最強で最狂、最高に凶悪!孤狼の血 LEVEL2 | 不思議戦隊★キンザザ
2021-09-19

最強で最狂、最高に凶悪!孤狼の血 LEVEL2

テーマ:映画

「孤狼の血 レベル2」を観てきた。遅くなったがレビューする。

 

 

3年前に暴力組織の抗争に巻き込まれ殺害されたマル暴の刑事・大上の後を継ぎ、広島の裏社会を治める刑事・日岡(松坂桃李)。しかし、刑務所から出所した“ある男”の登場によって、その危うい秩序が崩れていく…。
やくざの抗争、警察組織の闇、マスコミによるリーク、身内に迫る魔の手、そして圧倒的“悪魔”=上林(鈴木亮平)の存在によって、日岡は絶体絶命の窮地に追い込まれる…!

(公式サイトより)

 

スゲー作品だった。観終わった後は「映画を観た!!」という満足感があった。文句なしで素晴らしかった。役所広司が前作で殺されたのでどーなることやらという心配が若干あったものの、そんなものは杞憂であった。東映の真骨頂を目の当たりにした感じである。

今作品の素晴らしさはなんと言っても悪役の上林である。こいつがスゴイ。とにかくスゴイ。上林が全部持ってった。なにもかも。

 


マジヤバい

 

上林はムショから出所したその足でピアノ教室に上がり込み若い女性を殺す。殺された若い女性は看守の妹であった。映画はまだ始まったばかりである。それなのにいきなりエグイ殺し方で殺す。え、もう殺すん?という仕事の早さである。そう、まるで仕事のようになんの感情もなく殺すのである。

上林のスゴイところは兄貴や2代目親分も同じように殺すことである。ヤクザの座右の銘でもある「仁義」「恩義」を屁とも思っておらず平気で兄貴分に楯突き、挙句に殺すのである。殺し方は多種多様、死体の始末もヴァリエーションに富んでいる。その中でも兄貴分役である宇梶の存在感とインパクトある殺されっぷりは見事であった。もうこれだけで元が取れようというものである。

 


えっ!いま殺すの?ここで?という素早さ

 

徹頭徹尾、極悪非道。いっそ清々しいほどである。

 


2代目親分にも容赦なし

 

こういった残虐性を自由闊達に発揮しながら上林は常に冷静である。ただし計画性はない。計画性はないがなんらかの法則を上林は持っている。だからこそ殺すことに逡巡がなく自分を見失うことがない。残虐な自分を理解し受け入れているように見える。冷めているのだ。

彼はいつから冷めているのか。

 


笑顔で死体を処理するみなさん

 

上林が子供時代を回想するシーンがある。原爆スラムと思しき掘っ立て小屋で酒ばかり飲み暴力を振るう父親と、父親のいいなりだった母親。まだ少年の上林は両親を殺す。この頃にはもう上林は冷めきっていたと思われる。

 

※原爆スラム:終戦直後、焼け出されたひとたちが広島市街のド真ん中に粗末なバラックを建てて住みついたスラム街。昭和40年代まで存在した。開発計画でスラムは一掃され、住民たちは新しく建てられた基町高層アパートへ移った。

蛇足だがムッシューは現在の県立美術館の裏あたりにあった原爆スラム出身である。本人はスラムとは思っていなかった模様。まあ、そりゃそうだ。普通に生活してたってんだから。開発による立ち退き後は例に漏れず基町アパートへ移りしばらく住んでいたという。言うまでもなく被爆二世である。

基町アパートにはムッシューの母方の祖母がずっと住んでいて帰省するたびに寄っていた。そしたら必ず基町ショッピングセンターでお好み焼きを買ってきてごちそうしてくれた。食べきれないくらいデカくて600円だった。安い。祖母が亡くなったいま、もう基町アパートへ行くことはないだろう。お好み焼き屋も、もうないかもしれない。ローカルな思い出話が長くなった。映画の話を再開する。

 


スラムと建設中の基町アパート
(参考:広島死闘編)

 

仁義も恩義も持たない上林だが、実は持たないのは「義」だけであり、なぜかというと上林自身が「義」だからである。義とは掟である。上林の掟は彼自身だ。なので上林の「義」に沿わない人物を、彼は迷いもなく恐れもなく排除するのである。

他人に対して「義」を持たない上林でも「仁」と「恩」は持っている。焼肉屋のオバハンに対して持っているのである。子供の頃ただで飯を喰わせてくれたオバハンを上林はいまだに恩人と思っている。いくら極悪非道をやっても、極悪非道が出来る自分が生きているのはオバハンのおかげなのだ。

そのオバハンの焼肉屋で上林は飯を喰いながら手下にヤキを入れるがオバハンは何も言わない。諸行無常な空気が漂う。上林がカネを置いて出て行ったあと、オバハンはヤキをいれられ床に転がっている手下に「飯食っていきな」と言う。名シーンだと思った。

 

懐かしの基町ショッピングセンター

 

上林の直近の目標は五十子親分のタマを獲った尾谷組の壊滅である。日岡というサツにもムカつくが、あんなのはちょっと脅しておいてあとでじっくり殺せばいい。

尾谷組の襲撃に向かう直前、五十子親分の妻が上林を止めようとするが上林は容赦なく殺す。殺したあと「たいぎいんじゃああああああ!」と怒鳴る。面倒くさいという意味である。

このセリフこそ上林が感情を吐露した唯一のように思える。上林は全てが面倒で退屈なのだ。襲撃も姐御も組織の序列も互助関係もカネもシャブもなにもかも。生きていることさえも。

上林はThe Big emptiness、大いなる虚無である。上林自身が虚無に吸い込まれている。

 


虚無上林

 

上林と日岡が最後に対決するシーンで日岡は拳銃を上林に突き付け引鉄を引く。しかし弾は出ない。弾切れしていたのだ。

上林は笑う。な?言うた通りじゃ。わしにゃあ死神が取り憑いとるけえ死ねんのじゃ。

上林は死にたがっているのだろうか?

 

暴走上林

 

死神に憑りつかれて死ねないと嘯いた上林は、しかし日岡に殺される。死ぬことで上林は日岡に引導を渡した。引導の使い方が間違ってるかもしれんが、上林が渡した引導とは死神である。死神に憑かれていた上林が死んだということは死神は上林を見捨て、日岡に取り憑いたのだ。

日岡はロクな死に方をしないだろう。孤狼の道を選んだ日岡自身が穏やかな死を望むとは思えない。そんな日岡の死にざまを見てみたい気がする。

 

主に上林の感想となってしまったが以上である。もちろん素晴らしいのは上林だけではなくプロットは骨太で見どころモリモリ、日岡が上林にとうとう鉛玉をブチ込むラストは惚れ惚れするほどの鮮やかさであった。

とここまで書いて続編製作決定というニュースが飛び込んできた!マジか!いつクランクインするのだ?主役は誰だ?日岡の死にざまが見れるのか?一ノ瀬が出所して全面戦争?どこで?だれと?いつ!!!ということが既に気になって気になって夜しか眠れない。