2度目の米朝首脳会談の意味
http://tanakanews.com/190116korea.htm
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北朝鮮の金正恩と米国のトランプとの2度目の米朝首脳会談が、まもなくベトナム(ハノイかダナン)で開かれそうな流れになっている。
昨年末から何回か、米国と北朝鮮の外交官がベトナムの首都ハノイで会い、米朝首脳会談の開催について話し合っている。
ベトナムは、昨年6月の1回目の米朝首脳会談の時も、開催地の候補に上がっていた。
金正恩は、首脳会談に向かう自分の飛行機が米軍に撃墜されるのを恐れているが、北からベトナムへは、中国の内陸部を通って飛行できるので安心だ。
ベトナムは、米朝両方と国交がある。
かつて米国の仇敵だったが今は仲が良く、共産党の一党独裁国だが経済改革(ドイモイ)して成長した。
これらは、米朝の和解的な未来のお手本となるイメージだ。
韓国の文在寅大統領は、米朝首脳会談が1月中か2月に開かれると言っている。
1月9日には、金正恩が中国を訪問した。
これも米朝会談の準備の一つだろう。
会談の最大のテーマは、米国が望む「北の核廃棄」と、北が望む「北への経済制裁の解除」のどちらを先にやるか、どういう順番で和解(朝鮮戦争の正式な終結、米朝国交正常化)と脅威低下(北の核廃棄と、在韓米軍の撤退)を実現するかだ。
核廃棄を先にする(北が核を廃棄しない限り、米国などは北制裁を解除しない)と、北の核廃棄に何年もかかるうえ、北が核を全廃しても「まだ持っているはずだ」と米国(軍産)に言われて制裁解除を拒否される「サダム・フセインのジレンマ」(CVID)に追い込まれうる。
そのため、北と中国と韓国は、トランプに「核廃絶より先に経済制裁を解除しよう」と言っている。
米国はまだ軍産が強いので「先に制裁解除」のシナリオを嫌がっている。
金正恩は訪中時に、中国側とこの問題を話し合ったはずだ。
昨年6月の1回目の米朝会談の最大の成果は、金正恩とトランプとの、首脳間の個人的な信頼関係を築いたことだ。
今の米国は、トランプと軍産複合体が果し合いの暗闘を続けており、軍産は金正恩を敵視しているが、トランプは金正恩の味方になった。
トランプが大統領である限り、米国は北への敵視を控えている。
北を敵視した米韓合同軍事演習の実施も、最小限に抑えられている。
この新たな部分和解的な状況下で昨夏来、韓国と北朝鮮が急接近し、すでに南北間の対立がほとんどなくなってしまうところまで事態が進んでいる。
信頼醸成措置が各分野で行われ、南北を分断する38度線に南北双方が設置した兵器や詰所、壁などが取り払われた。
韓国政府は、先日発表した国防白書で、北を敵とみなすことを24年ぶりにやめた。
南北間の鉄道と道路の結節も、あとは工事をするだけのところまで進めた。
しかし、米国が主導して国連安保理で決議した、北に対する経済制裁の体制がある限り、韓国はこれ以上、北との和解を進められない。
経済制裁は、北の核ミサイルを開発を制裁するものであり、南北間の鉄道や道路の結節は「北に核ミサイル開発を可能にする物資や資金を与えてしまい、経済制裁に違反する」として昨秋、在韓米軍が韓国政府に対して禁止を命じた。
韓国政府は、北との関係強化に際し、経済制裁に抵触していないかどうか、在韓米軍や米政府の許可をもらう必要がある。
開城工業団地の再開や、金剛山など北の観光地への韓国側からの観光客の訪問再開も、同様の理由で許可されていない。
韓国や中国、ロシアは、北が核廃棄を進める前に、信頼醸成措置として、先に北への経済制裁を解除すべきだと言っている。
