代替医療のトリック サイモン・シン他著 第2章 鍼の真実 付私の体験
代替医療のトリック サイモン・シン&エツァート・エルンスト著
第2章 鍼の真実
「しかし鍼の鎮痛効果に関しては、いくつか信頼できそうな仮説があった。」
「第一の仮説は、科学者が鍼について考え出すより十年ほど前の1960年代はじめに立てられた、痛みの《ゲートコントロール仮説》である。(中略)西洋の鍼治療師の多くは、鍼を差すときの小さな痛みによってゲートが閉ざされ、大きな痛みをブロックするのだと主張するが、懐疑的な人たちは、その主張の正しさを裏づけるたしかな証拠はないと指摘する。痛みのゲートコントロール説は、ほかの状況はうまく説明したかもしれないが、鍼の効果がこのメカニズムにもとづくものかどうかは未証明なのだ。」
「鍼の効果を説明する第二の仮説は、強力な天然鎮痛剤として作用する《オピオイド》という化学物質の存在にもとづいている。オピオイドのなかでもとくに重要なものに、エンドルフィンの名前で知られる物質がある。いくつかの研究から、鍼の刺激によって、脳内で実際にこのような化学物質が放出されていることがわかった。当然、鍼治療師はこうした研究を歓迎したが、やはり懐疑的な人たちはいた。そういう人たちは、鍼を打つことで鎮痛効果が得られるほどのオピオイドが放出されるかどうかはわからないと言い、またエンドルフィンと鍼のあいだに何の関係も示せなかった研究もあることを指摘する。」
「科学者たちは、どちらかの説を受け入れるのではなく、さらに研究を進め、鍼の鎮痛効果を説明する新たな説を打ち出した。実際、もしその第三の説が正しければ、鎮痛効果のみならず、鍼の利益とされるものすべてが説明できてしまうかもしれない。鍼治療師には気の毒だが、その第三の説によれば、鍼の影響とされているものはすべて、論争にまみれた長い歴史をもつ《プラセボ効果》という医療上の現象だということになってしまうのだ。」
プラセボ効果というのは「偽薬効果」と呼ばれることもありますが、「効かない薬」を効くように勧められた時の効果のみならず、会話や態度など全てを含むのかな。鍼については「本当に打つ」「偽鍼(劇用短剣みたいに縮んで非常に浅くしか打てない)を打つ」「経絡を外して打つ」「何も打たない」などを比較対照して試験がされました。それらの研究を検討して2003年にWHOが「鍼-対照臨床実験に関するレビューと報告」という報告書を出します。その中では
1.対照試験により鍼の効果が証明された症状 28の症状
2.鍼には効果があることが示されているが、さらなる証明が必要とされた症状 63の症状
3.治療効果があることを示した対照試験が存在するというだけにとどまるが、通常医療による治療が難しいため、鍼を試みる価値がある症状 9の症状
4.鍼治療を行う者が、特殊な現代医療の知識を持つ場合にかぎり、鍼が試されてもよい症状 7つの症状
ところが筆者は「WHOは、鍼の有効性を判定するにあたって二つの大きな過ちを犯した。」と書きます。
「第一の過ちは、臨床試験から得られた結果はどれもみな考慮に入れたこと」
信頼性の低い試験結果も入れてしまった、ということ。
「第二の過ちは、中国で行われた多数の臨床試験を考慮に入れたこと」
これは中国の研究者が鍼に関して《発表バイアス》の問題を抱えているから。これは中国では「鍼は効果がある」という結果が喜ばれ、「鍼は効果が無い」という結果は誰も喜んでくれず、また読んでも周囲ががっかりするだけだ、という思いで発表しないまま終わる、というバイアス。
これは日本でもあるかもしれない。
オックスフォード大でのコクラン共同計画。1993年に設立。臨床研究を評価し質の高いものだけを考慮に入れる《系統的レビュー》を始めた。
これまでのコクラン共同計画による鍼についてのレビュー。
多くの症状については
1.コクラン・レビューによれば、鍼の有効性は臨床試験から得られた科学的根拠によっては支持されない。
2.コクラン・レビューによれば、臨床試験がずさんであるため、鍼の有効性について確かなことは何も言えない。
3.研究方法がずさんで件数も少ないため、コクラン共同計画は系統的レビューを行うことさえできない。
