こんにちは、語源大好き・きんぞうです。前々回の全俳句ご紹介、前回のカリキュラムご案内、如何でしたでしょうか。なにか大きな仕事をやり遂げたような爽快さがあるのは、私だけでしょうか。両方とも、どんどん成長させていこうと思っています。あくまでも、今の私の状態であることをご了承ください。

(本日の編集後記に、5月25日以降にできた俳句をご紹介します。お楽しみ頂けると幸いです。)

 

では、今回の内容へ。

テーマは、週に1回、私がやっている英語の真剣勝負です。

「今、動いている英語」に触れるため、一年ほど前からAsahi Weekly を定期購読しています。ネットを使えば簡単なことなのですが、古い人間なのでしょうか、紙媒体が落ち着きます。

Asahi Weekly は、15年ほど前に、英検1級に取り組んだ時にも、購読をしました。その当時は、全ページ読破を課して、料理・星占い・コマーシャルまで読んでいました。

そんな経験もあり、今回も、Asahi Weeklyにしたのですが、毎週、手付かずのまま溜まっていくばかりでした。あまりにももったいないので、一瞬で決まる真剣勝負をすることにしました。

 

Asahi Weekly との真剣勝負

勝負の内容は、1ページ目にあるほんの短い記事を読み切れるかどうかです。今週日曜に届いた6月23日版は、56語で出来ています。いつもこれくらいの長さです。

単語についてのブログを書いている人間です。連勝・連勝であるべきですが、勝率は……。

いつも、なにかで引っかかります。

 

今週やっつけられた単語 “septet”

韓国の人気グループBTSの兵役に関連する記事です。BTSのファンの方でしたら、“septet”の意味が見えてこられたのではないでしょうか。記事では次のように出ていました。

“Rapper RM, right, and other members of the septet, …”

 

カルテットは何重奏?

突然ですが、カルテット(quartet)は何人で演奏しますか、また、クインテット(quintet)は?

「私は音楽に興味がないから知らなくてもいい」などと突き放さず、お付き合いください。

 

バイリンガルは得意、でも…

母国語以外の言語を使いこなす人を、バイリンガル(bilingual)と言いますが、では、母国語を含め4か国語を話す人はなんというのでしょうか。

「マルチリンガル(multilingual)でしょう」では「4」の感激が出てこないですね。がんばりましょう。

 

答えは、ラテン語とギリシャ語の数の数え方にあります。

 

ラテン語・ギリシャ語の1~10

結構、耳にしているものが多いです。今回を機会に、覚えてみられては如何でしょうか。絶対にお得です。

前がラテン語、後ろがギリシャ語です。

 

   1  uni-           mono-

   2  bi-             di-

   3  tri-            tri-

   4  quadri-       tetra-

   5  quinque-    penta-

   6  sexi-          hexa-

   7  sept-         hepta-

   8  octi-          octa-

   9  novem-      ennea-

  10     deci-        deca-

* * * * * * * * * * * * * *

  100  centi-       hecto-

1000  milli-         kilo-

 

*高校の化学で、「モノ・ジー・トリ・テトラ・ペンタ・ヘキサ・ヘプタ・オクタ・ノナ・デカ」とか、「キロキロと、ヘクトデカけたメートルが、デシに追われて、センチ、ミリミリ」などと覚えた記憶のある方もおられると思います。初めての方は、ネットで検索してみてください。喋りたくてたまらない人(私もそうです!)がたくさん情報をくださっています。

 

*化学では、「モノ・ジ・・・・」で、「9」に当たる部分を「ノナ(=nona-)」と覚えるのですが、これはギリシャ語の本来の9である ennea-(エニア) の音が、他の数字と混乱される危険性があったため、ennea- を使わず、ラテン語の「9番目」を意味する nona- を代用したために起こったと言われています。歴史が古いため、nona- が市民権を得ているという感じです。

 

*ラテン語の方をカタカナにすると、「ユニ・バイ・トリ・クワドリ・クインク・セクシ・セプティ・オクティ・ノベン・デシ」となります。

 

*どちらがラテン語かギリシャ語かを言えるようにされたい方は、ギリシャ語の「モノ・ジー・トリ…」を少し変化させて、「モノ・ギ(リシァ)・トリ…」としてみられるのは如何でしょうか。

 

