からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜 -227ページ目

ボツ台本へるにゃあ

「椎間板ヘルニアと君の吹く草笛がぼくの大事な思い出」



『どう致しまして』
「いやなんもしてません!どう致しましたか、でしょ」
『どう致しました?手遅れですか?』
「…手遅れかどうかはわかりませんが腰が痛いんです」
『あー手遅れですね。はい』
「ちょっと待て!ろくに診もしないで!多分そこまでではないです!多分椎間板ヘルニアです!」
『ヘルニア?あんたなんだい?医者かい?』
「違いますけど」
『だったらなんで診断出来るんだい?さては医者かい?』
「だから違いますって。患者です!あくまでも多分ですから診察お願いしますよ」
『ここだけの話医者なんだろ?俺を監視に来たんだ。なあそうだろ?』
「違います!レストランの覆面調査のバイトか俺は。ヘルニアだと思っただけです」
『腰の痛みの原因には大きく分けて二つある』
「はぁ、あの、勝手に自分の症状を診断したことに怒っているのなら謝りますけど」
『手遅れか手遅れじゃないかだ』
「大き過ぎだろそのカテゴリー!しかも原因じゃなくて結果でしょそれ」
『私が治せるのは手遅れじゃない方だ』
「まあそりゃそうでしょうけど」
『君は見た目八割方手遅れだ』
「ええ!?見た目!?あのぉ結構元気なんですけど」
『まあそんなもんだよ患者ってさ。入院したら最後…』
「…うわ…ちょっと引いた」
『で、何して腰痛くなったの?あ、わかった!お店で恥ずかしくて裾切ってもらわなかったジーパンはいて座敷に上がったらおっさんから“なんだぁ殿中でござるかぁ”って言われたことに腹を立ててぶん殴ったらやり返されて逆エビ固めで』
「違います!そんなことぐらいでおっさん殴りません僕は!昨日筋トレしてたらなったんです」
『うわぁ恥ずかしいそれ!うわぁよくもぬけぬけとこんな場所でそんなこと言えるね』
「ぐ…ここ病院でしょうが!」
『てきとーな方便ぐらい用意するよ普通。筋トレしてヘルニアって』
「いいでしょ別に!」
『体を鍛えるために筋トレを、隠れてこそこそ筋トレしてそれでヘルニアって、うちはバカにつける薬はないんだよ』
「なんでそこまで言われなきゃならない!別に隠れてやってたわけじゃねえし!」
『え!?でも隠れてやらないとおっさんに見つかるじゃん』
「俺おっさんにリベンジするために体鍛えてたわけじゃねえよ!そもそもおっさんに負けてない!喧嘩もしてない!」
『じゃあなんで殴ったのさ?』
「それはお前が勝手に導き出した妄想だ!」
『ああ、そうかそうか、うん、そっかぁ』
「携帯電話での会話の相槌か!」
『で、セックスしてる時に痛くなったと』
「いやおい!筋トレの最中だって言ってるでしょ!なんなら聴診器越しに言ってあげましょうか!?」
『はいはい、おもしろいおもしろい』
「くっ」
『まあまあ、こっちでちゃんと作っておくから』
「話作らなくていいんだよ!セックスって!むしろセックスでヘルニアになったら筋トレしてた時にって嘘つくわ!」
『…そんな患者見たことないよと。で?今も痛い?』
「話終わったの!?ちゃんと筋トレって書けよ!?ああいいやもうどっちでも。今も痛い、というか痛い体勢をとれば痛いです」
『どんな風に痛い?』
「そうですね、ジンジンって擬音を鋭くしたような」
『おいおい君!私は犬じゃないんだから立たないよ』
「チンチンじゃねえよ!ジンジンを鋭くしたらチンチンになるか!?命令もしてない!」
『インポだしね』
「え…はぁ…それは」
『この商売してるとね、腹が立つこともあるし誤診なんかした日には聞き耳立てた奴らによって世間に波風が立つこともある。だけどチンチンは立たない』
「なに言ってんの!?」
『腕は立つんだけどねぇ』
「…本当かよ」
『なるほどね。痛いのは腰だけかい?このインポ先生に言ってごらん』
「あんたがそれでいいならいいんですけど…まあ他は痛くないです」
『じゃあベッドが無い場合と検査とか色々面倒くさいので君を椎間板ヘルニアだと断定します』
「はい」
『手遅れです』
「ええ!?ヘルニアでしょ?昨日は身動きとれなかったけど今は大して痛くないしそんなことはないでしょ」
『君、ちょっと右足を上げてみなさい。つま先までピーンと』
「あ、はい。ピーン」
『ふむ、足指もみもみ、次は左』
「はい」
『もみもみ、ほらね』
「はぁ」
『もう一度右、そう、左、(揉み無し)ああ、ほらね』
「はぁ」
『右、左、右、左、ほらほらほらほら、ね?ほらね』
「はぁ…………………」
『…いつまでやってるんだ!なんだ!?目立ちたがり屋か!?』
「え!?あんたがなにやら確信してて止めろと言わないからでしょ!」
『そんな商売潰れてしまえ!』
「わけがわかりません!」
『ったく』
「…で、あの何がわかったんですか?」
『え!?わからなかった?おかしいなぁ』
「言ってくれないとわかりません!」
『椎間板ヘルニアってのはね、足に麻痺症状がくるんだよ、そいつはヘルニアした箇所によって右足か左足か異なるんだ』
「はぁなるほど。それを診ていたんですね。で、僕の場合はどちらに」
『どっちもないね』
「…ないのかよ!じゃあなんであんなにやらせた!」
『やらせたって君が勝手になにやら楽しげにやってただけでしょ』
「俺の仕業!?くそ。麻痺がないってことは軽いってことですよね、じゃあ僕もう帰りますから」
『ちょい待ち!』
「え?まだ何かあるんですか?」
『君、小便はリズムよく出るかね?リズミカルに』
「リズミカル?」
『ズンズンズンズンズンダラボッチャバッチャボンボンズンボンチャヘイ!みたいに』
「そんな風には出ません、では」
『ええい!勢いとか回数だ!昨日やったんだろ!セックス!』
「ヘルニアな!」
『どうかね小便は?』
「…思い出してみるとどこか歯切れが悪いというか」
『そんな!』
「え!?何か悪いんですか!?」
『いやいや、小便は口から出さんだろ』
「当たり前だろ!そんな驚くな!喩えだよ!」
『のどちんこだけに?』
「違う!もう!…まあ確かに勢い弱くてチョロチョロっと出ました!」
『ああ、排尿障害が出とるかもなぁ』
「なんですかそれは」
『ヘルニアの症状にはあるんだよね、小便が出にくいとかあるんだ。ほらヘルニアって神経を圧迫しとるわけだから色んな機能障害がでるわけ。以上インポ先生の“明日は力だ!”でした』
「なんのコーナーだよ!…あの、それで僕はどうすれば」
『だから手遅れだって最初から…あら不思議?私って名探偵?』
「うるせえ!どうすればいいんですか!?手術ですか!?」
『私にはもう治せない。手遅れだからね』
「そんなまさか」
『そのまさか!早く帰って寝ろバカ!』
「そんな突き放さなくてもいいでしょ!僕どうなるんですか!?これからずっと小便に勢いないんですか!?まさか…まさか死ぬとか」
『死ぬかボケ!そんぐらいのヘルニアなんかほっときゃ治る!私が治す余地はない!ということは手遅れだ!わかったか!?わかったらさっさと家帰って死ね!』
「どっちだよ!死ぬの!?」
『百年以内に死ね!』
「寿命かよ」