「症状によっては、コクラン・レビューで多少肯定的な結果が得られているものがある。妊娠中の背中から腰にかけての痛み、腰痛、頭痛、手術後の吐き気および嘔吐、化学療法により引き起こされた吐き気および嘔吐、首の疾患、夜尿症がそれだ。これらの症状については、コクラン・レビューは多少前向きだ。要するに、鍼について肯定的な結論が出ているのは、夜尿症を別にすれば、ある種の痛みと吐き気だけなのである。」
って、私は「痛み」だけに使うものだと思っていました。そもそもそれ以外のあれこれに効くと考えられるのか?と思ってネットで鍼灸院の広告を見てみたら・・・あれこれに効くように宣伝してますねえ・・・
「これらの症状は、鍼の効果に関するコクラン・レビューのなかでも、とくに肯定的な部類に属するが、コクラン・レビューがこれらに対して鍼で治療することを強く支持しているわけではないことに注意しよう。」
現在、ドイツの連邦医師・社会保険組合委員会は《メガトライアル》と呼ばれる質の高い臨床試験を実施中。結果は少しずつ出ている段階。
筆者によれば
「本章では、鍼はプラセボにすぎないという可能性がきわめて高いことを明らかにした。」
が
「しかし、患者に効き目があるのなら、プラセボでも良いのではないか?効き目が現実のものなら治療が偽物でもかまわないのではないか?」
という問題を提起し、次章以降でもその問題を考えていきます。
う~ん。
私の鍼体験は今までに2回。
1度は大学時代、当時、鍼は結構流行っていて趣味でやっている友だちが「やってやろう」というので嫌だったけれど打たれたことがあります。考えたら、あれって全然消毒してなかったような気が・・・今は感染症対策で使い捨て鍼などを使うと思います。効果は無かったというか、もともとどこが悪いってわけでも無かったので。
そういや落語で若旦那が鍼を他人に打ちたくてたまらず、幇間にお金や義理に訴えて無理矢理打つ、ってのがありました。
もう1回は、これは痛みというのじゃないけれど、久里浜の特総研で調子が悪くなった時に、盲学校の理療科の先生が打って下さったもの。これも「効いた」って感じは無かったです。しかし勉強から離れて会話しながら静かな時間を持ったというのは良かったのかも。
でもいずれも「効果」って感じは無かったですね。しかし、日本では視覚障害の方の職業としても確立しているだろうし、「効果無し」ってことになったらいろいろまずいだろうな。
まあ自閉症のカナータイプの人に打つことを勧める人がいたら、回れ右して逃げた方がいいとは思います。
アスペルガー症候群や高機能自閉症の人はどうなんだろう・・・2次障害について、そうでない方よりプラセボ効果が出やすいタイプの方がいるみたいなので、そこらへんはどうなんだろう・・・でもそういう方にも「鍼」じゃない形でプラセボ効果を出したほうがいいだろうなあ。
第2章 鍼の真実
「しかし鍼の鎮痛効果に関しては、いくつか信頼できそうな仮説があった。」
「第一の仮説は、科学者が鍼について考え出すより十年ほど前の1960年代はじめに立てられた、痛みの《ゲートコントロール仮説》である。(中略)西洋の鍼治療師の多くは、鍼を差すときの小さな痛みによってゲートが閉ざされ、大きな痛みをブロックするのだと主張するが、懐疑的な人たちは、その主張の正しさを裏づけるたしかな証拠はないと指摘する。痛みのゲートコントロール説は、ほかの状況はうまく説明したかもしれないが、鍼の効果がこのメカニズムにもとづくものかどうかは未証明なのだ。」
「鍼の効果を説明する第二の仮説は、強力な天然鎮痛剤として作用する《オピオイド》という化学物質の存在にもとづいている。オピオイドのなかでもとくに重要なものに、エンドルフィンの名前で知られる物質がある。いくつかの研究から、鍼の刺激によって、脳内で実際にこのような化学物質が放出されていることがわかった。当然、鍼治療師はこうした研究を歓迎したが、やはり懐疑的な人たちはいた。そういう人たちは、鍼を打つことで鎮痛効果が得られるほどのオピオイドが放出されるかどうかはわからないと言い、またエンドルフィンと鍼のあいだに何の関係も示せなかった研究もあることを指摘する。」
