砂糖黍畑が延々と広がっているようなそんな亜熱帯の、殺風景な沿道に何とも不似合いな巨大な看板絵がそそり立っています。ここはキューバ、しかし描かれているのは脚絆に尻っぱしょりして仕込杖をいまにも抜こうと耳を澄ませている何と市っつぁん、座頭市です。何で見たのか古い写真ですが、当時キューバでは目が見えないハンデを負いつつひとり悪に立ち向かっていく座頭市が大人気だったとか。

 

『座頭市』で思い出すのは映画版だったかテレビ版だったか(何せ大量に作られましたから)忘れましたが、市っつぁんが屋台でおでんを食べているところ。勝新太郎自身が場面に困ったらおむすびを頬張らせとけばそれだけで絵になると言っているぐらいですから、『座頭市』ではよく食べる場面が出てきます。例えば旅籠かお屋敷の勝手口に市っつぁんがかしこまって座っています。おさんどんがちょっと席をはずした隙にお櫃をひっぱがして自分の顔ぐらいのおむすびをこさえようとぎゅうぎゅうとやりはじめ、それにむしゃぶりついているところにおさんどんが帰ってくると何喰わぬ顔で澄ましていますが、市っつぁんの顔は米粒だらけ、みたいに。

 

座頭市 勝新太郎

 

 

さて屋台での、市っつぁんです。まずおでんの食べ方について市っつぁんが一席ぶちます。おでんてぇのはおでんに辛子をつけるじゃなくて辛子の上におでんを乗っけて喰うもんなんですよ。見ると箸の上にお団子(!)くらいの辛子、その上に小さく大根が乗っかっています。それを(へへへ、これが、おいしい、おでんの、食べ方、ですよっ、と調子を取りつつ)一気に頬張ると案の定辛さに七転八倒し最後に頭をポカポカ叩きながら、目が見えないことを逆手に取ったジョークを決めてこの場面を締めるんですが、まあこのジョークを披露するのは止めておきましょう。世のなかの不謹慎を靴音高く見廻っているひとたちからお叱りを受けることになってもいけませんから。

 

座頭市物語 座頭市物語
200円
Amazon

 

こちらをポチっとよろしくお願いいたします♪

  

 

 

 

関連記事

右矢印 馬鹿と冥利

右矢印 70年代の光

右矢印 晴朗なれど波高し

右矢印 浪花千栄子のマヨネーズ

 

前記事 >>>

「 まぎらわしい 」

<<< 次記事

「 椿三十郎 」

 

 


■ フォローよろしくお願いします ■

『 こけさんの、なま煮えなま焼けなま齧り 』 五十女こけ