巻七 朝鮮その他現在および将来の領土の改造方針
朝鮮の郡県制
朝鮮を日本内地と同一なる行政法の下に置く。朝鮮は日本の属邦にあらずまた日本人の植民地にあらず。日韓合併の本旨に照して日本帝国の一部たり一行政区たる大本を明らかにす。
注一 朝鮮をして日本のアイルランドたらしむるごときことあらば、将来大ローマ帝国を築かんとする日本は全然その能力なきことを第一歩において立証するものなり。由来朝鮮人と日本人とは米国内の白人と黒人とのごとき人種的差別あるものにあらず。単に一人種中最も近き民族に過ぎざるなり。したがって過般の暴動と米国市中の黒白人争闘とを比較するときその恥辱の程度において日本は幾百倍を感ぜざるべからず。朝鮮間題は同人種間の問題なるがゆえにいわゆる人種差別撤廃問題の中に入らず。ただ一に統治国たる日本そのものの能力問題たり、責任問題たり、道義間題たりとす。
注二 朝鮮人が異民族たる点はその言語と風俗との一部なり。国民生活の根本たる思想においては有史以来日本の文明交渉が朝鮮を経由したるによりて明らかなるごとく全然同一系統に属するものなり。しかして現在吾人の血液がいかに多量に朝鮮人のそれを混じたるかは人類学上日本民族は朝鮮・支那・南洋および土着人の化学的結晶なりとせらるるにても明白なり。とくに純潔の朝鮮人の血液を多量に引ける者は彼と文明交渉の密接せし王朝時代の貴族に多く、現に公脚華族と称せらるる人々の面貌多く朝鮮人に似たるはすべてその類型を現すものなり。すでに王朝貴族に朝鮮人の血液が多量なりということは、実にその貴族の血液が皇室に入り得べき特権階級たりし点において、日本の元首そのものが朝鮮人と没交渉にあらずということなり。あえて今次の朝鮮太子と日本皇女との結合をもって日鮮の融合が試みらるるにあらず。これ決して人種問題の範囲にあらず。
注三 要するにすべての原因は朝鮮が日本、支那・ロシアの三大圏に介在して自立するあたわざりし地理的約束と、その道義的廃頽より一切の政治・産業・学術・思想の腐敗萎微を来して内外相応じて亡びたるものなり。朝鮮そのものの歴史が示すごとく、また清国がこれを属国とせんがために起りたる日清戦争、および満洲に来たれるロシアがそれを侵略せんとせしがために破れたる日露戦争に示すごとく、その亡国たるべき内外呼応の原因は統治者が日本たらざる時は露支両国のいずれかなりしは明白なり。日本の国防に取りて彼が日本の脅威たる強国の領有または同盟者たる危機は、あたかも英国に取りてベルギーがドイツの領土たり同盟国たるそれと同じき存亡問題なり。今次の大戦においてもしベルギーがドイツと握手ししかして英国の軍隊がそれを撃破してベルギーに滞陣せしとせよ。彼は講和会議においてその独立を承認せざるのみならず明らかにその領有を主張すべきは論なし。朝鮮の亡国的腐救はことごとく事大的国是となりて現われ、日清戦争においては清国に従い、日露戦争においてはロシアを迎え、いささかも英国とベルギーの結託に似たるものなかりしは開戦原因を顧れば明白なり。この間においてかの革命党のみは大局を達観し日本と結びて独立を企画して労苦止まざりしといえども、ついに日露開戦に至るまで国政を把りて志を行なうあたわざりき。しかして戦争中日本の朝鮮における立場は英国のベルギーにおけるごとくならず、朝鮮全部を掩有するに実力をもってしたり。国内の革命党は依然として志を得ず、露国また依然として強大を維持し講和条件は単なる休戦条約として調印せられたり。自立しあたわざる地理的約束と真個契盟するあたわざる亡国的腐敗のために、日本は露国の復讐戦に対する自衛的必要に基づきて独立擁護の誓明を取り消したることが真相なり。これ侵略主義にあらず、またいうところの軍国主義にあらず。朝鮮を領有する結果より見て、あたかも百万円を貯蓄したる結果より見て、それが高利貸によると忠実なる労働によるとを考査せずして等しく守銭奴と詈り侵略者と誣ゆるは昏迷者の狂言なり、重大なる罪悪なり。朝鮮の亡国史を知り露国の脅威に戦裸したる危機を顧るならば、アイルランド独立問題を朝鮮に直訳して論及するの理なし。空疎守旧の学説と薄弱なる意志と衆愚の喝采を足れりとする虚栄と、実に通俗政治家の標本たる「ウイルソン」輩の通弁に得々たりしいわゆる学者なる者の反省を要す。
