40才すぎ、独身、友達なし、彼女なし、非正規社員、地味で軽んじられることもある、主人公の「フジイ」。
そんな中でも、自分は等身大の自分のままで、淡々とマイペースに何気ない日々に楽しみを見出して、自己完結して生きている「フジイ」。そんな姿に、現代社会に疲れた我々は、忘れかけていたものを思い出してハッとする・・・そのようなお話です。
「友達・恋人・配偶者がいなければいけない」「友達が多い人のほうが価値がある」「〇〇でなければ、バカにされるのではないか?と虚勢を張る」「正社員で収入が多い人が偉い」・・・・などなど、そんな雑音に振り回されていては、疲れ果てますね。自分も、フジイのように、自分を卑下するでもなく虚勢を張るでもない、借り物の「自分らしさ」にも惑わされない、平静な心で穏やかに生きていきたいようにも思い、「新しい生き方」、「新しい主人公像」を提案された気分です。
特に、「氷河期世代で不遇を味わってきた方」や、「普通にしていて周囲から浮いてしまう方」、には、刺さるものがあるのではないでしょうか。
少し思ったのは、「美人で風俗で働いた経験のある同僚の気持ち」を丁寧に作者は描いているため、私には「男性にはそのような背景の美人の繊細な心情を想像しがたい」と想像に難くなく、私は「作者は女性ではないか?」と感じました。「良い作品を生み出してくだされば、女性でも、男性でも、どちらでもかまわない」という思いです。