こんにちは、語源大好き・きんぞうです。先日、英語のニュースの中で、「リージョンズ  フォーナ  アンド  フローラ」という言葉が使われていました。また、新聞の記事には、「マンスプレイニング」が登場していました。(詳しくは編集後記をご参照ください) 英語の足腰である語彙力強化の必要性と、アップデートの必要性を感じました。

 

さて、今回のテーマは、「日本では、語源を高校生1年で学習する」の具体像提示です。実現目標を2030年。一年掛けるのではなく、50分授業・10回をイメージしています。

 

具体的なカリキュラムに入る前に、なぜ高校1年の時期を考えるのかについて、お話をさせて頂きます。それは、

 

語源は、語彙力に比例して楽しさが広がる

 

からです。

英語の語彙がまだ少ない中学の時期に、語源をしても、効果はあまり期待できません。それどころか、英語が嫌いになってしまうかも知れません。

語源の一番の楽しみは「単語が手をつなぎ始める」ことにあると考えます。この楽しさを感じるためには、「基となる語彙」が必要です。その最小単位を、中学必修語をマスターした状態としています。2年に上がる時でも問題はないですが、3年進級時は、避けるべきです。理由は、語源の知識が入り始めると、少しの間、単語が気になる時期が生じます。語彙力だけをみればプラスになりますが、英語の勉強全体を考えると避ける方が望ましいでしょう。

 

「私の高校生活は、もう過去のこと…」

という方もご安心ください。語源をやり始める「一番早い時期」という意味で高校1年を挙げています。年齢には関係ありません。それどころか、生活実感を伴う「基となる語彙」が増えていて、語源を納得するチャンスも増える傾向があると思います。

 

単純暗記が難しくなってきたなぁ…

 

と思われる方は、ぜひ、語源に取り組んでみてください。今回、カリキュラムとして提示するのは「語源の全体像」を概観して頂き、知識の整理をして頂くためです。既習・未習の確認用の一覧表という感じでご覧になってください。

 

語源は、目的ではなく道具

 

掛け算の九九は、小学校の低学年で習い、一生ものになります。

それと同じように、英語の語源を高校1年で習い、その後の人生で無意識に使っている、そんな状態になることを、と本気で願っています。

 

体言止めではなく、語り調で書かせて頂きます。ご了承ください。また、HWの欄に「(索引から)単語を拾い出してみよう」というような表現があります。単語集などの後ろについている索引をイメージしていますが、特定の単語集を意味するものではありません。また、単語集である必要はありません。アルファベット順に単語が一覧できるものがありましたら結構です。では、カリキュラムに進めます。日本語だらけのブログになります。単調で退屈かも知れません。無理はなさらないでください。

 

〔語源指導カリキュラム・きんぞう試案 ver.1〕

 

1時間目 単語はアルファベットの羅列ではない

 ☆ blackboard は、black と board だ

 ☆ 「まるごと果実」型と「わけあり果実」型

 ☆ ポータブルな輸出入!

  Trivia:come, cut, swim に -ing を付けよう

   HW:単語集の索引にある「果実」を見つけよう

 

2時間目 変化の根っこを抑えよう

 ☆ コンテナのメンテナンス(母音の変化)

 ☆ 客出乗務員の機内放送(有声音・無声音)

 ☆ パーツの名前を覚えよう
     =接頭辞・語幹・接尾辞(・連結形)

  Trivia:語源が有効な語とそうでない語

   HW:card の語源を調べてみよう

 

3時間目 同じ綴りが続く英単語が多いのはなぜ

 ☆ なぜひとつではダメ、different の -f-

 ☆ 「同化」の気持ちを味わおう

 ☆ 天満橋と天満宮

  Trivia:語源がうまくいく人とそうでない人

   HW:同じ綴りが続く語を拾い出してみよう

 

4時間目 意外と知っているぞ、接頭辞

 ☆ なんとなく知っている接頭辞 re-

 ☆ お馴染みの接頭辞に意味を与えよう

 ☆ 反意語を作る接頭辞
     =「あんみすいんでぃすのん」

  Trivia:足し算型と物語型

   HW:索引から接頭辞を拾い出そう 

 

5時間目 世界が広がる接頭辞

 ☆ 数を表す接頭辞

 ☆ 必ず得する接頭辞 ad-, de-

 ☆ 格好良い接頭辞

  Trivia:全部一緒? unhappy, undo, unanimous

   HW:索引から接頭辞 ad- を拾い出そう 

 

6時間目 美を美しく美化する接尾辞

 ☆ 実力4倍増、品詞変化

 ☆ 接尾辞とアクセント

 ☆ 格好良い接尾辞

  Trivia:語源の調べ方・電子辞書の使い方

   HW:品詞変化を実践しよう

 

7時間目 活用度最高位の語幹たち

 ☆ お得感一杯、関連語をたくさん持つ語幹

 ☆ リズムで行こう、語源三兄弟!