注四 ゆえに日本存立の露防上より朝鮮は永久に独立を考うべきものにあらず。ロシアの脅威が「ツァール」の亡びたるをもって去れりと考うるごときは歯牙に足らざる浅慮。「ツァール」が侵略し来れると「レニン」が幾多の謬妄を付帯せる社会革命説を奉じて殺到し来るべきと、日本が国防上朝鮮に拠りて戦うことは国家の国際的権利なり。特にロシアの脅威は過渡時代の「レニン」にあらずして「レニン」なき後真に再建せらるべき十年後の将来に存す。ようやく中世史の革命を学びつつある未開後進なる彼に対するには現代的再建を想像するよりも、反動の襲来または真乎の建国者によりて「ピーター」大帝の再現をも打算外に置くあたわず。
注五 この国防上朝鮮を独立せしめずということは、英人がインドを独立せしめずまたアフリカ植民地を独立せしめずということとは全く別事なり。インドが英国の属邦たり英領アフリカが植民地たるに対して、朝鮮は日本の属邦にあらずまた植民地にあらずと明示せし所以なり。インドまたはアフリカの住民が全然英人と人種を異にせるに対して、日鮮人は古来の混血融合のみならず同一人種中の最も近き異民族なる点において属邦たるべからずまた植民地たるべからず。朝鮮は日本の一部たること北海道と等しく正に「西海道」たるべし。日本皇室と朝鮮王室との結合は実に日鮮人のついに一民族たるべき大本を具体化したるものにして、泣く泣く匈奴に皇女を降嫁せしめたる政略的のものにあらず。実に現時の対鮮策なるものは甚だしく英国の植民政策を模倣したるがゆえに、根本精神よりして日韓合併の天道に反するものなり。朝鮮が日本の西海道なる所以を明らかにするとき百般の施設ことごとく日鮮人の融合統一を来たなざるものなく、独立問題のごとき希うといえども生起せざるは論なし。
注六 「コルシカ」島民の大皇帝は「コルシカ」独立の戦陣に孚まれ独立の憤を抱きて敵国の士官学校に学べり。しかも革命フランスが「コルシカ」をフランスの本国と平等ならしめ「コルシカ」島民をフランス人の自由に開放するや、独立党の青年士官はフランスに対する愛国心を「エルパ」島に葬るまで変ぜざりき。日本海を庭池として南北満洲と極東シベリアとに革命大帝国を建つる時、朝鮮は特にその心臓肺肝の重きをなさんとす。日本本国の一部としての平等、日本人としての自由を対鮮策の眼目となす。
朝鮮人の参政権
約二十年後を期し朝鮮人に日本人と同一なる参政権を得せしむ。
この準備のために約十年後より地方自治制を実施して参政権の運用に慣習せしむ。
注一 これ流行のいわゆる民族自決主義にあらざるは論なし。朝鮮が日本の西海道たり朝鮮人が日本人と大差なき民族たる理由によりて、日本国民たる国民権を最初にかつ完全に賦与せらるるを明らかにするものなり。
注二 ナポレオンの世界統一主義に対して起れる民族主義が近世史の一大潮流なりしは言うの要なし。ただこれがかの暗昧なる「ウイルソン」の口より民族自決主義と呼ばるるに至りて空想化し滑稽化したるなり。自決とはそもそも何ぞや。ある民族がその国家組織を失う所以は外部的圧迫と内部的廃頽とによりて自決するかを欠けるがためなり。覚醒せる民族が内的興奮によりて外部的圧迫を排斥せんとする時、これ無用なる自決の文字を加えざる伝来の民族主義なり。幾多の民族の中において自決するを得る覚醒的民族と然らざる者とあるは、あたかも等しき人間の中において自決するあたわざる八十歳の老婆あり十歳の少女あるがごとし。