アノマニスからの脱却(2)
アノマロカリスって知ってる?。古代はカンブリア紀に生息していた生物さ。みんな一度は見たことあるはずだよ。中卒でもね。アノマロカリスの名前の意味は「奇妙なエビ」。もちろんラテン語だよ。学名だからね。まあアノマロカリスの生態や形なんてのはどうでもいい話だからしないけどさ。
じゃあなんで突然そんなことを言い出したのかというと、野木毛神見の家の、ま、ひらたく言や“家紋”がアノマロカリスなんだよ。それって変だろ?。その通り、変なんだ。
神見とつきあい始めたレイは嬉しくってさ。そりゃあそうだ、レイが生きてきた年月のなかでこんなにうまくことが運んだためしはなかったからね。バイトの職場にもすんなりとけ込んじゃったりなんかして。ずっとニートだった男がさ。早く人類滅亡しないかなって、半ば本気で夜空に、その先の宇宙に願いを託していた男がだよ。今じゃ、
「いらっしゃっせー」
ものだよ。変な笑顔浮かべちゃってさ。なまじそこそこかっこいいから、職場の人気者になんか成り上がりやがって。なんたるこっただよ。なんでノストラダムスは毎年恐怖の大魔王の到来を予言しなかったと、半ば本気で思っていた男がだよ。笑っちゃうね。何をやっても楽しんでやがる。今度みんなでどっか行こうか、だって。わかったいいよ、だって。ちゃちゃを入れないけどレイの家族は陰で喜色満面だって。ほんと、笑っちゃうよ。1日24時間じゃ足りねえな、だって。一転して人生バラ色だってさ。ああ、レイのバイト先は例のファミレス、ではなくて、その100メートルほど駅側にある、やっぱりファミレスだよ。違う系列のさ。特に何か考えての選択ではないみたいよ。さすがに常連所に履歴書は出せなかったそうでさ。まあ、お先のこと考えるとは暗いよね。だけど、レイはなんか楽しそう。
そのレイのバラはもちろん神見だよ。言わずもがなね。こいつほんと長いこと彼女なんかいなくてさ。高校中退前にファッションで彼女を作ったことあったけど、それは文字通りファッションでさ。さあデートだってなると、別に話すこともないし、行きたいとこもないし、なんせ無駄なことにそんなにお金使いたくないしで、まあ、そんな感じ。あの頃のレイは軽い結婚詐欺師みたいなもんでさ。彼女という飾りを手にいれたあとは、相手を意中のままに操りたかっただけなんだよ。アタック中、その気なんかないよとばかり、わざと連絡を入れなくなって相手をじらしたり。自分よりモテる友達にわざと狙ってる彼女と一旦いい仲にさせておいて、そのあと計画通りの不協和音の相談に乗る形でもつれ込んだり、わざと彼女の前でカッコ悪いことして、だけどもっとカッコ悪いことを友達に促して、彼女に「こっちのがマシだわね」なんて深層心理に訴えたり。あの頃のレイは決まって、彼女、に、自分、を選ばせやがるんだ。彼女の行動を彼女自身に選ばせやがる。そういう手を使いやがる。人間、自分が選んだ結果には甘いからね。多少思い描いていた結果と違くなっても、自ら修正
しちゃうんだ。だけどさ、そんな、いい意味でいう「恋のかけひき」なんて、つまらないもんだよ。要は、はじめは相手のこと好きだったかもしれない、けどそんなことしていると、相手を意中のままに操りたいってのが好きって感情より先に立つんだ。だからエサをまいといて、そのエサに相手が思い描いた通りの行動をとらないと、ムカついてきやがる。無性にイラついてきやがる。随分と自分勝手、そう結局は自分勝手なだけ。
レイはニート時代、やることがないもんでよく過去を振り返りみてた。その、振り返るには短いスペースのなかで、レイは気づいた。そんなものはクソだと。好きになったら、好きなようにやればいい、だなんてそんなことを女っけのかけらもない暗黒時代に思っていたんだ。笑っちゃいけないのかな。
恋のかけひき?、マニュアル?、そんなこと実践して、その先に一体何がある。何が残る。むなしいだけだろ。相手を意中のままに操ること、それが恋、ましてや愛なのか。おれは違う。いや、違くなる。もう二度とそんなことしない。毎日連絡入れてやる。コンビニだって毎日行ってやる。好きな気持ちをじらさない。隠さない。だけど縛りはしない。恋に対して奴隷になる。ならなきゃいけない。
レイは、それを実践したよ。子供みたいに目を輝かせてさ。神見も、まんざらじゃなかったみたいね。いつも嬉しそうにしてたよ。なんせ、初めての彼氏だし。初めての彼氏が同年代の大人ぶった子供じゃなかったって部分は、良かったことかもしれないね。
神見の誕生日には、ふたりで遊園地に行ったっけ。乗り物を待つ長い列、ちょっとしらけ始めた恋人同士が目立つなか、ふたりはあきることなく愉しく語り合っていたよ。神見は映画も本もほとんど読んだことなくてさ。どうやら世間ってやつも、あんまり知らないっぽい。コンビニでバイトしてるのが奇跡的とさえ思えるほどだよ。
神見はレイのそれらから受け売りのままの知識が、とても新鮮だったらしいよ。ほんと、回転寿司では回ってるベルトの上から皿ごと取らなきゃ駄目さ、なんて話にさ。時には目を丸めたり、時には目を細めて、レイのやる他愛ないギャグに腹を抱えて笑ったり。レイは「神見は今までどこで何をしていたのだろう」って、何度となく思った。だってさ、彼女、なんでも新鮮らしかったから。でもそれは訊かなかったよ。訊けなかったよ。神見がそれを語ることはなかったし、どちらかというとそれを遠ざけている節がある。そしてレイはその理由をなんとなくわかっていた。
その遊園地の帰りに、レイは神見にプレゼントを渡した。それは赤い小さなイヤリングで、
「勝手に選んじゃったけど、気に入らなきゃ捨てていいからね」
「捨てないよ。きっと」
だってさ。レイはとっても、嬉しくなっちまってやんの。
蜜月、ま、蜜月だよ。ふたりはハチミツみたいにどろっとした甘ったるい時間を共有してたよ。人は置かれている立場で変わると云うけど、レイは変わったよ。自分勝手な日々から、誰かのための日々に変わったんだ。だから、1日24時間じゃ足りないんだろうよ。まったくもって生意気な野郎だ。しかし、蜜月も、しばらく、しばらくでしかなかった。なに、ふたりにその責任はないよ。ないね。そんな犬も食わないような話したって、しようがないしさ。
神見の誕生日から幾日経ったろう。レイははじめて、“ちゃんとした形”で、神見の実家に行った。行くことになった。気分は最低だった。
神見からのお願い?、両親との面通し?、ま、当たらずも遠からず。レイは神見の父親に呼び出されたんだよ。
虫の知らせかどうかしらないけど、その日レイは目覚まし時計のベルがつんざき鳴る5分前に目を覚ました。そして起きしなに、目覚まし時計の代わりに携帯電話が震えに震えた。画面を確認すると野木毛神見。珍しく神見からの電話だと思って、嬉しさを噛みしめながら携帯電話に出てみれば、見知らぬ声知らぬおっさんが向こうで怒声を張り上げている。朝。こんな状況で、君ならどうする?。
レイはまず、鼻笑いをしちゃったんだ。これはまずかったね。相手は余計怒り狂ってさ。レイはますますことの次第がわからなくなった。携帯電話の画面に表示されている文字は、天女みたいな神見なのに、手におさまる機械の内部が振動して出し伝えている声は怒りに怒ってタンが絡んでるのも無視して自分を怒鳴りつけるおっさん。わかることは声にやたらエコーかかってる。さすがに、番号間違えてませんか、とレイは言わなかったよ。ありえないからね。相手はレイの名前をはっきり言っちゃってるし。