「科学者たちは、どちらかの説を受け入れるのではなく、さらに研究を進め、鍼の鎮痛効果を説明する新たな説を打ち出した。実際、もしその第三の説が正しければ、鎮痛効果のみならず、鍼の利益とされるものすべてが説明できてしまうかもしれない。鍼治療師には気の毒だが、その第三の説によれば、鍼の影響とされているものはすべて、論争にまみれた長い歴史をもつ《プラセボ効果》という医療上の現象だということになってしまうのだ。」
プラセボ効果というのは「偽薬効果」と呼ばれることもありますが、「効かない薬」を効くように勧められた時の効果のみならず、会話や態度など全てを含むのかな。鍼については「本当に打つ」「偽鍼(劇用短剣みたいに縮んで非常に浅くしか打てない)を打つ」「経絡を外して打つ」「何も打たない」などを比較対照して試験がされました。それらの研究を検討して2003年にWHOが「鍼-対照臨床実験に関するレビューと報告」という報告書を出します。その中では
1.対照試験により鍼の効果が証明された症状 28の症状
2.鍼には効果があることが示されているが、さらなる証明が必要とされた症状 63の症状
3.治療効果があることを示した対照試験が存在するというだけにとどまるが、通常医療による治療が難しいため、鍼を試みる価値がある症状 9の症状
4.鍼治療を行う者が、特殊な現代医療の知識を持つ場合にかぎり、鍼が試されてもよい症状 7つの症状
ところが筆者は「WHOは、鍼の有効性を判定するにあたって二つの大きな過ちを犯した。」と書きます。
「第一の過ちは、臨床試験から得られた結果はどれもみな考慮に入れたこと」
信頼性の低い試験結果も入れてしまった、ということ。
「第二の過ちは、中国で行われた多数の臨床試験を考慮に入れたこと」
これは中国の研究者が鍼に関して《発表バイアス》の問題を抱えているから。これは中国では「鍼は効果がある」という結果が喜ばれ、「鍼は効果が無い」という結果は誰も喜んでくれず、また読んでも周囲ががっかりするだけだ、という思いで発表しないまま終わる、というバイアス。
これは日本でもあるかもしれない。
オックスフォード大でのコクラン共同計画。1993年に設立。臨床研究を評価し質の高いものだけを考慮に入れる《系統的レビュー》を始めた。
これまでのコクラン共同計画による鍼についてのレビュー。
多くの症状については
1.コクラン・レビューによれば、鍼の有効性は臨床試験から得られた科学的根拠によっては支持されない。
2.コクラン・レビューによれば、臨床試験がずさんであるため、鍼の有効性について確かなことは何も言えない。
3.研究方法がずさんで件数も少ないため、コクラン共同計画は系統的レビューを行うことさえできない。
「症状によっては、コクラン・レビューで多少肯定的な結果が得られているものがある。妊娠中の背中から腰にかけての痛み、腰痛、頭痛、手術後の吐き気および嘔吐、化学療法により引き起こされた吐き気および嘔吐、首の疾患、夜尿症がそれだ。これらの症状については、コクラン・レビューは多少前向きだ。要するに、鍼について肯定的な結論が出ているのは、夜尿症を別にすれば、ある種の痛みと吐き気だけなのである。」
って、私は「痛み」だけに使うものだと思っていました。そもそもそれ以外のあれこれに効くと考えられるのか?と思ってネットで鍼灸院の広告を見てみたら・・・あれこれに効くように宣伝してますねえ・・・
「これらの症状は、鍼の効果に関するコクラン・レビューのなかでも、とくに肯定的な部類に属するが、コクラン・レビューがこれらに対して鍼で治療することを強く支持しているわけではないことに注意しよう。」
現在、ドイツの連邦医師・社会保険組合委員会は《メガトライアル》と呼ばれる質の高い臨床試験を実施中。結果は少しずつ出ている段階。
筆者によれば
「本章では、鍼はプラセボにすぎないという可能性がきわめて高いことを明らかにした。」
が
「しかし、患者に効き目があるのなら、プラセボでも良いのではないか?効き目が現実のものなら治療が偽物でもかまわないのではないか?」
という問題を提起し、次章以降でもその問題を考えていきます。
う~ん。
私の鍼体験は今までに2回。
