代替医療のトリック サイモン・シン他著 第2章 鍼の真実 付私の体験
代替医療のトリック サイモン・シン&エツァート・エルンスト著
第2章 鍼の真実
「しかし鍼の鎮痛効果に関しては、いくつか信頼できそうな仮説があった。」
「第一の仮説は、科学者が鍼について考え出すより十年ほど前の1960年代はじめに立てられた、痛みの《ゲートコントロール仮説》である。(中略)西洋の鍼治療師の多くは、鍼を差すときの小さな痛みによってゲートが閉ざされ、大きな痛みをブロックするのだと主張するが、懐疑的な人たちは、その主張の正しさを裏づけるたしかな証拠はないと指摘する。痛みのゲートコントロール説は、ほかの状況はうまく説明したかもしれないが、鍼の効果がこのメカニズムにもとづくものかどうかは未証明なのだ。」
「鍼の効果を説明する第二の仮説は、強力な天然鎮痛剤として作用する《オピオイド》という化学物質の存在にもとづいている。オピオイドのなかでもとくに重要なものに、エンドルフィンの名前で知られる物質がある。いくつかの研究から、鍼の刺激によって、脳内で実際にこのような化学物質が放出されていることがわかった。当然、鍼治療師はこうした研究を歓迎したが、やはり懐疑的な人たちはいた。そういう人たちは、鍼を打つことで鎮痛効果が得られるほどのオピオイドが放出されるかどうかはわからないと言い、またエンドルフィンと鍼のあいだに何の関係も示せなかった研究もあることを指摘する。」
「科学者たちは、どちらかの説を受け入れるのではなく、さらに研究を進め、鍼の鎮痛効果を説明する新たな説を打ち出した。実際、もしその第三の説が正しければ、鎮痛効果のみならず、鍼の利益とされるものすべてが説明できてしまうかもしれない。鍼治療師には気の毒だが、その第三の説によれば、鍼の影響とされているものはすべて、論争にまみれた長い歴史をもつ《プラセボ効果》という医療上の現象だということになってしまうのだ。」
プラセボ効果というのは「偽薬効果」と呼ばれることもありますが、「効かない薬」を効くように勧められた時の効果のみならず、会話や態度など全てを含むのかな。鍼については「本当に打つ」「偽鍼(劇用短剣みたいに縮んで非常に浅くしか打てない)を打つ」「経絡を外して打つ」「何も打たない」などを比較対照して試験がされました。それらの研究を検討して2003年にWHOが「鍼-対照臨床実験に関するレビューと報告」という報告書を出します。その中では
1.対照試験により鍼の効果が証明された症状 28の症状
2.鍼には効果があることが示されているが、さらなる証明が必要とされた症状 63の症状
3.治療効果があることを示した対照試験が存在するというだけにとどまるが、通常医療による治療が難しいため、鍼を試みる価値がある症状 9の症状
4.鍼治療を行う者が、特殊な現代医療の知識を持つ場合にかぎり、鍼が試されてもよい症状 7つの症状
ところが筆者は「WHOは、鍼の有効性を判定するにあたって二つの大きな過ちを犯した。」と書きます。
「第一の過ちは、臨床試験から得られた結果はどれもみな考慮に入れたこと」
信頼性の低い試験結果も入れてしまった、ということ。
「第二の過ちは、中国で行われた多数の臨床試験を考慮に入れたこと」
これは中国の研究者が鍼に関して《発表バイアス》の問題を抱えているから。これは中国では「鍼は効果がある」という結果が喜ばれ、「鍼は効果が無い」という結果は誰も喜んでくれず、また読んでも周囲ががっかりするだけだ、という思いで発表しないまま終わる、というバイアス。
これは日本でもあるかもしれない。
オックスフォード大でのコクラン共同計画。1993年に設立。臨床研究を評価し質の高いものだけを考慮に入れる《系統的レビュー》を始めた。
これまでのコクラン共同計画による鍼についてのレビュー。
多くの症状については
1.コクラン・レビューによれば、鍼の有効性は臨床試験から得られた科学的根拠によっては支持されない。
2.コクラン・レビューによれば、臨床試験がずさんであるため、鍼の有効性について確かなことは何も言えない。
3.研究方法がずさんで件数も少ないため、コクラン共同計画は系統的レビューを行うことさえできない。
「症状によっては、コクラン・レビューで多少肯定的な結果が得られているものがある。妊娠中の背中から腰にかけての痛み、腰痛、頭痛、手術後の吐き気および嘔吐、化学療法により引き起こされた吐き気および嘔吐、首の疾患、夜尿症がそれだ。これらの症状については、コクラン・レビューは多少前向きだ。要するに、鍼について肯定的な結論が出ているのは、夜尿症を別にすれば、ある種の痛みと吐き気だけなのである。」