だが米国はこれに反対し、北が核を廃棄するまで経済制裁を続けるべきだと言い、中露が国連安保理で北への制裁を解除したくても米国が拒否権を発動するのでできない状態になっている。
トランプ自身は内心、北への制裁を解除しても良いと思っているのかもしれないが(彼は明言していない)、米上層部の軍産の反対が強いので北への制裁体制が残っている。
2度目の米朝首脳会談が行われるなら、米国が核廃絶より先に北制裁を解除するやり方に同意するシナリオが進められるはずだ。
北朝鮮をめぐる話の今の最大の案件であるこの問題に関して何も進展が期待できないのに、首脳会談が行われるはずがない。
北が、先に自国の核廃棄を進めることに同意する流れもあり得ない。
その流れは、北がフセインのイラクのように自滅することを意味するからだ。
首脳会談が行われるなら、トランプが譲歩する展開になるはずだ。
これまで軍産との暗闘ゆえに北制裁解除を了承できなかったトランプに、新たな策があるのか。
私が考えたシナリオは、ちょうど今、並行して行われている米中の貿易交渉で中国がトランプに譲歩する代わりに、トランプが北に対して制裁解除の譲歩を行い、中国は韓国北朝鮮に対する権威(覇権)を強化する利得を得る、という米中間の交換取引だ。
昨年夏にトランプが中国の対米輸出品に懲罰関税をかけて始まった米中の貿易戦争は、中国側の報復の結果、中国市場で自動車から電話機までの米国製品の売れ行きが悪化し、米経済を打撃している。
中国でiフォンの売れ行きが悪化して米国株を代表するアップルの株価が下がり、それを引き金として昨年末の米株価の暴落が起きるなど、思い切り膨張している米国の金融バブルを危険にさらしている。
トランプの敵である軍産エスタブは、トランプが中国との貿易戦争を過激に進めて米経済を壊しかけていることに強い恐怖を抱いている。
軍産エスタブは、米中が本気で深く対立することを望んでいない。
彼らは、自分たちの覇権運営を永続させるため、米国がやんわりした中国包囲網の策をとり続け、南シナ海や台湾、朝鮮半島、東南アジアなど軍事安保から、中国の市場の閉鎖性や知的所有権問題など経済まで、米国(同盟諸国)が中国をちくちくいじめ続け、中国が受け身で対処する形式的な対立構造の持続を望んでいる。
軍産エスタブは、中国人が米国を礼賛し、米国の世界支配を認めつつ米国債やiフォンを買い続け、米企業が世界最大の市場で儲け続けることを望んでいる。
トランプは、お得意の「軍産の覇権維持目的の敵視戦略を過激にやって軍産側をビビらせ、軍産側との暗闘で自らを優位にする」策略を米中関係においても行い、中国のすべての対米輸出品に懲罰関税をかける姿勢をとり、関税の本格実施を寸止め(60日延期)して軍産側の恐怖心を煽っている。
トランプ政権は昨年末から、ベトナムで北朝鮮と首脳会談の準備交渉を行うと同時に、北京などで中国と貿易交渉を行なっている。
米中貿易交渉の中で、中国側が譲歩する姿勢を見せたと報じられている。
中国は、貿易交渉での譲歩の見返りに、米国が北の核廃棄より先に経済制裁を緩和することを認めるよう提案したのでないか、というのが私の推測だ。
貿易交渉で中国に譲歩してもらいたいと思っている米国側は、トランプでなく軍産エスタブだ。
北制裁の緩和を渋っているのも、トランプでなく軍産エスタブだ。
トランプは軍産エスタブに対し「オレ自身は、北に譲歩しない方が良いと思っているんだが、君たちが中国の譲歩を得たいと言うなら、中国の提案に乗ろうと思うんだけど、どうかな?」などとすっとぼけたことを言い、米経済を悪化させたくない(米企業の儲けを維持したい)軍産側の同意を取り付けたのでないか。
きたるべき米朝首脳会談でトランプが北制裁の緩和に同意すると、マスコミはトランプを批判するだろうが、マスコミは軍産の一部なので、批判は大したものにならない。