1度は大学時代、当時、鍼は結構流行っていて趣味でやっている友だちが「やってやろう」というので嫌だったけれど打たれたことがあります。考えたら、あれって全然消毒してなかったような気が・・・今は感染症対策で使い捨て鍼などを使うと思います。効果は無かったというか、もともとどこが悪いってわけでも無かったので。
そういや落語で若旦那が鍼を他人に打ちたくてたまらず、幇間にお金や義理に訴えて無理矢理打つ、ってのがありました。
もう1回は、これは痛みというのじゃないけれど、久里浜の特総研で調子が悪くなった時に、盲学校の理療科の先生が打って下さったもの。これも「効いた」って感じは無かったです。しかし勉強から離れて会話しながら静かな時間を持ったというのは良かったのかも。
でもいずれも「効果」って感じは無かったですね。しかし、日本では視覚障害の方の職業としても確立しているだろうし、「効果無し」ってことになったらいろいろまずいだろうな。
まあ自閉症のカナータイプの人に打つことを勧める人がいたら、回れ右して逃げた方がいいとは思います。
アスペルガー症候群や高機能自閉症の人はどうなんだろう・・・2次障害について、そうでない方よりプラセボ効果が出やすいタイプの方がいるみたいなので、そこらへんはどうなんだろう・・・でもそういう方にも「鍼」じゃない形でプラセボ効果を出したほうがいいだろうなあ。
代替医療のトリック サイモン・シン&エツァート・エルンスト著 第1章
図書館で借りて来ました。
申し込んで借りるまでに半年かかりました。人気があるんですね。
代替医療のトリック/サイモン シン

¥2,520
Amazon.co.jp
はじめに
「《補完代替医療》(Complementary and Alternative Medecine : CAM)」
「本書では一貫して《代替医療》を用いることにした」
「地球全体では、毎年四百億ポンド相当の金が代替医療に費やされていると推定され」
2007年だったら10兆円くらい。今(2010年)だったら5兆円くらいといったところでしょうか。
第Ⅰ章 いかに真実を突き止めるか
壊血病は過去の多くの船乗りを死に至らしめる病でした。
「ところが1746年になって、大きな突破口が切り開かれた。この年、ジェイムズ・リンドという若いスコットランド人海軍外科医が、英国軍艦ソールズベリーに乗り組んだのだ」
リンドは船内にいた12名の壊血病の水兵を2名ずつ6組に分け、違う療法を使ったところ、レモン+オレンジを食べさせた水兵がめざましい回復を見せた。これを書物にもまとめたが注目されなかった。33年後の1780年になってギルバート・ブレーンの目に留まり、食事にレモンやライムを与えたところ水兵の死亡率が半分に激減した。1795年に英海軍本部は、1日に約20ccのレモン果汁を支給することにした。
1805年のトラファルガーの海戦でナポレオン率いるフランス海軍を足止めできたのは、英海軍がレモン支給により、新たに健康な水兵を補充するために任務を中断する必要が無かったため。
ナイチンゲールの話。
「看護婦になりたいという彼女の願いは、まさしく『天命』だったのだろう。フローレンスの両親はそのことを深く悲しんだ。なぜならその当時は、看護婦はろくな教育も受けておらず、身持ちが悪く、鮭浸りだというのが世間の通念だったからだ。」
そんな時代があったんですね。さらに彼女は1845年クリミア戦争の野戦病院で働きます。
「まもなくナイチンゲールは、死人が出るのは兵士が受けた傷のせいではなく、不潔な環境にはびこる病気のせいであることに気づいた。」
「ナイチンゲールは、まっとうな食事を出し、清潔なシーツを使い、配水管を掃除し、窓を開けてきれいな空気を部屋に入れるなどして、病院の環境改善を図った。彼女とそのチームはわずか一週間のうちに、手押し車二百五十台分の汚物を運び出し、十九回も下水道を洗い流し、病院の敷地内に転がっていた馬二頭、牛一頭、犬四匹の死骸を土に埋めた。それまで病院の運営にあたっていた将校や軍医たちは、こういうやり方に面目を潰されたように感じ、なにかにつけナイチンゲールの足を引っ張ったが、それでも彼女はがんばり抜いた。その結果は、彼女の正しさをみごとに証明するものだった。1855年2月の時点では、収容された兵士の死亡率は43パーセントに達していたが、改善が始まったのちの1855年の6月には、死亡率はわずか2パーセントにまで劇的に低下したのだった」