すぐにその人物が神見の父親だとわかった。相手はそう何度も名乗ってたからね。エネルギー不足のレイの脳には外国の呪文のように聴こえていただけでさ。そして、今日のデートがおしゃかになったことも理解した。そして、神見の父親が自分の家の前にいて、そこからわめきちらしていることもわかった。やけにエコー効いてる理由がわかった。ステレオで聴いていたからだ。ストーキングはやっちゃ駄目なことだと、レイはやられてはじめて心から理解したよ。
まるで野良犬を引っ張るように神見の父親に引き立てられながら、レイは神見の家の前に来た。道中は無言だったけど、オヤジの背中は張り裂けんばかりに怒ってた。実に20分ものあいだ、その背中をレイは見ていた。レイの家族が出払っていたことは心から幸いだったと思える。家の前に来た時、レイは改めてその家構えの全体を見た。やはり、異様だ。
自分の生まれ育った町だからこそ、普段赴くことのない地域がある。ましてや交通整備された23区内となれば生活の範囲というのは限りなく狭まれ、それは踏切を越えた先だったり、大きな国道の向こうだったり、小学校の時分に「ここから先はあっちの学校」と決めて立ち寄らなかったりしたように、無意識にテリトリーを築き上げ、生活の範囲を狭めている。近くにあるのに、電車を乗り継いで行く場所よりも遠く、知らない町。実家から歩いて20分、こんな近くにこんな得体のしれない建物があるとは。地元民だからこその盲点、いや、地元民だからこそのタブーだったのかもしれない。
外部からの侵入、詮索を拒む高い金属の立て板に取り囲まれ、外からは中をうかがい知ることはできない。まるで要塞のよう。そのフェンスには、なんだかよくわからない紋様がペンキで描かれていたのであろう形跡が見受けられるけど、今ではところどころ剥げ落ち、かすれ、色褪せ、おそらくはその用をなしてないはずなんだけど。外から見えるものは、二階建ての無彩色のコンクリート家屋と、その高い立て板よりも高い、内側すぐにある門だ。その門の真ん中に不気味なオブジェがある。昔、理科の教科書でみたことあるような、ないような。ストーカー時代、レイは、「ああ、厄介な家なんだ」と思った。ゴミ屋敷じゃないけどさ、こんなことするのは気違いか気違いだよ。それをわかってはいたが、抱いた。
オヤジに連れられ、ちゃちなアルミ扉から中に入ると、そこそこ広い庭を埋めつくさんばかりにいくつものビーチパラソルが花開いている。殺風景な外観からはまるで想像できないリゾート。レイは、衛星写真から身を守っているに違いない、と思った。こんな広い敷地があるのに駐車場はどうしてるんだろう、とこんな時にレイの脳みそは変に理屈っぽいことを浮かびあがらせたが、よく考えてみれば、車を持っているなら車でご参上ならせられるなとひとり納得した。
当然、ヤバいな、とレイは思っている。今から始まる何らかの話し合いは、文字通り相手のホームで行われる。公平もクソもない。議論もなにも、借りてきた猫みたくなってしまうことはうけあいだ。
大事なことは、これから家の中に入り、いざってことがあるようなら“道場破り”をするしかない。それだけをレイは瞬時に決めたよ。具体的に何が“道場破り”なのかどうかはレイもわからなかったけどね。意気込みってやつだからさ。
レイは何か今置かれている状況のヒントがないかと、敷地内を飼い主に見つからないようキョロキョロしたよ。手持ち無沙汰じゃ心許ないからさ。そしたら、あったね。ばっちり。玄関に。
“正統救済アノマロカリス教本部”
ってさ。でっかく、立派に、玄関の横に看板が。
アノマロカリスが何なのか、突然だったってこともあってわからなかったけど、教、の意味はわかるし、なんなら、本部、の意味もわかる男だからねレイってやつは。
「ああ、そっちね」
レイはひとり納得して、これからのことは、神見がどんな顔してるのか、それ次第で言動を決めよう、とそんなこと思って、家ん中入ったよ。
続
じゃあなんで突然そんなことを言い出したのかというと、野木毛神見の家の、ま、ひらたく言や“家紋”がアノマロカリスなんだよ。それって変だろ?。その通り、変なんだ。
神見とつきあい始めたレイは嬉しくってさ。そりゃあそうだ、レイが生きてきた年月のなかでこんなにうまくことが運んだためしはなかったからね。バイトの職場にもすんなりとけ込んじゃったりなんかして。ずっとニートだった男がさ。早く人類滅亡しないかなって、半ば本気で夜空に、その先の宇宙に願いを託していた男がだよ。今じゃ、
「いらっしゃっせー」
ものだよ。変な笑顔浮かべちゃってさ。なまじそこそこかっこいいから、職場の人気者になんか成り上がりやがって。なんたるこっただよ。なんでノストラダムスは毎年恐怖の大魔王の到来を予言しなかったと、半ば本気で思っていた男がだよ。笑っちゃうね。何をやっても楽しんでやがる。今度みんなでどっか行こうか、だって。わかったいいよ、だって。ちゃちゃを入れないけどレイの家族は陰で喜色満面だって。ほんと、笑っちゃうよ。1日24時間じゃ足りねえな、だって。一転して人生バラ色だってさ。ああ、レイのバイト先は例のファミレス、ではなくて、その100メートルほど駅側にある、やっぱりファミレスだよ。違う系列のさ。特に何か考えての選択ではないみたいよ。さすがに常連所に履歴書は出せなかったそうでさ。まあ、お先のこと考えるとは暗いよね。だけど、レイはなんか楽しそう。
そのレイのバラはもちろん神見だよ。言わずもがなね。こいつほんと長いこと彼女なんかいなくてさ。高校中退前にファッションで彼女を作ったことあったけど、それは文字通りファッションでさ。さあデートだってなると、別に話すこともないし、行きたいとこもないし、なんせ無駄なことにそんなにお金使いたくないしで、まあ、そんな感じ。あの頃のレイは軽い結婚詐欺師みたいなもんでさ。彼女という飾りを手にいれたあとは、相手を意中のままに操りたかっただけなんだよ。アタック中、その気なんかないよとばかり、わざと連絡を入れなくなって相手をじらしたり。自分よりモテる友達にわざと狙ってる彼女と一旦いい仲にさせておいて、そのあと計画通りの不協和音の相談に乗る形でもつれ込んだり、わざと彼女の前でカッコ悪いことして、だけどもっとカッコ悪いことを友達に促して、彼女に「こっちのがマシだわね」なんて深層心理に訴えたり。あの頃のレイは決まって、彼女、に、自分、を選ばせやがるんだ。彼女の行動を彼女自身に選ばせやがる。そういう手を使いやがる。人間、自分が選んだ結果には甘いからね。多少思い描いていた結果と違くなっても、自ら修正
しちゃうんだ。だけどさ、そんな、いい意味でいう「恋のかけひき」なんて、つまらないもんだよ。要は、はじめは相手のこと好きだったかもしれない、けどそんなことしていると、相手を意中のままに操りたいってのが好きって感情より先に立つんだ。だからエサをまいといて、そのエサに相手が思い描いた通りの行動をとらないと、ムカついてきやがる。無性にイラついてきやがる。随分と自分勝手、そう結局は自分勝手なだけ。
レイはニート時代、やることがないもんでよく過去を振り返りみてた。その、振り返るには短いスペースのなかで、レイは気づいた。そんなものはクソだと。好きになったら、好きなようにやればいい、だなんてそんなことを女っけのかけらもない暗黒時代に思っていたんだ。笑っちゃいけないのかな。
恋のかけひき?、マニュアル?、そんなこと実践して、その先に一体何がある。何が残る。むなしいだけだろ。相手を意中のままに操ること、それが恋、ましてや愛なのか。おれは違う。いや、違くなる。もう二度とそんなことしない。毎日連絡入れてやる。コンビニだって毎日行ってやる。好きな気持ちをじらさない。隠さない。だけど縛りはしない。恋に対して奴隷になる。ならなきゃいけない。