民族主義の本旨は人道主義というがごとき合理的命題なり。これを民族自決主義と名づくるに至りては人道主義の命題に代うるに人間自決主義というがごとき笑倒の沙汰。老幼男女を論ぜず各人の人格を認識する人道主義を滑稽化して八十歳の老婆にも生活を自決せしむべく十歳の少女にも恋愛を自決せしむべしといわば如何。ある民族は老婆のごとくある民族は少女のごとし。この国際間にかける民族の老幼をも圧迫し虐遇せざるべき人道主義がすなわち民族主義の終局理想たるべきものなり。現時の強国中各種老幼の民族を包有せざるものなきこと各家庭において老婆少女を有するがごとし。これらに向って自決を迫らば各家庭の分散すべきごとく一切の強国は分解すべし。強国の無用をいうか。しからば「ウイルソン」は「ヴェルサイユ」に行かずしてスイスの社会党大会に列席すべかりしなり。しかしてその主張を堂々たる非国家主義世界統一主義に宣明する彼らは大いなる歓迎をもって噴飯すべきこの命題の製造者を潮弄すべし。
注三 実に朝鮮は含併以前自決の力なかりしことは八十歳の老婆のごとく、合併以後未だ自決のかなきこと十歳の少女のごとし。末節枝葉においていかなる非難あるにせよ、朝鮮はロシアの玄関に老婆のごとく窮死すべかりし者を、日本の懐に抱かれて少女のごとく生長しつつあるはこれを無視するあたわず。すでに日本の懐に眠れる以上、日本建国の天道によりて一点差別なき日本人なり。日本人とし日本人たる権利においてその生長と共に参政権を取得すべき者なるは論なし。
注四 約十年といい約に十年という年限を予定したるは、過去の専制政府等が民権運動に譲歩するときなるべく長く専制を維持せんと欲する期間の留保にあらず。数百年問の半亡国史は実に朝鮮人の道念をも生活をも腐敗し尽したるをもって、真の国家的覚醒ある鮮人はこれを現在新精神によりて教育せられつつある人々の生長に待つのほかなきをもってなり。教育とは必ずしも「サーベル」教帥にあらず。必ずしも日本語の教科書にあらず。愛国的暴動のごときこれを覚醒して顧るとき貴重なる政治教育の一なり。医学に万能の薬品なきにかかわらず政治学に参政権を神権視することは欧米の迷信なり。かの投票神権説に累せられて、鮮人にまず参政権を与えて政治的訓練をなすべしと考うるは、その権利の根本たる覚醒的生長を閑却したる愚人の云為なりとす。日本は真個父兄的愛情をもって、かかる短時日間にこの道義的使命を果たし、もって異民族を利得の目的とせる白人のいわゆる植民政策なるものに鉄槌一下せざるべからず。
三原則の拡張
私有財産限度、私有地限度、私人生産業限度の三大原則は大日本帝国の根本組織なるをもって現在および将来の帝国領土内に拡張せらるるものなり。
注一 東洋拓殖会杜の横暴は実に当年の東インド会社に学ばんとする一大罪悪なり。日本のアジアに与えられたる使命は英人の罪悪を再びするを許さず。拓殖会社の土地は土地私有限度によりて一度国家に徴集すると共に、朝鮮にある内鮮人は平等の権利においてその分配を受くべし。日本建国の精神は内外人によりて正義を二にせざることを誇りとす。朝鮮におけるいわゆる拓殖政策なるものまた実に欧人の罪悪的制度を直訳したるもの多し。日本はすべてにかいて悪摸倣より蝉脱してその本に返らざるべからず。
注二 将来の帝国領土中、先住国民の大富豪大地主ありて多大の土地を独占しまたは生産業を専有する時これを是認するごときあらば、日本国家はただ彼らの不義なる財産の保護を負担せしめられ、日本国民はただその小作人たり労働者たるに過ぎざるべし。これ主権国民たる自負と欲望において忍ぶあたわざるところ。ためについに国家の法律を狂げて自国民を保護し彼らの財産を奪わんとする非違を頻出し不仁の名を国家に冠せしむるに至る。ゆえに日本本国においてまずこの三大原則を確立して拡張せられたる領土に臨むとき、真の公平無私はおのずからにして得べし。大領土を有する名実具足の大日本帝国を考うるものこの三大原則を確立する日本みずからの改造が実に将来の建設に避くべからざる準備なるを悟得すべし。