こういう数字が出てくるということは記録を残していたってわけですね。
ナイチンゲールは語学・歴史そして第一級の数学者から数学を学んでおり、主張の正しさを証明するのに社会統計学を使います。またデータを表にするだけでもやりすぎと思われる時代に、多色表示のグラフを使ったり、極面グラフ(少し複雑な円グラフのようなもの)を発明し、プレゼンしていきます。
「ナイチンゲールの統計的研究がきっかけとなって、陸軍病院の改革が行われた。王立調査委員会の報告書に従い、陸軍医学校が設立され、治療記録の収集システムが確立されたのだ。そうして収集されたデータにもとづき、何が患者の役に立ち、何は役に立たないのかを明らかにするために、継続的な監視システムも作られることになった。」
「科学的な臨床試験から得られた結果は非常に強力なので、ナイチンゲールのように、さほど有名ではない人物ではあっても-彼女は主流派の外部にいる、大した名声があるわけでもない若き女性だった-自分の主張のほうが正しく、有力者のほうが間違っていることを示すことができる。臨床試験なしには、ナイチンゲールのような孤独な先覚者は無視されたにちがいない。そして医者たちは、伝統とドグマと流行と政治、そしてマーケティングと逸話だけにもとづく腐敗した医療体系によって治療を続けることになっていただろう。」
喫煙の危険性を暴露したヒルとドールの研究。
「ヒルはドールと協力して、肺ガンの原因候補に挙がっていた喫煙の影響を調べてみることにした。しかしここで二人は出端を挫かれた-この場合、ランダム化試験は行えないのだ。たとえば、十代の若者百人のうち、その半数をどうにかして説得し、一週間タバコを吸い続けてもらったのち、肺ガンができたかどうか調べるといった方法は倫理にもとるばかりか実際的でもない。」
そらそうやわなあ。自閉症の人に対して「見てわかる」「表現手段がある」「選択する」「居心地良い環境を整える」の効果を調べる、ってどうやりゃいいんだ?
「そこでヒルとドールは、喫煙と肺ガンとの関係を明らかにするためには、《前向きコホート研究》、または《観察的研究》と呼ばれているものを行う必要があると判断した。これは、健康であることがわかっている人たちを集めて、普通に暮らしてもらいながら健康状態をモニターするという方法だ。この方法は、ランダム化臨床試験にくらべて、被験者に対する介入の度合いがはるかに小さいので、長期的な健康にかかわる問題を調べるときには望ましいのだ。」
でも、長期間にわたり、条件を揃えるのがむつかしく、コストも大変です。でヒルは医師にモルモットになってもらうことを思いつきます。
1951年から開始。50年間やるつもりが1954年にははっきりしたパターンが出てきます。喫煙者は肺ガンのリスクを二十倍に増やし、心臓発作をはじめ、さまざまな健康上の問題とも結びついていることが示されます。
結果が出たのちのドールの言葉。
「私自身、喫煙がそれほど大きな問題だとは思っていなかった。もしあの当時、どちらかに金を賭けなければならないとしたら、(肺ガンの発生率が増加しているのは)道路や車と関係があるという可能性に賭けただろう。」
「フローレンス・ナイチンゲールもはじめは反主流派と見られていたことだろう。なぜなら、医療関係者が外科治療と内服薬にばかり注目していたときに、彼女は衛生を優先事項として掲げたからだ。しかしナイチンゲールは、自分の考えが正しく、主流派は間違っていることを示した。
ジェイムズ・リンドもはじめは反主流派だったが、最終的には彼の正しさが証明された。リンドは、医療界の主流派がさまざまな治療法を提唱していたときに、壊血病にはレモン療法が効くことを示したのだった。瀉血が標準的な治療法だった時代に、それに反対したアレクサンダー・ハミルトンもまた、主流派よりも優れた反主流派だった。ヒルとドールも反主流派だった。喫煙は驚くほど死を招きやすい嗜癖であることを示し、タバコ産業の巨大な利益に反するデータを出したのだから。」
私も反主流派であったことは間違いないですが・・・