終わり


実話(嘘)。最初に行った病院はもっとひどかったなぁ(本当)。

昼過ぎのテレビ東京

ぶちゃむくれ☆二日酔いだぁ

お茶漬けは

ノン永谷園派。具もいらん。うまいぜ。

バナナ哀しみ唄

おれがあんだけバナナを推してた時は無視されて森久美子だとこの始末か!ちくしょう!朝バナナ一本で済まされる小学生の高橋君の気持ちを考えたことあんのか!カロリーが高いとか低いとかよぉ、てめえらの魂は何ジュールだ!ちくしょう!バナナ食い過ぎて金縛りにあえ!


まあいいんだ。バナナもダイエットも好きにすりゃいいんだ。ただこれだけは言える。次に流行るダイエット方法はニシキヘビダイエットだ!こう、大蛇に巻かれながらのさ、ムツゴロウの名シーンさながらの…死んじゃうか。じゃあ丸呑みにされたラットを見て食欲を無くすダイエット方法で。慣れるか、かわいいし。うん。じゃあ思い切ってニシキヘビを百匹飼って常時金欠になることにより食事の量を減らすダイエット…なんかこうダラダラ書くから駄目なんだおれは。とにかく、もうあと一年ぐらいはバナナ買えねえよ。買うけど。もうなんなんだよ貴様何がしてえんだ!はぁ…

灰皿と灰とけむ猫(2)