現在領土の改造順序
朝鮮・台湾・樺太等の改造はこの三大原則を決定するに止め、漸を追いてその余を施行し、十年ないし二十年後において日本人と同一なる生活権利の各条を得せしむるを方針とす。
ただし日本内地の改造を終り戒厳令を撤廃すると同時に三大原則の施行に着手す。
これらの領土内に在郷軍人団なきをもって、国家任命の改造執行機関をして土地資本財産の調査徴集に当らしむ。
改造執行機関は日本内地の改造に経験を得たる官吏または同じき在郷軍人団中より任命す。
注一 日本の改造を終りたる後に着手する所以は、無智と事情不通とのために日本内地と同時に着手するときは、内地の粉囂を誤伝したる不安騒擾を醸すべきをもってなり。第二の理由は在郷軍人団なる好適の機関なく、今の植民政策的頭脳の総督府等にこの大任に当らしむるは明白に不正不義を残して改造の精神を傷くるのみならず、あるいは意外の変を招くべきをもってなり。第三の理由は三年間の日月は日本の整然たる改造組織を伝聞せしむるに十分なるがために、日本大多数国民の歓喜を伝えて彼らの大多数国民また速やかにその福利恵沢に浴せんことを欲するに至るべきをもってなり。
注二 過般朝鮮の内乱は今の総督政治が一因ならずとはいわず。しかも根本原因は日本資本家の侵略が官憲と相結びて彼らの土地を奪い財産を掠めて不安を生活に加え怨恨を糊ろの資に結びたることに存するを知らざるべからず。「ウイルソン」輩の呼号何の影響あらん。国家の内外を毒してついに大ローマをも亡ぼしたるものの金権政治なりしことを忘るべからず。
改造組織の全部施行せらるべき新領土
将来取得すべき新領土の住民がその文化において日木人とほぼ等しき程度にある者に対しては、取得と同時にこの改造組織の全部を施行すべし。ただし日本本国より派遺せられたる改造執行機関によりて改造せらるるものなり。
その領土取得の後移住し来れる異人種異民族は、十年間居住の後国民権を賦与せられ日本国民と同一無差別なる権利を有すべし。
朝鮮人台湾人等の未だ日本人と同一なる国民権を取得すべき時期に達せざる者といえども、この新領土に移住したる者は居住三年の後右に同じ。
注一 たとえば濠州を取得したる時その住民の文化程度は直ちにこの改造組織の下に生活するを得べし。極東シベリアのごときはその程度まず三大原則を施行し順を追いて施行すべきものなり。
注二 将来の新領土は異人種異民族の差別を撤廃して日本みずからその範を欧米に示すべきは論なし。濠州にインド人種、支那民族を迎え、極東シベリアに支那・朝鮮民族を迎えて先住の白人種とを統一し、もって東西文明の融合を支配し得る者地球上只一の大日本帝国あるのみ。したがってこの改造組織をそれらの領土に施行して主権国民みずから私利横暴を制すると共に、先住の白人富豪を一掃して世界同胞のために真個楽園の根基を築き置くことが必要なり。単なる地図上の彩色を拡張することは児戯なり。天道宣布のために選ばれたる日本国民はまさに天譴に亡びんとする英国の二舞をなさざるは論なし。
注二 朝鮮人台湾人がその故郷にありて未だ取得する時期に達せざる国民権をこの領土において三年後に取得し得べき理由は、すでに移住し居住するほどの者は大体において優秀なるをもってなり。第二に白人の新移住者、インド人、支那人の移住者が取得するところを、すでに早く日本国民たりし彼らに拒絶すべき理由なきをもってなり。第三の理由は東西文明の融合を促進するために、特に日本の思想制度に感化せられたる彼らの移住を急とするがゆえなり。
注四 日本人の改造執行機関をもってして土着人に当らしめざる所以は主権本来の性質として説明の要なし。