「代替医療のセラピストなら、ジョージ・バーナード・ショーの戯曲『アナジャンスカ-ボルシェヴィキの女帝』のなかの次のくだりに我が意を得たりと思うだろう。大公妃はこう述べる。『偉大な真理はすべて、はじめは神をも畏れぬ不遜な考えだったのです』。しかしこのセリフには、あまり嬉しくない次の但し書きをつけなければならない。『神をも畏れぬ不遜な考えのすべてが、偉大な真理になるわけではない』と。」
ははは。
臨床試験。統計。データ。
う~ん、あと疫学的調査ってのもあるみたいだけど。
ほんま私も、自閉症の人に対してのあれこれ、エピソードばっかりやもんなあ。
とりあえずここまででアップ。
申し込んで借りるまでに半年かかりました。人気があるんですね。
代替医療のトリック/サイモン シン

¥2,520
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はじめに
「《補完代替医療》(Complementary and Alternative Medecine : CAM)」
「本書では一貫して《代替医療》を用いることにした」
「地球全体では、毎年四百億ポンド相当の金が代替医療に費やされていると推定され」
2007年だったら10兆円くらい。今(2010年)だったら5兆円くらいといったところでしょうか。
第Ⅰ章 いかに真実を突き止めるか
壊血病は過去の多くの船乗りを死に至らしめる病でした。
「ところが1746年になって、大きな突破口が切り開かれた。この年、ジェイムズ・リンドという若いスコットランド人海軍外科医が、英国軍艦ソールズベリーに乗り組んだのだ」
リンドは船内にいた12名の壊血病の水兵を2名ずつ6組に分け、違う療法を使ったところ、レモン+オレンジを食べさせた水兵がめざましい回復を見せた。これを書物にもまとめたが注目されなかった。33年後の1780年になってギルバート・ブレーンの目に留まり、食事にレモンやライムを与えたところ水兵の死亡率が半分に激減した。1795年に英海軍本部は、1日に約20ccのレモン果汁を支給することにした。
1805年のトラファルガーの海戦でナポレオン率いるフランス海軍を足止めできたのは、英海軍がレモン支給により、新たに健康な水兵を補充するために任務を中断する必要が無かったため。
ナイチンゲールの話。
「看護婦になりたいという彼女の願いは、まさしく『天命』だったのだろう。フローレンスの両親はそのことを深く悲しんだ。なぜならその当時は、看護婦はろくな教育も受けておらず、身持ちが悪く、鮭浸りだというのが世間の通念だったからだ。」
そんな時代があったんですね。さらに彼女は1845年クリミア戦争の野戦病院で働きます。
「まもなくナイチンゲールは、死人が出るのは兵士が受けた傷のせいではなく、不潔な環境にはびこる病気のせいであることに気づいた。」
「ナイチンゲールは、まっとうな食事を出し、清潔なシーツを使い、配水管を掃除し、窓を開けてきれいな空気を部屋に入れるなどして、病院の環境改善を図った。彼女とそのチームはわずか一週間のうちに、手押し車二百五十台分の汚物を運び出し、十九回も下水道を洗い流し、病院の敷地内に転がっていた馬二頭、牛一頭、犬四匹の死骸を土に埋めた。それまで病院の運営にあたっていた将校や軍医たちは、こういうやり方に面目を潰されたように感じ、なにかにつけナイチンゲールの足を引っ張ったが、それでも彼女はがんばり抜いた。その結果は、彼女の正しさをみごとに証明するものだった。1855年2月の時点では、収容された兵士の死亡率は43パーセントに達していたが、改善が始まったのちの1855年の6月には、死亡率はわずか2パーセントにまで劇的に低下したのだった」
こういう数字が出てくるということは記録を残していたってわけですね。
ナイチンゲールは語学・歴史そして第一級の数学者から数学を学んでおり、主張の正しさを証明するのに社会統計学を使います。またデータを表にするだけでもやりすぎと思われる時代に、多色表示のグラフを使ったり、極面グラフ(少し複雑な円グラフのようなもの)を発明し、プレゼンしていきます。
