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《講演会》「尖閣」問題解決に南極条約の知恵を

 ●講演会●
「尖閣」問題解決に南極条約の知恵を


◎講師
柴田鉄治さん
(ジャーナリスト)


◎日時
12月11日(土)午後6時15分開場午後6時半開始


◎会場
文京シビックセンター5階会議室C
(後楽園駅・春日駅・水道橋駅下車)
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_shisetsukanri_shisetsu_civic.html
http://www.b-civichall.com/access/main.html


◎参加費  800円(会員500円)


 ≪国連・憲法問題研究会≫
連絡先 東京都千代田区富士見1-3-1上田ビル210工人社気付
TEL03-3264-4195 FAX03-3239-4409
URL  http://www.winterpalace.net/kkmk/
kkmk@winterpalace.net


「尖閣」問題解決に南極条約の知恵を


■9月、「尖閣諸島」(釣魚島)沖での中国漁船衝突事件を契機に、領土問題をめぐるナショナリズムがしきりに煽り立てられています。日本国内では「反中国」の言説・行動が相次ぎ、中国側でも「反日本」の行動が起こるという憂慮すべき事態が生じています。そして、「尖閣」問題を理由に、普天間基地をはじめとする沖縄米軍基地の存在が正当化されています。年末に民主党政権がはじめて決定する「防衛計画大綱」では南西諸島への自衛隊の配備・増強が盛り込まれ、自衛隊が米軍と「離島奪還」の共同演習を計画するなど、この問題は最大限に利用されています。

領土問題をめぐって歴史的にどちらの国家が領有するものかが盛んに議論されています。しかし、問題の解決のためには地球上の陸地は一つの国家が排他的に領有するという近代の「常識」を問い直す必要があるのではないでしょうか。南極条約(1961年発効)では、南極大陸に対する領有権主張を凍結し、軍事利用禁止、国際協力を定めています。「領土問題は南極条約方式で解決を」と提唱する柴田鉄治さん(ジャーナリスト)に講演してもらいます。


講師プロフィール
しばた・てつじ 1935年生まれ。朝日新聞東京本社社会部長、科学部長、論説委員などを経て現在は科学ジャーナリスト。南極観測隊に参加し、「国境のない、武器のない、パスポートの要らない南極」を理想と掲げ、「南極と平和」をテーマにした講演活動も行っている。「マガジン9条」にメディア時評を連載。著書に『科学事件』(岩波新書)、『新聞記者という仕事』、『世界中を「南極」にしよう!』(集英社新書)、『組織ジャ-ナリズムの敗北―続・NHKと朝日新聞』(共著、岩波書店) ほか。

【報告(前半)】吉田敏浩講演会「密約の闇をあばく 米兵犯罪と日米地位協定」

【報告】吉田敏浩講演会「密約の闇をあばく 米兵犯罪と日米地位協定」(前半)



9月13日、「密約の闇をあばく 日米地位協定と米兵犯罪」を行いました。
講師はジャーナリストで『密約』(毎日新聞社)著者の吉田敏浩さん。北部ビルマ取材の経験から、日本が再び「戦争する国」になろうとする有事法制、自衛隊派兵の現場を取材してきた。
吉田さんは下記のような講演を行いました。


<米軍の特権定めた地位協定>


昨年、対等な日米関係を目指すという触れ込みで発足した民主党政権は核持ち込み密約などを調査した。しかし、密約を廃棄し対等な立場を求めることはない。日米地位協定に関する密約群には手をつけていない。
 8月末、安保防衛懇報告書は集団的自衛権容認、地球的規模でアメリカと共に「平和創造」を提言。これが密約問題に関係ある。日米安保体制、日米同盟(日米軍事同盟)の根幹には日米地位協定がある。
 日米地位協定は日米安保条約の付属協定。在日米軍と米軍人の権利と義務など法的地位を定めたもので28条からなる。基地や演習場の提供方式について日米合同委員会施設分科会で協議して、どこを基地として提供するかを決める。米軍の自由な基地使用が認められている。米軍部隊の出入国や国内移動の権利。米軍による日本の公共施設の利用優先権。関税など課税の免除。物資や労務の調達方式・契約方式。駐留経費の負担方式。本来は米軍が負担すべき、米軍で働く従業員の人件費、光熱水費、建設費を日本が負担。米軍人・軍属、家族が事件・事故を起こしたときの刑事裁判権。米軍機の墜落事故、米軍車両による交通事故、米軍人軍属による犯罪による被害者への損害賠償など民事裁判権について定めている
 日米合同委員会の刑事裁判管轄権分科委員会、民事裁判管轄権分科委員会での合意事項がほとんど公表されない。朝鮮半島有事の時、事前協議なしに自由出撃できる密約があるが、基地使用の規定そのものが米軍優位。