朝鮮の郡県制
朝鮮を日本内地と同一なる行政法の下に置く。朝鮮は日本の属邦にあらずまた日本人の植民地にあらず。日韓合併の本旨に照して日本帝国の一部たり一行政区たる大本を明らかにす。
注一 朝鮮をして日本のアイルランドたらしむるごときことあらば、将来大ローマ帝国を築かんとする日本は全然その能力なきことを第一歩において立証するものなり。由来朝鮮人と日本人とは米国内の白人と黒人とのごとき人種的差別あるものにあらず。単に一人種中最も近き民族に過ぎざるなり。したがって過般の暴動と米国市中の黒白人争闘とを比較するときその恥辱の程度において日本は幾百倍を感ぜざるべからず。朝鮮間題は同人種間の問題なるがゆえにいわゆる人種差別撤廃問題の中に入らず。ただ一に統治国たる日本そのものの能力問題たり、責任問題たり、道義間題たりとす。
注二 朝鮮人が異民族たる点はその言語と風俗との一部なり。国民生活の根本たる思想においては有史以来日本の文明交渉が朝鮮を経由したるによりて明らかなるごとく全然同一系統に属するものなり。しかして現在吾人の血液がいかに多量に朝鮮人のそれを混じたるかは人類学上日本民族は朝鮮・支那・南洋および土着人の化学的結晶なりとせらるるにても明白なり。とくに純潔の朝鮮人の血液を多量に引ける者は彼と文明交渉の密接せし王朝時代の貴族に多く、現に公脚華族と称せらるる人々の面貌多く朝鮮人に似たるはすべてその類型を現すものなり。すでに王朝貴族に朝鮮人の血液が多量なりということは、実にその貴族の血液が皇室に入り得べき特権階級たりし点において、日本の元首そのものが朝鮮人と没交渉にあらずということなり。あえて今次の朝鮮太子と日本皇女との結合をもって日鮮の融合が試みらるるにあらず。これ決して人種問題の範囲にあらず。
注三 要するにすべての原因は朝鮮が日本、支那・ロシアの三大圏に介在して自立するあたわざりし地理的約束と、その道義的廃頽より一切の政治・産業・学術・思想の腐敗萎微を来して内外相応じて亡びたるものなり。朝鮮そのものの歴史が示すごとく、また清国がこれを属国とせんがために起りたる日清戦争、および満洲に来たれるロシアがそれを侵略せんとせしがために破れたる日露戦争に示すごとく、その亡国たるべき内外呼応の原因は統治者が日本たらざる時は露支両国のいずれかなりしは明白なり。日本の国防に取りて彼が日本の脅威たる強国の領有または同盟者たる危機は、あたかも英国に取りてベルギーがドイツの領土たり同盟国たるそれと同じき存亡問題なり。今次の大戦においてもしベルギーがドイツと握手ししかして英国の軍隊がそれを撃破してベルギーに滞陣せしとせよ。彼は講和会議においてその独立を承認せざるのみならず明らかにその領有を主張すべきは論なし。朝鮮の亡国的腐救はことごとく事大的国是となりて現われ、日清戦争においては清国に従い、日露戦争においてはロシアを迎え、いささかも英国とベルギーの結託に似たるものなかりしは開戦原因を顧れば明白なり。この間においてかの革命党のみは大局を達観し日本と結びて独立を企画して労苦止まざりしといえども、ついに日露開戦に至るまで国政を把りて志を行なうあたわざりき。しかして戦争中日本の朝鮮における立場は英国のベルギーにおけるごとくならず、朝鮮全部を掩有するに実力をもってしたり。国内の革命党は依然として志を得ず、露国また依然として強大を維持し講和条件は単なる休戦条約として調印せられたり。自立しあたわざる地理的約束と真個契盟するあたわざる亡国的腐敗のために、日本は露国の復讐戦に対する自衛的必要に基づきて独立擁護の誓明を取り消したることが真相なり。これ侵略主義にあらず、またいうところの軍国主義にあらず。朝鮮を領有する結果より見て、あたかも百万円を貯蓄したる結果より見て、それが高利貸によると忠実なる労働によるとを考査せずして等しく守銭奴と詈り侵略者と誣ゆるは昏迷者の狂言なり、重大なる罪悪なり。朝鮮の亡国史を知り露国の脅威に戦裸したる危機を顧るならば、アイルランド独立問題を朝鮮に直訳して論及するの理なし。空疎守旧の学説と薄弱なる意志と衆愚の喝采を足れりとする虚栄と、実に通俗政治家の標本たる「ウイルソン」輩の通弁に得々たりしいわゆる学者なる者の反省を要す。
