への課税強化を批判するばかりの人の方が「発想が貧困」なのです。

 また、ZOZOの田端信太郎氏は次のようにツイートしています。

 

前澤さんの配当所得が総合課税で税率がほぼ55%なことは明白なのに、事前に知らない制度の詳細をカウンターで指摘されたら、個人の話を全体にすり替えてフェイクニュースをさらに拡散する連中、みーっけ!

 

 「全体の話」は「前澤社長個人の話」とも全く同じなのですが、そもそも総合課税の最高税率55%と言うのも事実と違います。確定申告して配当所得を総合課税で最高税率で納めた場合でも税率は55%にはなりません。配当の場合、税額を計算した後に「配当控除」といって、所得税で配当の5%、住民税で配当の1.4%の税額控除を受けられますから、実質負担率は、最高でも48.6%(=55-5-1.4)です。

 次に、株式譲渡所得ですが、これは確定申告したうえで分離課税とする申告分離課税になります。配当と違って、譲渡の場合は譲渡所得だけではなく譲渡損失が発生する場合があります。買ったときより値下がりしている株を売った場合です。このため、確定申告をして、所得と損失を通算処理したうえで課税するのです。この場合は、金額が多くても、大口株主であっても、税率は住民税をあわせて20%です。この譲渡所得については、配当と違って確定申告をしているので、上記で紹介した所得税負担率のグラフに含まれ、富裕層の負担率を下げる原因になっているのです。

 ZOZOの前澤友作社長は次のツイートをしています。

 

2016年度77億円、2017年度34億円、2018年度70億円(予定)。個人での国内における所得税や住民税などの納税額です。買い物もするけど、税金もしっかり納めております。これからももっと稼いでいっぱい買い物して、いっぱい納税します!


 田端氏は「前澤さんに関しては分離課税じゃないことは明白」で、それを知らないのは「無知」と言っていますが、前澤社長の「2016年度77億円」には「分離課税」の方がはるかに多いので、田端氏の方がどう考えても「無知」です。具体的に検証してみましょう。(※2017年度以降は、まだデータが出ていなので確かめられないため「2016年度77億円」を検証します)

 まず、前澤社長の会社役員としての報酬ですが、これは1億円未満です。1億円以上なら有価証券報告書への記載が必要になるのですが、それがないからです。「2016年度77億円」の大半は株式配当と譲渡所得によるものです。

 まず、配当ですが、2017年3月決算時の有価証券報告書によれば、前澤社長の保有株式は1憶2141万株、保有比率は37.67%で、1株当たりの年間配当が36円でしたので、同氏が受け取った配当は43.7億円と計算されます。

 そして、前澤社長は3%以上の大口株主なので、総合課税の対象となり、実質税率48.6%により税金は21億円になります。

 次に譲渡所得です。国税庁の統計データによれば、2016年度に100億円超の所得を申告した人は17人いて、そのうち16人が株式譲渡益です。16人のうち2人が千葉県に在住しています。有価証券報告書によれば、前澤社長の住所は千葉県なのでその2人のうちの1人が前澤社長ということになります。つまり、前澤社長は2016年度に株式譲渡で100億円以上もうけたということになります。残念ながら、国税庁の統計では譲渡金額は不明ですが、金融庁の「大量保有報告書」でわかります。

 この金融庁のデータによると、前澤社長は2016年5月18日に590万株を4,604円で売っています。売却総額は271億円になります。譲渡所得は、買った時と売った時の差額ですから271億円全部が所得ではないかもしれませんが、前澤社長は創業時から持っていたのですから、もとはほとんどゼロに等しく、売却額のほとんどが所得でしょう。

 前澤社長の譲渡所得271億円は分離課税で住民税あわせて税率20%ですから54億円の課税になります。

 前澤社長の税金は、配当が21億円、譲渡所得が54億円となり、合計75億円です。前澤社長みずからの言う「2016年度77億円」に符号します。

 前澤社長の配当と譲渡取得を合わせた315億円のうちの譲渡所得271億円は86%ですから、前回紹介した以下の財務省データとも符号します。

 

 

 前回紹介したものは「一般論」「全体の問題」だけではなく前澤社長にもきっちり当てはまっているのです。前澤社長の税金が77億円といっても、もとになった配当と譲渡所得を合わせれば315億円で所得に対する税負担率は24%にしかなりません。前澤社長も「富裕層全体」「富裕層一般」と全く同じで富裕層優遇税制の恩恵を受けているのです。前澤社長は決して最高税率55%もの負担をしているわけではないのです。(井上伸)

ZOZO田端信太郎氏 @tabbata の無知→富裕層所得の8割は株式譲渡で税負担低いby財務省

 前回書いた「ZOZO前澤社長は年収100万円の貧困層より税・社会保険料が軽いのに田端氏が富裕層課税強化を批判」に対する、ZOZOのコミュニケーションデザイン室長の田端信太郎氏のツイートです。(※キャプチャ画像とともに「▼」にリンクを貼っています)