では、答え合わせへ

では、答え合わせに進みましょう。まずは、バイリンガルの親戚「4か国語を話す人」へ。バイリンガルが、bilingual で、「bi- = ラテン語の2」なので、この bi- を「4 = quadri-」にしてみましょう。そうすると、quadrilingual が完成です。

 

次に、カルテット(quartet)、クインテット(quintet)に進みましょう。音楽の世界ですので、イタリア語の影響を受けていますが、ラテン語の4,5 quadri-, quinque の変化形に、「小さいもの・集団」を意味する接尾辞 -et が付いています。結果、四重奏、五重奏になります。

 

そうすると、Asahi Weeklyに登場した“other members of the septet”のseptet も、ラテン語の sept に -et で 「7人組」となります。

 

septet を見抜けなかった理由

一番は、私がBTSについて、今まで情報を収集していなかったことでしょう。BTSファンの方には簡単な問題だったろうなと思います。普段から、色々なことに興味・関心を持つ必要性を再認識しました。

 

次は、septet を、sept-etではなく、sep-tet と思い込んでしまったことです。

これまでに、二度取り上げてきました selfish を

sel-fish = selfish

self-ish = selfish

どちらの見方ができれば、「利己的な・我儘な」に辿り着くのか、と同じことをやってしまいました。初めの思い込み(=sep-tet)に負けず、sept-et と少し視点を変えていれば辿り着けたと、負けた犬が吠えています。

 

最後に、偶然ですが、今までの自分の英語との付き合いの中で、septet に巡り合っていなかったため、頭の中で発音をしてみても、合致する音が無かったことが挙げられます。読む・聴く・話す・書く、を通して、ひとつでも多くの語とお近づきになっておくことの大切さを再認識しました。

 

「6人組・8人組」などが、今後のAsahi Weekly の1ページに登場することを期待しながら、今回のブログを終了します。ご精読、有難うございました。

 

〔編集後記〕

1.数字が関係する語はとにかく豊富

今回は、数字の語源をご紹介させて頂きました。ラテン語の「1」だけでも、ユニフォーム、ユニーク、ユニバーサルスタジオジャパン、ユニット、USAなどなど、普段私たちが使っている言葉の中にたくさんの“uni-”が登場してきます。ニュースでは、unanimous vote(→ unanimously)、unilaterallyが頻出です。

数字に関連する単語は実にたくさんありますし、ひとつ覚えると、「一方的な」から「二か国間条約」へ、というように、数字部分を替えるだけで語彙を拡張してきますし、初めて聴く単語・目にする単語でもかなり正確な類推が可能になります。是非、チャレンジしてみてください。

 

2.unanimous と unhappy

友人の言葉です。「unanimous が“アン・アニマス”ではないと分かった時に感激した。」 「満場一致の」を意味する unanimous の先頭は、un-であって、un-でない、綴りは un- だけれど、内容は uni-。たまたま後ろに母音で始まる語幹 anim(= 息)が来たために、uni- の最後の母音 i が、語幹先頭の a に席を譲って消えていった。その代わりに、先頭のun-は、unhappyなどで登場する否定のun-ではないことを示すために発音だけ“ユ”と残した、という流れになります。結果として、「息がひとつ」→「みんなで“はい”」→「満場一致の」となっています。友人の言葉をもとに、俳句を作りました。

 

アンでなく ユゥなら1だ ユナニマス

 

3.新作俳句発表会

〔181-190〕

限度超え 食べてしまうと オーバーイート

過保護だよ 前覆い過ぎ オーバープロテクト

空っぽに 仕事も頭も バケーション

下に立て 理解したいなら アンダースタンド

向かい合い 投げかけるのが オブジェクト

武器離れ 武装解除だ ディスアーマメント

もう一度 求めることが リピート

先を見て 供給する プロバイド

人々が 政治をすれば デモクラシー

パンチだ 時間守れよ パンクチュアル


〔191-194〕

善し悪しが 跳ね返ってくる リザルト

音ひとつ 単調だよね モノトーン

アンでなく ユゥなら1だ ユナニマス

仲間内 喋る言葉が ダイアレクト

 

4.「ポジティブ・ぼやきコーナー」を新設予定

前回6月14日のテーマとして取り組みました語源講座のカリキュラム化の中で、語源に対する世間の誤解や偏見の是正・改善に取り組むことを思いつきました。あくまでも明るく・肯定的にぼやいてみます。近々、登場させます、ご期待ください。