注四 ゆえに日本存立の露防上より朝鮮は永久に独立を考うべきものにあらず。ロシアの脅威が「ツァール」の亡びたるをもって去れりと考うるごときは歯牙に足らざる浅慮。「ツァール」が侵略し来れると「レニン」が幾多の謬妄を付帯せる社会革命説を奉じて殺到し来るべきと、日本が国防上朝鮮に拠りて戦うことは国家の国際的権利なり。特にロシアの脅威は過渡時代の「レニン」にあらずして「レニン」なき後真に再建せらるべき十年後の将来に存す。ようやく中世史の革命を学びつつある未開後進なる彼に対するには現代的再建を想像するよりも、反動の襲来または真乎の建国者によりて「ピーター」大帝の再現をも打算外に置くあたわず。
注五 この国防上朝鮮を独立せしめずということは、英人がインドを独立せしめずまたアフリカ植民地を独立せしめずということとは全く別事なり。インドが英国の属邦たり英領アフリカが植民地たるに対して、朝鮮は日本の属邦にあらずまた植民地にあらずと明示せし所以なり。インドまたはアフリカの住民が全然英人と人種を異にせるに対して、日鮮人は古来の混血融合のみならず同一人種中の最も近き異民族なる点において属邦たるべからずまた植民地たるべからず。朝鮮は日本の一部たること北海道と等しく正に「西海道」たるべし。日本皇室と朝鮮王室との結合は実に日鮮人のついに一民族たるべき大本を具体化したるものにして、泣く泣く匈奴に皇女を降嫁せしめたる政略的のものにあらず。実に現時の対鮮策なるものは甚だしく英国の植民政策を模倣したるがゆえに、根本精神よりして日韓合併の天道に反するものなり。朝鮮が日本の西海道なる所以を明らかにするとき百般の施設ことごとく日鮮人の融合統一を来たなざるものなく、独立問題のごとき希うといえども生起せざるは論なし。
注六 「コルシカ」島民の大皇帝は「コルシカ」独立の戦陣に孚まれ独立の憤を抱きて敵国の士官学校に学べり。しかも革命フランスが「コルシカ」をフランスの本国と平等ならしめ「コルシカ」島民をフランス人の自由に開放するや、独立党の青年士官はフランスに対する愛国心を「エルパ」島に葬るまで変ぜざりき。日本海を庭池として南北満洲と極東シベリアとに革命大帝国を建つる時、朝鮮は特にその心臓肺肝の重きをなさんとす。日本本国の一部としての平等、日本人としての自由を対鮮策の眼目となす。
朝鮮人の参政権
約二十年後を期し朝鮮人に日本人と同一なる参政権を得せしむ。
この準備のために約十年後より地方自治制を実施して参政権の運用に慣習せしむ。
注一 これ流行のいわゆる民族自決主義にあらざるは論なし。朝鮮が日本の西海道たり朝鮮人が日本人と大差なき民族たる理由によりて、日本国民たる国民権を最初にかつ完全に賦与せらるるを明らかにするものなり。
注二 ナポレオンの世界統一主義に対して起れる民族主義が近世史の一大潮流なりしは言うの要なし。ただこれがかの暗昧なる「ウイルソン」の口より民族自決主義と呼ばるるに至りて空想化し滑稽化したるなり。自決とはそもそも何ぞや。ある民族がその国家組織を失う所以は外部的圧迫と内部的廃頽とによりて自決するかを欠けるがためなり。覚醒せる民族が内的興奮によりて外部的圧迫を排斥せんとする時、これ無用なる自決の文字を加えざる伝来の民族主義なり。幾多の民族の中において自決するを得る覚醒的民族と然らざる者とあるは、あたかも等しき人間の中において自決するあたわざる八十歳の老婆あり十歳の少女あるがごとし。