レイは、それを実践したよ。子供みたいに目を輝かせてさ。神見も、まんざらじゃなかったみたいね。いつも嬉しそうにしてたよ。なんせ、初めての彼氏だし。初めての彼氏が同年代の大人ぶった子供じゃなかったって部分は、良かったことかもしれないね。
神見の誕生日には、ふたりで遊園地に行ったっけ。乗り物を待つ長い列、ちょっとしらけ始めた恋人同士が目立つなか、ふたりはあきることなく愉しく語り合っていたよ。神見は映画も本もほとんど読んだことなくてさ。どうやら世間ってやつも、あんまり知らないっぽい。コンビニでバイトしてるのが奇跡的とさえ思えるほどだよ。
神見はレイのそれらから受け売りのままの知識が、とても新鮮だったらしいよ。ほんと、回転寿司では回ってるベルトの上から皿ごと取らなきゃ駄目さ、なんて話にさ。時には目を丸めたり、時には目を細めて、レイのやる他愛ないギャグに腹を抱えて笑ったり。レイは「神見は今までどこで何をしていたのだろう」って、何度となく思った。だってさ、彼女、なんでも新鮮らしかったから。でもそれは訊かなかったよ。訊けなかったよ。神見がそれを語ることはなかったし、どちらかというとそれを遠ざけている節がある。そしてレイはその理由をなんとなくわかっていた。
その遊園地の帰りに、レイは神見にプレゼントを渡した。それは赤い小さなイヤリングで、
「勝手に選んじゃったけど、気に入らなきゃ捨てていいからね」
「捨てないよ。きっと」
だってさ。レイはとっても、嬉しくなっちまってやんの。
蜜月、ま、蜜月だよ。ふたりはハチミツみたいにどろっとした甘ったるい時間を共有してたよ。人は置かれている立場で変わると云うけど、レイは変わったよ。自分勝手な日々から、誰かのための日々に変わったんだ。だから、1日24時間じゃ足りないんだろうよ。まったくもって生意気な野郎だ。しかし、蜜月も、しばらく、しばらくでしかなかった。なに、ふたりにその責任はないよ。ないね。そんな犬も食わないような話したって、しようがないしさ。
神見の誕生日から幾日経ったろう。レイははじめて、“ちゃんとした形”で、神見の実家に行った。行くことになった。気分は最低だった。
神見からのお願い?、両親との面通し?、ま、当たらずも遠からず。レイは神見の父親に呼び出されたんだよ。
虫の知らせかどうかしらないけど、その日レイは目覚まし時計のベルがつんざき鳴る5分前に目を覚ました。そして起きしなに、目覚まし時計の代わりに携帯電話が震えに震えた。画面を確認すると野木毛神見。珍しく神見からの電話だと思って、嬉しさを噛みしめながら携帯電話に出てみれば、見知らぬ声知らぬおっさんが向こうで怒声を張り上げている。朝。こんな状況で、君ならどうする?。
レイはまず、鼻笑いをしちゃったんだ。これはまずかったね。相手は余計怒り狂ってさ。レイはますますことの次第がわからなくなった。携帯電話の画面に表示されている文字は、天女みたいな神見なのに、手におさまる機械の内部が振動して出し伝えている声は怒りに怒ってタンが絡んでるのも無視して自分を怒鳴りつけるおっさん。わかることは声にやたらエコーかかってる。さすがに、番号間違えてませんか、とレイは言わなかったよ。ありえないからね。相手はレイの名前をはっきり言っちゃってるし。
すぐにその人物が神見の父親だとわかった。相手はそう何度も名乗ってたからね。エネルギー不足のレイの脳には外国の呪文のように聴こえていただけでさ。そして、今日のデートがおしゃかになったことも理解した。そして、神見の父親が自分の家の前にいて、そこからわめきちらしていることもわかった。やけにエコー効いてる理由がわかった。ステレオで聴いていたからだ。ストーキングはやっちゃ駄目なことだと、レイはやられてはじめて心から理解したよ。
まるで野良犬を引っ張るように神見の父親に引き立てられながら、レイは神見の家の前に来た。道中は無言だったけど、オヤジの背中は張り裂けんばかりに怒ってた。実に20分ものあいだ、その背中をレイは見ていた。レイの家族が出払っていたことは心から幸いだったと思える。家の前に来た時、レイは改めてその家構えの全体を見た。やはり、異様だ。
自分の生まれ育った町だからこそ、普段赴くことのない地域がある。ましてや交通整備された23区内となれば生活の範囲というのは限りなく狭まれ、それは踏切を越えた先だったり、大きな国道の向こうだったり、小学校の時分に「ここから先はあっちの学校」と決めて立ち寄らなかったりしたように、無意識にテリトリーを築き上げ、生活の範囲を狭めている。近くにあるのに、電車を乗り継いで行く場所よりも遠く、知らない町。実家から歩いて20分、こんな近くにこんな得体のしれない建物があるとは。地元民だからこその盲点、いや、地元民だからこそのタブーだったのかもしれない。
外部からの侵入、詮索を拒む高い金属の立て板に取り囲まれ、外からは中をうかがい知ることはできない。まるで要塞のよう。そのフェンスには、なんだかよくわからない紋様がペンキで描かれていたのであろう形跡が見受けられるけど、今ではところどころ剥げ落ち、かすれ、色褪せ、おそらくはその用をなしてないはずなんだけど。外から見えるものは、二階建ての無彩色のコンクリート家屋と、その高い立て板よりも高い、内側すぐにある門だ。その門の真ん中に不気味なオブジェがある。昔、理科の教科書でみたことあるような、ないような。ストーカー時代、レイは、「ああ、厄介な家なんだ」と思った。ゴミ屋敷じゃないけどさ、こんなことするのは気違いか気違いだよ。それをわかってはいたが、抱いた。
オヤジに連れられ、ちゃちなアルミ扉から中に入ると、そこそこ広い庭を埋めつくさんばかりにいくつものビーチパラソルが花開いている。殺風景な外観からはまるで想像できないリゾート。レイは、衛星写真から身を守っているに違いない、と思った。こんな広い敷地があるのに駐車場はどうしてるんだろう、とこんな時にレイの脳みそは変に理屈っぽいことを浮かびあがらせたが、よく考えてみれば、車を持っているなら車でご参上ならせられるなとひとり納得した。
当然、ヤバいな、とレイは思っている。今から始まる何らかの話し合いは、文字通り相手のホームで行われる。公平もクソもない。議論もなにも、借りてきた猫みたくなってしまうことはうけあいだ。
大事なことは、これから家の中に入り、いざってことがあるようなら“道場破り”をするしかない。それだけをレイは瞬時に決めたよ。具体的に何が“道場破り”なのかどうかはレイもわからなかったけどね。意気込みってやつだからさ。
レイは何か今置かれている状況のヒントがないかと、敷地内を飼い主に見つからないようキョロキョロしたよ。手持ち無沙汰じゃ心許ないからさ。そしたら、あったね。ばっちり。玄関に。
“正統救済アノマロカリス教本部”
ってさ。でっかく、立派に、玄関の横に看板が。
アノマロカリスが何なのか、突然だったってこともあってわからなかったけど、教、の意味はわかるし、なんなら、本部、の意味もわかる男だからねレイってやつは。
「ああ、そっちね」
レイはひとり納得して、これからのことは、神見がどんな顔してるのか、それ次第で言動を決めよう、とそんなこと思って、家ん中入ったよ。
続
ある日のメモ~ちょっと待て編~
カニ剥き。猫は寒いかしらん。逆にマリエとやりたくなってきた。冬の冷たい麦茶うめえ。リンゴゴリラランランラン♪。ロンリーアフロランランラン。
以上が携帯電話のメール機能を使用した他愛ないメモ書きに残ってたものなんだけど、まあ大した意味はないもの、ってちょっと待てよ!!