「ナイチンゲールの統計的研究がきっかけとなって、陸軍病院の改革が行われた。王立調査委員会の報告書に従い、陸軍医学校が設立され、治療記録の収集システムが確立されたのだ。そうして収集されたデータにもとづき、何が患者の役に立ち、何は役に立たないのかを明らかにするために、継続的な監視システムも作られることになった。」
「科学的な臨床試験から得られた結果は非常に強力なので、ナイチンゲールのように、さほど有名ではない人物ではあっても-彼女は主流派の外部にいる、大した名声があるわけでもない若き女性だった-自分の主張のほうが正しく、有力者のほうが間違っていることを示すことができる。臨床試験なしには、ナイチンゲールのような孤独な先覚者は無視されたにちがいない。そして医者たちは、伝統とドグマと流行と政治、そしてマーケティングと逸話だけにもとづく腐敗した医療体系によって治療を続けることになっていただろう。」
喫煙の危険性を暴露したヒルとドールの研究。
「ヒルはドールと協力して、肺ガンの原因候補に挙がっていた喫煙の影響を調べてみることにした。しかしここで二人は出端を挫かれた-この場合、ランダム化試験は行えないのだ。たとえば、十代の若者百人のうち、その半数をどうにかして説得し、一週間タバコを吸い続けてもらったのち、肺ガンができたかどうか調べるといった方法は倫理にもとるばかりか実際的でもない。」
そらそうやわなあ。自閉症の人に対して「見てわかる」「表現手段がある」「選択する」「居心地良い環境を整える」の効果を調べる、ってどうやりゃいいんだ?
「そこでヒルとドールは、喫煙と肺ガンとの関係を明らかにするためには、《前向きコホート研究》、または《観察的研究》と呼ばれているものを行う必要があると判断した。これは、健康であることがわかっている人たちを集めて、普通に暮らしてもらいながら健康状態をモニターするという方法だ。この方法は、ランダム化臨床試験にくらべて、被験者に対する介入の度合いがはるかに小さいので、長期的な健康にかかわる問題を調べるときには望ましいのだ。」
でも、長期間にわたり、条件を揃えるのがむつかしく、コストも大変です。でヒルは医師にモルモットになってもらうことを思いつきます。
1951年から開始。50年間やるつもりが1954年にははっきりしたパターンが出てきます。喫煙者は肺ガンのリスクを二十倍に増やし、心臓発作をはじめ、さまざまな健康上の問題とも結びついていることが示されます。
結果が出たのちのドールの言葉。
「私自身、喫煙がそれほど大きな問題だとは思っていなかった。もしあの当時、どちらかに金を賭けなければならないとしたら、(肺ガンの発生率が増加しているのは)道路や車と関係があるという可能性に賭けただろう。」
「フローレンス・ナイチンゲールもはじめは反主流派と見られていたことだろう。なぜなら、医療関係者が外科治療と内服薬にばかり注目していたときに、彼女は衛生を優先事項として掲げたからだ。しかしナイチンゲールは、自分の考えが正しく、主流派は間違っていることを示した。
ジェイムズ・リンドもはじめは反主流派だったが、最終的には彼の正しさが証明された。リンドは、医療界の主流派がさまざまな治療法を提唱していたときに、壊血病にはレモン療法が効くことを示したのだった。瀉血が標準的な治療法だった時代に、それに反対したアレクサンダー・ハミルトンもまた、主流派よりも優れた反主流派だった。ヒルとドールも反主流派だった。喫煙は驚くほど死を招きやすい嗜癖であることを示し、タバコ産業の巨大な利益に反するデータを出したのだから。」
私も反主流派であったことは間違いないですが・・・
「代替医療のセラピストなら、ジョージ・バーナード・ショーの戯曲『アナジャンスカ-ボルシェヴィキの女帝』のなかの次のくだりに我が意を得たりと思うだろう。大公妃はこう述べる。『偉大な真理はすべて、はじめは神をも畏れぬ不遜な考えだったのです』。しかしこのセリフには、あまり嬉しくない次の但し書きをつけなければならない。『神をも畏れぬ不遜な考えのすべてが、偉大な真理になるわけではない』と。」
ははは。
臨床試験。統計。データ。
う~ん、あと疫学的調査ってのもあるみたいだけど。
ほんま私も、自閉症の人に対してのあれこれ、エピソードばっかりやもんなあ。
とりあえずここまででアップ。



