相次ぐ地方議員の離党と、れいわ新選組が直面する組織課題について考える
特定社会保険労務士・作家 北出 茂
近年の日本政治において、既成政党への不信感や生活苦の深刻化を背景として、多くの国民の期待を集めてきた政党の一つがれいわ新選組である。
消費税減税、積極財政、社会保障の充実、非正規雇用問題への取り組みなど、これまで十分に政治の中心で語られてこなかった課題を正面から訴えてきた点については、一定の社会的意義があったことは否定できない。
しかしながら、どれほど理念が優れていたとしても、組織運営に課題が生じれば支持者の信頼は揺らぐ。
今回、東大阪市議会議員の伊藤勇樹氏(2023年9月の選挙で初当選、2026年5月31日離党)をはじめ、複数の地方議員や関係者が相次いで離党したことは、単なる個人の問題として片付けるべきではない。むしろ、組織として何が起きているのかを冷静かつ客観的に検証する必要がある。
離党が続くという事実の重み
政治の世界でも企業経営の世界でも、一定数の離脱者が発生すること自体は珍しいことではない。
考え方の違いもあれば、組織運営への不満もある。
しかし、短期間のうちに複数の地方議員や候補者が連続して離党する場合、それは個人の資質の問題ではなく、組織構造そのものに何らかの課題が存在する可能性を示唆している。
実際に名前が挙がっている議員や元候補者を見ると、政治経験の浅い人ばかりではない。
地域で一定の支持を得て当選した人物や、党の理念に共感して活動してきた人物も含まれている。
そのような人々が組織を去るという現象は、支持者にとっても大きな不安材料となる。
臨時総会要求問題から見えるもの
今回、地方議員らが臨時総会の開催を連続して求めてきた背景には、単なる人間関係の対立ではなく、組織運営の在り方に関する問題意識があるとされる。
総選挙で大幅な得票減少が発生したにもかかわらず、
・敗因分析が十分になされていないのではないか
・執行部の責任が曖昧ではないか
・党内議論の機会が不足しているのではないか
・地方議員の意見が反映されにくいのではないか
といった疑問が提起されている。
これらの問題提起がすべて正しいかどうかは別として、組織の構成員が真剣に危機感を抱いていることは事実であろう。
民主主義を掲げる政党である以上、異論や少数意見をどのように扱うのかは極めて重要な課題である。
政党も企業も「現場の声」を軽視してはならない
私は社会保険労務士として、多くの企業の労務相談に関わってきた。
そこで痛感するのは、現場の声を軽視した組織は、企業であれ政党であれ長続きしないということである。
もちろん、経営者や執行部にも事情がある。
組織全体を見渡しながら意思決定しなければならず、すべての要望を受け入れることは不可能である。
しかし同時に、現場で活動する社員や地方議員の声を無視し続ければ、不満は蓄積し、やがて離職や離党という形で表面化する。
これは企業でも政党でも共通する組織原理である。
NPO法人やサークルの運営においても同じである。
執行部と構成員との対話が失われたとき、組織は弱体化する。
選挙結果は有権者からのメッセージである
今回の総選挙や、その後の地方選挙で厳しい結果が続いていることについても真摯に受け止める必要がある。
候補者個人の努力不足と断定するのは公平ではない。
地域で地道な活動を続けながら落選する候補者もいる。
一方で、有権者が何らかの理由で政党そのものに距離を置き始めている可能性も考えなければならない。
選挙結果は有権者からの評価そのものである。
その評価が厳しいものであったならば、原因分析を行い、改善策を講じることは政治組織として当然の責務である。
誹謗中傷ではなく議論を
近年の政治空間では、支持者と反対派の対立が激化している。
SNSでは人格攻撃や誹謗中傷が日常的に飛び交い、冷静な議論が成立しにくくなっている。
しかし、本来民主主義とは異なる意見を認め合いながら議論する制度である。
離党した議員を裏切り者と決めつけることも問題であるし、逆に残留した議員を盲目的な信者と決めつけることも問題である。
重要なのは事実に基づいて議論することである。
感情論だけでは組織改革も政治改革も実現できない。
おわりに
私は、政治の世界において最も大切なのは「誰のための政治か」という原点だと考えている。
物価高に苦しむ労働者。
低年金に不安を抱える高齢者。
将来に希望を持てない若者。
人手不足と経営難の狭間で苦しむ中小企業経営者。
こうした人々の生活を少しでも良くするために政治は存在する。
だからこそ、政党内部の対立や権力闘争に終始するのではなく、国民生活をどう改善するのかという本来の使命に立ち返る必要がある。
今回の離党問題は、一政党の内部問題にとどまらない。民主主義組織の在り方、組織運営の透明性、そして国民との信頼関係を改めて問い直す機会でもある。
れいわ新選組に限らず、すべての政党がこの教訓を真摯に受け止めることを期待したい。
参考情報
・東大阪市議会議員 伊藤勇樹氏の離党表明に関する公開情報
・れいわ新選組地方議員らによる臨時総会開催要求に関する公開資料
・総選挙後の地方議員・候補予定者の離党に関する報道およびSNS発信
・地方選挙結果および各自治体選挙管理委員会公表資料
・社会保険労務士実務における組織運営・労使関係に関する知見