って、私は「痛み」だけに使うものだと思っていました。そもそもそれ以外のあれこれに効くと考えられるのか?と思ってネットで鍼灸院の広告を見てみたら・・・あれこれに効くように宣伝してますねえ・・・
「これらの症状は、鍼の効果に関するコクラン・レビューのなかでも、とくに肯定的な部類に属するが、コクラン・レビューがこれらに対して鍼で治療することを強く支持しているわけではないことに注意しよう。」
現在、ドイツの連邦医師・社会保険組合委員会は《メガトライアル》と呼ばれる質の高い臨床試験を実施中。結果は少しずつ出ている段階。
筆者によれば
「本章では、鍼はプラセボにすぎないという可能性がきわめて高いことを明らかにした。」
が
「しかし、患者に効き目があるのなら、プラセボでも良いのではないか?効き目が現実のものなら治療が偽物でもかまわないのではないか?」
という問題を提起し、次章以降でもその問題を考えていきます。
う~ん。
私の鍼体験は今までに2回。
1度は大学時代、当時、鍼は結構流行っていて趣味でやっている友だちが「やってやろう」というので嫌だったけれど打たれたことがあります。考えたら、あれって全然消毒してなかったような気が・・・今は感染症対策で使い捨て鍼などを使うと思います。効果は無かったというか、もともとどこが悪いってわけでも無かったので。
そういや落語で若旦那が鍼を他人に打ちたくてたまらず、幇間にお金や義理に訴えて無理矢理打つ、ってのがありました。
もう1回は、これは痛みというのじゃないけれど、久里浜の特総研で調子が悪くなった時に、盲学校の理療科の先生が打って下さったもの。これも「効いた」って感じは無かったです。しかし勉強から離れて会話しながら静かな時間を持ったというのは良かったのかも。
でもいずれも「効果」って感じは無かったですね。しかし、日本では視覚障害の方の職業としても確立しているだろうし、「効果無し」ってことになったらいろいろまずいだろうな。
まあ自閉症のカナータイプの人に打つことを勧める人がいたら、回れ右して逃げた方がいいとは思います。
アスペルガー症候群や高機能自閉症の人はどうなんだろう・・・2次障害について、そうでない方よりプラセボ効果が出やすいタイプの方がいるみたいなので、そこらへんはどうなんだろう・・・でもそういう方にも「鍼」じゃない形でプラセボ効果を出したほうがいいだろうなあ。
第2章 鍼の真実
「しかし鍼の鎮痛効果に関しては、いくつか信頼できそうな仮説があった。」
「第一の仮説は、科学者が鍼について考え出すより十年ほど前の1960年代はじめに立てられた、痛みの《ゲートコントロール仮説》である。(中略)西洋の鍼治療師の多くは、鍼を差すときの小さな痛みによってゲートが閉ざされ、大きな痛みをブロックするのだと主張するが、懐疑的な人たちは、その主張の正しさを裏づけるたしかな証拠はないと指摘する。痛みのゲートコントロール説は、ほかの状況はうまく説明したかもしれないが、鍼の効果がこのメカニズムにもとづくものかどうかは未証明なのだ。」
「鍼の効果を説明する第二の仮説は、強力な天然鎮痛剤として作用する《オピオイド》という化学物質の存在にもとづいている。オピオイドのなかでもとくに重要なものに、エンドルフィンの名前で知られる物質がある。いくつかの研究から、鍼の刺激によって、脳内で実際にこのような化学物質が放出されていることがわかった。当然、鍼治療師はこうした研究を歓迎したが、やはり懐疑的な人たちはいた。そういう人たちは、鍼を打つことで鎮痛効果が得られるほどのオピオイドが放出されるかどうかはわからないと言い、またエンドルフィンと鍼のあいだに何の関係も示せなかった研究もあることを指摘する。」
「科学者たちは、どちらかの説を受け入れるのではなく、さらに研究を進め、鍼の鎮痛効果を説明する新たな説を打ち出した。実際、もしその第三の説が正しければ、鎮痛効果のみならず、鍼の利益とされるものすべてが説明できてしまうかもしれない。鍼治療師には気の毒だが、その第三の説によれば、鍼の影響とされているものはすべて、論争にまみれた長い歴史をもつ《プラセボ効果》という医療上の現象だということになってしまうのだ。」
プラセボ効果というのは「偽薬効果」と呼ばれることもありますが、「効かない薬」を効くように勧められた時の効果のみならず、会話や態度など全てを含むのかな。鍼については「本当に打つ」「偽鍼(劇用短剣みたいに縮んで非常に浅くしか打てない)を打つ」「経絡を外して打つ」「何も打たない」などを比較対照して試験がされました。それらの研究を検討して2003年にWHOが「鍼-対照臨床実験に関するレビューと報告」という報告書を出します。その中では
