そうそうたるメンバーが、「甘い罠」をお題に短編小説を書いています。
書く方も腕が鳴るでしょうし、読むほうもワクワクします。
江國香織『蛾』
夫の浮気で夫が出て行き、夫の弁護士が時折主人公の元に来ている状態。
カタツムリの沢山いる家の壁、昔であった不審者とのやりとり、こんなところでこんな?という義妹の言動。
現実にはあり得ないような、違和感のある現実。
何もかもがうまくいかない日は、こう。
小川洋子『巨人の接待』
少数民族の言語を話す作家の巨人。
巨人の通訳として、接待する主人公。
私は小川洋子さんは『ことり』しか読んだことがなかったのですが、
小川洋子さん独特の、優しい淡い味わいの巨人と主人公の交流が、癒しです。
川上弘美『天にまします吾らが父ヨ、世界人類ガ、幸福デ、ありますヨウニ』
大学生の時に主人公は、同級生の男性と少し付き合って、性の関係がなく、別れた。
そんな彼と、年月を経て再会し、2人きりで飲みに行く。
ありとあらゆる可能性が、主人公の頭の中でひらめく。
果たして、その結果は・・・?
ユーモラスな感じの作品です。
桐野夏生『告白』
日本で罪を犯して、できるだけ日本人のいない遠い国に逃げた主人公。
しかし、同じ日本人だと言って、話したがって食いついてきたおじいさんがおり、
イヤイヤながらも、つきあってあげる。
主人公は、無事逃れられるのか?
小池真理子『捨てる』
地方の建築会社の社長と結婚し、浮気を沢山されるなど、うまくいかない結婚生活を送った主人公。
ひとり、東京に出奔しよう、と決意。
ゴミ捨て屋・兼個人で引っ越し屋をしている若く快活なイケメンに、自分の人生をふと重ね合わせる。
******引用******
こういう人生もある、と女は思った。外のものに目を向けない人生。目の前にある風景をそっくりそのまま、受け入れる人生。疑わない、欲しがらない、虚しくならない人生・・・・・。
毎日午後2時過ぎに帰ってきて、ビールを飲んだり、焼酎を飲んだりしながら子供たちの相手をして、・・・(中略)・・・子供たちが脱ぎちらかした衣類を畳んだりしている自分。
私も「自分がもしこういう人生だったら」、という映像を横目でシッカリ見てしまい、思わず狼狽しました。私はこの作品が一番好きです。
高樹のぶ子『夕陽と珊瑚』
老人用グループホームのヘルパーの主人公は、ある利用者の女性が有名書道家である元恋人を今でも想っていると聞いて、再会の手助けをして、毎回車いすを押して書道家の家に連れて行ってあげる。ところが、主人公こそが書道家と良い仲になってしまう。その愛憎の行方とは?ラストのどんでん返しが気持ちいいです。
高村薫『カワイイ、アナタ』
主人公の刑事が、刑事の先輩から、過去に60代と思われる男性の長話に付き合った、という話を聞いたことを思い出す。60代の男性が道行くピンクのスカートの若い女性にひきこまれ、それからは町で思わず探してしまう、という内容。60代男性ともなると、若い女性の若さの輝きが魅力的だという感じのお話。私は女性なので、そういうものかな?、という感じ。
林真理子『リハーサル』
年齢を重ねた既婚女性の、不倫における気持ちを描いているお話。主人公の既婚女性が不倫をしています。老いとともに体の変化も感じ、不倫関係を清算しようか、などとも悩み・・。題名の『リハーサル』という意味は、読み終わったらわかるような仕組みで、うならせられます。題名が良いです。
江國香織『蛾』と、小池真理子『捨てる』が私は好きです。
どの作品もそんな雰囲気がありますが、『蛾』は特に、現実にありそうな風景が、数センチ空中に浮遊して、ゆがみ、現実感をなくす感じがします。
あなたも、『甘い罠』を堪能してみては?
オススメの短編集です。