 どちらが「無知」なのか財務省のデータで検証してみましょう。

 下のグラフは財務省による「申告納税者の所得税負担率」です。

 



 上のグラフにあるように、財務省も「株式等の保有が高所得者層に偏っていることや、分離課税となっている金融所得に軽課していること等により、高所得層で所得税の負担率は低下。」と指摘しています。

 この財務省のグラフだけでもZOZOの田端信太郎氏の「無知」は証明できているのですが、田端氏は「上場企業の株3%以上持ってると配当は総合課税だから間違いなく最高税率の55%。客観的な事実と大見得切ってるが間違っとるで。」「要するに無知なんですよねぇ。」というツイートをするぐらい、田端氏は相当な「無知」なので説明しておきましょう。

 下のグラフは財務省による「高額所得者の主要な所得の構成割合」です。所得が高くなればなるほど株式譲渡所得の構成割合が高くなるのですが、所得階層ごとにグラフにすると煩雑なので「9千万円~1億円」と「10億円超」をグラフにしてみました。

 



 上のグラフにあるように、田端氏が誇る「上場企業の株3%以上持ってると配当は総合課税だから間違いなく最高税率の55%。」の「配当所得」はZOZO前澤友作社長のように10億円を超える富裕層ではわずか6.7%しかないのです。そして、分離課税20%と優遇される「株式譲渡所得」が8割を超えているのです。富裕層の所得で8割を超える「株式譲渡所得」が分離課税20%で優遇されて、最高税率であったとしても「配当所得」は6.7%しかないから、財務省も「株式等の保有が高所得者層に偏っていることや、分離課税となっている金融所得に軽課していること等により、高所得層で所得税の負担率は低下。」しこの富裕層の優遇税制で年間1兆円(財務省によると2016年度で分離課税による富裕層の減税額は1兆260億円)が失われていると指摘しているのです。田端氏、どちらが「無知」なのか、これでよくわかったのではないでしょうか。(井上伸)

ZOZO前澤社長は年収100万円の貧困層より税・社会保険料が軽いのに田端氏が富裕層課税強化を批判

 ZOZOの前澤友作社長のツイートです。(※画像キャプチャとともに「▼」にツイートへのリンクを貼っておきます)




 上記のツイートに対する藤田孝典さんのツイートです。



 

 そして、前澤社長に呼応しての田端信太郎氏(ZOZOのコミュニケーションデザイン室長)のツイートです。




 私は藤田さんと同じ意見なのですが、その理由を少し具体的に紹介しておきます。

 

 田端氏は課税強化を批判しているわけですが、そもそも富裕層の負担はどうなっているでしょうか? 見てみましょう。

 以下のグラフは所得税の負担率です。年所得が1億円を超えると所得税が軽くなることが分かります。なぜ年所得1億円以上になると所得税が軽くなるかというと、年所得1億円以上の人は株の売買で儲ける比率が高くなることに加えて日本は配当課税と株式譲渡益課税が分離課税で20%と主要国と比べても低いからです(※2018年1月現在でイギリス38.1%、フランス30%、ドイツ26.375%)。日本は額に汗して働くと所得税は30%近くまでになるのに、額に汗しない株による不労所得を得ると税金が安くなっていくという富裕層優遇国なのです。

 





 次に消費税です。以下のグラフにあるように、年収に占める消費税負担割合は、200万円未満は7.2%に対して、1,500万円以上は1.6%です。前澤社長と田端氏よりも200万円未満の貧困層が4.5倍も消費税を収めているのが客観的事実です。

 



 以下は消費税・所得税・社会保険料・住民税の税・社会保険料負担率を折れ線グラフにしてみたものです。

 

 


 上記の折れ線グラフを積み上げグラフにしてみたものが以下です。

 



 上記のグラフにあるように、年所得100億円超の税・社会保険料負担率は24.0%に対して、年所得70万円~100万円以下は27.6%です。ZOZO前澤社長は100万円以下の貧困層より税・社会保険料を負担していないというのが客観的な事実です。

 それから、前澤社長はこんなツイートもしています。




 ところが、東洋経済ONLINEの「社員と役員の年収格差が大きいトップ500社」によると、ZOZO(2018年9月まではスタートトゥデイ)もしっかりランクインしていて、社員と役員の年収格差は7倍とのことです。





また、前澤社長の無邪気なツイートです。





 子どもたちの夢を壊しているのは貧困であることは、繰り返し解説してきました。加えて先進主要国クラブのOECDでさえ、貧困と格差が日本経済をダメにしていると断言しているのです。そして、今の日本は「子どもたちが夢を見る」どころか、子どもが普通に存在すること自体が以下のように困難になっているのです。

◆子どもの数も割合も過去最少、教育と暮らしの貧困で「結婚・子育て」そのものが困難な日本

◆子どもの貧困放置は日本経済に50兆円の損失をもたらす

◆駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生、100円ショップの薬用オブラートで空腹まぎらわす子ども、深刻な6人に1人の子どもの貧困を深刻化させ経済成長も損なう安倍政権