「逆にマリエとやりたくなってきた」
って、ええ!?、なんだ!?、いつメモしたそんなこと!!、おれやりたくねえよ!?、ほんとにおれがメモしといたのそれを!?、わけわかんねえ、わけわかんねえよ!!
どうしたんだおれ……………おれ、おれもう、
逆にマリエとやりたくなってきた。
って違う!、いきなり使うな!
マリエとやるぐらいだったらトシコとやるからねってトシコって誰だよ!。さよならだ!!
以上が携帯電話のメール機能を使用した他愛ないメモ書きに残ってたものなんだけど、まあ大した意味はないもの、ってちょっと待てよ!!
「逆にマリエとやりたくなってきた」
って、ええ!?、なんだ!?、いつメモしたそんなこと!!、おれやりたくねえよ!?、ほんとにおれがメモしといたのそれを!?、わけわかんねえ、わけわかんねえよ!!
どうしたんだおれ……………おれ、おれもう、
逆にマリエとやりたくなってきた。
って違う!、いきなり使うな!
マリエとやるぐらいだったらトシコとやるからねってトシコって誰だよ!。さよならだ!!
アノマ ニスからの脱却(1)
あるいは彼は幸せだったのかもしれない。愛した女が満ち足りているという、その一点に於いては。
ニート歴も長くなると、ろくに口もきけない。しゃべる声などか細いし、妙に高い。頭の中で何度も何度も会話のパターンをシミュレーションするのだが、口から出る言葉といえば、「ああ」、しかないんだ。
篠田レイの場合、ニートで、少し対人恐怖症のケがあったんだよね。厳密に云うひきこもりではないのだけど、外に出ることは出るんだけど、赴く場所といえば行き着けのコンビニとファミレスぐらいで、金がないものだからそんな具合なんだよ。電車にも乗れない。
日々要するお金は、家族が寝静まった夜中に親のサイフから抜き取るんだ。500円。毎日500円。決まって500円。それ以上の金額は取らないし、それ以下の金額しか親のサイフに入ってないと、「死のう」、って思いが浮かんじゃうどうしようもないダメ人間なんだ。
これがタバコとファミレスのコーヒー代に消える。足りないんじゃないかと思われるかもしれないけど、ファミレスへは毎日行くわけではないんだ。行かなかった日のコーヒー代は、つもり貯金みたく、220円、次の日にキャリーオーバーされる。やりくりしちゃってさ。いい身分だろ?。月額1万5千円プラス諸費用の座敷わらしだよ。
レイの着ている服なんて、これがどうにも情けないというかなんというか、なんと、季節ごとに姉から送られてくる義兄のお古なんだよ。サイズが同じなんだ。だからまあ、それなりにいっぱしの恰好はしているんだけど、なんだかなあ。
恰好といえば髪の毛。髪を切る金なんてないし、長時間他人と話すなんて苦行に他ならないレイのことだから、レイは自分で髪を切るんだ。なに、むつかしいことじゃないよ。ある程度伸ばしっ放しにして、ロングヘアーの長さになったら、前髪と後ろ髪を含めた両サイドをヘアゴムでまとめ、そのゴムの上をハサミでもって一直線にぶったぎる。そしてちょちょいと整える。それだけ。そんなもんでも結構さまになるもんでね。まあレイはもともと、そこそこ良い顔立ちをしているから、そのせいかもしれないけど。一度、長くなった髪を金色に染めて、伸びた黒髪部分を切る長さの目安にしたこともあった。数ヶ月に及ぶ遠大な計画は一応成功したんだけど、ね、変な性格してるだろ?。
レイはそんな身分にも関わらずタバコを吸いやがるんだ。それは好きな作家に影響されたってこともあるにはあるんだけど、一番の理由は、タバコを吸ったら早く死ねるんじゃないか、ってことなんだ。消極的自殺。まあ、甘ったるい行動原理だよ。そのくせ、決して死にたくはないんだからさ。
レイはファミレスに行くと、おかわり自由のコーヒーを頼んで、カバンからノートとペンを出す。はじめの頃はえんぴつだったけど、消しゴムのカスが迷惑だからね、100円のボールペンにした。ノートを広げ何をしているのかというと、学校の授業中にやる暇つぶしと一緒でさ、他愛ない落書きだよ。イラストとか、その日思ったおもしろいこととか、ポエムとか、どれもこれもへたくそでさ。笑っちゃうよ。
そのファミレスの店員には、自分は漫画の原作者だ、ということにしてる。別にレイがおばさんか女子高生かという極端な人種に分けられたウェイター達にそう宣言したわけじゃないよ。はじめの頃はばっさりと髪を切った次の日なんかは業務外のコミュニケーションを求められたりしたけど、「はあ」「ああ」「はい」の三拍子でさ。そのうちほっとかれるようになった。でも、週5で2、3時間もノートを開いては黙々と何か書き連ねている奴なんて、怪しすぎるだろ?。だからレイはそう設定した。ニートだと思われたくはないからだよ。世に云うところの「作家」でもよかったのだけれど、漫画の原作者、の方が幾分リアリティがあった。一般にはよくわからない職業だからね。言い訳するにはそっちの方が優れている。ま、あくまで誰にも言ってない設定の話なんだけど。
実はレイは本当は、“話しかけられたい”んだけどね。根は明るい奴だからさ。でも、そんなこと微塵もお首にださず、ポリポリとひとり、指定席でタバコを吸いながらノートにくだらないことを書いている。店員達に陰で、「ニート」ってあだ名で呼ばれながらね。「ニート」と呼ばれるニートが心の中で「おれは漫画原作者だ」と言っている図。笑っちゃうよ。
篠田レイのそんな生活が一変したのは、今年の春だった。ああ20XX年にしとこっか。いや、201X年にしとこう。
なにも書きためたストーリーを出版社に送ったら採用、100万部の大ヒット!、ていう夢物語じゃなくてさ。至って、至ってシンプルな理由。極々シンプルな理由。そう、篠田レイは恋をしたんだ。そこいらに転がってそうな普遍的な恋をさ。恋の力は偉大だよ。いや、恋は人を狂わす、とも言うね。まあなんでもいいよ。恋は人の行動に大きく作用する薬だってことなんて、みんな知ってるからさ。
相手はいつもタバコを買っているコンビニに、新しく入った女の子だった。そのコンビニは昔酒屋でさ。いつの間にかコンビニになってた。まあその名残か、今もちょっと変わったコンビニでさ。まあそんなことはどうでもいいか。女の子の名前は野毛木神見(のげきかなみ)。小さくて、声はかわいくない方向に少し変だったけど、世間一般の美人の定義からは外れた娘だったけど、レイにとっては、レイから見れば、とってもかわいい娘。ど真ん中ストレートのタイプだった。レイは結構良い顔立ちしてるからね。そのせいかモデルタイプの女にはまったく興味なかった。遺伝子のいたずらかな。別に彼女が超絶ブサイクなわけじゃないよ。彼女はとてもかわいい娘だよ。ただ、探せばそこいらにいるであろう娘だけどね。
初めて彼女を見た時のレイの狼狽っぷりったらなかったよ。レイはロングピースを吸ってるんだけど、レイが口頭で、各タバコに割り当てられた番号じゃなく、商品名を言うと、彼女はタバコのことなんてまだよくわからなかったんだろう、ショートピースを持ってきたんだ。レイは彼女に釘付けになってたし、彼女に文句をつけたくなかったからさ。黙ってそれを受け取った。こう書くと少しダンディな感じが醸し出されてしまうけど、ダンディな感じが醸し出されてしまうけど、レイの思うにそれは少しのダンディズムなんだけど、ま、実際はみなさんの予想通り、ショートピースを出されたレイは、
「え?」
「はい?」