 米軍は自由に日本の領土・領海・領空を出入りして、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争に出撃している。戦争ができる国づくりの流れで日米軍事同盟の強化、日米軍事一体化があり、専守防衛を乗り越える流れになっている。
 米兵の公務執行中の事件・事故が起きた場合の第一次裁判権はアメリカ側が保持する。公務外の場合は日本側が第一次裁判権を持つ。起訴するまでは米軍が身柄を確保する米軍に有利な規定がある。有利になっているのを確実なものにするために密約がある。外務省・法務省に何度も情報開示請求をしているが、「不開示」「文書不存在」で公開されない。
 米公文書館では国務省などの公文書が公開される。その中に第一次裁判権放棄の秘密覚書があった。1953年10月28日の日米合同委員会裁判権分科委員会刑事部会の日本側部会長の声明として非公開議事録に「日本側にとって著しく重要と考えられる事件以外は第一次裁判権を行使するつもりはない」。
 法務省刑事局の内部資料「合衆国軍隊構成員に対する刑事裁判権関係実務資料」の中に「日本側にとって重大な事件でない限り第一次裁判権を放棄」するという全国の地検への通達などが載っている。国立国会図書館や大学図書館が古書店から買って所蔵。90年から国会図書館で公開されていた。ところが、08年法務省が国会図書館に非公開を要請。一時閲覧禁止になった。


<低い米兵起訴率>


 密約の結果、米兵の起訴率が低い。01年~08年に日本側に第一次裁判権がある公務外の刑法犯の起訴は645人。起訴率16.9%で非常に低い。だが、自民党政府も民主党政府も密約を認めず、米兵と日本人の犯罪との間で区別はしていない。08年の全国の起訴率は18・7%で差がないと。


 統計をよく調べると、不起訴が起訴を大幅に上回る自動車による過失致死傷を除くと、米兵犯罪の起訴人数は218人。不起訴は1042人。起訴率は17.3%。同じく全国の一般刑法犯(大部分は日本人)は83万1069人、不起訴87万8723人。起訴率は48・6%。米兵の起訴率が極めて低いことは明らか。
 米兵らの強盗、強盗致死傷、殺人、放火の起訴率は60~80%台だが、窃盗、強制わいせつ、住居侵入、強姦、暴行、傷害は起訴率7~27%。詐欺、横領、公務執行妨害、恐喝など7つの罪名にいたっては起訴率0%。個別事件ごとの報告書は加害米兵の個人情報保護と全て不開示になった。
 米兵起訴率が低い裏には日本側が重要と考える事件以外は第一次裁判権を行使しないという密約がある。非常に米軍に甘い。これが米兵犯罪の温床になっている。
 法務省刑事局は米軍の軍法会議で処罰した方が重い刑罰が課されるから実効性があると主張している。日本側が不起訴にしてアメリカ側に裁判権が移った場合、実際はどのような処理がされているのか。06~08年自動車による過失致死傷の事件も含めた米軍人らの刑法犯だけでも、不起訴が1058人いる。法務省の回答によると、そのうち、軍法会議にかけられたのはたった10人。しかも法務省は、懲戒処分になった人数の把握もしていない。


 公務中の米兵犯罪(06年から08年)の場合、法務省の回答では誰も裁判を受けていない。1952年以降、公務中の米軍機墜落事故や米軍車両による人身事故などで軍法会議に付されたケースで、日本政府が把握しているのはたった1件。公務中でも公務外でも、米軍内部の処分がいかに甘いか。
  防衛省の資料によると、1952年度から2006年度までの在日米軍による事件・事故の件数・死亡者数は、公務中で4万7650件・517人、公務外で15万7135件・564人にも上る。ただし、復帰前の沖縄での事件・事故は含まれていない。
 これだけの事件事故が起きているのに日本側は実態を把握してないし、処分も甘い。 アメリカ側に有利な取り決めが秘密にされ、議論のための土台となる情報が政府によって隠されている。
 横須賀の山崎正則さんは、2006年1月3日、妻を空母キティホーク乗組員に殺された。道を聞くふりをした米兵に話しかけられて立ち止まったところを非常にむごたらしい形で殺された。私の取材に、山崎さんは米軍は日本を守ってくれていると思っていた。だから、妻も米兵にも親切にしたのに殺されたと、非常にショックを受けている。根底に日米同盟優先がある。だから、事故・犯罪の被害も騒音爆音などの基地被害も「やむをえない犠牲」とされる。


