こんばんは。主宰です。
黒潮域に輸送される回遊性浮魚類の仔魚が、はたして摂餌できずに飢餓状態にあるのか、あるいは摂餌できていて成長できているのかについては、黒潮パラドックスを解明するために重要な課題です。この課題については、従来から利用されてきた耳石解析によってある程度の証拠はつかめましたが、仔魚の体内で起こっているメカニズムを詳細にみてみたいと考えるようになりました。そこで、仔魚の遺伝子発現を調べることを試みようとしています。私たちの研究室が有する技術・情報では克服できないので、この分野に詳しい共同研究者にお願いし、技術研修を受けることにしました。
今回、いろいろとご教示いただくのは、東京大学大気海洋研究所の平井さんです。平井さんには、以前より遺伝子解析に関する技術研修や共同研究をおこなっていて、おかげ様でいくつかの論文を発表することができました。
Toru Kobari, Yusuke Tokumo, Ibuki Sato, Gen Kume, Junya Hirai (December 2021)
Metabarcoding analysis of trophic sources and linkages in the plankton community of the Kuroshio and neighboring waters. Scientific Reports: 11, 23265.
10.1038/s41598-021-02083-8
Toru Kobari, Ayane Taniguchi, Manami Hirata, Gen Kume, Mutsuo Ichinomiya, Tomohiro Komorita, Masafumi Kodama, Fumihiro Makino, Junya Hirai (September 2024)
Comparison of the trophic sources and pathways of mesozooplankton and ichthyoplankton in the Kuroshio Current and its neighboring waters. Progress in Oceanography: 229, 103356.
10.1016/j.pocean.2024.103356
遺伝子発現解析もお詳しいので、今回もご縁を利用させてもらって、将来利用するであろう学生さんたちと共に大気海洋研究所を訪問しました。
さすが世界的に著名な東京大学なので、研究設備・機器がとても整っており、新しいことを享受できるこの環境にとても刺激を受けました。学生さんたちにも、その雰囲気を感じ取ってもらえたとおもいます。
今回も、もちろん研究所の下に構えている「お魚倶楽部はま」にお邪魔してランチとなりました。
ランチメニューでは地魚を使った丼を扱っており、たいへん美味しくいただけました。翌日には別の食堂に伺いましたが、こちらのほうが断然おトクです。この研究所を訪問した時には、ぜひここでランチを召し上がってください。
修得すべき情報量が多い数日間でしたが、もしこの技術をものにできれば、黒潮パラドックスの研究をさらに進展することができます。技術研修を受けた学生さんには、ぜひだれもが理解しやすいプロトコルをまとめてもらって、研究室のレガシーとして遺していってもらえればありがたいと考えています。