「あの」
「はあ」
「いえ、なんでも」
「ありがとうございましたぁ」
だったんだよ。たぶん、ピー缶渡されても受け取っただろうね。あ、金が足りなかったかもしれないけど。
そのあと、初めて吸うフィルターのついてない両切りタバコに悪戦苦闘しながら、レイはファミレスでノートを広げた。でもなにも書けない。いつもは、220円の“元”を取ろうと、なにかひとつぐらいは思いついて仕事を達成していたんだけど、なにも書けないんだ。思いつく論理的なことといえば、明日からタバコをショートピースに切り替えるかどうか、ぐらいでさ。頭に浮かぶのは漠然としたイメージ、あの娘の顔、あの娘の仕草、あの娘の声、まあ美人の顔よりも特徴ある顔の人の方が印象に残るよね。美人は3日で飽きるとも言うしさ。不気味の谷現象って言うの?。ラッキーなことより不幸なことの方が深く心に刻まれて離れないみたいにさ。いままで体験したことない高揚感、彼女が店内を腕を腰につけかかとをすりながらパタパタと小走りしたら思わず飛びついてしまいそうだ、赤い糸。
レイは自分の小指に赤い糸など結びついていないこと、知ってた。ニートだし、半分ひきこもりだしさ。でも、恋は人を狂わす、まさしくその時のレイは狂わされていたね、いつもより短い時間でファミレスを出たレイはその足で履歴書を買ったんだから。赤い糸がないならおれが一から紡いでやる、なんてさ。当たり前っちゃ当たり前のことなんだけど、それはレイがニートになってから、実に5年ぶりの自発的な行動だったよ。5年前、高校を辞めた時以来のことだった。
そのあと、悪い虫がつくのは許せん、とばかりに、レイは彼女に対しストーカーまがいの、いや、明然たるストーカー行為を働いてたりしてたけど、彼女、まあ、あれだから、そんなに競争倍率は高くないんだ。ニートからフリーターに昇格したレイと彼女が付き合い始めるのに、邪魔する者はいなかったよ。もちろん、レイの家族は喜んださ。彼女ができたなんて家族に言うレイじゃないけど、それがわからないほど人間ってバカじゃないからね。
彼女は高校を卒業して、コンビニのバイトを始めた。なんでも、“家業”があるらしい、それは聞かされる前からレイも知ってたんだけど、知ってはいたんだけどさ、知ってはいたんだ、だけど、さ。いわば彼女はモラトリアム期にレイと知り合ったわけだ。彼女は処女だった。
そのことをレイは一度も後悔したことはなかったよ。彼女はどうだったんだろうね。今となっては、知る由もないね。
続
ニート歴も長くなると、ろくに口もきけない。しゃべる声などか細いし、妙に高い。頭の中で何度も何度も会話のパターンをシミュレーションするのだが、口から出る言葉といえば、「ああ」、しかないんだ。
篠田レイの場合、ニートで、少し対人恐怖症のケがあったんだよね。厳密に云うひきこもりではないのだけど、外に出ることは出るんだけど、赴く場所といえば行き着けのコンビニとファミレスぐらいで、金がないものだからそんな具合なんだよ。電車にも乗れない。
日々要するお金は、家族が寝静まった夜中に親のサイフから抜き取るんだ。500円。毎日500円。決まって500円。それ以上の金額は取らないし、それ以下の金額しか親のサイフに入ってないと、「死のう」、って思いが浮かんじゃうどうしようもないダメ人間なんだ。
これがタバコとファミレスのコーヒー代に消える。足りないんじゃないかと思われるかもしれないけど、ファミレスへは毎日行くわけではないんだ。行かなかった日のコーヒー代は、つもり貯金みたく、220円、次の日にキャリーオーバーされる。やりくりしちゃってさ。いい身分だろ?。月額1万5千円プラス諸費用の座敷わらしだよ。
レイの着ている服なんて、これがどうにも情けないというかなんというか、なんと、季節ごとに姉から送られてくる義兄のお古なんだよ。サイズが同じなんだ。だからまあ、それなりにいっぱしの恰好はしているんだけど、なんだかなあ。
恰好といえば髪の毛。髪を切る金なんてないし、長時間他人と話すなんて苦行に他ならないレイのことだから、レイは自分で髪を切るんだ。なに、むつかしいことじゃないよ。ある程度伸ばしっ放しにして、ロングヘアーの長さになったら、前髪と後ろ髪を含めた両サイドをヘアゴムでまとめ、そのゴムの上をハサミでもって一直線にぶったぎる。そしてちょちょいと整える。それだけ。そんなもんでも結構さまになるもんでね。まあレイはもともと、そこそこ良い顔立ちをしているから、そのせいかもしれないけど。一度、長くなった髪を金色に染めて、伸びた黒髪部分を切る長さの目安にしたこともあった。数ヶ月に及ぶ遠大な計画は一応成功したんだけど、ね、変な性格してるだろ?。
レイはそんな身分にも関わらずタバコを吸いやがるんだ。それは好きな作家に影響されたってこともあるにはあるんだけど、一番の理由は、タバコを吸ったら早く死ねるんじゃないか、ってことなんだ。消極的自殺。まあ、甘ったるい行動原理だよ。そのくせ、決して死にたくはないんだからさ。
レイはファミレスに行くと、おかわり自由のコーヒーを頼んで、カバンからノートとペンを出す。はじめの頃はえんぴつだったけど、消しゴムのカスが迷惑だからね、100円のボールペンにした。ノートを広げ何をしているのかというと、学校の授業中にやる暇つぶしと一緒でさ、他愛ない落書きだよ。イラストとか、その日思ったおもしろいこととか、ポエムとか、どれもこれもへたくそでさ。笑っちゃうよ。
そのファミレスの店員には、自分は漫画の原作者だ、ということにしてる。別にレイがおばさんか女子高生かという極端な人種に分けられたウェイター達にそう宣言したわけじゃないよ。はじめの頃はばっさりと髪を切った次の日なんかは業務外のコミュニケーションを求められたりしたけど、「はあ」「ああ」「はい」の三拍子でさ。そのうちほっとかれるようになった。でも、週5で2、3時間もノートを開いては黙々と何か書き連ねている奴なんて、怪しすぎるだろ?。だからレイはそう設定した。ニートだと思われたくはないからだよ。世に云うところの「作家」でもよかったのだけれど、漫画の原作者、の方が幾分リアリティがあった。一般にはよくわからない職業だからね。言い訳するにはそっちの方が優れている。ま、あくまで誰にも言ってない設定の話なんだけど。
実はレイは本当は、“話しかけられたい”んだけどね。根は明るい奴だからさ。でも、そんなこと微塵もお首にださず、ポリポリとひとり、指定席でタバコを吸いながらノートにくだらないことを書いている。店員達に陰で、「ニート」ってあだ名で呼ばれながらね。「ニート」と呼ばれるニートが心の中で「おれは漫画原作者だ」と言っている図。笑っちゃうよ。
篠田レイのそんな生活が一変したのは、今年の春だった。ああ20XX年にしとこっか。いや、201X年にしとこう。
なにも書きためたストーリーを出版社に送ったら採用、100万部の大ヒット!、ていう夢物語じゃなくてさ。至って、至ってシンプルな理由。極々シンプルな理由。そう、篠田レイは恋をしたんだ。そこいらに転がってそうな普遍的な恋をさ。恋の力は偉大だよ。いや、恋は人を狂わす、とも言うね。まあなんでもいいよ。恋は人の行動に大きく作用する薬だってことなんて、みんな知ってるからさ。
