Talk'n Blues -8ページ目

奏

努力しろ、
宣教者が口を滑らした。
それを耳にした我等、傍観者は傍観の立場を決め込んではいられなくなり、死んだ魚の目をしてはゲリラ活動に勤しむ。

マトモなふりをして傍聴席に佇む彼奴は本来の錯乱を取り戻し暴動を起こす計画を立てる。

朽ちていくとわかりきっているからこそ、生きる事を鼻で笑う野良猫。

当ての無い道を旅する野良犬は時たま遠吠え。
思い出したかの様に満月に泣き叫ぶ。

その声は何処にも届かない。

戒

誰もが眼を背けて歩いた。
野良犬似のその男はそれに気付かぬ素振りで遠吠え。
或いは煙を吐く。
吸殻を躊躇いなく歩道へ。

火は消えない。
熱は失せない。

それを誰もが見ていた。

職務に忠実な警官も
エコロジーを謳う若者も
箒を携えた主婦も
携帯灰皿を片手に気取ったサラリーマンも
何も知らない小学生も。

誰もが見ていたはずだが何喰わぬ顔をして殻に閉じ籠る。

男は刹那、悲しげな表情を浮かべたがすぐに野良犬の顔を取り戻して大股で闊歩し始める。

男には世界の全てが自分を無視する存在だった。
世界は男を忌み、
男は世界を忌んだ。
男は世界の敵であり、
世界は男の敵だった。
部屋で、一人で過ごす時間が一番、寂しくなかった。
周りに人が存在する事が己が一人だと最も痛感する。

一人になる のと
一人にさせられる、のは違う。
だが部屋で一人を満喫した後、人恋しくなり男は忌むべき世界へと己が身を投じる。
たとえ全てが敵でも人間は一人で生き抜く事は不可能だと男は知っていた。

聡明なばかりに男は苦痛を
受け入れる。
希望は一つだけ。
時が過ぎ行き、自分を認めてくれる誰かが現れる事。
今、を耐える事。
今、は見ない様に。
今、を切り捨てる。

自分が生きる現在を見ずに
未来のみを見つめる男はいつか、
時の番人に裁かれるのか。

野良犬に似た男だ。
野良犬に似た男だ。

遠吠えが聞こえる。

稀

落陽ならずとも高揚し
果てる。

紅葉染まらずに凡庸と
爪弾く。

境界線に立ちながら
どちらかわからなくって
縦横無尽のつもりの
右往左往。
孤独な競争。
一人ぼっちのデキレース。

高笑いが虚空に響く。
バカ笑いで返そうと試みるが
空気がもれて
無音状態だけ続く。
静かに暴れだす。

出逢ったつもりの夢物語と
一人ごち。
夢枕にたった、と夢現に
騒ぎまわる。
後ろ姿が似てると夢見がちに
追いかけ、顔見たら発狂。
夢見心地だ、と恍惚の表情で
達する。

実際会うと取り乱し錯乱。
気が違ったフリをした末、
奈落へ。
誰だかわからぬ物真似披露。
自己嫌悪に襲われて
腹を裂かれる。

緞帳鈍重に見えながら
華麗に閉まります。

無い器を飾り立てて
無様に盛ります。

狂乱と楽観と絶望の違いが
わからずに一心不乱。

まつりの後。
前夜祭。
もしくはハニバルカーニバル。
或いは
勘違い。

音無き世界で太鼓囃子に
耳をすます。