<地位協定の7つの密約>


 日米地位協定関係の密約ではっきりしているのが7つ。
 第1は、前述の第一次裁判権放棄に関する密約。第一次裁判権を事実上放棄する密約。
 第2は、米軍人・軍属被疑者の身柄をできる限り日本側で拘束せず、米軍側に引き渡すという密約。
 第3は、公務中かどうか不明でも米軍人・軍属被疑者の身柄を引き渡す密約。公務中なら米軍側に、公務外であれば日本側に第一次裁判権があるというのが地位協定第一七条(刑事裁判権)の取り決めだが、基地と基地との移動中など公務中かどうかはっきりしない場合には被疑者の身柄を米軍側に引き渡すという密約。第2の密約の実施を実務的に確実なものにするための秘密の「合意事項」。


 秘密合意は国内法に違反している。九項aの秘密合意で公務中か不明の場合も、とりあえず身柄は米軍側に引き渡すということが実際に行われてきた。過去に検察内部でも疑問の声が上がっている。一部の大学図書館で閲覧可能な法務省刑事局の「外国軍隊に対する刑事裁判権関係通達質疑回答資料集部外秘」の中で、東京地検検事が刑事局担当者に刑事特別法11条と合意事項のどちらが優先するのかと質問。合意事項によるべきだと回答されている。密約が法律を超越している。これは問題ではないかと法務省と外務省に質問をすると、合意事項を優先することに何の問題もないと開き直った回答しかしてこない。



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【報告(後半)】吉田敏浩講演会「密約の闇をあばく 米兵犯罪と日米地位協定」

吉田敏浩講演会(続き)


<日米地位協定の三層構造>


 日米地位協定は三層構造。日米安保条約、日米地位協定、日米地位協定についての合意議事録、安保刑事特別法、安保民事特別法、地位協定実施に伴う国有財産管理法、航空特例法をはじめ様々な特例法など、全文が公開されているものが一番上。
 その下に隠されているのが「日米合同委員会刑事裁判管轄権分科委員会において合意された事項」、「裁判権分科委員会民事部会、日米行政協定の規定の実施上問題となる事項に関する件」など、日米合同委員会の合意事項や議事録。それらの全文は公開されず、一部内容が変えられ、要旨だけ公開される。ここで秘密合意事項(密約)が生み出されている。官僚しか知らない。
 日米合同委員会は、日本側の代表は外務省北米局長で、法務省の大臣官房長や防衛省の地方協力局長などが代表代理として参加。米軍側は、在日米軍司令部の副司令官、在日米大使館公使などがメンバー。
 その下に刑事裁判管轄権、民事裁判管轄権など34の分科委員会や部会がある。議事録や合意文書は原則として公表しないという取り決めになっている。行政機関の裁量としてそうしている。分科委員会の合意事項は要旨しか公開されず、全文は秘密。日米合同委員会が秘密を生み出す機関になっている。合意事項の全文は、法務省や警察庁や最高裁などの秘密資料、部外秘資料にだけ掲載されている。政府の秘密資料は一般には公表されず、国会にも提出されない。
 さらに一番下に、「米兵犯罪の裁判権放棄の密約」や「米軍人・軍属被疑者の身柄引き渡しの密約」など、法務省などの秘密資料にも載っていない密約がある。
 例えば、1953年の日米行政協定(現日米地位協定) 第17条の刑事裁判権条項の改定で、公務外の米兵犯罪は日本側に第一次裁判権があると改められた際、改定交渉において日米当局が合意し、日米合同委員会裁判権分科委員会刑事部会の非公開議事録の形式で記され、保管された。これらは秘密指定解除された英文の公文書として米国公文書館で見ることができる。ところが、日本では情報開示請求をしても、外務省・法務省は文書不存在という回答。
 核持ち込み密約でも、昨年の政権交代で外務省が調査をしたら、文書が出てきた。だから、地位協定の密約も政府が本気で調査したら文書は確実にあると思う。
 他の密約は、第4に民事裁判管轄権に関する密約。例えば米軍機墜落事故とか犯罪被害の損害賠償を求めて裁判を起こしたときに、裁判所が米軍に情報提供や証人出頭を求めた場合。機密に属する情報や米国の利益を害する情報などは提供しなくてもよく、証人として出頭させなくてもいいという密約。
 第5は、米軍機が墜落した場合などの事故現場に、米軍は所有者の事前の承諾なくして機体の回収などの作業のために立ち入ることができるという密約。沖縄国際大学米軍ヘリ墜落で 米軍が墜落現場を占拠して大学関係者も立ち入り禁止にして事故機を回収したのもこの密約があるから。
 第6は米軍が軍事機密性が高いなどと判断すれば、その施設・区域(基地)の存在を公表しなくてもいいという密約。
 第7は米軍人・軍属の公務執行中の範囲を拡大解釈する密約。