東京の下町、駅から徒歩二十分、築四十年のアパート、というか“荘”、その名もずばり“伊那荘”(いなそう)。六畳一間、洋室、というか畳を取っ払った板張り。二階の角部屋、202。201も角部屋で203は無い。共同トイレ風呂無し。元は一軒家だったもので、この荘には玄関がある。共同玄関。玄関といっても普通の民家のドアだが。いや、普通の、というと割と豪華で頑丈そうなドアをイメージしてしまうかもしれない。安っぽい、本気で殴れば穴が空いてしまいそうな勝手口のドアみたいなものだ。その玄関を入り、靴を脱ぎ、目の前左手の階段を昇ってすぐが202。玄関側にいくと201。トイレは玄関から右手に二つありどちらも和式。洗面代もここ。その奥に部屋が一つと炊事場。階段の下に洗濯機がある。洗濯機は曜日により使用者を分けている。尚の曜日は火曜と金曜。つまり今現在空いている部屋は無い。余りの日曜日は暗黙の了解で基本的に使用禁止である。どうしても使いたい時は洗濯機の横にあるメモ帳に日曜日使いたい旨を書き、予約を入れる。部屋のドアは、どの部屋も、一枚の引き戸だ。部屋のドアの“内側”の鍵は引き戸の鍵であるからして
引き戸型の公衆トイレの鍵を想像してもらえばよい。ドアの縦面の中に埋蔵されているものではなく後付けの柱にある金具に引っ掛ける簡易的なやつだ。外側の鍵はドアと壁についている輪っかに南京錠をカチャリ。部屋を借りた時に南京錠はついていたのだが信用性に乏しいので尚が新しく買った。鍵といえばもうひとつ共同玄関の鍵があるのだがその話は後述しよう。尚がここ、202に引っ越して来て八年になる。家賃二万五千円。高い、と、尚は思っている。大家は、窓が南側にあるから、と言うが、大きな南側の窓は夏は暑く冬は寒い不快極まりないものだ。
ここから這いあがってやる。尚は八年前そう思ってこの部屋にやってきた。そのまま這いあがることなく八年。今ではすっかりこの部屋での生活に慣れ、居心地さえいい。
尚は二十五歳まで順風満帆な人生を歩んでいた。中学受験に成功し、そのままエスカレーター方式で一流と云われる大学へ。留年することなく卒業を迎えてそこそこの企業に就職。こう書くと些か面白みに欠ける人生のようだが、見るとやるのとは大違いで、尚は充分に自分の人生を楽しみ、このままうまいこといったらいいな、と、思っていた。何より学生時代から付き合っていた彼女と結婚する約束をしたので遊んでいる暇はなく、稼がなければならなかった。仕事も覚えだし、ある程度金も貯まり生活の見通しがついた頃、尚は結婚した。入社二年目の冬だった。
それから一年尚は平凡ながらも幸せな日々を送った。毎日毎日残業の日々ではあったが仕事に時間を費やすことがさほど苦ではなく、会社内で浮くこともなく、後輩も出来て、結婚を期に引っ越したアパートには愛する人がいる。彼女も働いているので金もそれなりにある。文句のひとつも出ない生活だ。この生活が続けばいいな、いずれ家を買うために貯金もしている。しかし、この生活は長く続かなかった。
尚は趣味という趣味こそなかったが、たまに小説を書いた。となると当然趣味は“読書”となるのだが、大して読んではいないし、趣味は読書です、なんてものは胸を張っていうほどのものではない。尚は小説を書き始めると、影響を受けるから、と、一切物語は読まなくなるので尚更だった。ましてや文学と呼べるものになると、辛うじてトルストイを読破した、その程度である。夏目漱石など中学入学前の宿題で「こころ」を読んだっきりだ。作業による読書は、つまらない、という印象だけを残し、内容すら覚えちゃいない。
二十五の秋。尚が書いた小説が文庫に載った。企画ものの文庫で、半年に一回テーマが決められて出版される。そのテーマに合った短編小説を一般からも募集していて、都合よくその文庫のテーマに合った短編が書きあがったため何とはなしに応募してみたら載った。テーマは「シンドローム」。尚の書いた小説は「流れ星」。ペンネーム川屋野ひさし。流れ星に願いを唱えるのをやめられない女が犯す猟奇的殺人の話だ。
尚はとても嬉しくなった。思えば尚の人生、谷も無ければ山も無い、勉強で一番になることも無ければスポーツに秀でた訳でも無く、かといって何かの一芸があるわけでも無い、また一芸を望むようなことも無く、それまで一度も誰かから評価されたことなどない、平坦なものであった。尚の喜びようは端からみるとむしろ狼狽に近いほどだった。“気の毒なことに”喜びと狼狽に陥る理由は他にもあった。彼女の子宮には新しい生命が宿っていた。尚の気分が一番高揚していた頃だ。