相手はいつもタバコを買っているコンビニに、新しく入った女の子だった。そのコンビニは昔酒屋でさ。いつの間にかコンビニになってた。まあその名残か、今もちょっと変わったコンビニでさ。まあそんなことはどうでもいいか。女の子の名前は野毛木神見(のげきかなみ)。小さくて、声はかわいくない方向に少し変だったけど、世間一般の美人の定義からは外れた娘だったけど、レイにとっては、レイから見れば、とってもかわいい娘。ど真ん中ストレートのタイプだった。レイは結構良い顔立ちしてるからね。そのせいかモデルタイプの女にはまったく興味なかった。遺伝子のいたずらかな。別に彼女が超絶ブサイクなわけじゃないよ。彼女はとてもかわいい娘だよ。ただ、探せばそこいらにいるであろう娘だけどね。
初めて彼女を見た時のレイの狼狽っぷりったらなかったよ。レイはロングピースを吸ってるんだけど、レイが口頭で、各タバコに割り当てられた番号じゃなく、商品名を言うと、彼女はタバコのことなんてまだよくわからなかったんだろう、ショートピースを持ってきたんだ。レイは彼女に釘付けになってたし、彼女に文句をつけたくなかったからさ。黙ってそれを受け取った。こう書くと少しダンディな感じが醸し出されてしまうけど、ダンディな感じが醸し出されてしまうけど、レイの思うにそれは少しのダンディズムなんだけど、ま、実際はみなさんの予想通り、ショートピースを出されたレイは、
「え?」
「はい?」
「あの」
「はあ」
「いえ、なんでも」
「ありがとうございましたぁ」
だったんだよ。たぶん、ピー缶渡されても受け取っただろうね。あ、金が足りなかったかもしれないけど。
そのあと、初めて吸うフィルターのついてない両切りタバコに悪戦苦闘しながら、レイはファミレスでノートを広げた。でもなにも書けない。いつもは、220円の“元”を取ろうと、なにかひとつぐらいは思いついて仕事を達成していたんだけど、なにも書けないんだ。思いつく論理的なことといえば、明日からタバコをショートピースに切り替えるかどうか、ぐらいでさ。頭に浮かぶのは漠然としたイメージ、あの娘の顔、あの娘の仕草、あの娘の声、まあ美人の顔よりも特徴ある顔の人の方が印象に残るよね。美人は3日で飽きるとも言うしさ。不気味の谷現象って言うの?。ラッキーなことより不幸なことの方が深く心に刻まれて離れないみたいにさ。いままで体験したことない高揚感、彼女が店内を腕を腰につけかかとをすりながらパタパタと小走りしたら思わず飛びついてしまいそうだ、赤い糸。
レイは自分の小指に赤い糸など結びついていないこと、知ってた。ニートだし、半分ひきこもりだしさ。でも、恋は人を狂わす、まさしくその時のレイは狂わされていたね、いつもより短い時間でファミレスを出たレイはその足で履歴書を買ったんだから。赤い糸がないならおれが一から紡いでやる、なんてさ。当たり前っちゃ当たり前のことなんだけど、それはレイがニートになってから、実に5年ぶりの自発的な行動だったよ。5年前、高校を辞めた時以来のことだった。
そのあと、悪い虫がつくのは許せん、とばかりに、レイは彼女に対しストーカーまがいの、いや、明然たるストーカー行為を働いてたりしてたけど、彼女、まあ、あれだから、そんなに競争倍率は高くないんだ。ニートからフリーターに昇格したレイと彼女が付き合い始めるのに、邪魔する者はいなかったよ。もちろん、レイの家族は喜んださ。彼女ができたなんて家族に言うレイじゃないけど、それがわからないほど人間ってバカじゃないからね。
彼女は高校を卒業して、コンビニのバイトを始めた。なんでも、“家業”があるらしい、それは聞かされる前からレイも知ってたんだけど、知ってはいたんだけどさ、知ってはいたんだ、だけど、さ。いわば彼女はモラトリアム期にレイと知り合ったわけだ。彼女は処女だった。
そのことをレイは一度も後悔したことはなかったよ。彼女はどうだったんだろうね。今となっては、知る由もないね。
続
微笑シリーズ。酔っぱらい
酔っぱらい『うーだお、おえ、だあしゃんだ、んだバカヤロー』
警官「ちょっとちょっとおとうさん」
『ふんだもんだごおなんつって、なもんだっつってコノヤロー』
「ちょっとおとうさん」
『んん!?』
「ね、正月だからってね、昼から気持ちよくなるのはわかるけどね、ほらここは往来だから、ね」
『んん!?』
「ほら、ちゃんとしようね」
『んん!?んん!?んん!?』
「ちょっと、人をそんなジロジロ見ることないでしょ」
『ありゃ、どうにも視界がぼやけてやがると思ったら、あたしメガネかけてねーわな!だははは!メガネ!メガネかけてねーわ!だははは!メガネが目にねえなんつって!だははは』
「…はいはい…まさかメガネ失くしちゃったんですか?」
『メガネが、おれのメガネが、ああ、おれもとからメガネかけてねーわ』
「なんだそれ!」
『おれ、メガネ似合うのに』
「知らねえよ!」
『おれ、メガネかけたらあれに似てるんだよ!』
「あれって言われてもわからないですよ。わたしおとうさんの連れ合いじゃないから」
『あれだよあれ、あの、メガネかけてる人』
「だろうね!、そりゃそうだ!」
『似てるだろお?』
「だから比較対象がわからないって」
『あれだよあれ、チャゲアスの』
「ああ、チャゲですかって、チャゲはサングラスだけども」
『いやいやいやいや』
「え、飛鳥の方」
『いやいやいやいや』
「………」
『いやいやいやいやいやいやいやいや』
「なんだよ!」
『いやいやいやいやねえもう、いやいやいやいやねえ、ねえもうねえ』
「なんなんだよ!、しっかりしてくださいよおとうさん!」
『いやいやいやいやねえ、おれがメガネかけたらあれだよお前、チャゲアスの真ん中の人に似てるだろ?』
「ふたり組だから真ん中なんていねえよ!、お前の目は何をとらえているんだ!?、一体何を見たんだあんた!」
『真ん中のよ、真ん中の、ぬいぐるみに』
「ぬいぐるみ!?」
『ありゃ、メガネがねえ!、おれのメガネがねえ!』
「もとから持ってないんでしょ」
『お前に食わせるメガネはねえ!つって』
「………はい」
『お前に食わせるメガネはねえ!つって』
「………はい、あの、結構ですはい」
『お前に食わせるメガネに目がねえ!なんつって!』
「………良かったらどうぞ遠慮なくはい」
『…おれはメガネの園に行ったことがある』
「突然なんか言い出した!、メガネの園!?」
『メガネの園には有名な、カニの早剥きおばさんがいる』
「そう、ですか」
『ポキッと折ってチュって、ポキッと折ってチュって、ポキッと折ってチュってよ、脚を、カニの脚をおばさんが、ポキッと折ってチュって、チュって、身を出しやがる』
「………」
『ポキッと折ってチュって、カニの脚をポキッと折って身をチュっと出しやがる、だははは!』
「なんなんだよ」
『でもそのおばさんメガネかけてないからね』
「ムチャクチャだなもう」
『メガネメガネ』
「メガネはもういいでしょ、ね、しっかりしてください」
『もうメガネかけてないから視界がぐーるぐるしちゃって』
「酔っぱらってるからだよ!」
『ふえ?、あんた、あんた誰?』
「いまさら!?、見てわかるだろ!、というかさっきあんたジロジロジロジロ見て確かめてたじゃねえかよ!」
『ああ、そんなこともあったっけ』
「あったよ」
『ちょうど一年前に』
「ついさっきのことだよ!」
『この道を通った夜』
「なんだよ歌ってたのかよ!歌わないの!、ね」
『なんでもないようなことが幸せだったと思う』
「だから歌うなって、ていうか語りで歌うな!」
『道路第2章』
「ロードな!、道路ってあんた」
