私は村上春樹ファンなので、新作が発売されるたびに、いそいそと購入しているのです。
しかし、村上春樹氏も生身の人間なので、どうしても次の新作まで、数年かかります。
そこで、翻訳本にはあまり目を向けてこなかったことを思い出し、新作と新作の待機時間に、過去の村上春樹翻訳本に手を付けて(読んで)いこうかと、思いつきました。
『水底の女』は、アメリカの推理小説です。
序盤で、「妻を探してほしい」と探偵に依頼があり、出向いた別荘(?)で湖に沈む女性の死体が見つかりました。顔は既に判別不能になっています。
彼女は一体何者で、どういう経緯でそうなるにいたったのか?
主人公のマーロウ探偵が、ハードボイルド風に七転八倒しながら事件の真相に肉薄していきます。
『名探偵コナン』などのアニメと違って、依頼主と代金の交渉をしたり、警察と敵対したり、時には自分の身も危険にさらされたり、「あー、そう言われてみれば、現実には、周囲の人間がみんな探偵に協力するってないでしょうね」と思わされました。
一般人に銃の保持が許されているせいかわかりませんが、アメリカの警察のいかついこと・・・。
私は推理小説はあまり好みではありません。
アガサ・クリスティーと乙一と東野圭吾を少し読んだ程度です。
比べてみればやっぱり、アガサ・クリスティーや乙一の方が、読後感のうまみや、面白みは強いです。
村上春樹自身のあとがきにも、「『水底の女』をいまひとつ買えない」と書いてあるし、「レイモンド・チャンドラーは全部で7作の長編小説を遺して亡くなったが、この『水底の女』で僕(村上)はその全てを翻訳し終えたことになる」と書いています。どうやら、『水底の女』自体はお気に召さなかったけれども、7作品全て翻訳をコンプリートしたかっただけらしいのです。
私も、ものすごく面白かったわけではないです。
昔の推理小説として、「ふつうくらい」面白い、この小説単体でオススメするほどではないけれども、「村上春樹ファンで、小説もエッセイも翻訳本も何でも読んでいって、コンプリートしたい!!」という方にはオススメします。(私自身は、ほぼ「そういう層」です)。
村上春樹氏は、「読者を(村上春樹作品の)中毒にさせてしまえばいい」とおっしゃっていたのですが、見事に氏の思惑にハマっていると言えます。楽しませてもらえるのなら、これで良いのです。氏には、今後も、リズムよく数年単位で新作を発表していただいて、それを享受したいものです。(ノーベル賞は特にこだわっていません)。