1.対照試験により鍼の効果が証明された症状 28の症状
2.鍼には効果があることが示されているが、さらなる証明が必要とされた症状 63の症状
3.治療効果があることを示した対照試験が存在するというだけにとどまるが、通常医療による治療が難しいため、鍼を試みる価値がある症状 9の症状
4.鍼治療を行う者が、特殊な現代医療の知識を持つ場合にかぎり、鍼が試されてもよい症状 7つの症状
ところが筆者は「WHOは、鍼の有効性を判定するにあたって二つの大きな過ちを犯した。」と書きます。
「第一の過ちは、臨床試験から得られた結果はどれもみな考慮に入れたこと」
信頼性の低い試験結果も入れてしまった、ということ。
「第二の過ちは、中国で行われた多数の臨床試験を考慮に入れたこと」
これは中国の研究者が鍼に関して《発表バイアス》の問題を抱えているから。これは中国では「鍼は効果がある」という結果が喜ばれ、「鍼は効果が無い」という結果は誰も喜んでくれず、また読んでも周囲ががっかりするだけだ、という思いで発表しないまま終わる、というバイアス。
これは日本でもあるかもしれない。
オックスフォード大でのコクラン共同計画。1993年に設立。臨床研究を評価し質の高いものだけを考慮に入れる《系統的レビュー》を始めた。
これまでのコクラン共同計画による鍼についてのレビュー。
多くの症状については
1.コクラン・レビューによれば、鍼の有効性は臨床試験から得られた科学的根拠によっては支持されない。
2.コクラン・レビューによれば、臨床試験がずさんであるため、鍼の有効性について確かなことは何も言えない。
3.研究方法がずさんで件数も少ないため、コクラン共同計画は系統的レビューを行うことさえできない。
「症状によっては、コクラン・レビューで多少肯定的な結果が得られているものがある。妊娠中の背中から腰にかけての痛み、腰痛、頭痛、手術後の吐き気および嘔吐、化学療法により引き起こされた吐き気および嘔吐、首の疾患、夜尿症がそれだ。これらの症状については、コクラン・レビューは多少前向きだ。要するに、鍼について肯定的な結論が出ているのは、夜尿症を別にすれば、ある種の痛みと吐き気だけなのである。」
って、私は「痛み」だけに使うものだと思っていました。そもそもそれ以外のあれこれに効くと考えられるのか?と思ってネットで鍼灸院の広告を見てみたら・・・あれこれに効くように宣伝してますねえ・・・
「これらの症状は、鍼の効果に関するコクラン・レビューのなかでも、とくに肯定的な部類に属するが、コクラン・レビューがこれらに対して鍼で治療することを強く支持しているわけではないことに注意しよう。」
現在、ドイツの連邦医師・社会保険組合委員会は《メガトライアル》と呼ばれる質の高い臨床試験を実施中。結果は少しずつ出ている段階。
筆者によれば
「本章では、鍼はプラセボにすぎないという可能性がきわめて高いことを明らかにした。」
が
「しかし、患者に効き目があるのなら、プラセボでも良いのではないか?効き目が現実のものなら治療が偽物でもかまわないのではないか?」
という問題を提起し、次章以降でもその問題を考えていきます。
う~ん。
私の鍼体験は今までに2回。
1度は大学時代、当時、鍼は結構流行っていて趣味でやっている友だちが「やってやろう」というので嫌だったけれど打たれたことがあります。考えたら、あれって全然消毒してなかったような気が・・・今は感染症対策で使い捨て鍼などを使うと思います。効果は無かったというか、もともとどこが悪いってわけでも無かったので。
そういや落語で若旦那が鍼を他人に打ちたくてたまらず、幇間にお金や義理に訴えて無理矢理打つ、ってのがありました。
もう1回は、これは痛みというのじゃないけれど、久里浜の特総研で調子が悪くなった時に、盲学校の理療科の先生が打って下さったもの。これも「効いた」って感じは無かったです。しかし勉強から離れて会話しながら静かな時間を持ったというのは良かったのかも。
でもいずれも「効果」って感じは無かったですね。しかし、日本では視覚障害の方の職業としても確立しているだろうし、「効果無し」ってことになったらいろいろまずいだろうな。
まあ自閉症のカナータイプの人に打つことを勧める人がいたら、回れ右して逃げた方がいいとは思います。
アスペルガー症候群や高機能自閉症の人はどうなんだろう・・・2次障害について、そうでない方よりプラセボ効果が出やすいタイプの方がいるみたいなので、そこらへんはどうなんだろう・・・でもそういう方にも「鍼」じゃない形でプラセボ効果を出したほうがいいだろうなあ。