『そういやおれもちょうど一年前にこの道を通ってたんだよ』
「そうですか」
『あの時も正月だったなあ』
「当たり前でしょ」
『あれからおれなあんもしてない』
「…何も?」
『もうなあんもしてないからね、なにもなしてないから』
「そう、ですか」
『ひょっとしたら今って去年なんじゃないか?』
「落ち着きなよ、時計の針が無情にも時を刻み続けた今ですよ」
『あんたうまいこと言うね』
「え?そうですか?」
『あんたあれだよ。あれ。誰?』
「リズミカルに言い放ちやがった。だからね、この恰好みたら見てわかるでしょ」
『わかんねえ』
「うん、そうだったそうだった」
『あ!』
「なに!?」
『ひょっとしたらあんた…………ラクダかな』
「ラクダってなんでだよ!、色も形も違うだろ!」
『まつげが』
「まつげ!?、砂漠の砂から瞳を守るラクダのあの長いまつげとおれのまつげを見間違えたの!?」
『まつげと、こぶかな』
「おれひとこぶもふたこぶも持ち合わせてねえよ!あんたの目には一体何が見えてんだよ!」
『そんなこと言われても、紺色の服を着て、帽子かぶって、腰に拳銃ぶら下げて、そんな警官みたいな恰好してる奴におれの知り合いはいない!』
「警官でいいんだよ!、知り合いじゃなくても警官だけでいいんだ!、あんた道行く人全員があんたの知り合いじゃないんだからね!」
『寂しいこと言うなよ。ういっとくら』
「ああちょっとおとうさん!、ダメだよダメダメ!」
『なんじゃらほい』
「そこで小便しちゃダメでしょ!」
『なんでだよバカ!!』
「うわ、予想以上に逆ギレされた。ダメでしょあんた。逮捕しますよ!」
『なんでえしばらく見ねえうちに警官みたいなこと言うようになっちまいやがって』
「おれ警官だよ!そしてあんたの親戚じゃねえ!」
『あんた警官なの?』
「そうだよ!」
『え?いつから?』
「いつからとかじゃねえだろ!、あんたとは会った時から警官だよ!」
『それを早く言えよまったく、ええ?』
「見てわかるだろって話なんだよてめえ!」
『てめえ?、何年上に生意気な口きいてんだあんた』
「ああいや、つい」
『そんなだからこの国は!………うむ、しかし振り返りみればおれも出会ったばかりの君に随分と失礼なことをした気がする』
「はあ」
『ここは君、ドュッティドュッティにしようか』
「どっこいどっこいな!ドュッティドュッティってなんだよ」
『ヘイ!イッツァメリケンジョーク!』
「全然アメリカンジョークになってねえよ!」
『じゃあ、よっとくらあ』
「ああ!だから立ち小便すんなって!」
『何を若造がえらそうに、てめえおれの小便を飲み干しやがれ!さあ飲み干しやがれ!』
「ぎゃああああごぼぼぼ」
終わり……新年一発目なのになんちゅう終わり方だ………
まあ、正月のはなから松前漬けをディスるという、そんなブログだもんね。
日記
1月3日(日)
暇を持て余す。
警官「ちょっとちょっとおとうさん」
『ふんだもんだごおなんつって、なもんだっつってコノヤロー』
「ちょっとおとうさん」
『んん!?』
「ね、正月だからってね、昼から気持ちよくなるのはわかるけどね、ほらここは往来だから、ね」
『んん!?』
「ほら、ちゃんとしようね」
『んん!?んん!?んん!?』
「ちょっと、人をそんなジロジロ見ることないでしょ」
『ありゃ、どうにも視界がぼやけてやがると思ったら、あたしメガネかけてねーわな!だははは!メガネ!メガネかけてねーわ!だははは!メガネが目にねえなんつって!だははは』
「…はいはい…まさかメガネ失くしちゃったんですか?」
『メガネが、おれのメガネが、ああ、おれもとからメガネかけてねーわ』
「なんだそれ!」
『おれ、メガネ似合うのに』
「知らねえよ!」
『おれ、メガネかけたらあれに似てるんだよ!』
「あれって言われてもわからないですよ。わたしおとうさんの連れ合いじゃないから」
『あれだよあれ、あの、メガネかけてる人』
「だろうね!、そりゃそうだ!」
『似てるだろお?』
「だから比較対象がわからないって」
『あれだよあれ、チャゲアスの』
「ああ、チャゲですかって、チャゲはサングラスだけども」
『いやいやいやいや』
「え、飛鳥の方」
『いやいやいやいや』
「………」
『いやいやいやいやいやいやいやいや』
「なんだよ!」
『いやいやいやいやねえもう、いやいやいやいやねえ、ねえもうねえ』
「なんなんだよ!、しっかりしてくださいよおとうさん!」
『いやいやいやいやねえ、おれがメガネかけたらあれだよお前、チャゲアスの真ん中の人に似てるだろ?』
「ふたり組だから真ん中なんていねえよ!、お前の目は何をとらえているんだ!?、一体何を見たんだあんた!」
『真ん中のよ、真ん中の、ぬいぐるみに』
「ぬいぐるみ!?」
『ありゃ、メガネがねえ!、おれのメガネがねえ!』
「もとから持ってないんでしょ」
『お前に食わせるメガネはねえ!つって』
「………はい」
『お前に食わせるメガネはねえ!つって』
「………はい、あの、結構ですはい」
『お前に食わせるメガネに目がねえ!なんつって!』
「………良かったらどうぞ遠慮なくはい」
『…おれはメガネの園に行ったことがある』
「突然なんか言い出した!、メガネの園!?」
『メガネの園には有名な、カニの早剥きおばさんがいる』
「そう、ですか」
『ポキッと折ってチュって、ポキッと折ってチュって、ポキッと折ってチュってよ、脚を、カニの脚をおばさんが、ポキッと折ってチュって、チュって、身を出しやがる』
「………」
『ポキッと折ってチュって、カニの脚をポキッと折って身をチュっと出しやがる、だははは!』
「なんなんだよ」
『でもそのおばさんメガネかけてないからね』
「ムチャクチャだなもう」
『メガネメガネ』
「メガネはもういいでしょ、ね、しっかりしてください」
『もうメガネかけてないから視界がぐーるぐるしちゃって』
「酔っぱらってるからだよ!」
『ふえ?、あんた、あんた誰?』
「いまさら!?、見てわかるだろ!、というかさっきあんたジロジロジロジロ見て確かめてたじゃねえかよ!」
『ああ、そんなこともあったっけ』
「あったよ」
『ちょうど一年前に』
「ついさっきのことだよ!」
『この道を通った夜』
「なんだよ歌ってたのかよ!歌わないの!、ね」
『なんでもないようなことが幸せだったと思う』
「だから歌うなって、ていうか語りで歌うな!」
『道路第2章』
「ロードな!、道路ってあんた」
『そういやおれもちょうど一年前にこの道を通ってたんだよ』
「そうですか」
『あの時も正月だったなあ』
「当たり前でしょ」
『あれからおれなあんもしてない』
「…何も?」
『もうなあんもしてないからね、なにもなしてないから』
「そう、ですか」
『ひょっとしたら今って去年なんじゃないか?』
「落ち着きなよ、時計の針が無情にも時を刻み続けた今ですよ」
『あんたうまいこと言うね』
「え?そうですか?」
『あんたあれだよ。あれ。誰?』
「リズミカルに言い放ちやがった。だからね、この恰好みたら見てわかるでしょ」
『わかんねえ』
「うん、そうだったそうだった」
『あ!』
「なに!?」
『ひょっとしたらあんた…………ラクダかな』
「ラクダってなんでだよ!、色も形も違うだろ!」
『まつげが』
「まつげ!?、砂漠の砂から瞳を守るラクダのあの長いまつげとおれのまつげを見間違えたの!?」
『まつげと、こぶかな』