民族主義の本旨は人道主義というがごとき合理的命題なり。これを民族自決主義と名づくるに至りては人道主義の命題に代うるに人間自決主義というがごとき笑倒の沙汰。老幼男女を論ぜず各人の人格を認識する人道主義を滑稽化して八十歳の老婆にも生活を自決せしむべく十歳の少女にも恋愛を自決せしむべしといわば如何。ある民族は老婆のごとくある民族は少女のごとし。この国際間にかける民族の老幼をも圧迫し虐遇せざるべき人道主義がすなわち民族主義の終局理想たるべきものなり。現時の強国中各種老幼の民族を包有せざるものなきこと各家庭において老婆少女を有するがごとし。これらに向って自決を迫らば各家庭の分散すべきごとく一切の強国は分解すべし。強国の無用をいうか。しからば「ウイルソン」は「ヴェルサイユ」に行かずしてスイスの社会党大会に列席すべかりしなり。しかしてその主張を堂々たる非国家主義世界統一主義に宣明する彼らは大いなる歓迎をもって噴飯すべきこの命題の製造者を潮弄すべし。
注三 実に朝鮮は含併以前自決の力なかりしことは八十歳の老婆のごとく、合併以後未だ自決のかなきこと十歳の少女のごとし。末節枝葉においていかなる非難あるにせよ、朝鮮はロシアの玄関に老婆のごとく窮死すべかりし者を、日本の懐に抱かれて少女のごとく生長しつつあるはこれを無視するあたわず。すでに日本の懐に眠れる以上、日本建国の天道によりて一点差別なき日本人なり。日本人とし日本人たる権利においてその生長と共に参政権を取得すべき者なるは論なし。
注四 約十年といい約に十年という年限を予定したるは、過去の専制政府等が民権運動に譲歩するときなるべく長く専制を維持せんと欲する期間の留保にあらず。数百年問の半亡国史は実に朝鮮人の道念をも生活をも腐敗し尽したるをもって、真の国家的覚醒ある鮮人はこれを現在新精神によりて教育せられつつある人々の生長に待つのほかなきをもってなり。教育とは必ずしも「サーベル」教帥にあらず。必ずしも日本語の教科書にあらず。愛国的暴動のごときこれを覚醒して顧るとき貴重なる政治教育の一なり。医学に万能の薬品なきにかかわらず政治学に参政権を神権視することは欧米の迷信なり。かの投票神権説に累せられて、鮮人にまず参政権を与えて政治的訓練をなすべしと考うるは、その権利の根本たる覚醒的生長を閑却したる愚人の云為なりとす。日本は真個父兄的愛情をもって、かかる短時日間にこの道義的使命を果たし、もって異民族を利得の目的とせる白人のいわゆる植民政策なるものに鉄槌一下せざるべからず。
三原則の拡張
私有財産限度、私有地限度、私人生産業限度の三大原則は大日本帝国の根本組織なるをもって現在および将来の帝国領土内に拡張せらるるものなり。
注一 東洋拓殖会杜の横暴は実に当年の東インド会社に学ばんとする一大罪悪なり。日本のアジアに与えられたる使命は英人の罪悪を再びするを許さず。拓殖会社の土地は土地私有限度によりて一度国家に徴集すると共に、朝鮮にある内鮮人は平等の権利においてその分配を受くべし。日本建国の精神は内外人によりて正義を二にせざることを誇りとす。朝鮮におけるいわゆる拓殖政策なるものまた実に欧人の罪悪的制度を直訳したるもの多し。日本はすべてにかいて悪摸倣より蝉脱してその本に返らざるべからず。
注二 将来の帝国領土中、先住国民の大富豪大地主ありて多大の土地を独占しまたは生産業を専有する時これを是認するごときあらば、日本国家はただ彼らの不義なる財産の保護を負担せしめられ、日本国民はただその小作人たり労働者たるに過ぎざるべし。これ主権国民たる自負と欲望において忍ぶあたわざるところ。ためについに国家の法律を狂げて自国民を保護し彼らの財産を奪わんとする非違を頻出し不仁の名を国家に冠せしむるに至る。ゆえに日本本国においてまずこの三大原則を確立して拡張せられたる領土に臨むとき、真の公平無私はおのずからにして得べし。大領土を有する名実具足の大日本帝国を考うるものこの三大原則を確立する日本みずからの改造が実に将来の建設に避くべからざる準備なるを悟得すべし。