 ☆ 語源・百マス計算

  Trivia:語源にもある「他人の空似」

   HW:語幹 tain の動詞を語ってみよう 

 

8時間目 言いたいのは、滑り台 or 非核化

 ☆ 単語は長くなるほどヒントが増える

 ☆ 基礎単語の隣に居る大人の単語

 ☆ パーツの組み合わせで大人の単語へ

  Trivia:意外とお馴染み「頭音消失」

   HW:手元の英文を語源の視点で見てみよう

 

9時間目:語源を否定する意見を考える

 ☆ 単語は瞬間的に出てこないとダメでは?

 ☆ そんな要らん単語ばっかりやっていないで…!

 ☆ 単語はやっぱり文で覚えないと…!

 ☆ 先生は、単語のマニアですね~!

 ☆ 語源を意識すると余計に覚えにくくなる!

 ☆ やこしそう、変化形まで覚えるのは!

 ☆ 同じ形で、違う意味のものがあって混乱する!

 ☆ パーツを足しても意味にならない!

  Trivia:語源がゆっくりとしか広まらない理由

   HW:語源適齢期を考えてみよう

 

10時間目:語源は目的ではなく方法

 ☆ 得なところだけ使えばいい!

 ☆ 時代とともに新しい言葉が増えていく

 ☆ 語源が当たり前の時代を作ろう

  Trivia:「語源は言葉の考古学」

   HW:単純作業でない知的好奇心へ

 

〔編集後記〕

1.「リージョンズ  フォーナ  アンド  フローラ」

英語にすると、region's fauna and flora ですが、region's flora and fauna の方が一般的です。外来種のザリガニが地域の生態系に悪影響を及ぼしているというニュースの中にでてきました。「地域の動植物」という意味で自然に登場してきました。

flora と fauna の順番が気になる方は、Google Ngram Viewer というサイトを利用してみてください。ビッグデータの威力を感じざるを得ないサイトです。

 

2.「マンスプレイニング」 

新聞の特集記事で目にした言葉です。

男性が女性を見下したような態度で説明をしようとする行為。レベッカ・ソルニットという作家の造語。2010年のニューヨーク・タイムズ紙の「ワード・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。explaining の頭の音を削り、その前に man を付けて作られた語。 ○○スプレイニングには他に、エイブルスプレイニングやヘテロスプレイニングもある、と記されていました。

「頭の音を削る」は、今回のカリキュラムの中で「頭音消失」として取り上げています。興味のある方は、sport の語源を調べてみられては如何でしょうか。

 

3.編集後記の「編集後記」

書き終わってみると、今回も長くなりました。ここまでお付き合いくださった方がおられましたら、心より感謝致します。従来から「自分は何を伝えたいのか、また、どれくらいのボリュームがあるのだろうか」をはっきり形にしたいという思いはありましたが、実行には移していませんでした。今回このように全体像としてまとめる機会を提供してくださったことに感謝しています。

 

どのような表現で、どこまで説明を加えるか、について迷いました。一見するとふざけたように見えるものもあるかと思いますが、受講生となる方々にとって、興味を持てるもにする、楽しい講座にする、を第一に考えて検討を進めました。どのような順番で話を進めるかに特に力を注ぎました。また、具体例だけでも書き添えようか、とも考えたのですが、更に長いブログになることを避けるため、断念しました。今後のブログでご説明をしていきます。ご期待ください。また、もし気になるタイトルがありましたら、ご連絡ください。早い目に取り上げさせて頂きます。

 

カリキュラム作成開始時は、どちらかと言うと、自分のための整理だったのですが、途中からは、賛同してくださった方が、50分×10回で指導しようとしてくださった場合に、そのまま使って頂けるようなものにしたい、という思いに変わりました。自分の語彙力強化のために始めた語源。あれから、早20年が経ちました。学問として学んだ訳ではありませんが、それなりの数の本を読み、何よりも、色々な年齢層の方々に、色々な形でご指導をさせて頂いてきました。実用という側面から、内容には自信を持っています。カリキュラムのひとつひとつに、受講してくださった方々の反応が含まれています。語源指導の経験値という点においては、誇れるものがあると自負しております。ご活用頂ける部分がありましたら幸いです。