先日、能登半島にドライブに出かけました。地震と豪雨に見舞われた地域を実際に目で見て学ぶべきことを考えてみようと思いました。また、地元経済に少しでもお役に立てればとの思いからのドライブでした。
近付くにつれて、主要県道でさえ、幾度となく片側通行になる区域があり、地震から2年弱、豪雨から1年強が過ぎたとは思えない状況がありました。
輪島では、至るところの舗道が、車道と接するところで盛り上がっていて、地震の威力を感じました。
そんな中、
What attracted my attention the most is the small number of people.
とにかく、人を見かけないのです。外に出ている人と言えば、修復の作業員の人だったり、銀行や郵便局に出入りする人くらいだったりで、普通の生活をしている人の姿がほとんど存在しませんでした。
こんにちは、語源大好き・きんぞうです。
能登に人が戻る日を応援しながら、今日の俳句へと進みます。
お店へと 人を引き付け attraction
「注意を引く」の英語版である“attract attention”にも登場する attract。名詞のattraction はカタカナ語として、十分に市民権を得ています。
「USJには、どんなアトラクションがあった?」のような感じでしょうか。
では、次の文を英語にしてみてみましょう。
「どんなアトラクションにあなたは引き付けられたの?」
Which attractions were you attracted to?
Which attractions attracted you the most?
答えとしては、
I was attracted to The Flying Dinosaur. のようなものが聞けるのではないでしょうか。
なぜ、I was attracted by The Flying Dinosaur. ではないのでしょうか。実は、語源を丁寧に見ていくと、be attracted to … になる理由もなんとなく見えてきます。
attract = ad- + tract
語幹 tract は、tract, tra-, trac-, trea- などの形になり、「引く」を意味し、多くの語を生み出している影響力の大きな語幹です。
「引く」のイメージは、「線を引く」です。また、「線を引いて残ったもの」に焦点があてられるものもあります。
日本語を20個出しますので、語幹 tract = 引く・引っ張る を感じながら英語にしてみてください。
1. 引き付ける
2. 契約する
3. 下請け契約をする
4. 抽出する
5. 撤回する
6. 引き算をする
7. 逸らす
8. 散らす
9. 抽象的な
10. 収縮する・しかめる
11. 小道・走路・陸上競技
12. 索引者(車)・トラクター
13. もてなす・手当する
14. 条約・約束
15. 懇願する
16. 特徴・人相
17. あとを辿る
18. 土地・時間・管
19. 線を引く
20. 物を引っ張る
英語にしていきます。
1. attract 引き付ける
2. contract 契約する
3. subcontract 下請け契約をする
4. extract 抽出する
5. retract 撤回する
6. subtract 引き算をする
7. detract 逸らす
8. distract 散らす
9. abstract 抽象的な
10. contract 収縮する・しかめる
11. track 小道・走路・陸上競技
12. tractor 索引者(車)・トラクター
13. treat もてなす・手当する
14. treaty 条約・約束
15. entreat 懇願する
16. trait 特徴・人相
17. trace あとを辿る
18. tract 土地・時間・管
19. draw 線を引く
20. drag 物を引っ張る
〔ミニミニ解説〕
なんと言っても「トラック競技」
語幹 tract の最後の -t を省いて tract を発音すると、track が登場してきます。出どころは同じ 語幹 tract で「引く」です。
陸上競技には、トラック競技とフィールド競技があります。スタジアムをイメージすると、外側をぐるっと取り巻くように線を「引いた」場所でするのがトラック競技。その中の広場でするのがフィールド競技です。
トラック競技の語源は、「走る人が残す線」でしょうが、競技場に引かれた白線をイメージしても問題ないでしょう。
契約 と 収縮する
contract の代表的な意味は、やはり「契約」です。
con- = 共に、tract = 引っ張る で、「両方から(自分の有利は方へ)引っ張り合う」イメージでしょう。
そうなると、
Muscles contract when you move your body.
のように使われると、「体を動かすと筋肉が契約する」と混乱してしまうでしょう。
アクセントが後ろになりますが、語源の材料は同じです。
ただ、接頭辞の con- は「一緒に」というよりも「思い切り」という感じの強調と考えるとイメージが出てくるでしょう。
「思い切り引っ張る」⇒「縮む・眉をしかめる」
detractor と distracter
どちらをよく見かけているかというと、圧倒的にdistracter でしょう。
dis- は、dislike に登場する接頭辞で、反対の意味を表すこともありますが、元となるイメージは「離れる」です。
distracter = 離れたところに引き付けるもの
選択肢問題の正答以外の選択肢を意味する語です。嫌ですね。
一方、detractor は、これも「離れる」を意味する接頭辞 de- と tract がセットになって、「本来あるべき状態から離す」になり、それをする detractor は「誹謗中傷する人」となります。
dragに tract 、音も綴りも似ていないのでは?
如何でしょうか、気付かれたでしょうか。drag と tract の関係は見えましたでしょうか。
ヒントは、「有声音と無声音」です。
「有声音と無声音」の知識は、すでに使える知識になっておられるでしょうか。危ないと思われる方は、
大統領 前に座って President / sed, sid = to sit
をご参照ください。
tract と drag に当てはめると
*無声音[t]の有声音が[d]
*無声音[k]の有声音が[g]
ときれいにふたつが同一物であることが分かります。
如何でしたでしょうか。今回もまた、とてもとても長いブログになりました。最後まで、お付き合い頂き有難うございました。
最後に、語幹 tract = to draw, pull = 引く・引っ張る
は強力な語幹です。是非是非、
お店へと 人を引き付け attraction
で、記憶に留めてください。では、また、お会いしましょう。
〔編集後記〕
なぜ、I was attracted by The Flying Dinosaur. ではなく、I was attracted to The Flying Dinosaur. になるのかについての語源的解説を。
attract を分析すると
attract = at- + tract = ad- + tract
となります。
接頭辞 ad- が、語幹の先頭の音[t]につられて、at- と変化をしています。同化と呼ばれる、極自然な変化です。
接頭辞 ad- はとてもシンプルな接頭辞で、「方向」を示すのみです。He goes to school. の to のイメージ。
「彼は学校へ行く」
「人をお店へ引き付ける」
この「へ」が 前置詞 to へと繋がっています。
単純に 「attract A to B = AをBに引き付ける」と覚えるもよし、「attract の at- は ad- だから attract A to B」と覚えるのもよし。個性に合わせてご活用ください。
同化については、
離すよう 運んでいるのが different / fer, late = to carry |
をご参照ください。
11月23日掲載「骨折って 仕事するとこ laboratory」の答え
heal 「ヒール・いやす」⇒〔 health 〕
youth「ユース・若さ」⇒〔 young 〕
bathe「ベイズ・浸す」⇒〔 bath 〕
weary「ウィアリー・疲れた」
⇒〔 wear 「着る」の他に「すり減る」という身もあり 〕