現在領土の改造順序
朝鮮・台湾・樺太等の改造はこの三大原則を決定するに止め、漸を追いてその余を施行し、十年ないし二十年後において日本人と同一なる生活権利の各条を得せしむるを方針とす。
ただし日本内地の改造を終り戒厳令を撤廃すると同時に三大原則の施行に着手す。
これらの領土内に在郷軍人団なきをもって、国家任命の改造執行機関をして土地資本財産の調査徴集に当らしむ。
改造執行機関は日本内地の改造に経験を得たる官吏または同じき在郷軍人団中より任命す。
注一 日本の改造を終りたる後に着手する所以は、無智と事情不通とのために日本内地と同時に着手するときは、内地の粉囂を誤伝したる不安騒擾を醸すべきをもってなり。第二の理由は在郷軍人団なる好適の機関なく、今の植民政策的頭脳の総督府等にこの大任に当らしむるは明白に不正不義を残して改造の精神を傷くるのみならず、あるいは意外の変を招くべきをもってなり。第三の理由は三年間の日月は日本の整然たる改造組織を伝聞せしむるに十分なるがために、日本大多数国民の歓喜を伝えて彼らの大多数国民また速やかにその福利恵沢に浴せんことを欲するに至るべきをもってなり。
注二 過般朝鮮の内乱は今の総督政治が一因ならずとはいわず。しかも根本原因は日本資本家の侵略が官憲と相結びて彼らの土地を奪い財産を掠めて不安を生活に加え怨恨を糊ろの資に結びたることに存するを知らざるべからず。「ウイルソン」輩の呼号何の影響あらん。国家の内外を毒してついに大ローマをも亡ぼしたるものの金権政治なりしことを忘るべからず。
改造組織の全部施行せらるべき新領土
将来取得すべき新領土の住民がその文化において日木人とほぼ等しき程度にある者に対しては、取得と同時にこの改造組織の全部を施行すべし。ただし日本本国より派遺せられたる改造執行機関によりて改造せらるるものなり。
その領土取得の後移住し来れる異人種異民族は、十年間居住の後国民権を賦与せられ日本国民と同一無差別なる権利を有すべし。
朝鮮人台湾人等の未だ日本人と同一なる国民権を取得すべき時期に達せざる者といえども、この新領土に移住したる者は居住三年の後右に同じ。
注一 たとえば濠州を取得したる時その住民の文化程度は直ちにこの改造組織の下に生活するを得べし。極東シベリアのごときはその程度まず三大原則を施行し順を追いて施行すべきものなり。
注二 将来の新領土は異人種異民族の差別を撤廃して日本みずからその範を欧米に示すべきは論なし。濠州にインド人種、支那民族を迎え、極東シベリアに支那・朝鮮民族を迎えて先住の白人種とを統一し、もって東西文明の融合を支配し得る者地球上只一の大日本帝国あるのみ。したがってこの改造組織をそれらの領土に施行して主権国民みずから私利横暴を制すると共に、先住の白人富豪を一掃して世界同胞のために真個楽園の根基を築き置くことが必要なり。単なる地図上の彩色を拡張することは児戯なり。天道宣布のために選ばれたる日本国民はまさに天譴に亡びんとする英国の二舞をなさざるは論なし。
注二 朝鮮人台湾人がその故郷にありて未だ取得する時期に達せざる国民権をこの領土において三年後に取得し得べき理由は、すでに移住し居住するほどの者は大体において優秀なるをもってなり。第二に白人の新移住者、インド人、支那人の移住者が取得するところを、すでに早く日本国民たりし彼らに拒絶すべき理由なきをもってなり。第三の理由は東西文明の融合を促進するために、特に日本の思想制度に感化せられたる彼らの移住を急とするがゆえなり。
注四 日本人の改造執行機関をもってして土着人に当らしめざる所以は主権本来の性質として説明の要なし。