◆自販機の裏で暖を取り眠る子ども、車上生活のすえ座席でミイラ化し消えた子どもの声が届かない日本社会


 この間のアベノミクスで貧困と格差はさらに広がっています。以下のグラフの富裕層40人の中に前澤社長も入っていますが、富裕層上位40人の金融資産は2倍増になる中で、貯蓄ゼロ世帯は401.2万世帯も増えているのです。そして前澤社長を含み富裕層上位40人の金融資産は日本の全世帯の52%(2,607万世帯)の資産と同じになっているのです。

 



 また、以下のように年齢階層別に見てもすべての年齢層において貧困が広がっています。

 



 ZOZOの前澤社長も田端氏も「貧困は自業自得」などと揶揄し「貧困を自己責任」にして、子どもの夢を壊した上に日本経済そのものもダメにすることはやめてほしいと思います。そして、少なくとも貧困層や中間層と同等の税・社会保険料をきちんと負担するようにしてもらいたいと思います。(井上伸)

サマータイムで4千万人が寝不足・体調不良・仕事効率低下になる(霞が関の国家公務員の実証実験から)

 前回の記事「森喜朗氏「サマータイムで地球環境の持続を」→省エネに逆行、労働者の命と健康を損なうサマータイム」に引き続き、サマータイムの問題についてです。

 私たち国家公務員は、2015年の夏(7~8月)からサマータイムと同様、1~2時間前倒しで働く「ゆう活」を安倍政権から押し付けられています。国公労連は導入時から「ゆう活」は公共サービス低下と国家公務員の健康・生活に悪影響を及ぼすと反対してきました。労使合意もなく政府が一方的に「ゆう活」を2015年7~8月に強行した際には、国公労連として「『ゆう活』に関する実態アンケート」を実施し、「ゆう活」で働いた国家公務員2,536人からアンケートの回答を得ました。

 当初から危惧した通り、「公務・公共サービスの提供に支障が出た」と回答した国家公務員は14.0%にのぼりました。国家公務員で実施されている「ゆう活」は、国民全体の時間が前倒しになるサマータイムと違って、国家公務員の勤務時間だけが1~2時間前倒しになるので、国民との関係で「公務・公共サービスの提供に支障が出る」ことは当然ですが、さすがの政府も窓口業務のところには「ゆう活」を強制できなかったので14.0%程度の数字にとどまったという面も強いと考えられます。

 同時に危惧していた国家公務員の健康・生活への悪影響の問題です。下のグラフにあるように、本府省で働く国家公務員の15.6%が「体調不良になった」と回答し、15.6%が「仕事の効率が落ちたり、疲れた」と回答しています。政府による「2015年度 国家公務員における「ゆう活」・ワークライフバランス推進強化月間取組結果」においても、24%が「寝不足になった」と回答していますから、1~2時間を前倒しにするサマータイムが労働者の24%~31.2%に「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」をもたらすことは明らかです。

 



 自由記入欄には、「身体リズムが崩れ、疲れやすくなり仕事の効率が悪くなった」(府県機関で働く女性)、「生活のリズムがくるい、疲労度が大幅にあがった」(本府省で働く男性)、「業務の量は変わらず、そもそも職員が不足しているので、勤務時間管理の事務処理が煩雑になり加わる分、負担が増加し仕事の効率も低下する」(出先機関で働く男性)、「結局、『ゆう活』と言いながら、霞が関不夜城で最も過酷な国会対応や予算担当の職員を最初から対象外としているわけで、超勤縮減やワークライフバランスに政府が本気で取り組んでいるなんてウソだ」(本府省で働く男性)、「朝が1~2時間前倒しになると、子どもを保育園に送って行くことができず、家族責任を果たせない」(出先機関で働く男性、※これは国家公務員だけが前倒しになった弊害です)などの声が寄せられています。

 こうした国家公務員における7~8月の1~2時間の前倒しは、日本におけるサマータイムの実証実験とも言えると思います。そうすると、24%~31.2%に「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」をもたらすことを国民全体にあてはめてみると、日本の総人口は1億2670万6千人(2017年10月1日現在)ですから、その31.2%は3,953万2千人になります。サマータイムによって、4千万人が「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」をもたらすことになるわけです。

 東京オリンピックの公式サイトを見ると、「3つの基本コンセプト」の1つめに、「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」を掲げ、「万全の準備と運営によって、安全・安心で、すべてのアスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、自己ベストを記録できる大会を実現。ボランティアを含むすべての日本人が、世界中の人々を最高の『おもてなし』で歓迎。」などと謳われています。サマータイムで日本に住む4千万人に「寝不足」「体調不良」「仕事効率の低下」を強いておいて、アスリートには自己ベストを、すべての日本人には最高の「おもてなし」を求めるという、こんな倒錯した東京オリンピックのためのサマータイム導入は絶対に許されません。(井上伸)

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