<自衛隊が地位協定で加害者に>


 近年、問題は日米間にとどまらなくなってきた。自衛隊の海外派兵が進み、自衛隊がクウェート、ジブチと日本側に非常に有利な地位協定を結んでいる。自衛隊が事件・事故で海外の人に被害を与える立場になっている。
 米軍は現在、40ヵ国以上に基地をおいている。アメリカは世界中いつでもどこでも出撃できる軍事即応体制をとっている。基地使用・部隊行動に関してフリーハンドを保ちたい、駐留先国の法律に厳しく制約縛られたくないと有利な地位協定を求める。
 米兵は酒や麻薬に走って犯罪に及ぶケースが多いのは、グローバルな戦争体制を取り続けるアメリカ軍の構造的問題。米軍上層部が綱紀粛正を何度誓っても繰り返される。米兵が駐留先国でなるべく裁かれない方が有利だというのには、そういった背景がある。
 日本はこれまで米軍の駐留受入国の立場から地位協定を見てきた。ところが、自衛隊の長期にわたる海外派遣に伴い、日本国と派遣先国が自衛隊と自衛隊員の法的地位を定める地位協定を結ぶ時代が到来した。
 イラク派兵時のクウェート、海賊対処派兵時のジブチと地位協定を結んでいる。刑事裁判については、派遣先国の裁判は免除され、日本側が専属的に行使する規定だ。仮に自衛隊員が犯罪を犯しても公務中か公務外かを問わず、派遣先国の裁判にかけられることはない。
 民事裁判は公務中の場合は免除。公務外の場合は被害者側からの損害賠償を求める訴訟の対象になりうる。非常に日本側に有利。
 外務省地位協定室長は、「米兵犯罪の防止には、地位協定の改定よりも運用改善が実効的だ。もし地位協定17条を変えたら、海外展開する自衛隊の法的地位に影響を与えることを考慮している」と言っている。日本政府が米国に地位協定改定を求めない背景には、海外で自衛隊に米軍と同様の特権を持たせたい。
 近年、自衛隊は日米軍事一体化のもと、イラクで武装した米兵を乗せるなど兵站支援をし、海外展開能力を高めている。イラク、アフガン帰りの米軍と共同演習を重ねている。米軍と一緒に戦争できる能力を蓄えつつある。
 そういう海外派兵に向かう流れの中で、海外で基地を設ける時に、自衛隊は自分たちに有利な協定を認める。これは派兵とワンセット。実際に自衛隊はジブチで自衛隊基地を建設している。
 国民・市民の目が入らないところに秘密の構造があり、軍事優先の秘密の構造が膨らんでいくことに、厳しい目を向け、事実を明らかにしていかないといけない。



講演を受けて、質疑応答が行われ、NATOや湾岸諸国と米国の地位協定と、日米地位協定との違いなどについてなどさまざまな質問が出た。
吉田さんは、NATO諸国で日本のように駐留受け入れ国に不利な協定を結んでいる国もあるが、内容は公表している。湾岸諸国は地位協定の内容自体公表していない。
地位協定を公表はしているが、実際は密約を隠しているのは日本だけではないかと。


また、家族が自衛隊内部のいじめの犠牲者となり、自衛隊相手に裁判をやっている原告の人もアピールした。