「おれひとこぶもふたこぶも持ち合わせてねえよ!あんたの目には一体何が見えてんだよ!」
『そんなこと言われても、紺色の服を着て、帽子かぶって、腰に拳銃ぶら下げて、そんな警官みたいな恰好してる奴におれの知り合いはいない!』
「警官でいいんだよ!、知り合いじゃなくても警官だけでいいんだ!、あんた道行く人全員があんたの知り合いじゃないんだからね!」
『寂しいこと言うなよ。ういっとくら』
「ああちょっとおとうさん!、ダメだよダメダメ!」
『なんじゃらほい』
「そこで小便しちゃダメでしょ!」
『なんでだよバカ!!』
「うわ、予想以上に逆ギレされた。ダメでしょあんた。逮捕しますよ!」
『なんでえしばらく見ねえうちに警官みたいなこと言うようになっちまいやがって』
「おれ警官だよ!そしてあんたの親戚じゃねえ!」
『あんた警官なの?』
「そうだよ!」
『え?いつから?』
「いつからとかじゃねえだろ!、あんたとは会った時から警官だよ!」
『それを早く言えよまったく、ええ?』
「見てわかるだろって話なんだよてめえ!」
『てめえ?、何年上に生意気な口きいてんだあんた』
「ああいや、つい」
『そんなだからこの国は!………うむ、しかし振り返りみればおれも出会ったばかりの君に随分と失礼なことをした気がする』
「はあ」
『ここは君、ドュッティドュッティにしようか』
「どっこいどっこいな!ドュッティドュッティってなんだよ」
『ヘイ!イッツァメリケンジョーク!』
「全然アメリカンジョークになってねえよ!」
『じゃあ、よっとくらあ』
「ああ!だから立ち小便すんなって!」
『何を若造がえらそうに、てめえおれの小便を飲み干しやがれ!さあ飲み干しやがれ!』
「ぎゃああああごぼぼぼ」
終わり……新年一発目なのになんちゅう終わり方だ………
まあ、正月のはなから松前漬けをディスるという、そんなブログだもんね。
日記
1月3日(日)
暇を持て余す。
ダメ人間のルーツ
大槻ケンヂさん発祥とされる言葉、「ダメ人間」。しかし、1980年にあの漫画の神様手塚治虫が描いた「こじき姫ルンペネラ」にダメ人間という言葉が使われていることが、氏がファンからもらった手紙により発覚。ダメ人間という言葉を作ったことを自負、吹聴していた氏は、ちょっとがっかりし、その顛末をエッセイにした。まあなんともはた迷惑なファンもいたものだ。わざわざ報せなくともよいことを。よかれと思ってこれだ、まったく糞みたいなファンだ。空気読めよバカが……………。
何を隠そうそのファンとは、わたくしなのでございました。ということで、おれにはダメ人間の発祥を探らなくてはいけない使命がある気がする。よし、調べよう。っと前に一回調べたっけ。たはは。(意味不明)
ダメ人間の発祥元、それは実に簡単に調べがついた。
1965年、山口瞳さんが「マジメ人間」という短編集をお出しになられた。内容は割愛するとして、「マジメ人間」はその年の流行語になる程話題になり、すぐにドラマ化され映画化されるに至る。すぐに、された、のはドラマ化映画化だけでなく、流行語になる程だから、「遊び人間」など「○○人間」という「マジメ人間」を変化させた言葉が続々と自然発生的、オヤジギャグ的に後発される。今でいう○○系男子(恥)のようなものだ。同じ年にあの「はじめ人間」が連載開始されるし、1969年に流行る「モーレツ社員」もその影響を受けたひとつだろう。「マジメ人間」という言葉はそれほど画期的な響きで、アイデアで、ブレイクスルーで、エポックメイキングな言葉だったことがうかがえる。
そう、その派生した言葉の中に、ダメ人間があった…はずだ。マジメと対をなす意味からして真っ先に浮かび作り出された、はずだ。はずなのだ。ええい、あった。うん、あったあった。そういやあの頃にそんなことあったよね。うんうん。……でもま、そう考えるのが普通だ。大槻ケンヂさんは1966年の生まれだから、きっと腹の中であたかも胎教の如くマジメ人間ダメ人間云々と散々っぱら聞かされて生まれたので、後に自身の脳内にダメ人間という言葉が浮かび上がったときに、これは自分が作り出した、と、胎児時代の記憶があやふやだった氏は記憶違いを起こしたのだろう(おいおい…)。きっと幼児期に聞いていたんだろうね。というか、言葉として普通にあったんだろうね。ダメ人間。
しかし、これでは「ダメ人間」という言葉の「考案者」を特定することができない。が、○○人間という言葉選びの発想は山口瞳さんが生みだしたといっていいだろう。ということで、「ダメ人間」の考案者は、大槻ケンヂでも手塚治虫でもなく、山口瞳さんだ!
……………多分。
上の文にはまったく関係ないけど、
今ひとつ、物語をポチポチしてる(暇人かお前、正月だろ!、ああ正月だから暇でいいのか)。このブログを注意深く観察している人ならあれのことだとすぐに思いつくだろう。そう、早速あれをポチポチしてみた。したら、変な方向に行った。それだけを言いたい。ああ、かなり短くなる予定。
何を隠そうそのファンとは、わたくしなのでございました。ということで、おれにはダメ人間の発祥を探らなくてはいけない使命がある気がする。よし、調べよう。っと前に一回調べたっけ。たはは。(意味不明)
ダメ人間の発祥元、それは実に簡単に調べがついた。
1965年、山口瞳さんが「マジメ人間」という短編集をお出しになられた。内容は割愛するとして、「マジメ人間」はその年の流行語になる程話題になり、すぐにドラマ化され映画化されるに至る。すぐに、された、のはドラマ化映画化だけでなく、流行語になる程だから、「遊び人間」など「○○人間」という「マジメ人間」を変化させた言葉が続々と自然発生的、オヤジギャグ的に後発される。今でいう○○系男子(恥)のようなものだ。同じ年にあの「はじめ人間」が連載開始されるし、1969年に流行る「モーレツ社員」もその影響を受けたひとつだろう。「マジメ人間」という言葉はそれほど画期的な響きで、アイデアで、ブレイクスルーで、エポックメイキングな言葉だったことがうかがえる。
そう、その派生した言葉の中に、ダメ人間があった…はずだ。マジメと対をなす意味からして真っ先に浮かび作り出された、はずだ。はずなのだ。ええい、あった。うん、あったあった。そういやあの頃にそんなことあったよね。うんうん。……でもま、そう考えるのが普通だ。大槻ケンヂさんは1966年の生まれだから、きっと腹の中であたかも胎教の如くマジメ人間ダメ人間云々と散々っぱら聞かされて生まれたので、後に自身の脳内にダメ人間という言葉が浮かび上がったときに、これは自分が作り出した、と、胎児時代の記憶があやふやだった氏は記憶違いを起こしたのだろう(おいおい…)。きっと幼児期に聞いていたんだろうね。というか、言葉として普通にあったんだろうね。ダメ人間。
しかし、これでは「ダメ人間」という言葉の「考案者」を特定することができない。が、○○人間という言葉選びの発想は山口瞳さんが生みだしたといっていいだろう。ということで、「ダメ人間」の考案者は、大槻ケンヂでも手塚治虫でもなく、山口瞳さんだ!
……………多分。
上の文にはまったく関係ないけど、
今ひとつ、物語をポチポチしてる(暇人かお前、正月だろ!、ああ正月だから暇でいいのか)。このブログを注意深く観察している人ならあれのことだとすぐに思いつくだろう。そう、早速あれをポチポチしてみた。したら、変な方向に行った。それだけを言いたい。ああ、かなり短くなる予定。