トランプは、北が核廃絶しなかったら中国のせいだと言い、中国に責任をとらせる姿勢をとるかもしれないが、北の核廃絶に期限が設けられることはないだろうから、実際に中国が責任をとらされることはない(その前に米国が覇権を失う)。
北制裁が緩和されると、南北の経済交流や経済統合が始まり、南北の和解が不可逆になっていく。
韓国は北の脅威がなくなり、在韓米軍の撤退を求めるようになる。
今年4月には習近平の訪朝が予定されている。
それまでに米朝首脳会談が行われ、北への制裁が緩和され、南北の経済交流が開始され、中国や欧米の企業も北朝鮮との経済関係を再開する。
北朝鮮が国際社会に受け入れられる中で習近平が平壌を訪問して大歓迎される、というシナリオを中国は考えているのだろう。
このシナリオの中に、北の核廃棄は入っていない。
中国は北に、核兵器を静かに隠し持つよう示唆しているだろう。
中国が北に、核兵器の一部を公開して廃棄せよと求め、北がそれを実施すると、米国(軍産)が「北はもっと持っているはずだ」と激しく言い出し、米朝の間に挟まった中国のメンツを潰しかねない。
だから中国は、北の核廃棄をお題目として言うだけで、具体的な行為として北に強要しない。
北は核を全く廃棄せずにすむだろう。
▼南北が結束するためのダシに使われる日本
南北の和解とともに出てきているのが、南北の統合されたナショナリズム・朝鮮民族主義の勃興だ。
金正恩は元旦に発表した年頭演説で、南北が団結して外国からの内政干渉を排除せねばならないと述べ、南北ナショナリズムの統合を強調した。
金正恩が言う、内政干渉してくる外国とは、第一に米国であり、韓国の国家主権を制限している在韓米軍の存在だ。
今後、南北の和解が定着するほど、北が韓国に、在韓米軍を撤退させようじゃないかとけしかける傾向が強まる。
とはいえ、韓国が北に乗せられて急いで在韓米軍を追い出すと、今後の南北間の政治バランスが北に有利になり、韓国が損をすることになる。
韓国は、在韓米軍の撤収と対米自立を慎重に進めたい。
そのために韓国は、北と一緒に敵視できる米国以外の「南北共通の敵」を必要としている。
現段階で、米国以外の南北共通の敵としてうってつけなのは、わが日本だ。
朝鮮半島の周辺で、米国、中国、ロシアは、南北の和解や朝鮮半島の自立を助けてもらう存在なので、現段階で敵視できない。
対照的に日本は対米従属一辺倒で、朝鮮半島の問題に対して近年、積極姿勢をとらず、自ら孤立している。
日本をいくら批判しても、韓国も北も、何も失うものがない。
南北が和解して米国が東アジアから出て行くと、日本は孤立と国際政治上の弱体化を深める。
朝鮮は強くなり、日本は落ちぶれる。
こうした未来を見越して、韓国や北は最近、日本を叩き放題だ。
日本を叩くほど、南北が団結できる。
日本は、南北結束のためのダシ、ドアマットにされている。
徴用工問題での韓国の判決、12月20日に起きた日韓の軍事対立(レーダー照射)などが、これに相当する。
いずれも、韓国が仕掛けてきている。
在韓米軍の次に在日米軍の撤退が予測され、日本は米国に頼れなくなっている。
中国やロシア、韓国北朝鮮と和解していかねばならないのが今の日本だ。
日本の側から韓国との対立を激化させることを、安倍政権は望んでいない。
レーダー照射事件を日本の側から仕掛けたのであれば、それは日本のマスコミを異様に騒がせたことを含め、安倍政権に隠然と反逆する軍産傘下の日本官僚機構の仕業ということになる。
トランプ大統領「19日に重大発表」 ツイッターで予告
http://news.livedoor.com/article/detail/15896143/
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